工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった   作:ストロングゼロ

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原作では伝説となっているロッカー回とかあるあの話です。
前日談の『残された声なき証言』のラストシーンからのスタートです。



黒の組織との接触 交渉編

「離れていると人の心も夢も変わっちまう……。もし人生に待ったがあるなら板倉と同じ夢を見ていたあの頃に戻りたい……」

 

 ゲームメーカー3社からボードゲームの制作依頼を受けて失踪した板倉卓という男を探す依頼を受けた小五郎は彼を何とか見つける。しかし、板倉は殺されてしまっていた。

 あたしたちの捜査の結果犯人は相馬竜介という男だということが判明し、証拠を突きつけ彼は観念して犯行を認める。

 どうやら、昔から相馬は板倉と凄い将棋ゲームを作る約束をしており、借金までして彼に投資していたが彼にやる気がないことを知って殺してしまったらしい。

 

 それはともかくとして、この板倉という男――かつてあたしが関わったゲーム会社の事件で遭遇した黒の組織の一員であるテキーラという男と面識があるみたいだった。

 彼は不運にも爆死してしまったが、この男と接触した板倉の日記を見れば黒の組織について何か分かるかもしれない。

 そう思ったあたしはパソコンに疎い目暮警部のスキを見計らって板倉の日記が記録されているフロッピーディスクのコピーに成功したのである。

 

 さて、後は博士の家でゆっくりと解析をするとしよう――。

 

 

 あたしは阿笠博士の家に帰ろうと足を向けたが、蘭が新一の家の様子を見たいと言ったので一緒に帰路につくことになった。

 

 

「ねぇ、アリスちゃん。離れてると人の心って変わってしまうのかな? 結構、辛いんだよね。待ってるのって」

 

 相馬の言葉が突き刺さった蘭は新一の不在が心の負担になっているみたいだ。

 離れたら冷めちゃうって人もいるんだろうけど……。とりあえず新一は離れてはいないからなー。

 

「……そういう奴もいるかもしれないね。でも、あいつは違うと思うわよ。蘭ちゃんの思ってるとおりだと――。あれ? 蘭ちゃん?」

 

 彼女に言葉をかけ終える前に蘭はあたしをギュッと抱きしめる。

 珍しいな。彼女がこんなに弱みを見せるなんて……。

 

「えっと……、ごめん。アリスちゃんが、新一なら良かったって思っちゃった」

 

「あはっ、面白いこと言うね。そんなこと言われたら……、蘭ちゃんのこと新一から奪いたくなっちゃうじゃん♡」

 

「……んっ」

 

 あたしは彼女のおでこに自分の額をくっつけて忠告する。

 可愛いこと言うじゃない。ちょっと本気になっちゃいそうだったわ……。

 

「ダメだよ。ガードが緩いとつけ込まれるんだからね」

 

「脅かさないでよ〜〜。ちょっとドキッとしたんだから。目が本気っぽいから」

 

「ふふっ……、元気出たでしょ?」

 

「うん。ありがとう。アリスちゃん……」

 

 お互いにドキドキしたところで、手を繋いで新一の家の前まで歩く。

 彼女の日常を盗ってしまって申し訳ないと思いつつ――この時間を幸せだと感じていた。

 

 

 

 

「ただいま〜〜。ちょっと遅くなっちゃった」

 

「また事件じゃったのか?」

 

「うん、まあね」

 

 帰宅すると博士と哀が出迎えてくれた。あたしはさっそくフロッピーディスクの中身を確認しようとカバンからそれを出した。

 

「毎日退屈しないわね。それで、そのフロッピーディスクは何なの?」

 

「えへへ、お土産よ。お土産。もしかしたら、あいつらの情報が入ってるかもしれない」

 

「へぇ……」

「さっそくパソコンで見てみるつもりかのう?」

 

「そうね。晩ごはんが後でもいいなら」

 

 あたしと哀と博士はフロッピーディスクの中身を確認するためにパソコンを起動させる。

 頼むわよ。いい情報がちょっとでも多く見つかるといいんだけど……。

 

「ええっと、2年前……、2年前……、あった! これね……。どれどれ……」

 

 あたしはパソコンに表示された文章を読む。ふむふむ……。

 

