工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった   作:ストロングゼロ

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和葉の初登場回です!


浪花の連続殺人事件 前編

「あれが天王寺動物園、――あれが大阪ドーム、――そして、ここが通天閣や。どや? ええところやろ? 大阪は〜」

 

「うん。良い眺めだね〜」

 

「東京タワーと変わらねーじゃねぇか」

 

 あたしたちは平次に招待されて大阪に遊びに来ている。

 なんか、大阪の美味しいものを色々と紹介してくれるって言ってくれたから小五郎と蘭にあたしも付いて行ったのだ。

 

「あほ、あんな味気ない赤い塔と一緒にすなや」

 

「人情の町、大阪〜。風情があって同じ都会でも東京とはまるで違うわね」

 

「せやろ」

 

「でも、大阪といえば食いだおれじゃない? あたし、もうお腹ペコペコよ」

 

 その美味しいものに完全に釣られたあたしは朝ご飯も抜いて来て空腹だった。

 早く大阪の食べ物を堪能したーい。

 

「もうちょい待って。じきに迎えが来るから」

 

「しゃーねぇ、一服するか」

 

 どうやら平次は迎えの人と待ち合わせているらしく、それまでは通天閣で時間を潰さなくてはならないらしい。なので、小五郎はタバコを吸いに行ってしまった。

 

「で、平次くん。なんか事件あったの?」

 

「ん? 今回はなんもないで。仕事抜きや。いっぺんなお前らに大阪見せたろうと思って呼んだんや。人間なんて、いつ死ぬかわからんからのう」

 

 前に平次の計らいで長門グループの会長の元に小五郎が呼び出されて事件に巻き込まれることがあったけど、今回は純粋に大阪見物に誘っただけらしい。

 

「何よ、それ? あなたって、そんなこと言うタイプ?」

 

「けったいな夢見てもうたんや。……今から犯人捕まえるでっちゅーときにや……逆に犯人に撃たれてもうて……お前が死んでしまう夢をなぁ♪」

 

「ありゃま。あたし死んじゃったの? 縁起でもないこと言わないでちょーだい」

 

 きっかけは彼があたしが死ぬ夢を見たからなんだって。

 嫌だなぁ。この体で死んでしまったら、新一に申し訳ないし……。

 

「まっ、そういうことやから、大阪を目一杯楽しんでくれや」

 

「おーい。平次くん。すまんすまん、遅くなってもうた」

 

 そんな会話をしていると、メガネをかけた若い刑事さんがこちらに駆けつけてきた。

 どうやら、平次のお父さんが小五郎が来るならちゃんと案内をしなくてはということで、大阪府警東尻署捜査一課の刑事の坂田祐介を車の運転手兼案内人ということで送ってくれたらしい。

 

 なんか気を使わせて申し訳ない。ちなみに平次のお父さんは何かの事件の会議で顔を出せなくなったんだって。

 

「例の車は用意出来たん?」

「そらもう、平次くんに言われたとおり東尻署で一番いいやつを失敬してきましたがな」

 

 あたしたちは坂田の運転でご飯を食べに行くこととなった。

 平次が用意させた車というのはもちろん――。

 

「うわ〜〜! パトカーよ、パトカー! 蘭ちゃん! 何か犯罪者になったみたいで楽しいわね!」

「た、楽しいかな? 他の車が避けてるし……申し訳ない気が……。周囲の視線も痛いし……」

 

 あたしがパトカーに乗ってはしゃいでると、蘭が困り顔をして俯いていた。

 別に大阪には知り合いとか居ないし堂々としてればいいのに。

 

「何ならサイレン鳴らしたろか? もっとスピード上げれるで」

 

「えっ? いいの? じゃあお願い――」

「バカヤロー! んなことさせんじゃねぇ! まったく、何でこんな車で大阪見物しなきゃいけねーんだ!」

 

 サイレンを鳴らすと言った平次に返事をしたあたしだったが、小五郎に大声で怒鳴られてしまう。

 現場に急行する気分を味わいたかったけど無理そうね……。

 

 そして、あたしたちは最初の目的地であるうどん屋さんに着いた。

 

 

 

 

「どや、これがホンマもんのうどんや。出汁が透き通ってて底まで見えるやろ」

 

