工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった 作:ストロングゼロ
「うわぁ、可愛く撮れてるね」
「うん♪色んなバリエーションがあって楽しいね」
「でしょ、でしょ、学校からも遠いし穴場発見って感じ」
「ん? あの人って……」
ある日のことあたしと蘭は園子に誘われて学校から少し離れたゲーセンに遊びに行った。
プリクラを撮ったりして遊んでたんだけど、あたしはギャラリーが集まる中でシューティングゲームをしている金髪の女性が気になってしまう。
「ねぇねぇ、あそこに居るのジョディ先生じゃない?」
「何言ってんのよ、アリス。ジョディ先生がゲーセンにいるはず――」
と言っていた園子も思わず口を止める。だって、我が校の英語教師が次々とゲーム内のゾンビを撃ち倒すんだもん。
「あっ、ホントにジョディ先生だ。シューティングゲーム……すっごい上手」
「学校だと、クールな印象なのに分かんないもんだね〜〜」
最後は上方に投げた銃をクルッと回ってキャッチして――バキュンとゾンビを狙い撃ち。
完璧なプレイを見せてくれた。そりゃあギャラリーも出来る訳だ。
『PERFECT!』
「カッコいい! パフォーマンスを入れて完璧な操作……、ありゃ相当やり慣れてるわね」
「ジョディ先生、どうしてここに?」
「Oh! 毛利サンに鈴木サン……、それに藤峰サン」
あたしたちがジョディに話しかけると彼女は少し驚いた顔をしてあたしたちを見る。
高校からちょっと離れてるから帝丹高校の生徒が来ることは滅多にないんだろう。
「先生?」
「あれ、帝丹の制服じゃね?」
「じゃあ、高校教師?」
「ノーノー、人違いデ〜ス」
ジョディ先生は少し離れたところにあたしたちを連れて行って説明をした。どうやら、彼女は毎日このゲームセンターに来てたみたい。
日本のゲームが大好きなゲーマーで、本場のゲームが毎日できるという理由で教師を志したのだとか説明してた。
あたしはさすがにジョディがFBIの捜査官ってことくらいは覚えてる。まぁ、変な疑いかけられたくないから素知らぬフリをしてるけど……。
注意力を持って聞いていれば、カタコトでも文法完璧だし日本語が堪能だってことはわかる。
潜入調査中にクビとか勘弁して欲しいだろうから、素行に気を使って学校では真面目にして離れたゲーセンに遊びに来てたのね……。
黒の組織についてなんやかんやあって調べてるのよね。彼女も……。
あたしとか哀のことを今のところどれくらい掴んでいるのかしら……。
あたしに対する視線は単純に高校生探偵に対する興味なのか、それとも……。平次や新一もいるんだからコナンほど不自然じゃないはずなんだけど……。
「ダカラ、ここに居たコトはナイショにしていてくださいネ!」
「でも、カッコよかったです。先生」
「ビリーTheキッドみたいでした」
「思わず惹きつけられたもんね〜」
「では、もっとエキサイティングなゲームやってみマスカ?」
ということで、ジョディの薦めで、最近大人気だというバーチャル格闘ゲーム「グレートファイタースピリット」に蘭が挑戦してみる事になった。
「うわぁ、何か蘭ちゃん痛そうなんだけど」
「コレハ、ゲームのキャラクターのダメージがプレイヤーにも伝わる、バーチャルファイティングゲーム! オンナノコにはツラかったカシラ?」
何それ……、闇のゲーム? それとも海馬コーポレーションが考えたのかしら……。
あたしは蘭を心配したけどそんなのこの子には無用だった。
「はぁあああっ! うりゃあああッ!」
リアルファイトで強い蘭はゲームでも強かった。敵キャラをあっという間にボッコボコにする。へぇ、普通の格ゲーって体力ゲージがあるのにこれは顔色で判断する感じなのね……。面白いわ……。
『YOU WIN!』
「これでも蘭は空手の都大会で優勝してるんです」
「Oh! チャンプ!」
