工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった   作:ストロングゼロ

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大学教授殺人事件

「哀ちゃ〜ん、服を買ってきたわよ〜。ほら、これなんてあたしとお揃いの花柄で……一緒に歩いたらきっと姉妹に見られちゃう♡」

 

「博士の買った服を着るわ」

 

 あたしが買ってきた花柄のワンピースを一瞥した哀は阿笠博士が買ってきた地味な方の服を選んで着替えると言った。

 どうやらあたしとペアルックは嫌みたい……。

 

「んもう。ツンツンしてるんだから。でも、そんな哀ちゃんも可愛い」

 

「はぁ……」

 

 彼女をギュッと抱きしめると面倒くさそうな顔をしてため息をつく。

 もー、そんなに照れなくても良いじゃん。

 

「ほら、おやつも買ってきたから。着替えたら車に乗るわよ」

 

「ピクニックに行くんじゃないのよ」

 

「分かってるわよ。夜のドライブに行くんだもの」

 

「博士、この人と会話をする方法を教えてくれないかしら?」

 

 おやつを用意して博士の車で静岡までドライブだと口にすると哀は博士にあたしについて苦言を呈する。

 コミュニケーション能力はある方だと思ってたけど……。

 

「まぁまぁ、明るいのがアリスくんの良い所じゃし」

 

「無警戒、ノー天気、甘過ぎる性格。探偵にはどう考えても不向きだわ。工藤新一の知識があっても、これじゃきっとボロがでる」

 

「ありゃま。厳しいこと言うわね」

 

 哀はあたしには探偵としての適性がないと断じた。  

 確かにそそっかしいし、疑うのとか好きじゃないから彼女の言ってることは正しい。

 

「だったら、態度を改めること。組織と関わるつもりなら少しの甘さが命取りになるわ」

 

「うん。わかった。哀ちゃん、心配してくれてありがとう」

 

「……暑苦しい」

 

 あたしは忠告してくれた哀をもう一度抱きしめて、頭をワシャワシャと撫でた。

 やっぱ、抱き心地がいい子だわ。哀ちゃんは……。

 

 あたしたちは車で3時間かけて静岡県にある広田正巳教授の家に向かった――。

 

 

 

 

 

 

「ああ、阿笠さんですね。主人から話を聞いております」

 

 夜遅くに広田教授の家を訪問したあたしたち。

 今日、彼は何人か教え子と会う予定だったらしく……その後なら話を聞いてくれると言っていたのだ。

 

「客人はもう帰られたのですか?」

 

「ええ、主人の教え子が何人か入れ違いで来たみたいですけど……。あら? 鍵なんてかけてどうしたのかしら? あなた? あなた? 変ね〜〜」

 

 広田の奥さんは彼の客人は皆帰ったあとだと言いながら、彼の部屋をノックする。しかし、返事がない。

 どうやら、内側から鍵がかかっているみたいで、ドアも開かないらしい。

 

「――どれどれ……。――っ!? 奥さん! この部屋に合鍵とかはあります?」

 

 あたしはひょいとジャンプして窓から部屋の中を覗いてみる。

 すると、物が散乱した部屋の中で本棚に押しつぶされながら頭から血を流している広田がいた。

 大変だ。早く中に入らないと……。

 

「いえ、そんなものはないけど」

 

「博士! このドアぶち破るわよ! 手伝って! 早く!」

 

 あたしと博士で力を合わせてドアを無理やり開けて中に飛び込む。

 ドアが開くと中の様子にみんなが気付いた。

 

「「――っ!?」」

 

「きゃあああああっ!」

 

「博士! 警察を呼んで!」

 

 広田は死んでいた。頭から血をドクドクと流しながら。  

 なんで、あたしが行く先々でこう人が死んでるのよ。たまには何事もなく返してほしいわ……。

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、毛利さんの助手である君がいるとは思わなかった」

 

「横溝警部、先日はどーもお世話になりました」

 

