工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった   作:ストロングゼロ

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黒の組織との接触 追跡編

「――すまない。この暗がりの中で電話を探すのに手間取ってねぇ」

 

『はんっ、そんな山奥の別荘を受け渡し場所にするからだよ』

 

 あたしはウォッカからの電話に出る。もちろん、変声機で声を板倉のものに変えて……。

 よかったわ……。バレてないみたいね。

 

「停電のせいでパソコンからメールを受け取り損ねてしまった」

 

『ふーん。いや、ちょっと待て! なんで、停電なのにこの留守電が作動してんだよ?』

 

「……あ、ああ、そのことか。この辺りはちょっと吹雪いたら停電になるから、バッテリーを内蔵してる電話を設置したんだ。それより、よく私がここにいるって、わかったね? まさか、どこかで監視してるんじゃ……」

 

 ふむふむ、停電でのツッコミはパソコンじゃなくて電話機に来たか。

 じゃあ、パソコンが動くってことは知らないみたいね。

 

『してねーよ。心配すんなって。んっ? 今の音はなんだ!?』

 

「……風が窓を叩く音だよ」

 

『ああ、そういや、そっちも結構吹雪いてんのか』

 

「そういうわけで、改めて受け渡し場所を直接教えてほしい」

 

 ウォッカは停電のことを信じてるみたいね、あたしは筆談で博士と哀に明かりをつけるようにお願いした。

 そのついでにウォッカには受け渡し場所を電話で話すように頼む。

 

『ちっ、しょうがねーな。一度しか言わねーから、よーく聞けよ。工事中の賢橋って駅、知ってるよな? 今度東都地下鉄に加わる洒落た駅だ。そこの地下のコインロッカー……、0032番に明朝午前0時にそこの前に来い。もちろんそのソフトを忘れるなよ』

 

「明日は無理だ――」

 

 そこから、あたしはうだうだと理由をつけてウォッカを受け渡し時間を早めるように誘導する。

 明日になると板倉の死がバレてしまうから……。

 

『じゃあ、4時間後……賢橋駅の地下にある0032番のコインロッカーに……遅れるなよ?』

 

「あ、ああ……」

 

 ということで、彼らとの待ち合わせ場所と時間が決まった。

 午前4時に賢橋駅の地下にある0032番のコインロッカーの前ってことね。承知したわ……。

 

「おいおい、奴らの言いなりになってソフトを届けるつもりじゃあるまいな?」

 

「アリスは言いなりになってないわよ。この子、怖がるフリして会話を誘導してたもの。早朝にソフトの受け渡しを行わせるように……。じゃないと板倉さんのこと……ニュースで流れてしまうから」

 

「えへへ。哀ちゃんにはバレちゃったか。まぁ、相手がウォッカだったのはラッキーね。パソコンでメールが受け取れても取引の時間は早めるつもりだったわ。――幸いまだどの局も板倉さんのことを報じてないから。早くここに来た痕跡を消して急ぎましょう」

 

 鈍いウォッカはあたしが話を誘導してることに気付かなかった。

 そう、彼が待ち合わせ時間を決めたんじゃない。あたしが決めさせたんだ。

 

「じゃが出ようにもビートルを出せば見張っている連中にワシらの顔が……」

 

「大丈夫、大丈夫。見張りなんていたら、パソコンの回線が繋がらなかったなんて嘘はすぐにバレちゃうでしょ?」

 

「――そういうことか。じゃから電気を付けろと」

 

 少なくとも、この別荘の照明のオンオフが分かる位置に連中が居ないということはわかった。

 だから、安全に車に乗ることができる。

 

「うん。後は博士の車の中にあるノートパソコンでこのソフトの解析をして、犯罪に利用されるような情報があれば――」

 

「警察に通報して、見張ってもらい……ノコノコやってきた組織の者を逮捕出来るという訳じゃな」

 

「そゆこと」

 

 さて、哀もいることだしそっちの作業に明るい彼女に解析は任せるとしようかしら……。

 

