工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった 作:ストロングゼロ
ある日、あたしは高校生探偵、工藤新一になっていた。
何でなのかさっぱり分からないけど、目が覚めたら、いきなり頭の中に『名探偵コナン』の工藤新一という人物の記憶が流れ込んできたんだ。猛烈な頭痛と共に――。
直前の記憶は幼なじみで同級生の毛利蘭と遊園地に遊びに行ったあの日の出来事……。
黒ずくめの男の取り引き現場を目撃して、取り引きを見るのに夢中になっていたら、ジンに背後から頭に強烈な不意討ちを受けたというあのシーンだ。
倒れたあたしはジンに毒薬を飲まされて――。そこで、あたしの魂とやらが彼の体に入ってしまったらしい。
て、ことはあたしまさか小学生になってる? いやいや、男の子になるだけでもハードル高いのに……子供の体になるなんてキツイわよ……。
「おーい! ちょっと来てくれ! 誰か死んでいるぞ!」
「なにっ!?」
あっ……、警察の人たちが来てくれた……。えっと、この人たちから逃げて阿笠博士を頼らなきゃいけないんだっけ……?
こんな状況受け入れられないわよ。さっきまで、女子高生やってて、くつろいでたのだから……。でも夢じゃないっぽいのよね……。
「いや、まだ息はある!」
「救急車だ! 救急車を呼べっ!」
「頭から出血が酷い……、可哀想に……」
そうなの……頭が痛いの……。薬で小さくなっているはずだし……。面倒なことになってるのよ……。
「おい、しっかりしろ!」
「大丈夫か?」
警官がいっぱいいるわ。小学生がこんなところで倒れてたら割と事件だもんね……。
「立てるか?
お、お嬢さん……!? あれ? あたしは女の子のままなの?
やだ、胸が前よりも大きくなってる……!? お腹も引き締まってるし……。子供ですらない?
女の子から男の子になったと思ってたのに逆にスタイル良くなっているってどういうこと?
「えっ? 何これ? あ、あたし、どうしちゃったの?」
えっと、声も女の子の声ね。新一の母親の有希子ってこんな感じだったような気がするわ……。うろ覚えだけど……。
「どうしたんだい? お嬢さん、怖い思いをしたと思うけど、我々が来たからにはもう安心だよ」
「えー、こちらB地点、負傷している女性を発見しました。年齢は16〜18歳くらい。おそらく高校生だと思われます」
と、とにかく冷静になりましょう。あたしに流れ込んできた記憶から推測して自分は工藤新一という人間に転生した。
薬を飲まされた――その瞬間に……。で、本来は体が縮んで子供になるところがあたしのせいなのか知らないけど、女の子の体に変化してしまったということかしら……?
あはっ、それにしても工藤新一の体だから推理とかめっちゃ早いわね〜。
て、バカなことを考えてないで、どうしましょう。黒の組織って得体のしれない連中だし……警察に話したところで色々とツッコまれるとどうしていいのか分からなくなるのは目に見えてるわ。この世界の警察ってどうも信用できないし……。
まずは新一の家に……いや、家には両親は居ないのよね。ならばやっぱり漫画と同様に阿笠博士に助けを求めるべきかしら……。
とにかくここから離れないと――。どうやって離れれば――そ、そうだわ。
「す、すみませ〜ん。ちょっと服の中に虫が入っちゃったみたいでぇ。服を捲りたいので、あちらを向いてくれませんかぁ♡」
私は我ながら古い手だと思ったけど、胸を強調しながら色仕掛けで逃げようと思った。
ど、どうかしら? すんごい恥ずかしいんだけど……。
「えっ? あ、ああ。わかった」
「今だ!」
「えっ? あっ! おい、君ぃ! 待ちたまえ!」
あたしは間抜けな警官から走って逃げ出した。そして、記憶にある工藤新一の家に向かって急ぐ。
とにかく、阿笠博士なら助けてもらえるはず――そう信じ込んで走ったんだ。
「雨でベチョベチョだよ〜。夢なら覚めて欲しいんだけどな。博士に会う前に着替えておこうかしら? 風邪を引きたくないし。下着とかあるかな? お母さんのとか……」
そんなとき、大きな爆発音と共に黒い煙が隣の家から上がる。阿笠博士の家からだ。
「ゴホッ……ゴホッ、ゲホッ!」
「阿笠博士!」
「有希子くん!? いや、それにしては若いような……」
阿笠博士は地面に座りこんでいて、あたしの声に反応した。どうやら、あたしを新一の母親だと勘違いしたみたいだ。
どーしよ。とりあえず、新一だと主張してみる?