 静岡県警の管轄である今日の事件は横溝参悟警部が担当することになった。

 彼は早とちりすることが多いけど、真面目で有能な方の刑事さんだ。

 そして、小五郎のことを尊敬している貴重な人でもある。

 

「いえいえ、ズバリの小五郎と阿吽の呼吸のアリスさんの推理は実に素晴らしい。今日はそれが聞けそうにもないですが」

 

 横溝警部は小五郎のおかげであたしのことも割と評価してくれている。

 あたしの推理を聞けないと言ってるってことは――。

 

「あれ? それはどういうことですか?」

 

「だって、これはどー見ても事故でしょう。恐らく本棚の上の物を取ろうとして、バランスを崩し本棚ごと倒れ込み、先に棚から落ちた置物で頭を打って死に至ったんです。――その証拠に部屋の窓もドアも鍵がかかってますし、唯一の鍵は散乱した本と共にノートの下に……」

 

 やはり横溝はこの事件を事故だと思っているみたいだ。

 状況は彼の言うとおり如何にも事故って感じよね……。

 

「確かにそうですが、変なのよね〜。ほら見てください。この床に落ちてひっくり返った電話……。受話器が外れてません。本が上から覆いかぶさるくらいの勢いで物が散乱してるのに」

 

「そういえば変じゃのう。アリスくんは事故じゃないと思っとるのかね?」

 

「うん。上手く偽装してるけど、作為的なものを感じるわ。殺人事件の可能性が高いわね」

 

 あたしはこの現場に不自然さと作為的なものを感じて殺人事件の疑いがあると口にした。

 まぁ、窓もドアも閉まって鍵は室内にあったんだけどね……。

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、アリスさん。だとすると、これは……、密室殺人ということになりますよ」

 

「ええ。容疑者は広田さんを訪ねたという教え子さんたちになりそうです」

 

 興奮しながら密室殺人だと大声を上げた横溝の言葉をあたしは肯定して、犯人は今日、この家を訪問した人たちの中にいると彼に告げた。

 広田が会う予定だと言っていた教え子たちというのが怪しい。

 

「ところで、アリスさんたちは何故ここに?」

 

「えっと、博士の知人が間違ってフロッピーを広田さんに渡しちゃって、それを返してもらいにきたんです。多分、あのパソコンの横に……」

 

「無くなってるわよ。ごっそりと全てのフロッピーディスクが。この分じゃ、パソコンの中のデータも消されているかも」

 

 横溝にここに来た理由を問われたあたしはそれに答えようとパソコンに視線を送ったら、既に哀がパソコンをいじりながらフロッピーが無くなっていることと、データが消されている可能性について声に出す。仕事が早くて助かるわ。

 

「あの少女はアリスさんの妹ですか?」

 

「そうでーす♡」

「親戚よ。ただの親戚!」

 

「もう、哀ちゃんったら。妹みたいなものなんだから、それでいいじゃない」

「絶対に嫌よ」

 

 哀のことを妹かと問われたあたしが肯定しようとすると彼女はいつもよりも大きな声を出してそれを否定した。

 

「はははっ、仲がよろしいですな。さすがにこんなに小さな子供を連れて人殺しには来ませんよね」

 

 哀のおかげであたしたちはとりあえず容疑者から外された。

 それでも疑う人もいるから横溝警部が担当で良かったわ……。

 

 

「まさかあの連中がフロッピーを回収がてら……なんてことないわよね?」

 

「データ回収に訪れた組織が広田教授に見つかって撲殺した可能性は大いにあるかもしれないわ」

 

「でも、決めつけは良くない。いろんな可能性を疑ってかからなきゃ。まずはここに来た人たちの話を聞いてみましょう」

 

 黒の組織がこの件に関わっている可能性があるけど、そうじゃない可能性も高い。  

 とりあえず状況を整理することが真実に近づく第一歩だ。

 

「へぇ、あなたの頭にも疑うって言葉があるのね。少し安心したわよ」

 