しかし、なんか次のゲームの敵は挑戦的だった。ジョディ曰く誰か他のプレイヤーが乱入してきて蘭に挑戦をしてきたらしい。
しかも、そのプレイヤーは熟練者らしく初心者の蘭は簡単に負けてしまった。
「さぁ、負けたならさっさと退きな。そのゴールドシートはおれ様の指定席なんだぜ」
金髪のチンピラみたいな男は蘭に席を譲れと言ってきた。やばい……、なんかセリフから漂う小物感がやばい……。
「蘭ちゃん、譲ったげなよ。こんな席なんかどーでも良いんだから」
「ダメよ、あいつにもう一回挑戦して勝つのよ」
「無理無理、パンチとキックしか使えない蘭ちゃんじゃ、やり込んでるあの人に勝つのは無理よ」
ゲームはセンスも必要だけどやり込みはそれ以上に必要だ。
技の出し方からみてもあのチンピラはかなりの手練。ゲームやりたての蘭では何度やっても結果は同じだろう。
「そっちの子の言うとおり、諦めた方がいいっすよ。勝ち目ないですから」
「おら、早くしろよ!」
「うわっ!」
あたしに同意してくれたゲーセンの店員は何かのゲーム機の近くで作業をしてたけど、チンピラに蹴られていた。
マジでこういう大人は気持ち悪い……。
「ガラ悪すぎ……、最低ね……。行きましょ、気分悪いし」
「本当ね。なんなのよ、あいつ」
「“米花のシーサー”とか呼ばれて粋がっているただのチンピラだよ。最近、ますます態度がデカくなって迷惑してんだ」
あたしたちの会話を聞いていた麻雀ゲームをやっている小太りのおじさんはあの男の世界一どうでもいいあだ名を教えてくれた。なんで、こういう界隈ってそんなあだ名をつけるのかしら……。
ていうか、店の業務妨害っぽいことしてるのなら出禁にすればいいのに、出禁に……。
おじさんの言うとおり、あのチンピラはゲームの腕だけは確かだった。繊細で精密な動き……。
いや、どーでも良いわよ。あのゲームで強くなりたいとか1ミリも思わないし……。
このおじさんは乱入プレイがあると映像が流れるという巨大なスクリーンで蘭とチンピラの戦いを見ていたんだという。
ふーん。わざわざそんな感じでプレイヤー同士の戦いを見せたりするんだ……。
「やつに勝てるとしたら、杯戸町で無敗を誇った――」
「“杯戸のルータス”……このおれしかいないだろ」
また変な人が来た。ジャケットを着た背の高い30歳くらいの男……、“杯戸のルータス”。この人もあの格ゲーが得意らしい。
「待ってたぜ、アニキ。とっととケリ着けようや」
「まぁ、待て。一本くらい吸わせろ」
なんかどーでもいい戦いが始まろうとしてるの? “米花のシーサー”と“杯戸のルータス”とやらのゲーム勝負ってやつが。
男の人っていつまでもこういうのに夢中になれるのね〜。
「あはっ、ジョディ先生。レーシングゲームも得意なんですね」
「うわー、すごーい!」
「ハイスコア出ちゃうんじゃない?」
ジョディのレーシングゲームをあたしたちは見物していた。これ実際に本物の車の運転も上手いし、無茶苦茶なカーアクションとかしちゃうやつだ。
今後、彼女と関わることになったら乗ったりするのかなぁ。
「あら〜、米花のなんたらと、杯戸のうんたらの試合始まったのね……」
「良いじゃんそんなの、どうだって」
「う、うん……、でも……」
「一方的過ぎるような気もするわね……」
「どっちが勝ってんの?」
「あのチンピラ……」
チンピラと長身の男の勝負はワンサイドゲームだった。
おかしいなぁ。蘭以上に何もさせてもらってない。長身の男も杯戸では負けなしみたいな話なのに……。
チンピラが蘭が初心者なのを見抜いて手を抜いてたってことかしら……。
「なんだよ、杯戸のルータスも大したことねーな」
「ありゃ、立ち上がるのに時間がかかるぜ」
「いや、立ち上がる前にいつものアレでトドメだろ」
「……あれ? 動かないわね。敵を倒す絶好のチャンスなのに……」
『DRAW!』
フルボッコにしてたチンピラのゲームキャラは突如として動きを止めた。
長身のキャラクターがそういう技を使ったのかと思ったけど違うみたい。