「オレだよオレ! 新一だよ!!」
「ああ、新一の親戚の子か。道理で有希子くんにそっくりなわけじゃ。新一の家は隣じゃよ」
「ち、違うって。オレが新一なの! なんなら博士の秘密をいってみようか?
うーん。流石に記憶がそのままあるだけあって、新一の演技は完璧ね。我ながら上手よ。
これなら、博士も信じてくれるでしょ。
「そ、それは新一しか知らないはず……。あいつ、ワシの秘密を言いふらしておるんじゃな……!? こんな可愛らしいお嬢さんにまで……!」
あっ、そうかぁ。そうだよね。それじゃ信じてくれないんだったっけ?
あれ? どうやって、新一だって証明したのよ? ええーっと、思い出さなきゃ……。
「そうじゃなくてオレが新一なの! 変な薬飲まされて女にされちまったんだよ!」
「薬で女に……?」
「ああ!」
「そんな薬があればワシがお目にかかりたいわ! お嬢さん、悪ふざけはやめなさい!」
ふぇーん。阿笠博士怒ってる〜〜。さっきまで女子高生だったあたしにはキツイよ。彼を説き伏せるのは――。
えっと、ええーっと。思い出して〜〜。
「あっ! 思い出したわ。博士……、さっきレストラン“コロンボ”から急いで帰ってきましたね!」
「ど、どうしてそれを……!?」
「博士の服ですよ! 前のほうには濡れたあとがあるけど後ろはそれがない……! 雨の中を走ってきた証拠です! それにズボンに泥がはねている! この近辺で泥がはねる道路は工事中の“コロンボ”の前だけだ! おまけに“コロンボ”特製のミートソースがヒゲについてる!」
阿笠博士は、自分のヒゲをつまみ少し考えています。よしよし、良くやったぞあたし。
この類稀なる推理力こそ工藤新一だという何よりの証拠よね。
「……き、君は!?」
「チッチッチッ……、初歩的なことだよ阿笠くん!」
決まった〜〜! これは完璧に新一でしょ。流石に博士も信じるわね。
「し、新一!!――の親戚だけあって、推理力まであいつみたいじゃな! 有希子くん方の親戚かと思っとったが、似るもんじゃわい。推理好きも」
あちゃー、ダメだった〜〜。よく考えたら、コナン君はあれだ。見た目が子供のクセにとんでもない推理力だからインパクトがあったんだ。
あたしの見た目じゃ、ただの女子高生探偵だよ。いや、ただの女子高生探偵ってなんだ?
でも、力説するしか頼れる人を手に入れる方法はない。何とかしないと――。
「あーもう! だから違うって。本当に新一なの。オレは! どうしたら信じてくれんだよ」
「新一はそんな可愛らしい仕草などはせん! なんで、君はそんなに新一になりたがるのじゃ?」
うはっ! 動揺して女っぽい仕草をずっとしてた〜。内股になって、上目遣いで博士を陥落させようとしていた〜。こんなこと新一はしないよ〜〜。
おじいちゃんに小遣いねだるときみたいな動きになっていたわね……。
「だって、そうしないと誰も味方になってくれないんだもん! 助けてくれそうな人、博士くらいしか思いつかなかったのよ!」
「――っ!? ようやく変な演技が無くなったわい。お嬢さん。訳ありなら話くらい聞いてやろう。その顔立ちから新一の親戚であることくらいは信じてやれるからの……」
あたしが感情を露わにすると、阿笠博士は真剣な顔つきになって、話を聞いてくれると言ってくれた。やっぱり頼りになる人かも。
雨に濡れて体も冷えてきたから、シャワー浴びたいし着替えたい。
ということで、彼と一緒に新一の家にお邪魔することとなった。一応はあたしの家だしね。
◆ ◆ ◆
「それにしても、よかったわ〜〜。有希子さんの服があって。ブラもぴったりだし、全然問題なし」
「う、うむ。こうして見ると髪は短いが有希子くんと瓜二つじゃな。で、転生と言っておったが……薬で女になったこと以上に信じられんのう」
阿笠博士はあたしをジッと見つめて不思議そうな声を出す。
あたしはここが漫画の世界という部分だけを伏せて概ねのことを正直に博士に説明した。
ま、確かに性転換は手術とかで可能かもしれないけど、転生は無理だもんね〜。
「て、言われてもね。あたしだって困ってるのよ。階段から転んだと思ったら“工藤新一”の記憶が頭に流れ込んできてさ。男の子になっちゃったと、思ったら女の子のままなんだもん。美人にはなれたけど」
新一の母親の有希子は大女優としてアイドル以上の人気があったらしいけど、こりゃ間違いないや。
体をきれいにして髪の毛を整えるとビックリするくらいの美人だったもん。自分で自分に見惚れちゃった。