 

 

「ダメね。さっきのメールで予想は出来てたけど、板倉さんと組織の間でパスワードが設定されてるわ。おまけに複製防止のガードもバッチリと……」

 

「あちゃー、これじゃ警察を動かせないわね」

 

 どうやら、パスワードが設定してあるらしくって中身が見れないみたい。

 うーん。困ったなー。コピーも出来ないのか……。

 

「じゃが、奴らは拳銃を所持しとるじゃろ? 銃の取引とか言えば2、3人くらいは――」

 

「足りないのよ。それじゃ……、奴らの数によっては返り討ちに遇うでしょ?」

 

「組織の恐ろしさを伝えられるような証拠でも押さえて、大人数を動かせれば良いけど……連中はそんな痕跡を残すようなマネはしない」

 

「もどかしいのう。来ることがわかっとるのに、手が出せんとは」

 

 少数の警察じゃ、あの連中をどうにかできるとは思えない。

 だからこそ、ソフトの解析をしたかったんだけどそれも出来ないとなると…………アレしかないわね……。

 

「しゃーない。ちっと、キケンだけどあの手しかないか」

 

「まさか、組織と直接やり合うつもり? そんなの――。――っ!? な、なにっ!?」

 

 あたしがある決意をしたとき、タイヤから異音が聞こえてグラグラと車が揺れる。これって……、まさか……。

 

 

「あれま。パンクしてるわね」

「こんな時に……ツイてないのう……」

「この時間にこの山奥じゃタイヤの付け替えには時間がかかる。今回は諦めましょう。危ないマネしようとしてたんだし。丁度いいわ」

 

 博士のビートルがパンクした。哀の言うとおり、タイヤの付け替えなんか間に合うはずがない。

 ここに来て時間切れかー。悔しいな……。

 

 そう思っていると対向車線からライトの光が見えたので、あたしは大きく手を振った。

 

「――っ!? 向こうから車が……! おーい!」

 

「どうかしたんすか?」

 

「いやー、この車がパンクを……」

 

「あたしたち、どーしても東京に早く帰らないといけないんですぅ。何とか乗せてもらうことってできないでしょうかぁ」

 

 ヒッチハイクの真似事をしてみたら、意外なことに車が停まってくれた。

 ダメ元だけど、何とか交渉してみましょう……。

 

「うーん。――じいさん、この辺りの道知ってるか?」

 

「まぁ、一応は……」

 

「よし、じゃあ、じいさんは助手席に……姉ちゃんとお嬢ちゃんは後ろに乗んな」

 

「――ごめんなさい。お姉さん、お休みになっていたのに……」

 

「いいのよ。ちょっとウトウトしてただけだから」

 

 車の持ち主らしき男は親切にもあたしたちを送ってくれると言ってくれた。ラッキー。天はまだあたしを見放してなかったわね……。

 あたしと哀は後部座席に……、博士は助手席に乗り込んだ。

 

 

「うわぁ! すごいです! これって外車ですよね♪これは、お兄さんの車なんですかぁ?」

 

「おうよ。もう乗り飽きて買い替えようって思ってる車さ」

 

「景気が良いのね。こんな高級車を簡単に手放して買い替えようなんて」

 

「彼、こう見えて大会社の跡取りなのよ」

 

「ふぇーっ、お金持ちなんですねー」

 

 ヒッチハイクした車は高級外車で左ハンドルだった。

 どうやら運転手の男はかなり金持ちらしい。服装にはそんなにお金かけてなさそうだけど……。

 まぁいいわ。金持ちでも何でも、無事に東京まで帰れるなら……。

 

 

 そう思っていた矢先、対向車線のトラックがクラクションを鳴らす――。

 

「――っ!? ちょっと、センターに寄ってるわよ」

 

「きゃっ!」

 

 哀が男の運転に文句をつけると彼は慌ててハンドルを切った。

 ま、マジで危ないじゃない。乗せてもらって言いたくないけど、運転はちゃんとしてほしい。

 

