工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった 作:ストロングゼロ
「平次くん、遺体を見つけたんは?」
「坂田はんが来る3〜4分前ってとこや。このトイレ掃除のおっちゃんが見つけたんや」
現場に警察と坂田刑事が駆けつけて検証を開始する。
やはり、岡崎の死因は今までと同じ絞殺だった。財布を刺したりしてる意味は未だに分からない。それに、坂田が鍵かけて出るなと言ってるにも関わらず外に出たという理由も……。
あたしたちは岡崎の部屋に行き、留守電に録音されているメッセージを聞いた。
『ピー……今すぐ心斎橋に来いや。昔の仲間にあわせたる……ピー……午後1時8分』
『ピー……どうや、見ての通りや。次はあんたがこうなる番や……ピー……午後1時10分』
メッセージはこの事件の犯人からみたいだった。
これを聞いたから岡崎は怯えたような口調だったのね……。
「仲間っていうのは今までの被害者の人たちっていう意味かな?」
「そう考えんのが自然やな。それに気になるのは……」
「ええ、この最初とその次の留守電の記録……かかってきた時間は2分しか差がない。来いという内容と見たかっていう内容なのに……」
妙なのは2件の留守電のインターバルが僅か2分だけということ。
岡崎が家を出て野安の遺体がボンネットに落ちてきた現場を見たという前提の電話をすぐにかけているということから推測できるのは――。
「犯人はどこかであのオバハンを見てたってことちゃうか?」
「うん。そう考えるのが自然だけど……、何かありそうね……。あたしたち、作為的に動かされてるんじゃないかしら? ずっと嫌な予感がしてんのよ」
どうもこの事件はきな臭い。もちろん、あたしも平次も考えた上で行動してるんだけど、それでも何か見えない力によって操られてるような……そんな気がしてならないんだ。
「嫌な予感……? 藤峰……お前……」
「何よ? 死体でも見た顔して」
「いや、何でもあらへん……」
平次が急にあたしのことを青ざめたような顔をして見ていたので声をかけると、彼はそっぽを向いて誤魔化した。何なのよ……、一体……。
そしてあたしたちは、再び坂田の運転する車に乗った――。平次、さっきからボーッとしてるけど大丈夫かしら……?
「……くん、平次くん!」
「おおうっ……、なんや。坂田はん」
「なんや、じゃありまへんよ。次、どこ行きます? 郷司さんの事務所にでも行きましょか?」
「ああ、せやな」
坂田が何度か話しかけてようやく返事をした平次は郷司の家に行くことを了承する。
この事件に関わるヒントを得られそうな場所はそこくらいしかないので妥当な判断だ。
「それにしてもけったいな事件ですわ。誰も見とらんところで犯行が行われてちゅうのに、被害者の身元はすぐに割れよる」
「そういや、そうやな〜」
「坂田さん、四人の身元ってどうやって分かったんですか?」
そっか、身元がすぐにわかったっていうのも立派な共通点よね。あたしは坂田に四人の身元がわかった過程を尋ねてみた。
「四人とも財布の中に免許証が入っとったんです。なのですぐに」
「「免許証……」」
「それや!」「それね!」
なるほど、財布が刺されていた理由……それは免許証を指し示していたのかもしれない。
免許取得者は大勢いるけども、その点を調べれば何か分かる可能性は大いにあった。
ということで、あたしたちは門真運転免許試験場に行ってみた――。
「あかん。四人とも別々のところで免許取っとる。取得した年も別々や」
なんと四人が四人とも無事故無違反な上に何の共通点もなかった。
何か変わった点はないかしら? どんな些細なことでも良いから……。
「ビンゴだと、思ったんだけどなー。あっ! でも、岡崎さんだけは何故か兵庫で免許を取得してるのね? 他の人たちは大阪なのに……どうしてだろ?」
「ああ、そこは合宿免許が安うて有名なとこですわ」
