工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった   作:ストロングゼロ

2 / 31
社長令嬢誘拐事件 前編

「ごめんね。蘭ちゃん……、無茶言っちゃってさ」

 

「ううん。気にしないでいいよ。――でも、そのう……新一とは本当に何でもないの……? だって、アリスちゃん、美人だし。探偵が好きって共通点もあるし……」

 

 蘭はあたしのお願い自体は気にしていないみたいだけど、やっぱり新一との関係が気になって仕方ないようだ。その気持ちはすごくわかる。

 

「そうだよね。不安になるよね。好きな人の家に知らない女がいるんだもん」

 

「…………」

 

 普通に気になる男の子の家に、同年代の女が居たら、それだけで嫌だから。彼女が不快な気持ちになるのは当然だ。

 

「今すぐに信じなくてもいいよ。それが普通だし」

 

「普通?」 

 

「うん、普通だよ。そんなの。それにしても――そんなに好きなんだ? 新一のこと」

 

「う、うん……ま、まぁ……えっと……、気になるのは確かだけど……、それはそのう……」

 

 新一のことが好きかどうか聞くと蘭は耳まで赤くして煙が吹き出しそうになった。やだ……、めちゃめちゃ可愛いんだけど……。

 

 あたしは、これから信頼してもらうように頑張ればいい。

 

「ちょっと羨ましいな。蘭ちゃんみたいに可愛い子にそんなに好かれるなんて」

 

「えっ?」

 

「なーんてね♡」

 

 まったく、新一という男はけしからん。こんなに可愛い子がこんなに健気に想ってくれるなんて――。

 あー、あたしも恋がしたい。なーんか、変だよ。さっきから蘭が気になって仕方ないんだ……。

 

 

 

 

「うわ〜。探偵事務所だ。格好いいわね」

 

「そ、そうかな? アリスちゃんって、変わってるね……」

 

「そう?」

 

 蘭に毛利探偵事務所まで案内されたあたしは、感想を漏らすと彼女に変な人扱いされちゃった。

 でも、漫画でみた事務所が目の前にあるんだもん。そりゃあ興奮するよ。

 

「うん。ウチのこと格好いいなんて誰も言ったことがないよ。ついてきて、お父さんに紹介するから」

 

「本物の探偵さんに会えるなんて緊張するな〜〜」

「ふふっ、大袈裟なんだから」

 

 あたしが毛利小五郎との対面にそこはかとなく緊張していると、蘭はニコリと微笑む。

 その時だ。ドタドタと騒がしい音と共に階段から男性が駆け下りてきた。

 

「来たぞ来たぞ来たぞぉ〜〜っ!!」

 

「「きゃっ!」」

 

「半年ぶりの仕事だ! 金持ちの娘が誘拐された! 黒ずくめの男にな! タクシーっ!」

 

 駆け下りてきた男性は毛利小五郎その人。彼はお金持ちの娘さんが誘拐された件で仕事を貰ったらしく、急いでタクシーを捕まえて依頼人の元へ急行しようとしている。

 

 ボーッとしてる場合じゃない。あたしも付いていって小五郎を助けなきゃ……!

 

「蘭ちゃん、行こっ!」

 

「あ、アリスちゃん!?」

 

 あたしは蘭の手を引いて走り、滑り込みセーフでタクシーの中に入った。

 ふぅ、いきなり事件ね。さすがはコナンの世界……。犯罪率がおかしい……。

 

「フッフッフッ……、事件がオレを呼んでいる……。この名探偵毛利小五郎をな!――あん!? なんでおまえが乗ってんだ!? あと、その子は友達か?」

 

 タクシーが走り出してから少しして、小五郎はようやくあたしたちが乗っていることに気付いたみたい。えっと……、ちょっと鈍いような気がするわ……。

 

「アリスちゃんがお父さんの仕事をみたいって言うから」

 

「どうも〜〜。蘭ちゃんの友達の藤峰愛梨寿です!」

 

「おれの仕事を見たいだと〜〜っ!? なんで、お前の友達が……」

 

 小五郎は至極当たり前の反応をしてるわね。女子高生が何言ってんのって感じたろうし……。

 

「新一の親戚の子で、お父さんの助手になりたいって言うから連れてきたの」

 

「小娘の助手なんていらん! 仕事の邪魔するな! すぐ降りろ!」

 