「あ、あっぶねー! やっぱ怖ぇな。雪道は――」

 

「まぁまぁ、焦らず安全運転で行きましょう」

 

「……あれぇ? 今、変な音しませんでしたぁ?」

  

 ハンドルを急に切られてその重力でバランスを崩したとき、後ろから異音がしたことにあたしは気付く。何の音だろう……。

 

「ん? 多分、トランクに乗ってる荷物だろう」

 

「ちょっと! タバコ吸わないでよ! 私がタバコが嫌いなこと忘れたの?」

 

「ああ、そうだったな」

 

 男の人は返事と共にタバコを吸おうとしたが、隣にいる女が怒りながら止めていた。

 うわー、タバコくらい良いじゃん。この人の車なんだから……。

 

 

「東京へは、そこを左じゃよ」

 

「おっと、雪も止んだし3時前には着くと思うぜ」

 

「ん……?」

 

 男は左にハンドルを切る直前に何故かワイパーを起動させる。いや、そこはウィンカーを出すべきでしょ……。

 

「でも、なんで群馬に? お孫さんたちを連れてスキーっすか?」

 

「あ、ああ。まぁ、そんなところじゃ」

 

「きゃっ!」

「また、センターに寄ってる……」

 

 世間話もそこそこに再びセンターライン付近を走ってクラクションを鳴らされるこの車……。

 なんか、この短時間にこういうこと多くない? 大丈夫なのかしら……。ていうか、この人は本当に――。

 

「ちょっと! しっかり運転してよ!」

 

「ああ、悪い……。やっぱ雪道なんて運転するんじゃなかったぜ」

 

 うーん。雪のせいだとは思えないんだけどね。この運転の怪しさは……。

 ちょっとカマかけてみようかしら……。

 

「でも、あれですねぇ。車検前に事故ったら、費用とか上がりますしマジで気をつけた方が良いですよ」

 

「しゃ、車検?」

 

「あ、はい。今月なんですよね? この車の車検……。もしかして、終わらせたんですか?」

 

 あたしは車検の話を振ってみた。何気ない会話を演出しながら……。

 男の人はいきなり車検の話が出てきてちょっと驚いてるみたいだ。

 

「いや、まだだけど。なんで?」

 

「そこのシールに書いてましたから、今年の色で大きく“2”って」

 

「あ、ああ。そっか。そういや、ハガキが届いてたの思い出したぜ」

 

 男はようやく思い出したような口調で車検のハガキが届いたと口にする。

 そっか。ハガキが届いたんだー。なるほどね。

 

「でも、よく見えたわね。雪がかかって私には何も見えないわよ」

 

「うん。さっき、トラックが横切るとき光が当たって見えたのよ。ほら……“2”って書いてあるでしょ」

 

「バカね。あれだと前から見ると“5”じゃない。車検は今月じゃなくて5月よ」

 

 哀が何で車検が2月だというシールが見えたのかと疑問を呈するので、あたしはライトに照らされた時に数字を見たと説明をする。

 しかし、彼女はバカにしながらあたしが数字を裏返しに読んでいることを指摘してきた。

 

「ふえっ? だってお兄さん、ハガキが来た…………なんていい加減なこと言わないでくださいよぉ。やっぱ、お金持ちだとその辺がルーズになっちゃうんですかぁ?」

 

「お、おう。そーなんだよ。全部人任せにしちまって」

 

 哀のツッコミに呼応して、あたしは男がいい加減な感じで話を合わせたのかと質問すると、彼は焦りながら肯定した。

 あらあら、あたしたちはもしかして面倒に巻き込まれたんじゃないかしら……。

 

「ところで大きいお姉ちゃんの方は何を聞いてるの?」

 

「あっ、すみません。ちょっと遊び過ぎちゃって、今日のニュースを聞いてるんですよ。テレビも全然見てないんで」

 