「あー、合宿免許かぁ。ん? 合宿免許と言ったら……、平次くん、あの電話……」
「ああ、仲間がおる……。――おっちゃん、そこの番号分かりまっか?」
兵庫県でわざわざ免許証を取得した岡崎のことが気になって試験場の方に尋ねてみると、彼女は格安の合宿で免許を取得したと教えてくれた。
なるほど、合宿ということは――犯人の仲間という言葉に符合するわね。あたしたちはこの合宿について探ることにした――。
「なにぃ! 岡崎澄江と西口多代が20年前の合宿のときに相部屋やて!?」
「ようやく一歩前進ね」
「んでも、この一歩は大きいで」
最初にわかった事実は岡崎と西口が合宿で相部屋だったということ。
さらに驚いたことに最初の被害者である長尾や、ボンネットに落ちてきた野安、そして府議会議員の郷司もその20年前の合宿に参加していたという。
これは……この合宿で何かあったのは間違いないわ。連続殺人の契機になった出来事が……。
一番気になるのは岡崎以外が別のところで免許を取り直しているってことね……。
「それだけやありまへんで。その合宿に聞き慣れた人物が参加してましたわ」
「誰や……?」
「沼淵……沼淵己一郎……!」
「「――っ!?」」
「沼淵って、今逃走中の強盗殺人犯よね?」
「ああ、もしかすると、もしかするかもしれへんな……」
最後にわかった事実は拳銃を持って逃走中の強盗殺人犯の沼淵己一郎が同じ合宿に参加していたことだ。これは偶然だろうか……。
その後、あたしたちはその合宿で撮った集合写真を見たが、確かに沼淵を含めた全員の顔と名前が一致する。それに全員がきちんと卒業していたこともわかった。
なのに――免許をそこで取得したのは岡崎だけだったのだ。真相はやはりこの合宿にあるとあたしは確信する。
そこで、あたしたちはその合宿で何があったのか探ってみることにした――。
「あった、これや。合宿の最終日に教官の一人が飲酒運転で事故を起こして死んどる」
「稲葉徹治……教習所きっての鬼教官……。うーん。そんな運転にうるさそうな人が飲酒運転……?」
合宿最終日に飲酒運転で教習所の教官が死亡。あたしは“教習所きっての鬼教官”って所が気になって仕方なかった。
そんな人が酒を飲んで運転したりするのかしら……。
「なぁこんなんはどうや? 逃亡資金が尽きた沼淵が府議会議員の郷司脅して金をせびろうとして、断られ……次々と昔の事件に関わった仲間を殺して再度脅しをかけた――」
「沼淵を使ってスキャンダルを揉み消そうとしたのかもよ。郷司って人、今度は国政に出るつもりらしいじゃない――」
平次とあたしは各々の持論を展開する。いずれにせよ、郷司は特にこの件に関わっている可能性は極めて高いだろう。
「そら、どっちもあり得ますな。長尾と野安は郷司の元を去るとき、ごっつい額の退職金をもろたらしいですから」
ということで、あたしたちは府議会議員である郷司の元に向かうことにした。
さて、何が出てくるやら……。
「なにぃ!? 郷司のおっさん
「ああ、わしらも夕方からこの部屋で待たされとんのや」
郷司のところにやってきたあたしたちだったが、彼は頑なに警察を拒んでいた。
先にここを訪れた東尻署の刑事さんたちはずっと待たされてるみたいだ。
「おれが直にかけおうたる!」
「まぁまぁ、平次くん。ここは先輩たちの顔を立てておとなしゅうしてください」
「でも、会わないところをみるとやましい事はあるんでしょうね。焦らず、待ちましょ」
これだけ警察が駆けつけても会わない態度を崩さないということは余程のスキャンダルを抱えているということだ。
ずっと籠城するなんて無理なのだから慌てずに待つのも一つの手だとあたしは平次を諌める。
「そういうマイペースなとこがお前の悪いところやで、鉄は熱いうちに打たなあかんねや。まぁええわ。少しだけ待ったる!」
平次はムッとした表情であたしを一瞥したが、素直に腰掛ける。
あたしは試験場から持ち帰った資料をもう一度見直すことにした。
「ちょっと便所行ってくるわ」