「薄味だけど、美味しいね」

「うん。昆布の出汁の風味がスッキリとした感じで、あたしはこっちの方が関東のよりも好きかも」

「味がせん……」

 

 関西風のうどんに舌鼓を打つあたしたち。小五郎は濃い味付けが好みみたいで、ボヤいているけど、あたしは美味しく頂けた。

 

「平次、どないしたんや? えらいべっぴんさん二人も連れて。どっちがコレなんや」

 

「えっ? せやなー、どっちにしようか迷うところや」

 

 そんなあたしたちを見て平次はお店の店主にあたしか蘭のどちらが彼女なのか聞かれていた。

 傍から見れば平次が女の子二人を連れ回してるように見えるみたいだ。

 

「もう、平次くんったら。おじさんが本気にしちゃうじゃない」

「ち、違います。私たちは東京から来たただの――。――っ!?」

 

 あたしたちが店主の言葉を否定しようとすると、蘭がハッとした表情をしてぶるっと震える。どうしたんだろう……。

 

「ん? どうした?」

 

「何か寒気が……」

「ふぇっ? 風邪でも引いたの? 大丈夫?」

「うん。そういうのじゃないから」

 

 あたしが蘭の体調を気遣うと彼女は病気ではないと口にした。それなら良いんだけど……。

 

「ほな、次はどこ行こ?」

「そうだな〜。うどんの次は〜大阪名物といったら――」

 

 あたしたちは次なる目的地を目指す。確かに大阪に来たらアレを食べなきゃね……。

 

 

 

 

「うんめぇ〜〜〜! めちゃめちゃ美味ぇなこのタコ焼き」

 

「タコが大きめに切ってあるから食べごたえがあるわね〜。蘭ちゃん、あ〜〜ん♡」

 

「も、もう。恥ずかしいよ〜。あーん。はむっ……、美味しい」

 

 あたしは蘭の口の中に大きなタコ焼きを放り込む。

 頬を紅潮させながらモグモグとタコ焼きを食べる蘭の可愛さったら……、写真撮れば良かったって後悔するくらいよ。

 

「でしょ? これは何個でもいけるやつだわ。ダイエットのことは忘却の彼方に置いといて……」

 

「ねぇ、アリスちゃん。誰かに見られてる気がしない?」

 

「あ、そう? 視線を感じるのはいつものことだから気にしてないんだけど」

 

「ああ、有名人だもんね。アリスちゃんって」

 

 蘭は誰かに見られてる気がするって言ってるけど、最近のあたしは外出すると大体視線を感じる。

 テレビとかに出たせいだろう。自意識過剰でないと信じたい。

 

「そんなこと気にせんと、はよ食べて」

 

「う、うん……」

 

 平次は気にするなというが、蘭はそうはいかないだろう。その、正体不明の視線は次の店で明らかになった……。

 

 

 

「え〜〜っ!? お好み焼き? なんで、タコ焼きの前に言わんの? 知ってる美味しい店、北やで。逆やがな。大阪は一方通行が多いから――」

「それなら、僕が知ってる近い店紹介しましょか?」

 

 車の中であたしたちはお好み焼きを食べたいと平次にリクエストしたら、彼の行きつけの店が逆方向だった。

 それなら……ということで坂田の知ってる近くのお店を紹介してもらう。

 

 

 

「良かったね。近くにいいお店があって」

「うん。お好み焼き大好きだから楽しみ!」

 

「ほんなら、おれ、おかんにちょっと電話してくるよって。おっちゃん、飯も忘れんといてよ」

 

「「えっ?」」

 

 平次がお母さんに電話するというのはわかったけど、その次の発言にはあたしたち三人が耳を疑った。

 お好み焼き&ライスですって? そんな組み合わせってありなの?