 隣の女の人があたしのイヤホンについて質問してきたので、正直にニュースを聞いてると答えた。

 うん。板倉の死については報道されてないわね……。

 

「へぇ、何か面白いニュースでもあった?」

 

「そーですね。今、賑わせているのはアレですね。群馬県の方に逃走中の宝石強盗犯です。気を付けてくださいよぉ。思わず出くわすなんて偶然ありますからね」

 

「「――っ!?」」

 

 彼女がニュースについて聞いてくるものだから、宝石強盗犯のニュースが賑わせてると告げると二人はハッとした表情をする。

 やっぱり、そういうことなのね……。

 

「ほう。捕まるんかのう。あれは」

 

「大丈夫だと思うわよ。だってほら、検問を至るところで張りまくってるみたいだし」

 

 そこまで話したとき、ちょうど群馬県警の検問に遭遇した。

 あの人は確か――山村刑事じゃない……?

 

「免許証を拝見しても良いですか?」

 

「ん? あ、ああ」

 

「今日はどんな用件でこちらに?」

 

「いや、ええーっと、その……」

 

「あれ? 山村刑事じゃないですか。例の宝石強盗犯を張ってるんですか?」

 

 あたしは山村刑事に話しかけた。この検問は現在逃走中の宝石強盗犯を捕まえるためのものだろう……。

 

「き、君はアリスちゃん。そうなんだよ。三人組の強盗犯でね。群馬県の宝石店を襲ったあとに逃走車を乗り捨てて逃げているんだ。一人が左の太ももを怪我してるからそんなに遠くまで逃げてないと思うけど」

 

「へぇ、一人が怪我してるんですね」

 

「そう。あのとき僕は宝石店の近くでちょうど聞き込みをしていてね。逃げる強盗犯に向かって言ったんだ――」

 

 なんか、山村刑事は威嚇射撃したつもりが強盗犯の一人に当たってしまったらしい。

 それって下手すれば大惨事じゃない? ということで強盗犯の一人は大怪我をしてるみたいだ。この人、なんでこんなに誇らしげなのよ……。

 

 で、その強盗犯はどうやら予め用意していた2台目の車か、偶然通りかかった車を盗んで逃げてるみたい。

 

「そんな車を見なかったかい?」

 

「うーん。他人の車に乗ってる人でしょ? 見たわよ……」

 

「えっ?」

 

「あたしたちよ。博士の車がパンクしちゃって。偶然通りかかった、親切なこの方たちが乗せてくれたの」

 

 あたしは山村刑事に自分たちがこの車に乗った経緯を話した。

 

「へぇ〜〜、阿笠博士も一緒なんだ。じゃあ博士の車はどうしたんですか?」

 

「ディーラーに電話したら、明日、取りに行ってくれると言われたからキーを挿しっぱなしにして停めているんじゃよ」

 

「じゃあ、じいさんの車、危ねーかもな」

 

「そ、そうね。その強盗犯に狙われてるかも」

 

 博士の車はディーラーが取りに来る手筈になっていると山村に伝えると男と女は口々に彼の車が危ないと煽ってきた。

 

「その可能性はありますね。おや? あなたたちの声……、どこかで聞いたことがあるような……」

 

「気のせいでしょ」

「も、もう行って良いだろ?」

 

「じゃあ、あなたが足にかけているジャケットを取っていただけませんか?」

 

 山村は二人の声に聞き覚えがあると口にして、女が膝にかけていたジャケットを取るように促す。

 多分、怪我を隠してると考えたんだろう……。

 

「わ、私たちを疑ってるの? ほら、足なんて怪我してないわよ!」

 

「ほ、ホントですね。じゃあ、お気をつけて!」

 

 という流れであたしたちは検問場所を通過して東京へと向かった。

 待ち合わせ時間には間に合いそうね……。

 

 

 

 

 

「もう少しで着くぜ。お目当ての賢橋駅に」

 

「ちょっと、タバコ! 何回言わせるのよ!」

 