「えへへ。これでも名探偵の助手だもん。見てて、必ず真実を解き明かして見せるわ」

  

 あたしは哀にウインクして見せて、この事件を解決すると意気込んだ。

 

 そして横溝警部にお願いして、共に聞き込みをすることにする。

 

 まず、広田正巳の妻である広田登志子は8時から11時まで町内会の会合で出かけていたため、最初に訪れた教え子の細矢としか会っていないとのことだった。

 

 彼女は2、3人教え子が来ると聞いていたけど名前もわからないとのこと。

 

「うーん。広田教授の教え子を一人ずつ当たるしかないのか……」

 

「あら、電話に留守電が入ってるみたいね。横溝警部、これを聞けば何かわかるかもしれませんよ」

 

『メッセージは13件です……ピー……もし……し……白倉です……』

 

 あたしは電話の留守電機能に何かメッセージが入っていることを確認して、それを聞いてみることにした。

 最初の電話は白倉という男から……。それは良いんだけど……。

 

「妙ね。このテープ……、ところどころ音がとんでるわ……」

 

 テープから聞こえる音声が何故か途切れ途切れになっている。これはどういうことかしら?

 その次のメッセージは盛岡と言う男のものだった……。

 

 この二人の連絡先を横溝警部が登志子に尋ねていると部屋に男が入ってくる。

 

「あのー、白倉は僕ですけど……」

 

 入ってきた男はモデルをやっている広田の教え子――白倉という人で、最初に留守電を入れた人間だ。とりあえず、容疑者の一人は彼ね……。

 

 留守電を全部聞いて白倉から10件、盛岡から2件の電話が来ていた。

 

 そして最後のメッセージは――。

 

「黒……生命です……。当社の新……い保険の説明にお伺いしたいん……」

 

 なにも知らない人が聞いたら保険会社のセールスらしい伝言ね……。でも……。

 

「この口調……この声は……聞き覚えがあるわ」

「ウォッカ……」

 

 最後の留守電は黒の組織でジンの相棒をしているウォッカという人の声だった。

 うーん。やっぱり連中もここを嗅ぎつけたか……。

 

「じゃあ、アリスくん。この事件はやはり……」

 

「ううん。用心深いあいつらが声の入ったテープを現場に残さないでしょ」

「彼らなら密室トリックなんてまどろっこしいことしないで、殺して終わりよ。テープを回収してね。だから、今ごろ焦ってるんじゃないかしら。この騒ぎで回収できなくなったから」

 

「でも、近くには来てそうよね。組織の奴ら。博士のワーゲンを移動させて正解だったわ」

 

 この事件自体は黒の組織が関わっている可能性は低いが、連中だってフロッピーディスクを狙っている。

 近くに奴らがいる可能性は大いにあるのだ。

 

 

 その後、同じく広田に会いに来ていた会社員の細矢と獣医の盛岡がやってきた。

 

 細矢は南洋大学を受ける娘の推薦状をもらいに来たものの広田が大分酔っていたために帰ったと証言する。

 

 そして盛岡は広田からの誘いでチェスをしに来たらしい。

 

 彼は時間を決めていなかったため電話をしたものの留守番電話になったため9時半ごろに来たという。

 

 玄関は開いていたものの誰も出てこないので中に入り、部屋の前まで来てノックしたものの返事がないから帰ったと証言した。

 

 そしてそれから1時間半後にあたしたちが来て死体を発見するという流れ……。

 

 一方、白倉は雑誌の企画に使うために大学祭で女装して広田と撮った写真が入ったフロッピーを借りに来たと証言。

 

 登志子の話によると広田は写真や仕事関係のデータ、盛岡とのチェスの勝敗までパソコンに保存していたんだって。マメな性格してるわよね〜。

 

「そのフロッピーを犯人が広田教授殺害後にごっそり持ち去ったという事か……」

 