“3月7日、関西弁の男が突然訪ねて来た。どうやら開発中のシステムソフトが目当てだったらしいが、私が目を悪くして開発を断念したと知るとあっさり帰って行った。上から下まで真っ黒な男。二度と会いたくはない”

 

「ええーっ、たったこれだけ?」

 

「その後の日記にも、その大男の事は書かれていないようじゃのう」

「渾身のドヤ顔をしてた割には残念な感じね……」

 

 30秒もあれば読み切れる内容しか黒ずくめ男たちの情報は書いてなかった。

 哀ちゃん……、嫌味なんて言わないでよ……。

 

「もー、せっかく必死になって頑張って手に入れた日記だったのに……。わかったことは、板倉さんが何かのソフトを開発していて、それを奴らが欲しがっていたってことだけなんて……」 

 

「でも、その板倉さんって人。相当いい加減な性格だったようね。ほら、日記と日記の間隔がバラバラよ。私ってこういうのは統一しないと気になって仕方がないんだけど」

 

 ――あれ? そういえばさっきの事件で机の書類が10センチ動いたみたいな理由で板倉さんが怒ってたとか、そんなこと言われてたわね。

 

「哀ちゃん、違うわ。これはいい加減に間隔をあけてるんじゃないの。このスペースにカーソルを合わせて、ドラッグして反転させると……」

 

「こ、これは!」

 

「“疲れた。このままではいつか私は殺されてしまうかも……”……やっぱり――」

 

 隠された文章が出てきてくれたので、あたしはホッと胸を撫で降ろす。

 これはかなりの量の情報が期待出来そうね……。

 

「なるほど、あぶり出しということだったのね。インターネットのホームページなんかで、伏せたい文章をのせたいときによく使われてる」

 

「じゃが、板倉さんはなぜ自分の日記にこんなことを」

 

「たぶん、この日記を誰かに盗み見された時のためにカムフラージュしたのよ」

 

「まさかアリスくん、その誰かって……!」

 

「ええ、おそらく組織の連中よ! どうやらあぶり出しは、大男が来た10日後から使われてるみたいね……」

 

 板倉は用心深い男だ。黒ずくめの男たちを警戒しながら日記を残していたなんて……。

 続けてあぶり出しされた文章をあたしたちは読み進める。

 

“3月17日、また机の上のペンが5㎝移動している……。やはり誰かが事務所に忍び込んでいるようだ”

 

“4月15日、今度は自宅に誰かが。警察は取り合ってくれない。侵入した痕跡も取られたものもないので仕方がないか” 

 

“6月11日、鍵を取り換え、隠しカメラを設置したが無駄だったようだ”

 

“7月6日、誰なんだ、姿を現せ” 

 

“12月19日、疲れた。このままではいつか私は殺されてしまうかも”

 

“1月6日、この恐怖から逃れるために、机の中に侵入者に向けてのメッセージを入れた。『要求を飲む』と” 

 

“1月8日、意外にもすぐ返事がきた。私が入れたメッセージの代わりに、侵入者のメモが入っていたのだ。赤く書かれたOKの文字と共に、怪しげな電話番号が。赤い文字はおそらく血でかかれたもの。他言すると命はない、という意味だろうか”

 

“1月23日、しばらく迷ったが、警察に通報せずに電話することにした。電話に出たのはなんと女だった。女王のようなしゃべり方をする高飛車な女。女の要求は、例の開発中のシステムソフトを、1年で完成させたら高額で買い取りたい、ということだった。どうやら前に来た大男の仲間のようだ”

 

“2月13日、彼らとの連絡方法は電子メールに変わった。私は報酬を前金で口座に振り込むことと、これ以上私の周りをうろつかないことを条件に、引き受けることにした”

 

“12月22日、ダメだ。やはり私には出来ない。なぜならあのソフトは、私が目を患ったからだけでなく、我々人間のために断念したのだから”

 

「に、人間のためじゃと!?」

「…………」

 

 あのソフトって何……? 組織の奴らは板倉にどんなソフトを作ろうとさせていたの……。

 哀の表情が一瞬曇った気がした。何か知っているのかしら――。

 

“2月9日、いよいよ期日が迫ってきた。私は未完成のソフトに、彼らからの報酬分の小切手を添えて別荘のパソコンのそばに隠し、海外に姿をくらますことにする。彼らから、ソフト受け渡しの時間と場所を指定するメールが届くのは、5日後の午前0時。それまでに、なんとか海外に……”

 

 この日記の日付が4日前ってことは、メールが届くのは今から3時間後の午前0時か。どうやら板倉は、そのメールを見る前に外国へ逃げる気だったみたいね。

 

「ねぇ、最後の日記のあとにもあぶり出しがあるみたいよ」

 

「えっ?」

 

 あたしは最後の日記のあぶり出しを読んでみることにする。

 これは、一体どういうこと……?