ゲームは結果として勝負はつかずに終わってしまった。
「ひ、引き分け? なんで……、あんなに優勢だったのに……」
「お、おい、何か様子が変だぞ」
「さっきからピクリとも動かない」
そして、プレイヤーのチンピラの様子から変だとギャラリーがざわめきだした。
ピクリとも動かないですって……。まさか――。
「あ、アリスちゃん!」
「アリス! どうしたの!?」
「……し、死んでるわ。蘭ちゃん! 警察を呼んで!」
「「――っ!?」」
チンピラはゲーム機に拘束されたまま息を引き取っていた。
どういうことかしら? さ、さっきまでゲームをしてたのに突然……。とにかく、警察が来るまで待ちましょう。
◆ ◆ ◆
「ゲームの対戦中に死んだぁ? 本当かね? アリスくん」
「ええ。あのモニターで二人が戦っているところを見たのですが、被害者が相手を追い詰めたところで操ってたキャラクターが動かなくなり――」
「プレイヤーである彼もまた動かなくなっていたということか」
そう、ゲームで対戦していて急にプレイキャラクターが動かなくなったと思ったらあのチンピラは死んでいた。
「驚いたよね。勝つと思ったところで動きが止まるんだもん」
「うん。アリスちゃんが死んでるって言ったとき信じられなかった。何が起こったんだろう?」
高木刑事によると、亡くなったチンピラみたいな男は尾頭賢吾、21歳で無職。このゲーセンでは素行が悪くて有名で嫌われていたみたい。
「カレ、藤峰サンや毛利サンの知り合いデスカ?」
「あ、はい。こちらの目暮警部は蘭ちゃんの父親の元上司なんですよ。蘭ちゃんのお父さんはあたしの探偵の先生でして……」
「ん?」
「こちらはジョディ先生、私たちの学校の英語の先生です」
あたしと蘭はジョディと目暮警部を互いに紹介し合った。
これからきっと関わることが増えるんだろうな。
「ジョディ・サンテミリオン、デス。ヨロシクお願いシマス」
「マイネームイズ、ジューゾウメグレ。アイアム、ジャパニーズ、ポリスマン!」
「チッチッチッ、“ポリスマン”違います。“ポリィスマン”オッケー?」
「ぽ、ポリースマン?」
「ノンノンノン……」
「ジョディ先生、そのくらいにしてあげて。高木刑事、ゲームのプレイ中に怪しい人物が見当たった情報とかありましたか? このとおり、ゲーム中は拘束されちゃうので毒を服用しての自殺とかは無理なんですよ」
何か目暮警部のお茶目な一面をもっとみたい気もしたんだけど、あたしは事件が気になって高木刑事に不審者がいなかったかどうか質問した。
「それが、この辺りを歩き回る不審人物は居なかったみたいなんだよ。アリスちゃんの言うとおり、何かを口に入れたりもしてる様子はなかったみたいだね」
「しかし、なんだね。この格好はまるでSFだな」
「ゲームのダメージが直接プレイヤーに伝わるように出来てるんですよ」
「伝わると言っても携帯電話のバイブくらいで、殺人が出来るほどじゃないですけどね」
目暮警部にゲームの仕様を説明したのはゲームセンター店員の出島均と、ゲーム雑誌のライターで“杯戸のルーカス”こと志水高保。
志水はゲーム内のダメージで殺したとか思われないために補足説明をしたんだそうだ。
「まっ、言いたくはないがおれはやられっぱなしでね。二、三発程度しか入れてねーよ。ガムまで噛んでゲンを担いだってのに」
「そうなのかね?」
「は、はい。確かにそんな感じでした。ねぇ、アリスちゃん」
「…………」
「アリスちゃん?」
「……そ、そうね。こんなに力の差があるもんなんだって思ったわ」
どうも気になるのよね。あのワンサイドゲーム。
攻撃が当たらないにしても、何か技らしい技くらい使っても良さそうなのに……。
それを考えていると、蘭に話を振られたことに気付かなかった。
「ちぇっ! お嬢ちゃんたちにカッコ悪いところまで見せちまって、ついてねーぜ」
「問題は死因だが……」
「恐らく、毒……ですよ。窒息死なのに、首を絞められた跡もありませんから」