 

「飯と一緒にお好み焼き食べるのか?」

 

「フツーやんけ。お好み焼きはおかずやで」

 

 平次は当たり前みたいにお好み焼きをおかずだと言い張る。お好み焼きを焼きそばとかタコ焼きとかと一緒に食べるならわかるけど……。

 

「あはは、炭水化物&炭水化物……」

「ちょっと抵抗あるよね」

 

「飯にタレがついて、それがまた美味いんや」

 

「「へぇ〜〜」」

 

 カロリーの王様みたいな組み合わせだけど、それがこっちで王道ならそれに従おう。

 

「……こりゃあ、帰ったらマラソンでもしなきゃ」

「じゃあ一緒に走ろうよ。――っ!? あっ! そこは、友達の……」

 

 蘭と一緒に走る約束をしたとき、ポニーテールの可愛らしい女の子が平次の席に腰掛けた。

 なんだか、すごく不機嫌そうな顔してるわね……。

 

「……あんたらやろ? 工藤と藤峰って」

 

「えっ?」

「んっ?」

 

 ポニーテールの女の子があたしたちを工藤と藤峰だと呼んだものだから、蘭はキョトンとした。

 えっと、工藤も藤峰もあたしなんだけどな。

 

「平次にいつも聞かせてもろてんで、あんたらのこと」

 

「服部くんに? アリスちゃんと新一のこと?」

「この子ってまさか……」

 

「あんたら二人とも! 東京で平次を誑かしてるんやろ! 惚けたって無駄やで!」

 

「あたしたちが平次くんを……」

「誑かす……? あ、あの何か勘違いを……」

 

 あー、間違いないわ。この子は平次の幼馴染の和葉だ。

 それで、あたしとか蘭のことを思いっきり勘違いしてるんだ。平次が新一とかあたしをライバル視していたせいで……。

 

「一つだけ言うといたるわ。アタシと平次はその昔、鉄の鎖で繋がれた仲やねんからな。平次にちょっかい出すときはこの私を通してからに――」

「なんや和葉。お前、ここで何してんねん?」

 

 和葉があたしたちを牽制しようとしたとき、ひょっこり平次が現れて何をしているのかと声をかけた。これで、誤解が解けそうね……。

 

 

 

 

 

 

「あはははっ、工藤は男や。んで、この姉ちゃんが工藤の女や」

 

「……わ、私はその」

「そうそう。蘭ちゃんは新一とラブラブなのです!」

「アリスちゃ〜〜ん!」

 

 とりあえず、まずは蘭の誤解をとく。新一という相手がいると知れば大丈夫だろう。

 

「ふーん。まぁ、その毛利って子のことはええわ。そっちの藤峰は平次のことを誑かしてるんやろ?」

 

「あ、あたし? 何で?」

 

「なんでって、そりゃあ平次があんたに会うためにわざわざ東京まで行ったんやで。絶対、平次を誘惑したに決まってるやん」

 

 どーやら、和葉の中ではあたしが平次を誘惑していることに決まっているらしい。

 うーん。どうしようかな……。否定しても信じてくれないだろうし……。

 

「あー、なるほど。ダメじゃん、平次くん。ちゃんと和葉ちゃんに好きって言わなきゃ」

 

「な、な、何をヤブから棒に言うてんねん! なんで、おれが和葉なんかにそないなこと」

「……なんかやって? あと、あんた。そんなこと言って誤魔化そうったって無駄やで」

 

 あたしが平次に告白しろと促しても彼は乗ってくれなかった。

 そして、和葉にも誤魔化すなと言われてしまう。

 

「でも、鉄の鎖で繋がってるんでしょ? そんなに簡単に関係は絶たれないよ。どんな話か興味あるな」

 

「大した話やないで――」

 

 あたしが話題を変えるために鉄の鎖で繋がった話を振ると平次がその話をし始めた。

 それは、幼い頃、服部の家の屋根裏部屋で父親が使っていた古い手錠をみつけ、ふざけて刑事の真似事をしていたら二人の腕に付けた手錠が外れなくなってしまった話で――どうやら、風呂もトイレも一緒に済まさなきゃいけなかったらしく、和葉にはかなり大きな思い出になっているみたいだ。

 

 

「アタシはちゃんと記念に手錠の鎖のカケラをもろて、お守りにいれてんねんで」

「気色悪〜〜、はよ、捨てや。そんなもん」

 

 何それ? 和葉、めちゃ可愛いじゃん。ピュアだし……。一途だし……。

 

「ねぇねぇ、二人って付き合ってるの?」

「そりゃ、付き合ってるでしょ。こんなに仲良しなんだから」

 