「ふーむ。新一の記憶を持っとることに関しては間違いないみたいじゃのう。さすがに子供の頃のあいつのくだらない話を全部教えられたなんぞあり得んし……」
「あ〜〜っ! だから、あんな質問したんだ。博士頭いい〜〜! さすが天才発明家ね!」
博士から新一クイズを出されて、あたしは全問正解した。
博士と彼だけの思い出を些細なことまであたしが覚えてたものだから、ようやく彼はあたしの中に“工藤新一”の記憶があると信じてくれたみたいだ。
「新一はそんなふうにおだててはくれんからのう。お嬢さんは新一であってそうではない。――転生という言葉は信じられんが、そうとしか考えられんみたいじゃのう」
「信じてくれてありがとう。嬉しいわ」
柔軟にこの荒唐無稽な話を受け入れてくれた博士には感謝しかない。普通は頭のおかしい奴だと思われて終わりだし……。
みんなから慕われるわけだわ……。じゃないとキャンプの引率とか任せないもんね。小学生の親が……。
「ところでお嬢さん。名前は何と言うんじゃ? その、新一になる前は」
「えっと、そうそう。あたしの名前は
あたしはさっきまで呼ばれていた自分の名前を名乗る。前世の名前っていうのかな……。
かわいい名前で気に入ってはいるけど。
「アリスくんか。で、アリスくんはこれからどうする? 元の体に戻るとて、男の体じゃし。今の方が……」
あれま。“アリスちゃん”と呼ばれなかった……。
元の体かー。新一の体に戻りたいかどうかってことよね? あたしの魂にとっては、そりゃ今の体の方が都合がいいのは間違いない。でも――。
「うーん。よく分からないけどさ。元の新一の体に戻らなきゃいけない気がするよ。だって、この世界にはあたしの事を知っている人は居ないけど……新一の事を待ってる人はいるもんね。それに……もしかしたら、元に戻ったら新一の魂も帰ってくるかもしれないし」
そもそもあたしはこの世界に居ていい人間じゃない。
“工藤新一”の魂がどこに行ったのか知らないけど、体が元に戻れば案外魂も元通りになるかもしれない。
それならば、あたしは元に戻れるように頑張るのが筋だと思う。
「非科学的じゃのう。じゃが、アリスくんが優しい子じゃということはわかった。薬の成分さえ分かればワシでも解毒剤は作れるかもしれん。何とか成分表を見つけられれば……」
「うん。あの黒い服を着た連中を見つけだして、作り方も手に入れてみせるわ!」
あたしはあの黒の組織と新一と成り代わったついでに戦うことを決めた。
正直、推理とかは経験ないけど、頭の中には色んな知識がある。それを活かして何とかこの現状を打破するんだ。
「いいかアリスくん、君が新一だとわかったらヤツはまた命をねらいにくる! さっきの話は決して誰にも言ってはならんぞ! この事はワシと君だけの秘密じゃ! もちろん蘭くんにもじゃ!」
すると、博士は急に険しい顔つきになってあたしにこのことは誰にも秘密だと念を押した。
誰も信じてくれないだろうから黙ってるつもりだったけど、彼があたしの心配をしてくれているのは伝わる。
「う、うん。あたしは大丈夫だと思――」
「新一〜〜〜! いるの〜〜〜!?」
返事をしようとしたその時、新一の幼馴染の毛利蘭の声が聞こえた。
あー、そういえば遊園地で別れてから連絡入れてなかったもんね……。
「あっ!? ら、ら、蘭ちゃんの声……」
「いかん! 早く隠れろ!」
「ふぇっ!? 隠れるって言ったって……」
博士に隠れるようにと言われたが、そんな場所はなくテンパってしまったあたしはそのままフリーズしてしまう。
あっ、蘭がこの部屋に来ちゃった……。
「帰ってるんなら電話くらい出なさ――あら、阿笠博士! 新一は?」
「いやそのォ……、さっきまでいたんじゃが……」
「あれ? そちらの方は……」
蘭は博士に気付いてすぐにあたしに気付いた。な、なんだろう。新一の体になって記憶も共有しているからなのか――蘭が愛おしくてたまらない……。
だ、抱きしめたくなるような衝動に駆られるくらい。こ、これはどういうこと……。
「あっ!? えっと、そのう……あたしは……」
「し、新一……くんの……お母さん……? ううん。さすがに若すぎる。あなたは誰ですか? し、新一の家になんで?」
最初は新一の母と勘違いしたが、見た目の年齢的にそんなはずがないと思った蘭は愕然とした表情で若い女が新一の家にいる理由を尋ねる。
ま、不味いんじゃないかしら……一歩間違えたら修羅場になるのでは……。
「この娘は藤峰