あたしは十中八九、死因は毒による呼吸困難からくる窒息死だと推測している。
自殺もやってなさそうだから毒殺ってことになるわね。
「毒? しかし、アリスくん。何かを口に入れたりした訳ではないし、予め何かを飲まされていたのなら気分が悪くなったり何らかの反応があったんじゃないのかね? そんな様子は――」
「なかったよね。蘭とゲームしてタコ殴りにしてたし」
「元気そうだったよ。アリスちゃん」
被害者が最後のゲームをする前は元気に蘭とゲームで遊んでたのだから、前もって毒を摂取してた可能性はない。
だけど、何も毒というのは口からじゃなくても体内に入れることは出来る。
「そう、この人はゲームを開始するまではピンピンしていた。だとしたら、考えられるのは毒を針か注射器で体内に注入するというやり方です」
暗殺みたいなやり方だけど、こうすれば被害者は毒を体内に摂取することが可能だ。
幸いなことにゲームセンターという空間はそれを行うのに適している。
「おいおい、それだと彼がうめき声を上げたりして、何らかの反応を示すだろう。それに誰も気付かないっていうのはないんじゃないか?」
「ううん。それは大いにあり得ます。だってさっきまでこのゲーセンの中はすっごく煩かったんですもの。近くの人の声も聞き取りにくいくらい。それに、さっきも言いましたが、このとおり、プレイ中はゲーム機に拘束されちゃいますから。体調に異変を感じても動けないんです。その上、普段の室内はモニターをよく見えるようにするために薄暗い。ギャラリーはほとんど巨大モニターに釘付けになります」
視覚や聴覚が働きにくい空間で無防備な姿をゲーム中に晒すことになる被害者は、誰にも気付かれずに毒殺される可能性は十分にある。
犯人がこんな大胆な犯行に及んだのは見つからない自信があったからだ。
「だとすると、多少乱暴なことをしても気付かれないかもしれないですね」
「うむ。無防備な上にゲーム音と暗い照明で犯罪を隠すことは可能ということか。よし、遺体を司法解剖に回せ。死因を突き止めるんだ」
「「はっ!」」
「あら、ジョディ先生。あたしの顔に何か?」
「ノー、驚いてマス。授業中の雰囲気とはマルデ違いマスから」
やっぱり気になるか〜。あたしのことが……。
単純な興味っぽい感じではあるけど……。
「問題は容疑者ですね。三十人以上、ゲームセンターには居るみたいですから、これは骨が折れますよ」
「高木刑事、大丈夫ですよ。あたしは被害者の隣のレーシングゲームをプレイ中のジョディ先生の側に居たんです。被害者に近付いた人物が6人しか居なかったことを知ってます」
「ほ、本当かい? いやー、いつも助かるよ」
容疑者を割出そうとしていた、高木刑事と目暮警部に被害者に近付いた人を全員話した。
被害者に近付いたのはあたしたち4人と、ゲーセンの店員の出島に、被害者と対戦した志水の6人。
「目撃者は藤峰サンだけではアリマセン。ホラ……」
「防犯カメラ!?」
さすがはジョディだ。防犯カメラを最初に気にしていたか。あたしも後で言おうと思ったけど、これで確認するのが手っ取り早いわよね。
ということであたしたちは防犯カメラの映像を見に行くことになった。
しかし、さっきから変な音がするわね。これは金属音……? 気になるわ……。
防犯カメラの映像から最初に被害者に近付いたのはゲーム機内のお金を集金した出島。
その次に近付いたのはゲーム戦略の探りを入れたという志水。
そして、あたしたちが巨大モニターに注目していたときに隣でレーシングゲームをプレイしていたジョディ。
と、いった感じだった。しかし、ジョディはハイスコアを出していたし、そもそもFBIの彼女が犯人なわけない。
そんな中、最後に被害者の側でしゃがんでいたらしい、麻雀ゲームをやっていた小太りのおじさんがのっそり現れた。
ありゃ、この人も被害者に近付いていたんだ……。見落とすとはあたしもまだまだね……。