「無理に決まってるでしょ! 高速道路なんだからっ!」

 

「じゃあ、降りれる場所に着いたらすぐに帰れ!」

 

 小五郎と蘭はあたしの事で言い争いをする。やっぱり得体のしれない小娘を簡単に助手にしてくれるわけないよね。

 でも、あたしには特技がある。それは――。

 

「あ、あのう。すみません。あ、あたし名探偵に憧れてて、特にオジサマのようにダンディな探偵の助手になることが夢なんですぅ。やっぱり生で見ると違いますね〜〜。何というかオーラがあります!」

 

「だーはっはっはっ! わかるか!? この名探偵のオーラが! よく見りゃ顔も可愛いじゃねーか。昔の有希ちゃんみてーだな。仕方ねぇ、見学だけだぞ!」

 

「やーん。感激ですぅ。格好いい名探偵が見れるなんてぇ〜」

 

「わーはっはっはっ! 助手でも何にでも自由にしていいぞ! 気に入った!」

 

 あたしの特技はオジサンのご機嫌取りだ。昔から愛嬌があるとよく言われていた。

 しかも今はこの見た目だし、可愛い女の子に煽てられて嬉しくない男の人はいないと思う。

 小五郎は上機嫌になって、あたしが助手として同行することを許してくれた。

 

「あ、アリスちゃん……お父さんの扱いが上手すぎ……」

 

 そんな光景を蘭は呆れながら見ている。同級生にくすぐられて乗せられてる父親を見るのは複雑みたいね……。

 

 

 

 

 助手になる了承を無事に取ったあたしは、無事に依頼人の邸宅に到着した。

 

「誘拐されたのはわたしの一人娘――谷晶子、10歳です。犯人は執事の麻生が目撃しています」

 

 依頼人のオジサンが笑顔の女の子と大きな犬が一緒に映った写真を小五郎に渡しながら、娘が拐われたことを話している。わぁ、可愛い女の子……。

 

「かわいい娘さんですね〜」

 

「え、ああ。まぁ……。だ、誰ですか? この子は」

 

「いや〜、この子は私の助手でして、今日はまぁ、見学みたいなことをさせてます。静かに見学しなさい」

 

「は〜〜い」

 

 あたしが写真の女の子に反応すると、依頼人の谷が怪訝な顔をしたので、小五郎が助手だと紹介する。

 なんか、公式に認められた感じがして嬉しい。

 

「では麻生さん、その犯人の様子を詳しく話してください!」

 

「あれは、学校から帰られたお嬢様が庭で遊んでおられた時でした――突然庭の隅から黒ずくめの男があらわれて……“この家の主人に伝えろ! 娘を返してほしかったら1か月間会社を封鎖しろとな! もちろんサツに通報すれば娘の命はない!”――そう言い残すと犯人は松の木を登って外に……」

 

 ふむふむ。お嬢様が庭から誘拐ねぇ。全然覚えてないんだけど、この事件……。

 そもそも流し読み程度だったし、これって絶対に初期の事件よね……。連載されてたのって……あたしが生まれる何年前なんだろう……?

 

「その男の特徴はどんな感じですか〜?」

 

「目が悪いものでよくは……」

 

「ふむふむ。それじゃあ仕方ないですね」

 

「…………」

 

 あたしはとりあえず初歩的な質問をしてみたのだが、ふと後ろの小五郎が面白くない顔をしていることに気付いた。

 あちゃ〜、見学なのに、しゃしゃり出ちゃった。

 

「毛利先生〜。聞き込みはこんな感じでどうですかぁ? えへへ」

 

「せ、先生? う、うむ。まぁまぁだな」

 

「ありがとうございます〜。先生みたいに格好良くできるように頑張りますね!」

 

「おう。手本を見せてやる。――ところで他の方は犯人の声とか変な音とか聞いてないのですか?」

 

 あたしが何とか小五郎の顔色をみて、やばいと思い彼を先生と呼ぶようにすると、小五郎は上機嫌そうな表情になり麻生以外にも聞き込みをする。

 なるべく邪魔はせずにそれとなくサポートしなくちゃ。

 

「はい……、麻生さんが“お嬢様がさらわれた”と叫んでいる以外は静かなものでした」

 

「犯人を見たのは麻生さんだけってわけですか。要求からみて犯人は谷氏のライバル会社の関係者でしょう!」

 