「僕、車に忘れもんしてきました」
平次はトイレに……、坂田は車に行くために席を立った。
あたしは合宿の集合写真に目を通している。
「はいは〜〜い♪ふーん、この人が亡くなった……稲葉教官ね。――あれ? この人は……まさか……」
稲葉教官の顔をよく見た瞬間――あたしが今までずーっと感じていた違和感が晴れるような気がした。
この事件の犯人は……あの人だ。だとしたら、犯人は今……。
「どうした? アリスちゃん」
「い、いえ……、あ、あたしもちょっとお手洗いに……。平次くん、戻ってきたらこれを見せてくれませんか?」
「ん? ああ、わかった」
あたしは合宿の集合写真を平次に見せるように刑事さんに頼んで、立ち上がった。
ことは一刻を争う。あの人のところに行かなくては――。
「せっかく楽しいデートの待ち合わせなのに……雨が降ってたら気分が落ちるわよね〜」
「……っ!?」
あたしは郷司のところの倉庫に隠れている人間に話しかけた。外は雨が降っている……。
こんなところで待ち合わせるなんて、ムードなんてあったもんじゃないわね……。
「待ちぼうけしているなら、あたしがデートに付き合ってあげよっか? 坂田さ〜〜ん♡」
「……アリスちゃん。何を言うてはりまんの? 言っとる意味がよう分かりませんわ。僕は変わった倉庫があったから見とっただけや」
倉庫の陰に隠れていた坂田があたしの前に出てきた。
どうやらしらばっくれてるみたいだ……。
「もー、鈍い男はモテないんだかんね。あなたが連続殺人犯だと言ってるのよ。ちなみに郷司さんなら、殺されに来ないわよ」
「僕が犯人? 冗談きついですわ。東京の方でも面白いこと言わはるんですね。はははっ……」
そう、この連続殺人の犯人は坂田だ。彼はまだ誤魔化そうとしているけど、あたしは彼が犯人だと確信している。
「考えてみたら、あたしたちは坂田さんの敷いたレールの上をずっと走っていた。違和感の正体はそれよ。野安さんが殺害されたのも坂田さんが選んだ店の真ん前。岡崎さんの家に走って向かったのも坂田さんが西都マンションを過ぎる寸前で話を振ったから、郷司との繋がりも、免許証の件も全部、あなたがあたしと平次の思考を誘導していた」
そう、あたしたちは彼の巧みな誘導に乗っかって、真相を追求してる気になっていた。
あたしたちがどこかに進むとき、決まって坂田が一言何かを添えている。違和感を感じていても、それにずっと気づかなかったのは間抜けな話だ。
「そ、そんなん。僕はただ、事件を早く解決するんやって頑張って……」
「そうね。それじゃあ、岡崎さんが殺された時のことについて話しましょうか。あなた、内装も全部同じレンタカーを2台用意したわね? あたしたちが降りたあとで、自分もどこか近くに停車させて岡崎さんに電話をする。あなたは警察という立場を利用して“危ない”とかそういう理由で彼女が公衆トイレに隠れるように仕向けた……あたしたちを追いかけながら……」
「…………」
特にあたしと平次の目を盗んで殺人を犯した岡崎の件は手の込んだことをしていた。
2台のレンタカーまで用意するなんてね……。
「その後、彼女を殺害し、もう一台借りていたレンタカーに乗って回り道で時間がかかったという演出とともに何食わぬ顔で合流したのよ。平次くんの運転手になったのも、あたしたちにヒントを与え続けたのも、一緒にここに来ることでガードの固い郷司さんを殺すためってわけね」
すでに殺害した他の四人と違って郷司だけは簡単には殺せなかった。
彼は用心深くボディガードもいる。そんな彼に自然に近付くには平次に真相を探らせて一緒にこの事務所に向かうほか無かったのである。
恐らく沼淵についての情報をあたしたちに漏らしたのは、すべての犯行のスケープゴート役に彼を選んだからだろう。彼は知っているのだ……沼淵の居所も……。
「驚いたな……どこから気付いたん?」
「怪しいと思ったのは、西都マンションを過ぎる絶妙のタイミングであたしらに岡崎さんの話を振ったこと。警察署でもその話は出来たはずでしょ? 不自然だったわ」