「「へっ……?」」

 

 蘭が平次たちが付き合ってるのかどうか質問すると、彼らの目が点になって固まった。

 そんな変な質問なのだろうか……。

 

「ちゃうちゃう、アタシと平次はただの幼馴染。いっつも平次の面倒見てる、お姉さん役やねん」

 

「よー言うわ。大阪府警の刑事部長やってるこいつの親父はおれの親父と親友でガキの頃からよう知っとるちゅうだけのこっちゃ」

 

 平次と和葉が幼馴染なのはもちろん知ってたけど、何と和葉はあたしたちを通天閣から見張ってたらしい。東京の変な女に誑かされないために……。

 

 しかも、蘭はともかくあたしは完全に和葉にロックオンされていて、さっきから凍てついた視線がずっと突き刺さってる。蘭にも新一との仲を疑われたことがあるが、それよりも拗れてる気がする。

 どうやら平次はあたしと事件を解決した話を普通に和葉に喋ってるらしく、それが話を厄介にしているみたいだ。

 

「とにかく、藤峰愛梨寿。平次に手ぇ出すんなら覚悟しとき!」

 

「アホくさ、付き合うとれんわ! 藤峰とは何でもないけどな。何でいちいち、お前に弁解せなあかんのか! バカバカしい!」

 

「そうやってムキになるところが怪しいんよ。あの見た目で探偵なんて信じられへん。どーせ、平次の気を引こうって算段なんやろ?」

 

 その証拠に和葉はずっと平次にあたしとの仲を疑うような態度で喋っている。

 喧嘩するほど仲がいいと思うけど……これは……。

 

「うわ〜、見てみて! 修羅場だよ。蘭ちゃん」

「アリスちゃんがその修羅場の原因なのに、楽しそうだね……」

 

 あたしが平次と和葉の口喧嘩を興味深そうに眺めていると、蘭が苦笑する。

 いや、そうなんだけどさ。なんかワクワクするじゃない……。

 

「なんで付いてくるんや?」

「別にええやん。それとも、何? 藤峰と二人きりになりたかったんか?」

「しつこいやっちゃっな。――っ!?」

 

 パトカーに乗ってきた和葉に平次はうんざりした顔をしていたが、その時外が急にざわついた――。そして――。

 

「「――なっ!?」」

 

 パトカーのボンネットにいきなり人が落下してきた。

 腰にロープを巻き、胸にはナイフが刺さっている。それも、財布が間に挟まって刺されているという異様な死に様だ。

 

「いきなり、ボンネットに人が……このビルの屋上から」

「ん? 誰かいる……!」

「坂田はん! 警察に連絡を頼むで!」

 

「ちょっと平次!」

「アリスちゃん!」

 

 ビルの屋上から遺体が落ちてきたことを確認するために上を向いたら、屋上に人影が見える。

 あたしと平次は急いでビルの階段を駆け上がった――。

 

 

 

「んっ?」

 

 屋上には呆然とした表情で下を眺めていたおじさんがいた。

 この人が犯人だと思うけど……。

 

「おじさん、教えて貰おうかしら? パトカーの上に遺体を落とした訳を」

 

「ええーっ!? ちゃ、ちゃいまんがな。ワシはただ――」

 

 結論から言うと屋上にいたおじさんは犯人じゃなかった。

 二階で喫茶店を営んでいるらしい、このおじさんは何にも知らないみたい。

 

 

 

「誰かに電話で変な人が屋上にいるって言われて呼び出されて上に行ったらしいですよ。先生」

 

「はぁ? 何でそんなことで、遺体が降って来るんだ?」

 

「どうやら、屋上のドアを開けたら遺体が落ちるような仕掛けをしていたみたいです」

 

 遺体を縄でくくりつけて、ビニールシートで包んで隠しておき、ドアが開いた瞬間に縄が外れておくような仕掛けがされてあった。

 つまり、誰かに電話で屋上に呼び出された喫茶店の店主は遺体を落とす役にされちゃったみたい。

 

「死亡推定時刻は一日前――つまり、昨日の今ごろに殺して、屋上にあの仕掛けを施したっちゅうわけや」

 