 うーん。休業命令を出させるためにわざわざ誘拐するもんかなぁ。娘が帰ってきたら撤回出来るし、帰ってこないにしても約束が守られるのを確認するまで1か月は長い……。

 

「くそっ! あんな要求のうえに金まで取ろうとは……!」

 

「か、金っ!?」

 

「ついさっき電話があったんだ! 使用済みの札で3億円用意しろとな!」

 

「旦那様……、それはなにかの間違いでは……」

 

「うるさい! お前は黙ってろ!」

 

 とか思ってると、お金も要求してきたとか、そんな話も出てきた。

 休業させてお金ねぇ……。お金だけで良いような気もするけど……。どうも引っかかる。

 引っかかるといえば、麻生の態度も変ね。間違いとかないでしょ、そんなこと。

 

「先生、変じゃないですか? 犯人はなぜ家の中に頑張って入って誘拐したのですかね? 通学途中を狙ったほうが簡単じゃないですか? 実際に見られちゃってますし」

 

 あたしは犯人の雑すぎる誘拐に対して疑問を呈した。

 どう考えても家に侵入する意味がない。使用人も沢山いるし、見られてるし……。大体、面と向かって口頭で要求を伝える誘拐犯って何なのよ……。

 

 それにしても新一の頭脳ってすごいわね。溢れる知性って感じでドンドン疑問が出てきて推理を始めちゃってるわ。

 あたし、こんなに頭が良くなったことないから、ちょっと戸惑ってるわよ。

 

「それもそうだな。うーん。――おれの推理によるとだな。犯人はかなりのうっかり者だ!」

 

「なるほど〜! さすが先生! これだけのヒントで犯人の性格まで分析しちゃうなんて! 凄すぎます!」

 

「だーはっはっはっ! 名探偵としての経験の賜物だよ。経験の」

 

「頼りになります! さすが名探偵です!」

 

 小五郎は思った以上にポンコツみたいね。ちょっとびっくりしちゃった。

 彼をあたしが名探偵に――? そんなこと本当に出来るのかしら……。ううっ……、頭が痛くなってきた……。

 

 あら、サッカーボール……。なんだろう体がウズウズするわ――。

 

 

「アリスちゃん、またお父さんの機嫌を取ってる。あれ?」

 

 あたしはいつの間にかサッカーボールをリフティングしていた。

 うーん。こうしていると落ち着くわぁ。

 

「でもぉ、そんなにうっかりさんなのに――使用済みの札を要求したりしてますよね〜。あたし、それは冷静だな〜って感心したんです」

 

「ん? まぁ、確かに。犯人は一人じゃないかもしれんなぁ。うっかり者としっかり者の複数犯だ!」

 

「いや〜ん。すごーい。犯人は2人以上いるかもってことですね〜」

 

 そう。この事件は二面性がある。雑に見つかりながら休業を要求したという一面。

 そして、電話から姿を隠しながら使用済み紙幣を要求したもう一つの面。

 あまりにやり方が違いすぎる……。

 

「そ、そんなはず……。あ、あり得ない……」

 

「えっ? 麻生さん。なんでそんなことがわかるんですか?」

 

「いや、な、なんとなくです……」

 

「ふ〜〜ん」

 

 犯人が2人以上いるとあたしが言うと、麻生は青ざめた顔をしてあり得ないとか言う。

 やっぱり、この人からは怪しさしか感じない。

 

「ねぇ、アリスちゃんサッカー上手いのね」

 

「えっ? サッカー? そ、そうなの。好きなのよ」

 

「新一も考え事してる時よくやってたよ……。それやると頭が冴えるんだって! アリスちゃん……新一と似てるんだね」

 

「そうかしら?」

 

 蘭はあたしがずっとリフティングしてることに対して新一と似てると指摘した。

 多分、彼の記憶とか体が勝手に反応してサッカーやってると思う。よく考えたら怖いけど、本当に落ち着くの……。

 

「うん。さっきからお父さんのサポートもきちんとこなしてるし、ちょっと格好いいって思ったよ」

 

「えへへ。褒められちゃった……あっ!」

 

 あたしは蘭に格好いいと言われて嬉しかったけど、つい集中力を失ってボールを落としてしまった。

 

 すると、ボールが転がって……写真に写っていた大きな犬の元に転がっていった――。

 