 

“2月10日、しかし彼らはあのソフトで一体何をしようとしているんだ? 最初に電話に出たあの女の奇妙な言葉が耳から離れない。そう、あまりにも高圧的な女の口調に耐えかねて、何様のつもりだ! ――となじったら、女は笑いながら英語でこう返した。We can be both of God and the Devil. Since we're trying to raise the dead against the stream of the time”

 

「な、なんじゃと!?」

「我々は神であり悪魔でもある。なぜなら……」

「時の流れに逆らって、死者を蘇らせようとしているのだから……」

 

 組織の研究って、死者蘇生とかそういう類の話なの……? 哀を幼児化させたり新一を性転換させたりしたのもその研究の派生から生み出された結果とかそういうこと……?

 

「哀ちゃん……、もしかして哀ちゃんたちがやっていた研究って……?」

 

「それについては想像にお任せするわ。今はどうするか決めるときじゃない? 私の意見は分かるでしょ?」

 

 哀は研究について語ろうとはしない。彼女は板倉の別荘に行こうとしているあたしを止めたいみたいね。

 

「うん。危険だから深入りするなって言いたいんでしょ? でも、あたしの返答も見当がついてるんじゃない?」

 

「虎穴に入らずんば――。バカね……、今度は虎に本当に食われるかもしれないのよ」

 

「でも、あたしなんか食べたらきっとお腹を壊すんだから。タダで済ますつもりはないわ」

 

 もちろん、組織にあたしは負けるつもりはない。少なくともあいつらに痛い目を見させるまでは――。

 

「じゃあ向かうんじゃな。その別荘とやらに」

 

「ええ、もちろんよ。例のソフトも手に入れて、奴らのメールも見てやりましょう」

 

 こうしてあたしたちは群馬県にある板倉の別荘に向かうことにする。

 さあ、何が分かるのかしら……。とにかく油断はしないようにしなきゃ。

 

 

 

 

「およ、哀ちゃんも付いてくるんだ。危ないよ?」

 

「あなたと博士だけで行かせるほうが危険なの。無茶しないように見張らせてもらうわ」

 

 博士の車に哀も乗り込んだのは意外だった。彼女は別荘に行くことに反対していたから……。

 でも、一緒に来てくれたら頼もしい。

 

 

「ところでよくわかったのう。板倉さんの別荘とやらが」

 

「ええ。ラッキーなんだけど、先生に板倉さんの捜索をお願いした人が教えてくれたのよ。彼の行きそうな場所として、別荘とか知り合いの住所を」

 

「なるほどね。でも大丈夫なの? 組織の人間が待ち伏せしてる可能性も考えられるけど」

 

 さすがに哀の警戒心は強いわね。たしかに待ち伏せなんてされたら最悪だけど……。

 あたしは大丈夫だと思っている。だって――。

 

「そこは心配無用よ。板倉さんは周りを彷徨かないように約束させてるし、机が5cm動くだけで気にするような彼を相手にそんな下手は打たないわ」

 

 もし連中が下手を打つと板倉の気が変わってソフトが手に入らない可能性すらある。

 あの連中がそんな愚行を犯すとは思えなかった。

 

「後は板倉さんが殺された事が報道されてるかどうかか」

 

「うん。それもラジオでチェックしてるわ。幸いなことに、今ニュースは逃走中の宝石強盗犯のことで持ちきりだから。何とかなりそうよ」

 

 板倉が死んだことが奴らにバレたら全てが台無しになる。

 でも、今は宝石強盗犯の報道ばかりやっているので、彼の死はまだまだバレそうになさそうだった。

 

 

 

 

 

 ――そして、あたしたちは板倉の別荘に到着した。

 