「おお、悪いな……」

 

 都内に入ってから、男はタバコに火を付けると女は怒ってそれを咎めた。

 男は仕方なしに窓をあけてそれを捨てようとする。

 

「これ、ポイ捨てはいかんぞ! ちゃんと灰皿を使わんか! ん? 小銭? おいおい、いくら金持ちだからって、こんな罰当たりなことを……」

 

 博士が車に備え付けられてる灰皿を開けると、中に吸い殻と灰まみれの小銭が入っていた。

 博士はこの状況が理解できないみたいね……。

 

「まぁまぁ、博士。仕方ないわよ。この二人……宝石強盗犯なんだから」

 

「「――っ!?」」

 

「な、なんじゃと!? どういうことじゃ、アリスくん」 

 

 あたしはようやくずっと言いたかったことが言えた。

 そう、この二人は群馬県の宝石店を襲った強盗である。

 

「この車はそのお兄さんの車じゃないのよ。たぶん山の中で逃走用の車を乗り捨てた後、通りがかった人から奪った車。この車の本当の持ち主は煙草を吸わない人で、料金所とかですぐ払えるように、灰皿を小銭入れとして使ってたの。それに気づかず吸い殻を入れてしまったから、小銭に気付いた後も灰皿として使ってしまっていたって訳。あたしたちを乗せるまではね」

 

「あ、あの小銭は煙草嫌いの私がやったいたずらで……」

 

 あたしは博士に吸い殻まみれになっている小銭の理由を話した。

 この事実だけでもこの車が彼のものではないという理由になるが――。

 

「この車があのお兄さんのじゃないって証拠なら、他にもあるわよ。左ハンドルに慣れていないからつい、いつもの運転席から見える位置を走ってたんでしょ。だから車がセンターライン寄りになって、対向車から注意されていたのよ。あんなにクラクション鳴らされたら、運転に慣れてないって言ってるようなものだわ」

 

「哀ちゃんの言うとおり、お兄さんの運転は下手とかそんな次元じゃなかったの。バックするとき思わず、後ろが見えにくい左側を振り返っていたし、右手でのシフトチェンジに苦労してたのもそのせいよね。それにカーブを曲がる時、ウィンカーを出さずにワイパーを動かしてたでしょ? 左ハンドルの車は日本車と違って、レバーが左右逆についてるのを忘れてたのか、知らなかったのかわかんないけど」

 

「う、うう……」

 

 哀とあたしは男の運転があまりにも酷かったと告げる。

 明らかに彼は外車に今日初めて乗る人の動きをしていた。買い替えるくらい乗っていたと豪語していたのに……。

 

「まだあるわよ? 最初にこの車に乗った時、変だと思ったの。左側のドアを開ければすぐに乗せられるのに、なんで道路側から乗せたんだろうって。検問に引っかかった時、山村刑事の話を聞いてわかったわ。お姉さんが座って隠しているその座席には、足を撃たれてさっきまでそこに座っていた、もう一人の仲間の血がついてるってことが。そのもう一人の仲間は、おそらくトランクの中。検問を抜けるために、そこに身を潜めてるのよ」

 

 もう一人の仲間は後ろのトランクの中に居るだろうし、物音も聞こえた。

 その上、女が座っている席の下にはもう一人の仲間の血も付いていると思われる。

 つまり、ちょっと調べればあたしの言ったことは証明できるのだ……。

 

「じゃが、どうしてわしらを車に……」 

 

「その原因は私でしょうね。理由は検問を抜けるため。私みたいな小さな子どもと老人を連れていたら、家族旅行だと警察に思わせて油断させられるでしょ? だからアリスは気付いたのよ、この二人の正体に。人の車を奪ったうえでそんなことをするのは、逃走中の宝石強盗犯しかいないってね」

 

 あたしと博士だけならあるいは警戒して車を停めなかったかもしれない。

 小さな哀が居たからこそ逃走中の強盗犯にとって絶好のカモフラージュとなると考えて、あたしたちを車に乗せたのだろう。

 