――多分、あの方法なら尾頭を殺せるし、あたしの違和感も解消される。
だけど、問題は凶器がどこにあるかってことよね。それが見つかればあそこにあるモノが証拠になるし……。
これからそれを探さないと――。
しかし、ジョディはよくあたしを観察してる。見られてもあたしと新一が同一人物とまでは気付かれないだろうけど、行動には気を付けないとね……。
◆ ◆ ◆
タクシードライバーだという小太りのおじさんは江守敏嗣。
彼は小銭をばら撒いてそれを拾ってただけだと主張していた。過去にはレーシングゲームのミスを被害者にディスられたこともあったらしい。
そんな話の中で志水の妹が被害者と同棲していて、被害者がヒモ同然だったということや、出島もまたゲーマーで被害者に完敗した経験があり、髪型を変えてゲーセンの店員になった話が聞けた。
そして、司法解剖の結果――被害者の死因は毒によるもので、検出された毒はテトロドトキシン。針のようなもので右脇を刺されて血管に注入されたみたいね。
テトロドトキシンってフグの毒かぁ……。
「テトロドトキシン――通称TTX。致死量は0.5~1mg。青酸カリの500分の1で死んでしまうクレイジーな毒。フグに多く含まれていて、口から入れれば中毒症状の進行が遅く助かる場合が多いけれど、直接血液中に注入されると、短時間で神経が麻痺し、ジ・エンド」
「先生……?」
「って、ユウジンのドクターが行ってマシタ。日本ではフグの毒には気をつけろッテネ」
うーん。ジョディって、なんだろう。怪しさ満載すぎるわ。
急に流暢に喋られたら驚くでしょーが。
「とにかく凶器を探しますから、皆さんも現場に戻ってください」
「ちょっと待って! 出島さん、こっちに来てくれませんか?」
あたしはずっと気になっている金属の擦れるような音の出どころが出島さんということに気が付いて、彼に声をかけた。
「な、何ですか? 一体……」
「ああ、やっぱり……。靴から変な音がしてますよ。靴の裏を見てもらえませんか?」
「えっ? あっ、こ、こんなところに……」
出島の靴の裏には銀紙が貼り付いていた。ガムでくっついているみたいね……。
「ま、まさかそれが凶器……。タバコに毒針を仕込んでガムで銀紙に固定して……」
「犯人は期待してたのでしょうね。誰かが踏んで遠くに運ぶことを――」
そう、犯人は毒針をタバコの中に仕込んで凶器として持ち歩き、ガムを銀紙に吐き出すフリをして凶器をくっつけて、床に落とし――誰かがガムごと凶器を靴に付着させてどこかに運ばせようとしていたのである。
「しかし、問題は誰が殺したということになるが……」
「それはもう分かりました。犯人が誰なのか、どういう経緯で被害者を殺したのかも」
「ほ、本当! 相変わらず、いつの間にか分かっちゃってるのね」
「とりあえず、現場の方が分かりやすいと思いますので、そっちに行きましょう」
凶器が見つかったので、犯人を追い詰める準備は出来た。
あとは現場で犯人がどんな手口で犯行をしたのか説明するだけ――。
犯人とあたしの対決が始まった――。
「さて、アリスくん。犯人が誰なのか分かったと言っていたが……」
「ええ、順を追って説明します。まず、出島さんは被害者に近付いた後に志水さんが話しかけているので犯行は無理です。刺されたのは右脇なので、左側にしか近付いていなかった江守さんも無理。レーシングゲームからどんなに手を伸ばしても被害者に届かないジョディ先生や、同様の理由で離れていたあたしたちも無理ですよね」
あたしは一人の人物を除いて犯行は不可能だという理由を話した。
つまり消去法で浮かび上がる犯人は一人しかいないのだ。
「ということは、犯行が可能なのは……志水さんだけということになるな」
「おいおい、そのお嬢ちゃんの言うことを真に受けんなよ。おれはゲームであいつと対戦してたんだぜ、その最中に死んだ奴にどうやって針を刺すんだよ!」
「そりゃあゲームをする前に決まってるでしょ?」