最初の違和感は変なタイミングで思い出したかのように岡崎の話をしたことだ。
小さな違和感だったが、これが後々点を線に繋いでいく役割を果たす。
「それだけで……?」
「ううん。一番変だと思ったのは西都マンションで再び車に乗ったとき……あたしの香水ってそんなに匂いは強くないんだけど、車から降りて1時間くらいだとほんの微かに香りが残るのよ。男の人はあまり気付かないかもしれないけど……。それが全くしなかった……。呑気に清掃や換気なんてするはずがないのにね」
そして、あたしは二度目に車に乗ったときに自分の付けてた香水の香りが全くしないことに違和感を覚えた。
まぁ、このときはまだ気のせいくらいに思っていたけど……。
「変に思って色々と観察するとサイドミラーの角度も変わってたし、野安さんや岡崎さんと同様にフロントミラーを弄っていた。まるで同じ人と関わっていたみたいだったわ。確信したのはさっき……集合写真を見ていたときよ――」
「稲葉教官と坂田はん、あんたらの顔はよう似とった。まるで親子みたいにな!」
「へ、平次くん!」
あたしが最後に感じ取った稲葉教官と坂田が似ているという事実を言おうとしたとき、平次がこの場に駆けつけた。
あの刑事さんに写真を見せてもらってあたしと同じ推理をしたみたいね。稲葉教官と坂田は多分……親子だ。
「藤峰、大阪に来て抜け駆けは許さへんで!」
「あはは、そんなつもりじゃないんだけどな。鉄は熱いうちに……でしょ?」
平次はあたしが彼の見せ場を奪って、いいとこ取りをしようとしていると言及してくる。
いやー、急がなきゃ人が死んでたかもしれないし……仕方ないじゃん。
「お前のそないな所がマイペースやっちゅうんや。――坂田はん。20年前に何があったか知らんけど……自首するんやな!」
「そうよ。これ以上、罪を重ねようとするんじゃなくて、自首することで罪を少しでも償うことを考えて!」
「平次くん、アリスちゃん……、ごめんな。こうなった以上は……、もう終いやわ……」
あたしと平次の説得も虚しく、坂田は拳銃を取り出して、頭を撃とうとする。
嘘でしょ!? 自殺なんて許さないわよ……。
「坂田さん、馬鹿なことはやめなさい!」
「アホなことはよせ! 坂田!」
「来るな! 来たら撃つ! もう……もう終わりにしたいんや……!」
坂田は興奮しており、あたしたちに近付くと撃つって脅してきた。んなこと言われたって、みすみす目の前で人が死ぬなんて見逃せないわよ。
「くっ! やめるのよ! 死ぬなんて許さないんだから!」
「うわぁあああっ!」
あたしが坂田に何とか飛びかかろうとすると、彼は動揺して2発拳銃を撃ちだす。
「藤峰! 危ないっ!!」
「平次くん!? うっ……腕がっ……!」
その瞬間、同時に動いていた平次があたしを突き飛ばして、あたしは腕に……平次は胸に銃弾を受けてしまった。
へ、平次……、まさか……あたしを庇って……。
「も、もう、ダメや……、何の恨みもない平次くんまで手に掛けて……ぼ、僕は……、僕は……」
「馬鹿! なんでまた死のうとしてんのよ! 平次くんが……、平次くんが……必死で止めようとしたのに……!」
平次が倒れたのを見た坂田は再び自殺をしようとしたので、あたしは彼の腕を掴んで彼を止めようとする。この人を死なせるわけにはいかない。絶対に……。
「離してや! 僕はもうおしまいや! 死なせてくれや!」
「て、手に力が入らない……、あたしじゃ止められない……!」
しかし、腕を撃たれたあたしは上手く力が入らない。それに女の腕力で現役の刑事と揉み合いになって勝てるはずもなかった。
「ええ加減にせえよ! このアホンダラ!」
「平次くん……! な、なんで……!」
そんな中、平次がムクッと立ち上がり坂田を取り押さえて、残りの銃弾を撃ちだした。
これで、坂田の自殺をとりあえず止められたわね……。
「これで
「で、でも燃料に銃弾が当たって燃えてるわよ!」