「ガルルルッ!!」

 

「きゃあ!」

「アリスちゃん!」

 

「かわいい〜♡ワンちゃん、大好きよ♡」

 

 あたしは犬好きだ。猫も好きだけど……。だから、寄ってきてくれて嬉しかったりする。

 ごめん、蘭……。身構えてくれたということは――守ってくれようとしてくれたんだね。嬉しい……。

 

「……えっ!?」

 

「ふふっ……」

 

 ペロペロと大きな犬はあたしの手の甲を舐める。うふふ、可愛いわね。

 

「珍しいな、ジャンボがうちの者以外になつくのは……」

 

 谷はこのジャンボという犬は懐かない犬だと口にした。確かにボールが転がっただけで吠えたし……あれ? じゃあ、やっぱりおかしいわよ……。

 

「――っ!? ねぇ、先生。誘拐犯はここの松の木を伝って侵入し出ていったはずですよね?」

 

「それは、さっき麻生さんが言ってただろ」

 

「でも、このワンちゃん。家の人にしか懐いてないんでしょ? ということは犯人は吠えられたんじゃ……」

 

「んっ!? 確かお手伝いさんたちは叫ぶ爺さんの声以外は静かだったと言ってたな……」

 

 あたしが番犬がいるのに誘拐犯が吠えられなかったのかどうか疑問を口にすると、小五郎はお手伝いさんが犬の鳴き声を聞いてないという発言をしていたことを思い出したみたいだ。

 

 ということで、やっぱりこの人の言ってることはおかしかった――。

 

「麻生さ〜ん。逃げちゃ、ダーメ」

 

 あたしはこっそりと逃げようとする麻生の腕を掴む。

 もう、今さら逃げてもしょうがないでしょう?

 

「アリス。でかした! どこへ行くつもりです? 麻生さん!」

 

「ううっ……」

 

「何か変ですなぁ、あなたの言ってる事は。庭に侵入してきた犯人はお嬢さんを連れあの木から逃げていった――なのに番犬は吠えなかった!」

 

「そ、それは……!」

 

「それにあなたの証言にはあやふやな点が多すぎる! 黒ずくめの男なんていなかったんじゃないですか!? 麻生さん! いや――誘拐犯人さんよ!」

 

「麻生〜〜! 貴様っ!」

 

「申し訳ございません。旦那様!」

 

 小五郎の追及に観念して、麻生は土下座をする。

 彼は素直に謝っているから晶子を誘拐したことは間違いないみたいだ。

 明らかに色んなことが杜撰としか言いようがなかったから、すぐに解決したわね……。

 

「何のためにこんなことをした!? 誰かに頼まれたのか!?」

 

「いいえ、これはわたし一人でやったことです!」

 

「で、お嬢さんは今どこに?」

 

「ち、近くのホテルに……」

 

「……にゃはっ! 一件落着〜〜! 名探偵、毛利小五郎の手にかかればとんな事件もたちどころに解決!」

 

 麻生が犯行を認めて小五郎は上機嫌そうな笑顔を浮かべた。いい笑顔ね。

 とりあえずは()()()事件は解決したし、良かったわ……。

 

「さすが! 先生です! 早速一人目の犯人を見つけましたね〜!」

 

「ひ、一人目のぉ? どういうこった? そりゃあ」

 

「またまた〜〜。先生、さっき仰ってたじゃないですか。犯人は二人以上いるって」

 

 あたしの推理が正しいならまだ事件は終わっていない。

 なぜなら、使用済み紙幣を要求している他の犯人がいるからだ。麻生よりも用心深くて周到な……。

 

「そういや、言ったな。んなこと。だがなぁ――」

 

「だ、旦那様! お電話が……!」

 

「忙しいから後でかけ直すと言っておけ!」

 

「そ、それが……」

 

「谷だが……」

 

『3億円は用意できたかな――?』

 

 あたしが第二の犯人について想いを馳せていると、電話がかかってきた。

 3億円を要求した、恐ろしい誘拐犯から――。

 

 事件はまだ解決していない。あたしはこの事件を解決して名探偵になれるのか――いまいち不安である――。

 

 




最初の事件なので、アリスの行動はまだおぼつかない感じです。
ここから彼女らしさを出して、蘭とのゆるい感じの百合でも書けたらな、と思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。