志水の言うとおりゲームの最中に人殺しは無理だ。それが彼の理論武装であり、彼が犯人から除外される理由でもある。
しかし、その前提は間違いだ。ゲームが始まったとき――すでに尾頭は死んでいた。
「お前、見てなかったのか!? おれがあの野郎にボコにされてんのを」
「そうよ。あのチンピラが一方的な感じでタコ殴りにしてたじゃない」
「アリスちゃんも一緒に見てたでしょ」
志水の言葉に同意するように園子と蘭はうなずく。
しかし、あたしは最初からあの勝負は変だと思ってた。ゲーマーというほどゲームは得意じゃないけど、そんなあたしでもあの試合は違和感しかなかった。
「うん。異常なくらい棒立ちだったキャラクターがボコボコにされる光景は見ていたよ。あり得ないよね。あのルータス……初心者の蘭よりもボコボコにされてたもん」
「わ、悪かったな。本気のあいつが思った以上に強かったんだよ!」
「いいえ、その逆。死体はゲームなんて出来ない。あなたは誰も操作してないルータスをシーサーを使って一方的に攻撃してただけ」
「――っ!?」
あたしは志水が使ったトリックの根幹を口にすると、彼の顔色が変わる。
試合を見ていた全員が騙されていたのだ。ワンサイドゲームを演じていたシーサーは被害者が操作していると。
「論より証拠。再現してみましょう。あたしと蘭ちゃんがゲームで対戦しますから。蘭ちゃん……、ちょっと来て。みなさんは巨大スクリーンに注目してください」
あたしは蘭にいくつか指示を出して100円玉を入れてゲームを開始した。
あはっ、このゲーム……面白いじゃん。こりゃあストレス解消になるわ……。
「さて皆さん。被害者の最後のゲームと同様にワンサイドゲームになりましたが、どっちがどっちのキャラクターを動かしていたのか、分かりますか? 例えば出島さん、このゲームには詳しいんですよね」
「えっ? いや、二人の持ちキャラが誰だかわかりませんし、ゲームの上手さも知りませんので……。どっちがどっちなのか分かりません」
これがこのトリックの肝だ。巨大スクリーンを見るだけじゃ、実際に誰がどっちのキャラクターを使っているのかわからないのだ。
「そうなんです。このゲームって体力ゲージも表示されないので、巨大スクリーンを見ただけじゃ、誰がどちらをプレイしてるのかわからないんです。蘭ちゃん、目隠し取って良いわよ」
「わかったー」
「ええっ!? 蘭ってば、目隠ししてたの?」
「うん。それに力を抜いて何もしないでって頼んだのよ」
蘭には脱力して動かないように指示を出した。ネクタイで目隠しをしてもらって。
なのにも関わらず、誰一人として蘭の異変に気が付かなかったのだ。
「でも、蘭さんの体は動いていたよ。アリスちゃん、これは一体……」
「振動するんですよ。このゲームはダメージを受けると、その箇所が。それがいい感じに働いて手足が動くものですから、死んでいても傍目から見るとゲームをプレイしてるようにしか見えないんです。つまり、これは先入観を上手く使ったトリック。被害者の尾頭さんがシーサーを、そして犯人である志水さん、あなたがルータスを使うだろうという先入観をね!」
キャラクター名が異名が付くくらいこの界隈で有名になった2名のプレイヤー。
あたしたちも蘭がタコ殴りにされたのを見たせいで尾頭がシーサーを使っていると思ったほどなので、ゲーセンの常連はなおさらそう思い込んだのだろう。
「なるほど、互いの使うキャラクターを逆にして、あたかも被害者がゲームの最中も生きていたかのように演出したのか! それなら凶器に志水さんの指紋が残ってるかも」
「いいぜ、調べてもらっても。好きにしな」
「警部さん、無駄なことはしないでいいですよ。志水さんは凶器が見つかることも想定してましたから」
志水のあの態度はやはり証拠隠滅をしているという自信の現れだろう。
ここまで話してもまだ余裕があるみたいだ。
「なぜ、そう言い切れるのかね?」