「でも、なんでわざわざパトカーのボンネットに?」

 

「それは偶然やろうけど、こんなに派手な死体の発見をさせたのは、誰かに向けた見せしめかもしれへんな。財布に刺さったナイフ――こら、どーみても例の事件と――」

 

 平次曰くこの事件は何らかの事件と関わっているみたい。

 そんな話をしていると、誰かの怯えたような声が聞こえた。

 

「う、う、うぁ……あああっ……」

 

「――っ!?」

 

「ちょっと、待ちなさい!」

「オバハン! 何をそんなに怯えてんねん!」

 

 青ざめた顔をした30代後半から40代くらいの女が走って現場から離れようとしたので、あたしと平次は不審に思って彼女を追いかけた。

 しかし、彼女は足早に車に乗ってどこかに行ってしまう。

 

 

「あかん。逃げられてもうた」

「大丈夫よ。ナンバーは覚えたから。――ところで、さっき言ってた例の事件って何かしら?」

 

 あたしは車のナンバーを記憶してメモを取りながら、平次が口にしていた“例の事件”について尋ねた。

 恐らく財布がナイフで刺されているような事件が他でも起きているということだろうが……。

 

「ああ、それはな――」

 

「平次! また、その子とイチャイチャしてるやん! 後で内緒で会う約束してるんやろ?」

 

 平次が口を開いたとき、和葉がこちらに向かってきて、あたしたちが内緒話をしていることを追求してきた。

 あれま。彼女、かなり怒ってるみたいね……。

 

「和葉ちゃ〜〜ん。マジであたしと平次くんのこと疑っちゃったりしてるの?」

 

「当たり前や。あんたみたいな、あざとい女が一番質が悪いんやから」

 

 あざとい女って所は否定できない……。あたしの処世術だから……。

 でもなぁ。このまま疑われっぱなしなのもなぁ……。

 

「平次くん。さっさと告白して和葉ちゃんと付き合いなさいよ。あたしに変な疑いがかかってるじゃないの」

 

「なんで、おれがそないなことのために和葉に……。自分の疑いくらい自分で何とかしぃや。探偵やろ」

 

 そもそも平次がとっとと和葉と付き合わないのが悪い。

 それを指摘すると、平次はあたし自身で何とかしろとか言ってくる。な、何て奴なのよ……。

 

「何よ、無責任な男ねぇ。和葉ちゃん。待つだけ無駄よ。早いとこ、あなたからアタックして決めちゃいなさい」

 

「な、な、何を急にそんなこと言うてんねん。あ、アタシは別に平次のことなんか」

 

 だったら、和葉が平次に告白すれば丸く収まると思って提案するも、彼女も彼女で幼馴染を拗らせている。

 

「あらあら、こりゃあ進展しないわけだわ。平次くん、とりあえず先生にもその事件とやらを話してあげて」

 

「そりゃ、構わんけど。別にあのおっちゃん、戦力外やろ」

 

 あたしはこの子たちの仲の進展を諦めて、平次に小五郎を交えて事件の話を聞かせるように頼んだ。

 

「……頼むから誰かがいるときにそういうのは止めてね。あたしには必要なことなんだから」

 

「また、内緒話してるやん!」

 

「あははっ、ごめんごめん。気を付けるわね♪」

 

 小五郎をナチュラルにディスる平次を小声で咎めると、和葉に嫌な顔をされてしまったので、あたしは彼女に謝罪した。

 これは、信頼してもらえるまでかなりの時間がかかりそうだ――。

 

 あたしたちはこの事件との関わりがある“例の事件”についての話を東尻署で聞くことにした――。

 

 

 

 

 

 

「れ、連続殺人? さっき落ちてきた男がその三人目ってことなのか!?」

 

「そうや! 三件ともナイフが財布を突き抜けて胸に刺さっとった。わざわざ首を何かで締めて殺した後でな…」

 

 なるほど、やはり似たような事件が他でも起こっていたのか。

 しかし、財布を刺すという行為には何の意味があるのだろうか……。

 

「お金がらみで恨まれとったんやないの?」

 