「……へ~、随分と賢いお嬢さんたちじゃない。でもあんまり賢すぎるのも、考え物ね!」

 

「あ、哀くん! アリスくん!」

 

 宝石強盗犯の女はあたしと哀に銃を突きつけて勝ち誇った顔をしていた。

 やっぱり、真相を言ったらこう来るわよね……。

 

「へっ! バレちまったんなら、しゃあねぇな。じいさんたちにはもう少し俺たちに付き合ってもらうぜ。さぁて、問題はこのジジイと女共をどこで始末するか……」

 

「そうね~、この三人が行きたがってた工事中の賢橋駅っていうのはどう? あそこならだれもいないし、工事の作業員は夜が明けないと来ないしね~。それよりあなた、どうして検問で私たちの事警察に言わなかったの? あの時はもうわかってたんでしょ? 私たちが宝石強盗犯だって」

 

「時間をロスしたくなかったのよ。あそこであなたたちを警察に引き渡せば、同乗してたあたしたちも事情聴取されて、大事な約束に遅れちゃうし、あなたたちならいつでも捕まえられるもん」

 

 あたしは検問していたのが山村で幸運だと思っていた。彼ならこの人たちをきっと見逃すと思ったから……。

 事情聴取なんてされたら遅刻は確定だし、この人たちに賢橋の近くまで連れてきてもらったあとで捕まえようと考えたのだ。

 

「へぇ……、強気ね。好きよそういいうの」

 

「へっ! 生意気な口が叩けるのも今のうちだ! 助けて~って泣いても、許してやらねぇからな……ふぁぁっ……」

 

 とりあえず腕力がありそうな男には眠ってもらうことにする。

 まぁ、運転手が眠ったら危ないんだけど……。

 

「えっ!? ちょ、ちょっと!」

 

「当分起きないわよ、麻酔針を打ち込んだから」

 

「麻酔針……!?」

 

「何かに、掴まって!!」

 

 そして、あたしは思いきりサイドブレーキを引くと、車はドリフトして停車した。

 よかったー。ちゃんと停まってくれて……。

 

「こ、この女! 何てことを!」

 

「やめておきなさい。そんなしょぼいモデルガンじゃ、宝石店はだませても私の目は誤魔化せないわよ。本物の銃なんて見飽きてるんだから」

「最後の発言は問題だけど、そういうことらしいわよ。お姉さ〜ん♪」

 

 銃をこれみよがしに見せつける女に冷静な顔をして哀はモデルガンだと指摘する。

 いろいろな意味でお粗末な強盗犯だったわね。ここまで送ってくれて言うのもアレだけど……。

 

「な、なんなの!? なんなのよ、あんたたち!」

 

「藤峰愛梨寿……探偵よ。知らないかしら? 結構有名なんだけど♪」

 

「あ、あの女子高生探偵の……」

 

「哀ちゃん、ちょっと外に出ててね」

 

 哀を外に出したあたしはボール射出ブレスレットを使ってサッカーボールを巨大化させる。

 出力を最大にするとアドバルーンくらいの大きさになるこのボールの圧力に負けて女の宝石強盗犯は呼吸が困難になり気絶してしまった。

 

「じゃあ、博士! 警察を呼んでおいてもらえるかしら? 哀ちゃんもここに残ってなさい!」

 

「アリスくん! 君は!?」

 

「あたしはもちろん、駅に行くのよ。賢橋駅に――。あ、あと博士……行く前にこれをお願い」

「ああ、これならすぐに……」

 

 強盗犯を博士と哀に任せてあたしは賢橋駅に向かった。

 このときあたしはまだ知らなかった。今までにないピンチが襲ってくることを――。

 

 

 




ここまでは、割と原作通り……。
次回はロッカーに入れないアリスがどうするかっていう話なんですが……。正直書いててこれで良いのか自信がなくなってしまいました。

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