「過剰反応――見せつけるようにガムを噛んだのは凶器が見つかっても、わざわざ警察の前で犯人ならガムを噛んだりしないとでも言うつもりだったのかしら? 確かに噛んでるガムも凶器についてるガムと違うし、何ならタバコの銘柄も違う。まぁ、こんなもの自分のを使わずにその辺に捨てられてるのを使えばいいもんね」
目暮警部に対して、これでもかとガムを食べてることをアピールしていた。
それはガムを使って証拠を消そうとしていたからだろう。
「でも、被害者刺すときには指紋は付くだろう?」
「指と指で挟むとか、ソフトタイプのタバコの箱を手袋代わりにして握って刺すとか、指紋を付けない方法は幾らでもありますよ」
「はっ! どっちにしろ、証拠がないのなら犯人扱いしないでもらいたいな!」
あたしが警部に指紋をつけずに被害者を刺す方法を教えていると、志水が苛立った表情で証拠を催促した。
「そうね。あなたは完璧に証拠を隠滅したと思っている。でも、思い出して。出島さんは被害者がゲーム機に座る寸前に集金作業を行ったのよ。あなたはこのトリックを仕掛けるために被害者のゲームを終わらせて再びゲームをするために100円玉を入れたはず。つまり、あたしが言ったとおりに事が行われているなら、ゲーム機の中には本来はあたしが入れた100円玉と被害者の入れた100円玉の2枚しかないところに――入ってるはずよ! 3枚目の100円玉がね!」
本来はたくさんの100円玉の内の1枚になり、志水さんの指紋がついても何の問題もなかったはずだった。
しかし、出島が集金をするとなると話は別だ。志水の指紋がついた100円玉があるのは理屈に合わなくなる。
「あ、ありました! 100円玉が3枚!」
「では、これを鑑識にまわして――もしかしたら志水さんの指紋が――」
「ついてるよ……オレの指紋……。あの100円玉はしっかり握って入れたんだ……。オレのラストゲームにするつもりだったんだからな……」
3枚目の100円玉を見た志水は観念して語った。ヒモみたいな生活を送っている尾頭のために体を壊してまで働いている妹が不憫だったのが動機らしい。
いつも思うけど、殺す以外の方法を考えてほしいものだ……。
「いやー、また助けられたねー。アリスくん!」
「あはは、出島さんが集金してたり、ガム踏んづけてくれたおかげですけどね〜〜」
今回は半分以上は出島のおかげで解決したようなものだ。
こういう偶然に頼っているうちはまだまだなんだよね……。
「ううん。こないだの新一にも負けてなかったよ」
「あんたって軽いノリで片付けちゃうからいっつも驚かされるのよね〜〜」
「そ、そうかしら? じゃあちょっと調子に乗っちゃおうかな〜!」
「アメージング! すごいデース、アリス! まるでケイト・マーティネリみたいデシタ。普通の女子高生にしか見えナイのに不思議デス」
あたしが蘭と園子に褒められて笑っているとジョディが力いっぱい抱きついてきた。
うわー、やはり欧米人は積極的なんだね。あたしも人のこと言えないけど……。
「あ、ありがとうございます。なんかこうされるのって新鮮……」
あー、いつも抱きしめる側だから、ちょっと照れくさい感じもあるわね。
でも、なんか癒やされるわー。
「Mysterious girl……、ホントに不思議な娘……」
「えっ?」
「バイバーイ! またスクールで会いまショウ!」
ジョディは耳元で何やらつぶやくと、笑顔であたしたちに手を振った。
FBIも大変そうだな。他の職業をこなしながら潜入捜査もしなければならないのだから……。
あたしはまだ知らない。FBIと黒の組織の戦いに巻き込まれて、今まで以上に命がけの勝負に身を投じることになることを――。
今回はアリスらしさを引き出すの失敗したな〜。やっぱり、新一や平次や灰原とか共闘キャラがいるか、キッドみたいな強敵がいた方が盛り上がりますね。
次回は赤井が初登場のバスジャック回をやるつもりでしたが、その前にすっ飛ばして忘れていた京極の初登場回をやります。
時系列が戻っちゃいますが許してください。