「新一の親戚? い、いえ聞いてませんけど……。道理で新一のお母さんとよく似てる……。でも、どうしてここに?」
蘭はあたしが新一の親戚であることはすぐに飲み込んだけど、ここにいる理由には納得していないみたいだった。
顔は全然怒ってないんだけど……正直怖い。
藤峰は有希子の旧姓か……。そっち側の親戚ってことの方が話が通じやすいもんね…。
「そ、それはじゃ……な。アリスくんは事故で両親と祖父母を亡くしてしまって天涯孤独になってしまったんじゃ。近い親戚をたらい回しにされてのう。新一の両親を頼って来たのじゃが……」
さらに博士はデタラメを並べる。まぁ天涯孤独はそのとおりだから良いけども。
そのあとが良くないなぁ。それじゃ蘭は――。
「えっ!? じゃあまさか新一と同棲するの!? そ、そんなこと……」
「博士……、話が面倒くさい方向に進んでるわ……。大丈夫よ。新一と一緒に住むなんてしないから。蘭ちゃんの新一を盗ったりしないって」
博士があたしが新一と同棲するようなことを言うから蘭がもの凄くしょんぼりしてしまった。
だから、堪らなくなってあたしはここには住まないと彼女に告げる。
「えっ? えっ? わ、私は別にそんな……。し、新一から何を聞いてるのか知りませんが……その、ええーっと……」
「あはは、顔真っ赤じゃん。可愛いわね」
「これこれ、アリスくん。あまりからかうのは……」
蘭の反応があまりに素直で可愛らしいので、あたしは笑ってしまった。
やっぱり初対面だけど、あたしは彼女のことが好きだ。悲しませたくない。
「ごめん、ごめん。あたしは博士の家に住むわ。良いでしょ? 博士とも親戚だし」
「えっ? あっ? まぁ、そりゃあ構わんが……」
「ねっ? これで安心した?」
「う、うん。なんだろう……初めて会ったような気がしない……」
あたしは半ば強引に博士のところに居候させてもらうことにした。生活費は納めるつもりだけど……新一の金から……。
蘭はそれを聞いて顔色を良くしたみたいだ。
「そうじゃ、蘭くん。アリスくんを毛利くんの助手にしてもらえないか頼んでやってもらえんかの?」
「ちょっと博士……、いきなり何言ってんのよ……」
「毛利くんのところは探偵事務所じゃろ? もしかしたら、組織の情報とか入るかもしれん……」
「な、なるほど。そういえばそうね……」
博士の突然の提案に驚いたが、確かに漫画のコナンもそういう理由で毛利小五郎の世話になった。
あたしは助手として、小五郎を名探偵に仕立て上げて事件を追えばいいわけか。
「あ、アリスさんをお父さんの助手に? どうして?」
「実はアリスくんはずっと探偵に憧れておったんじゃ。こんな不幸な境遇の子じゃから、せめて憧れの探偵の近くに置いてやりたくてのう……」
「た、探偵に憧れ……? だったら、新一に……」
「ダメよ。新一はあたしのライバルだもん。それに蘭ちゃんはあたしが新一に手とり足とり教えて貰った方がいいの?」
蘭は探偵なら新一で良いとか言うけど、あたしが新一だからそうはいかない。
あたしは何としてでも小五郎の助手にならねばならない……。
「手とり足とり…………、だ、ダメです! そ、そんな――いやらしいこと……!」
「な、何を想像してくれちゃったわけ? ねぇ、お願い。ちょっと事件とか調査に同行させて貰えるだけでいいから」
「そんなに探偵っていいものですか? あの推理オタク以外にそんな人いるとは思わなかった……。私は構いませんが……」
あたしが頭を下げてお願いすると、蘭は折れてくれた。
いや、わかっていたけど超やさしい。だって普通は知らない子供を二つ返事で預かったりしないもん。
マジで大好きになったわ。この子のこと――。
「やった! ありがとう蘭ちゃん! あと、敬語はナシにしましょう。あたしたち同級生だし。アリスちゃんって呼んでくれたら嬉しいな」
「か、かわいい……。な、何でこんなに可愛く思えるんだろう……」
あたしがギューッと蘭のことを抱きしめて感謝の言葉を述べると、なぜか蘭は顔を真っ赤にしていた。
ここから、あたしの女子高生探偵ライフが始まるのだった――。
アリスの名前は推理作家の有栖川有栖先生から取りました。
見た目は有希子の高校生のときにそっくりな感じです。
少年探偵団系のエピソードはほとんど絡ませず、高校生ライフを送りながら事件に巻き込まれたり、小五郎の助手をしつつ事件の解決にあたるスタイルでいきます。
原作のエピソードを抜粋してやっていくつもりです。