「いや、それがそうとは言えんのや――最初に殺された長尾秀敏(ながおひでとし)はコンビニの店長。次に殺された西口多代(にしぐちたよ)は居酒屋の女将はん。そして、さっき殺された野安和人(のやすかずと)はタクシー運転手や。みーんな金で恨みを買うほど、金回りはええことあらへん。それどころか、この三人には生まれも育ちも含めて、今のところ何の繋がりもないねん」

 

 平次は殺された三人について共通点が何一つないと教えてくれた。

 それでも同じ殺され方をしているのだ。無関係なはずがない。

 

「でも、わざわざあんな殺し方をしてるんだもん。必ず理由はあるはずよ。あのオバサンの動揺も気になるし……」

 

「せやな。犯人に近付くにはそれを解き明かすのが近道や」

 

「平次くん! あったで、共通点!」

「ほんまか? 坂田はん!?」

 

 あたしたちが、被害者たちの共通点について話し合っていると、坂田が駆け込んできて、それが見つかったと言った。

 彼は持ってきたDVDを再生する。

 

「これは、府議会議員の郷司宗太郎が6年前にかけられた汚職疑惑の際の映像やな」

 

「ああ、秘書がすべてを被って辞めて有耶無耶になったっていう……。確かその秘書の名前は長尾――。っておい、長尾って……」

 

「そう、最初の被害者の長尾秀敏は府議会議員の秘書やった。けど、それは調べついとったやろ?」

 

 平次は最初の被害者が元府議会議員の秘書だということは知っていると言った。

 てことは、他の誰かが……。あっ! 居た……。

 

「ねぇ、平次くん。この運転手ってさっきの」

 

「アリスちゃんの言うとおり、野安は四年前まで郷司宗太郎の運転手をやっとったみたいですわ」

 

 東尻署の方は一連の事件は郷司が絡んでいるとして、動いているみたいだ。

 まぁ、こんな偶然あり得ないから当然だろうけど……。

 小五郎は郷司が警察嫌いだと言っていて、会うだけでも難儀だと言ってた。うーん。あたしも会いに行きたいところだけど……。

 

 

「ほなら、坂田はん。おれらも行こか?」

 

「おいおい、んなこと警察に任せときゃ良いだろ?」

 

「アホウ、あんたらの大阪見物をめちゃめちゃにしくさった犯人をほっとけるわけないやないか。和葉におれのウチ聞いて、先に行っといてくれや。――藤峰、お前は一緒に来るか?」

 

 平次は犯人を見過ごせないとして、郷司の元に行くことにしたらしい。あたしも誘ってくれたけど……。

 

「平次! こんなときによう女をデートに誘えるな!」

 

「はぁ? 何言うてんねん!」

 

 やっぱり和葉は面白くないらしい……。彼女の気持ちはよく分かる。だけど……あたしは――。

 

「先生、あたしも先生の代わりにお手伝いさせてもらっても良いですか?」

 

 何か嫌な予感がするのよね。平次の力を疑うわけじゃないんだけど……。

 

「お前も物好きだなぁ。おれの評判を落とすことだけはしないように気を付けろよ」

 

「はい♪承知しました。じゃあ、蘭ちゃん。また後でね」

 

「う、うん。気を付けてね。怪我とかしちゃダメだよ」

 

 だから、あたしもこの事件を追ってみることにした。

 小五郎の許可を取り、あたしも平次に同行する。

 

「平次! ちゃんとあのお守り持ってんの?」

 

「ああ、持ってるで。心配すんな」

 

 和葉は平次にお守りを持っているか確認していた。

 どうやら、彼女が彼に渡した特別なお守りみたいだ。そして、坂田の運転する車にあたしと平次は乗り込んだ。

 

 

 

 

「あーあ、和葉ちゃんに悪いことしちゃったかな〜」

 

「なんや、あいつに悪いことって」

 

「あなたと調査に出かけたことよ。彼女、絶対に嫌な気持ちになってるから。後でちゃんと謝ろう」

 

 やましい事がないとはいえ、和葉は面白くない気分になっているだろう。

 きちんと謝ったほうがいいわよね……。なんで、平次は気にしないんだろう……。

 

「はは、優しいんやね。アリスちゃんは。じゃあ、僕からも何もなかったって証言しときます」

 