しかし、その銃弾が運悪く灯油か何かを貯蔵しているタンクに当たってしまい、倉庫がメラメラと燃えだしてしまった。これは、早く逃げないとまずいわね……。
「わかっとる! はよ、逃げるぞ! 藤峰、坂田はん! ぐぅっ……」
「平次くん。やっぱり胸に銃弾を……!?」
平次は胸を押さえて苦しそうな顔をした。やはり銃弾を受けてしまっていたのだろうか……。
「おれは平気や。藤峰、お前は無事か?」
「あなたのおかげで腕を掠っただけよ。大丈夫」
「よし、行くぞ……!」
「僕のことは放っておいてええから。どうせ、もう……、生きる価値なんかないんや」
あたしと平次は怪我をしていても逃げ出すことが出来そうだったけど、無傷の坂田はこの場に座り込んで死のうとしていた。
まったく、まだウジウジしているの? 早く逃げなきゃ火が……ここまで……。
「情けないこと言うなや! あんた、日本で唯一……拳銃を持つ事を許されとる警察官やぞ! 何でそれを誇りに思わんのや……!」
平次は坂田の胸倉を掴みながら叫んだ……。警察官が情けないことを言うなと、激しく叱責するように。
「立てや坂田ァ!! 手帳に付いとる桜の代紋が泣いとるどォ!! うっ……」
「へ、平次くん……。僕は……、僕は……」
坂田は平次の熱い言葉によって目に光を取り戻したように見えた。
あの熱血はあたしにはちょっと真似できないかな……。
しかし、平次は胸をまた押さえて苦しそうな顔をしている。
「平次くん。あたしが肩を貸すわ……。坂田さん、彼の心意気にあなたが応えられるくらいの良識が残ってることを期待してる。どうすれば良いか……わかるわよね……?」
「…………平次くんは、僕みたいなもんにも最後まで生きろって言ってくれはった。僕はただ死んで責任から逃げようとしてただけやったわ」
あたしは平次に肩を貸して、坂田は観念した表情のまま倉庫を出た。
倉庫の外には騒ぎを聞いて駆けつけた刑事さんや、あたしたちの帰りが遅いことを心配して、ここまで来たという小五郎と蘭と和葉がいた――。
◆ ◆ ◆
その後、坂田は罪をすべて認めて自首。やはり全ての罪を擦り付けて、自殺に見せかけて殺そうと考え、監禁していた沼淵の場所も吐いたので、彼も捕まった。
どうやら、今回の事件の被害者と沼淵と郷司は20年前に稲葉教官に無理やり大量の酒を飲ませて事故死させた過去があったらしい。
父の死に疑問を持って刑事になった坂田は、ある日のこと指名手配中の沼淵を追い詰めた。
そのとき、稲葉教官と瓜二つな彼を見て驚いた沼淵は20年前の出来事を全部彼に話して命乞いをしたらしい。
そこから彼の復讐劇が始まったみたいなのだ――。
ふぅ、それにしても……まさか撃たれるとは……。命があって良かったわ……。
「お、おい! アリス! お前、平気か!?」
「アリスちゃん、撃たれたって聞いたけど……、大丈夫なの?」
「う、うん。あたしは平気……」
その後、あたしは小五郎と蘭に無事を報告する。いや、平次に庇ってもらってなきゃ重傷だったかもしれないわ……。借りがまた出来てしまった……。
「平次! しっかりしてや! 平次!」
「…………」
和葉はソファで横になっている平次に声をかけ続けていた。
あんなに必死になって……。よほど彼のことを心配してるのね……。
「い、嫌や! そ、そんなん! 平次、お願いやから目を覚ましてや! ぐすっ……、うえええんっ! 平次ィィィ!」
「――――うるさいわ! 耳元でキンキン大声出しよってからに!」
「…………?」
泣き叫びながら平次に呼びかける和葉だったが、彼が起き上がり彼女を怒鳴ると絶句して彼を見つめる。
「……平次? もしかして平気なん? 胸を撃たれたって聞いたんやけど……」
「当たり前や。お前がくれたお守りのおかげやけどな。ちょうど、坂田はんが撃った銃弾がお前がお守りに仕込んどった手錠の欠片に当たりよってな、軽傷で済んだっちゅうわけや」