「でも、先生がご自分で全部学校に持っていったかもしれませんよ」

「ありえるな。あの人、ラベルとかの印なんかつけてなかったからな。全部まとめて……」

「それにこの部屋、密室だったんでしょ? どう見たってこれは――」

 

 横溝警部に細矢たちは広田が自分で大学に持って行ったのではと主張した。

 確かに状況としてはあり得なくはないけど――。

 

 うーん。この部屋の侵入口は全て閉ざされていて……スキがあるとしたら、入口のドアの下の鍵がやっと通るぐらいのスキ間のみよね。

 

 輪ゴムかテグスを使えば――広田を殺害した後に鍵を奪って、部屋の外で鍵を掛けドアの下のスキ間から鍵を部屋の中央に運ぶ事はできるかもしれないけど――都合よくノートの下に滑り込ませることは……まず不可能だわ。

 

 気になるのは部屋中に散乱しているのに……、なぜかドアから電話までの一直線上には問題のノートしか落ちてなかった事と……少々ワカメになってる留守番電話のカセットテープだけど……。

 

「意外ね。そんな真剣な表情も出来るのね。ヘラヘラしてるだけかと思ってたわ」

 

「人一人が死んでるんだもの。それに、広田さんは哀ちゃんの大事な人の恩師だから、ちゃんと真相を突き止めなきゃ」

 

 あたしは探偵としてはダメダメな性格だけど、事件には真剣に取り組むことは一貫している。

 今回は哀の身内の関係者だし、特に気合を容れて取り組んでいた。

 

「どうしてそこまで、私に構うの? 薬の開発者だから? 私はあなたにとって死神かもしれないのよ」

 

「あたしはこの世界で一人ぼっちだったから、哀ちゃんの気持ちもわかるのよ。たった一人の肉親だったお姉さんがいなくなって、ホントは不安でいっぱいなんだと思う」

 

「わ、私は別に……」

 

 頼れる人がまったく居なくなるのって精神的には辛すぎる。 

 転生したてで博士にも信頼してもらってないときは本当にキツかった。

 

「だから決めたんだ。あたしだけでも、哀ちゃんの味方になろうって。哀ちゃんが安心して暮らせるまで……あなたをあたしは一人ぼっちにさせはしない」

 

 哀を一人にはさせたくない。せめてあたしだけでもずっと彼女の助けになりたい。  

 あたしはそう誓って彼女と接して来たのだ。

 

「――っ!? あなたの甘さは病気レベルね。それに現実が見られなくなっているみたい。この事件にしたってそう。どうやったってノートの下に鍵を運ぶなんて物理的に不可能。ここも危険なんだから早く帰ったほうが賢いわよ」

 

「まー、そうなんだけどさ。やっぱ気になっちゃうのよ。作為的なものを感じるから。そういう臭いがあたしにいつも真実を教えて――(いった)〜い! ちょっと何これ〜?」

 

 哀は鍵が室内の本の下から出たから事故だと思っているみたい。

 でも、あたしにはそれがどうしても引っかかる――とか思っていると何か硬いものを踏んでしまった。

 

「チェスの駒でしょ。盛山さんって人が広田教授とチェスをする約束をしてたみたいだから」

 

「あら、本当ね。こんなものまで撒き散らして。犯人も部屋を散らかすのに容赦ないわね〜」

 

「諦めなさい。犯人なんて居ないのよ。事故なんだから。それとも何? 自動的に鍵が本の下に入る魔法のスイッチでもあるというの?」

 

 あたしが踏んづけたチェスの駒を見ながら哀は諦めるように促したが、彼女のスイッチという言葉にピーンと来る。まさか……この密室トリックは――。

 

「魔法のスイッチ? ピタ○ラスイッチ? あっ! そうか。それよ!」

 

「ピタゴ○スイッチ? 何よそれ?」

 

「あ、そっか。こっちじゃ放送されてないんだっけ? とにかくわかったわ。この事件はやっぱり殺人事件。広田さんを殺した後、トリックを使ってこの部屋を密室にし、事故死に見せかけたのよ」