 

「ふぅ、やっとついたか。後はどうやって入るかじゃが」

 

「鍵あったわよ」

 

「サンキュ♪さっすが哀ちゃん」

 

 あたしは哀が見つけてくれた鍵を受け取り、彼女にお礼を言った。

 やっぱり彼女の助けがあると楽が出来るわ。

 

「おいおい、どこでその鍵を?」

 

「階段の裏にあったわよ」

 

「博士、日記に書いてあったでしょ。5年も会ってない友人が私の別荘から電話してきたって」

 

「だったら、知人ならいつでも入れるように別荘の鍵を隠してあるって考えるのが自然でしょ?」

 

 あたしと哀は玄関の近くに鍵が隠されていると気付いた理由を博士に説明する。

 とりあえず、簡単に中に入れてよかったわ……。

 

「な、なるほど。アリスくんと哀くんは日増しに呼吸が合うようになってきとるのう」

 

「でも、不用心ね。こんな防犯も何もないようなところにソフトを残すなんて」

 

「だからこそよ。誰だってこんなところに大事なソフトを置きっぱなしするはずがないって思うでしょ? 組織の連中が送ってくるメールを受け取らなかったら、連中は不審に思って板倉さんを探してこっちに来る。そしたら、このソフトと小切手を見つけるだろうから、板倉さんは連中と会わずに縁が切れるというわけ」

 

 板倉は余程黒ずくめの男たちと関わりたくなかったのだろう。

 彼がこういう方法を取ってくれたおかげでこうしてソフトが彼らに渡る前に掠め取ることが出来た。

 

「アリスくん。そろそろ時間じゃぞ」

 

「さあて、尻尾を掴んでやるわよ。黒ずくめの男たちの……!」

 

「そう上手くいくかしら……?」

 

「えっ? ぱ、パスワード……!」

 

 あたしがメールを受信してさあ開こうとしたとき、いきなりパスワードの入力画面が出てきて頭が真っ白になる。

 あと10秒……? ぱ、パスワードって何よ……。

 

「あら、消されちゃったみたいね。メール」

 

「迂闊だったわ。早く開かなきゃ消される設定になってたのね」

 

 この前のコンピュータウィルスのときに何を学んだのよ……。あたしは……。

 あいつらが素直にメールを送らないってことくらい予測出来たのに……。

 

「それどころか、このパソコンでメールを開こうとしたことも、そして開けなかったこともバレたわよ。早く逃げるべきだわ。奴らが来る前に……!」

 

「電話が鳴ってる……、多分奴らから……」

 

 あたしらがこの状況にテンパってると、電話機から着信音が鳴り響いた――。

 早いわね……。電話の主はおそらく――。

 

『ただいま留守にしております。ピーという発信音の後でお名前とご用件をお話ください。……ピー』

 

『よう、どうした――? そこにいるんだろ?』

 

「この声は……、ウォッカ」

「ここでメールを開き損ねたことがバレたんじゃ……!」

 

 やはり、電話の主は黒の組織の人間だった。それにしてもウォッカか……。ジンも近くにいるのかしら……。

 

「もしくはどこかで板倉さんにも気付かれないように見張っていたか……」

 

「なんじゃと!?」

 

「こんな不用心な別荘でメールを受け取るなんて奴らも考えないって踏んでたんだけどな。そうだとすると……、まいったな……」

 

「ええ。見張られているなら、状況は最悪。逃げる事も出来ずに仲良く墓場まで案内されるわね」

 

 哀の言うとおり外から見られているならかなり状況は不利だと言える。

 逃走すれば捕まるし、連中は容赦なく殺しにかかってくる。なんとかしないと――。

 

『おい、返事をしろ! その別荘にいることはわかってんだよ』

 

「アリスくん……」

 

『さっさと返事をしねーか。板倉さんよぉ。おい! どうした!?』

 

 ウォッカの苛ついた声を聞きながらあたしはこの状況をどうにか出来ないものかと脳みそをフル稼働させる。

 こんなところで終わらせてなるものか……。よく考えるのよ……。絶対に何か手はあるから――。

 




諸事情というか、原作と違う流れにするために灰原を同行させてみました。
すっかりアリスの相棒ポジションに収まってくれたので使いやすいキャラです。

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