そう、平次に向かっていった銃弾は奇跡的に和葉がこっそりお守りに忍ばせていた手錠の欠片に当たった。そして、彼は助かったのである。
すごいなー。和葉のお守りのご利益は……。
そして、そのことをあたしに話したあたりで彼は昨夜徹夜であたしたちに大阪観光のガイドをどうするか考えていたことが影響してなのか、唐突に睡魔に襲われたのだ。
つまり、あたしはグースカ眠っている平次に肩を貸しながらみんなの元に彼を連れて行ったのである……。あたしにマイペースとか言ってたけど、彼も大概よね……。
「だ、だって藤峰……さんが……気絶した平次を運んどったし……、そんなこと言わんかったから」
「いや、あたしはちゃんと言ったわよ。大丈夫だって。大体、重症なら救急車呼んでるから……。まっ、あたしの声が聞こえないくらい……大好きな平次くんのことが心配だったんでしょうけど。くすっ……」
誤解のないように言っておきたいのは、あたしはきちんと和葉にそのことは伝えた。
しかし、彼女は平次の胸が撃たれたというくだりを聞くと顔を真っ青にして上の空になってしまう。
彼女にとって平次はそれだけ大事な人だから、仕方ないけど……。
「す、す、好きちゃうわ! でも、ありがとな、平次を助けてくれて。あんたのこと……勘違いしとったわ。ちゃらんぽらんな女が平次を誑かしているんかと」
「にゃはは、普段の行いを反省するっきゃないわね。ちゃらんぽらんは否定できないし……。和葉ちゃんが心配するのも当たり前よ」
別にあたしの印象が良くないのは、彼女の立場からすると仕方ないし、自分の性格もお世辞でも良い方じゃないので彼女が悪い印象を持つのは無理がない。
むしろ、彼女があたしにお礼を言ったのが意外だった。
「あんた、ええ子やな……。アタシ、結構失礼なこと言うたのに」
「それに、あたしも和葉ちゃんのお守りのご利益のおかげで助かったしね。あのとき、平次くんが庇ってくれなかったら、あたしもかすり傷じゃ済まなかったろうし……」
そもそも、平次のおかげであたしは助かった。これは間接的に和葉のお守りのご利益かもしれない。
根拠はないけども、そんな気がしたのだ。
「……なぁ、ホンマに平次とは何でもないんか? 別に怒らんから正直に言うて欲しいんやけど」
「同業ってだけで何にもないわよ。和葉ちゃんの大事な人に手を出したりしないから……。出来たら、仲良くして欲しいな」
泣きそうな顔をして、再び平次の関係を問う和葉に返事をしながら、あたしは彼女に手を差し出す。
「ホンマにホンマやな? 信じるからな。
「うん! 信じてくれてありがと。じゃあ、平次くんと付き合ったら教えてね♡お赤飯炊くから」
和葉があたしの手を握ってくれたので、あたしは彼女に平次とそういう関係になったら教えてくれと声をかけた。
彼女の顔がみるみると赤く染まる……。こういうところは蘭に似てるわね……。
「そ、そういう意味で確認したんちゃうで! 勘違いせんといてな!」
「ふふふっ、顔真っ赤にして否定しても説得力ないんだから♪」
「も〜〜う! 違う言うてるやろ!」
あたしと和葉はようやく打ち解けて話をすることが出来るようになった。
やっぱり、この子は可愛い子だわ……。
「あーあ、アリスちゃん。また悪い顔してる」
「なんや、和葉のやつ。あんなに藤峰のこと嫌っとったのに、楽しそうに話しとるやんけ。女っちゅうのはよう分からんで」
こうして、大阪で遭遇した連続殺人事件は解決に至った。
もー、毎回出かけると事件に遭遇する体質は何とかならないかしら……。きっと無理なんでしょうね……。
お守りをアリスに預けるとかそういう下りは出来ないし、子供じゃないから途中退場も出来なかったので、平次の見せ場を半分取っちゃう感じになりました。これは反省すべきポイントかも。
アリスと平次のコンビを書いてみましたが、コナンとは違う感じの相棒の雰囲気は出せてましたでしょうか?
ここから先も黒の組織の回を中心にいろんな登場人物が出せるように頑張ります。そして、劇場版にも挑戦してみたいです。