 

 あたしはようやくこの事件の全ての謎が解けた。そうよ、チェスの駒や留守電のカセットテープを利用したピ○ゴラスイッチみたいなものよ、このトリックは。

 だとしたら、広田正巳を殺したのはあの人に違いない――。

 

 

 

 

「ええーっ!? 密室殺人のトリックがわかったですって!? 本当ですか? アリスさん!」

 

「ええ、本当よ。留守番電話のカセットテープとチェスの駒を使えば……ものの見事に密室を完成させることができるわ!」

 

 驚く横溝警部にあたしは説明する。カセットテープと留守電話によって密室に見せかける方法があると。

 

「アリスくん。本当にそんなことが出来るのかね?」

「面白いことを言うわね。女子高生探偵さん。論より証拠……見せてもらおうじゃない」

 

 あたしの言葉に懐疑的な博士の言葉を受けて哀は実際にやって見せるように言ってきた。

 そのつもりよ。見てもらったほうが確かに早いしね。

 

 あたしは周囲の警官に準備を手伝ってもらい、さっそく実験を行う。

 

 警官の人に買ってきてもらった新しいカセットテープを適当な長さだけ外に取り出して電話にセット。

 そして、テープを持ったまま部屋から出て鍵のリングをテープに通し、カギを床に置くと残ったテープを持って部屋のノートが落ちていたところに戻り、ポーンの駒3つを三角形に置いて余ったテープの先端を電話に一番近い駒に乗せてその上にノートを置く。

 

「テープの巻き取る力で駒を倒すつもり? そんなの机上の空論だわ。駒の台座はしっかりとしているからそのままノートの外に出て――」

「駒を逆さにするのよ。頭は丸いけど、このノートみたいに裏の厚紙がしっかりしてれば、ほら……乗せられるでしょ」

 

 あたしは部屋から出ると部屋の鍵を掛けて床に鍵を置いて、手に持った携帯から電話を掛ける。

 すると留守番電話が作動し、テープが巻きとられ――その力で鍵は部屋の中に入り、駒にぶつかってノートの下に……入り込んだ。

 

 さらに、そのまま留守番電話が録音され続ければテープが巻きこまれて証拠が無くなる――。

 

「どうかしら? これなら密室殺人は可能ですよ。そして、不自然な回数……留守電を入れた人が一人居ますよね?」

 

「そうか! このトリックが使えたのは、10件も留守番電話に伝言を入れている……白倉陽さん! あなたという事になりますね! テープが所々ねじれていたのはトリックを使った証拠――間違いありませんね?」

 

 ここまで推理を話したら横溝も誰が犯人なのか察したみたいだ。

 10回も電話したのはちょっと怪しかったわね……。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! さっきのトリックはすごいと思いましたけど、何の証拠があって僕なんです? 大体、僕が犯人だとしてわざわざ現場に戻ったりしませんよ」

 

 しかし白倉は留守番電話が多いだけでは証拠にならないし、犯人なら現場に戻ったりしないと主張する。

 

「戻ってきたのはある物を回収するためでしょ? そう、あなたの指紋がベタベタついた――留守番電話のテープをね。さっきテープを見させてもらったとき、一目でわかったわ。――誰かの指紋が多数付着していることが。恐らく、あなたは何らかの原因で広田さんと口論になって衝動的に撲殺してしまった。すぐにあのトリックを考えたのは頭いいと思うけど、手袋すら準備してないんだもの、そりゃテープに指紋は残っちゃうわよね」

 

「くっ……」

 

 でも、白倉の一番の失敗は衝動的な犯行だからこそ証拠隠滅を怠ったことだ。

 密室にしたがゆえに回収しそこなったテープには指紋がべったりだし……、その上――。

 