「あはっ、坂田さん。優しい〜♡助かります」

 

 坂田の気遣いにあたしは感謝する。平次があてにならない以上、身の潔白はこうやって証明しとかないと。

 

「女の考えることは、ようわからんわ」

 

「それはそうとあの議員の事務所に向かっとるんですが、平次くんの言うてた不審な女の身元が分かりましたで! アリスちゃんから聞いたナンバーで割り出せましたわ」

 

「ほんまか坂田はん」

 

 野安の殺害現場にいた女の身元が分かったらしい。

 車両ナンバーが分かっていたから、時間はかからないと思ってたけど朗報だ。あの人は多分何かしら知っているはず。

 

「ええ、丁度事務所に行く途中の近辺の西都マンションに住んどる岡崎澄江っちゅう名前ですわ。歳は39歳。先にこっちに行ってみます?」

 

「せやな。なんか知っとるって様子だったし」

 

「そんなら電話してみますわ」

 

 平次もあの女から何かヒントを得られると感じ取ったらしく、こっちに先に行くことにした。

 

「あ、岡崎さんのお宅ですか? 私、大阪府警東尻署の坂田という者ですが……」

 

『け、刑事さん! 早うここに来て私を守って! このままやと殺されてまう! 昔のことみんなしゃべるから早う、早う!』

 

「と、とにかく落ち着いて! 家に鍵をかけて誰も入れんようにしてください!」

 

 坂田からの電話に出た女は何かに怯えてる様子で普通じゃなかった。殺されてしまう……? つまり彼女は今までに殺された人の共通点を知っているってこと……?

 

「あかん! 西都マンション、もう過ぎてもうたで!」

 

「ど、どないします? 御堂筋この通り混んどるし、回り道しとったらえらい時間が……」

 

 電話をしているうちにどうやら女の住むマンションを通り過ぎてしまったみたい。回り道は時間がかかるとのことだ。

 犯人がこうしてる間に彼女の所に行くかもしれない……。それなら――。

 

「走った方が早いわ!」

「そうね! 坂田さん、止めて貰えます!?」

 

「あっ! 平次くん! アリスちゃん!」

 

 あたしたちは車を飛び降りて、西都マンションに向かって走り出す。

 鍵をかけるようにと、坂田が電話をしていたから大丈夫だとは思うけど――。

 

 

 

 

「おい! オバハン! さっき電話した刑事の連れのモンや。開けてくれ!」

 

「ねぇ、平次くん。玄関の鍵……、かかってないわよ」

 

 マンションの彼女の部屋まで着いたあたしたち。彼女はインターフォンに出ない……だけど玄関の鍵は開いていた。

 なんで鍵をかけてないんだろう……。

 

「オバハン! 大丈夫か! いてはるんなら返事してくれ!」

「岡崎さん! あたしたちは警察の関係者です! どこにいますか?」

 

 あたしたちは中に入るとさっきの女を探した。

 うーん。人の気配がしない……。これは、中に誰もいないのでは……。

 

 

「変ね。坂田さんが出ないように言ってたのに……、ここにはいないみたい」

 

「ダメや、見つからへん。坂田はんももうすぐ来るみたいやから、いっぺん合流――」

 

「ううぁああああああっ!」

 

 平次が坂田との電話を終えた、その時……男の人の悲鳴が響き渡る。

 この声は尋常じゃないわね……。一体、何が――。

 

「下からや!」

「公衆トイレ? まさか!」

 

 あたしたちは声がした方の場所を見ると、公衆トイレの前で掃除道具を持った男が腰を抜かしていた。

 このタイミング……部屋の中に岡崎がいないことから――嫌なことが起こってそうね……。

 

 

「あかん。もう死んどる。何でや? なんで、外に出たんや? このオバハン」

「それにナイフがまた財布越しに胸を貫いているわ。一体、誰が……なんのために……」

 

 第4の殺人が起きてしまった――。犯人はなんのためにこんなことを――。

 そして、鍵をかけるように言ったのに、どうやって外におびき出したのだろう……。

 

 あたしと平次はこの連続殺人の謎を追いかけることになった――。




原作と違って小五郎の許可を取ってアリスは平次に同行しているので、後半はかなり原作と違います。
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