「残念だったわね。第一発見者にでもなって、スキを見てテープをすり替える予定だったんでしょうけど。あたしたちが来てしまったからそれが叶わなかった。横溝警部、彼の周辺を調べてみてください。きっと、フロッピーディスクが出てくるはずです。この短時間で大量のフロッピーを確認するのは不可能だと思いますから」

 

 彼がフロッピーディスクを持っているのも間違いがないので、彼の近くを探せばフロッピーも出てくるはずだ。

 あたしがそれを指摘すると彼は諦めたような表情をする。

 

「……家の前に止めた車のダッシュボード……。フロッピーは全部そこにあるよ。あの写真が入ったフロッピーもな――」

 

 白倉は犯行を認めて、動機について語りだした。

 彼は女装の写真を送ってほしいと広田に頼んでいたが、届いたのは“君の素顔はこれに勝るものなし”というメッセージと、昔の彼の写真――彼はモデルになった時に顔と名前を変えていたらしい。

 

 素顔の写真を編集部に見せられないと何とか女装写真を借りたいと広田に会いに来たのだが、女装の写真はどのフロッピーか忘れたが送った昔の彼の整形前の写真ならすぐに出てくるから編集部に送ってやろうかと言われて思わずカッとなって殴り殺してしまったということみたい。

 

 いやいや、キレやすいにも程があるでしょ。まったく、この世界の人たちってすぐに殺してしまう人が多いんだから、嫌になっちゃう。

 

「多分、広田さんはそのままの自分を曝け出してコンプレックスを克服してほしいって思ったんでしょうね。もっと、あなたに自信を持って欲しかったのよ。お節介だとは思うけど……あなたの力を買っていたんでしょうね」

 

「……その言葉は広田先生から直接聞きたかった……。僕は……大馬鹿者だ……」

 

 白倉も広田のことを尊敬していなかったわけではなかったので、後悔はしているみたい。

 キチンと罪を償ってほしいものだ……。

 

「いやー! さすがはズバリの小五郎の懐刀のアリスさん! 見事な推理でした! あなたのおかげで事件が解決できましたよ!」

 

「あ、そう? じゃあ、フロッピー返してください♡」

 

「それはいくらアリスさんの頼みでもダメですよ。証拠物件なんですから」

 

 横溝が推理を褒めて持ち上げてくれたものだから、愛想よくフロッピーディスクを返してもらえるようにお願いしたら、やっぱりダメって言われちゃった。

 そりゃ、殺人事件の証拠なんだからダメだよね〜〜。

 

「えへへ。やっぱダメですよね〜。じゃ、今日のところは帰ろうか。博士、哀ちゃん」

 

「……思ったよりもやるのね。藤峰さんって。いつもあんな感じならいいのに」

 

「ふえっ? どーしたの、急に。褒めてるの?」

 

 あたしが帰ろうと声をかけると、哀が手放しに褒めてくれた。

 あれだけ煙たがれていたからびっくりだ。

 

「ちょっとだけ、頼りになるって思ったわ。お姉ちゃんが気にしてたのもわかった気がする」

 

「ふっふっふ、それならあたしのことを“アリスお姉ちゃん”って呼んでも良いんだよ。というか一度で良いから呼んでちょーだい♡」

 

「死んでもお・こ・と・わ・り……!」

 

「あーん。(ひっど)〜い。哀ちゃんの意地悪〜」

 

 でも、お姉ちゃんとは呼んでもらえなかった。

 死んでも嫌だってそこまでのこと〜〜?

 

 あと、後日フロッピーディスクが警察から届いたけど、パスワードを入れた瞬間に内蔵されてたウィルスが作動してデータが全部消えちゃった。

 あーあ、そんなに簡単には薬のデータは手に入らないかー。

 

 灰原哀ちゃんとは長い付き合いになりそうね――。

 

 




カセットテープ、フロッピーディスク……なんか時代を感じる回でした。
これにて、灰原の登場回は終了。
アリスとは徐々に信頼関係を結んでいく感じです。
次は怪盗キッドの予定……。

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