工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった   作:ストロングゼロ

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社長令嬢誘拐事件 後編

 やっぱり、麻生の他にも犯人が居た。おそらく、誘拐されて監禁された場所からもう一回誘拐されたのね……。

 可哀想な子よね……。二回も誘拐されるなんて――でも、きっと助け出すから。

 

 犯人からの電話の際に隠れている場所がわかった。晶子がヒントを与えてくれたのだ。

 彼女によると、どこかの学校の倉庫でさらに“煙突”が見えるらしい。

 

 学校はたくさんあるけど、誘拐からはまだ全然時間は経ってない。おそらく犯人は――。

 

「先生、晶子ちゃんはそう遠くに行ってないはずです。煙突が見える学校となれば、限定はされると思うのですが」

 

 事件からの時間がそう経ってないことから、あたしは犯人は近くの学校にいるに違いないと推理した。

 そもそも、麻生の誘拐によってたまたまホテル付近で晶子を見つけて誘拐を企んだのだから、これは計画的な犯行ではなく突発的な犯行。それはわざわざ学校の倉庫なんかに隠れていることからも推測できる。

 犯人は逃走などの準備をしておらず、移動手段は徒歩の可能性が極めて高い。

 

 つまり、徒歩圏内の煙突が見える学校というヒントがあるなら、かなり場所は絞られるということだわ――。

 

「そ、それはそうだが。煙突が見える学校っつっても」

 

「地図を見せてください。――ここと、ここと、ここ。あと、こことここね。煙突が見える学校はこの5箇所」

 

 あたしは近隣の煙突の場所をマーキングして、それが確認出来そうな学校を5箇所見つけ出した。

 5箇所か……。確かにかなり絞れたけど――一個ずつ潰すとそれなりに時間がかかりそうね……。

 

「よし! 手分けして全部の学校を回るぞ!」

 

「学校に電話したほうが早いかもしれませんよ。休日でも誰かしらいると思いますし」

 

「電話だと?」

 

「そうです。もちろん、学校の職員の方には犯人が居たと気付いても知らん顔してもらいましょう。あたしたちが到着するまで。とにかく一刻を争います! 移動は最低限にして、最短で犯人に到達するようにしましょう!」

 

「な、なるほど。片っ端から学校に電話だぁ!」

 

 小五郎は手分けして5つの学校をしらみ潰しに探すと言っていたが、あたしは電話して確かめて貰ったほうが早いと思った。

 刺激すると晶子が危険に晒されるデメリットはあるが、特定が遅れると殺されてしまう可能性かある。

 その可能性と天秤にかけると、やはりスピード重視の方がいい。

 

「アリスちゃん、何をしてるの?」

 

「う〜ん。倉庫の窓から見ただけで煙突だと言ってたけど、見間違えかもしれないでしょ? タワーとか、ビルとか……、高い建物なら角度によってはそう見えるから――。蘭ちゃんも一緒に地図から探してみてくれない? あたし、土地勘ないのよ」

 

 あたしは第二の可能性として晶子の見間違えの線を疑った。

 もしかしたら、別のものを煙突だと思い込んでいる可能性も大いにあるのだ。

 

 この辺りの地理には詳しくない。新一の記憶から薄ぼんやりと付近のマップは抽出出来るが、推理に必要な知識やエピソード記憶ほど鮮明ではなかった。

 だから、蘭にも手伝ってもらって地図上からそれっぽい場所を探す。

 

「う、うん。高い建物……、高い建物……」

 

 蘭はあたしと一緒に地図とにらめっこして、犯人が居そうな学校を探すのを協力してくれた。

 晶子は見つかっていない。それは、電話でのローラー作戦は上手くいってないということ……。煙突の見える学校にいる可能性が少なくなっている――。

 

「電話が繋がらない学校が一箇所。ここに違いない! 行くぞ!」

 

 小五郎は唯一、電話が繋がらなかった学校が正解だと予測してその学校に向かって走っていく。

 そこかもしれないけど、あたしと蘭はまだ地図を見ながら、他にも犯人がいる可能性がある学校ないか探し続けた。

 

 

「ねぇ、アリスちゃん。この高層ビルはこっちの学校からなら煙突に見えるかも。この二ツ橋中学校なら」

 

「ほ、本当ね。蘭ちゃん! すごいわ〜〜!」

 

「んっ……んんっ……、あ、アリスちゃん、いい匂いがする……」

 

 あたしは高層ビルがちょうど煙突に見えそうな学校を見つけた蘭を思いっきり抱きしめた。

 さっきも思ったけど、こうしていると心地よい。いつまでもこのままでいたいと思っちゃう。

 でもダメよ。いまは晶子を一刻も早く救わなきゃいけないから――。

 

「あたしたちも急ごう! ここなら走ったほうが早いわ!」

 

「う、うん!」

 

 あたしは二ツ橋中学校へと全力でダッシュした。蘭も後ろからついてくる。

 急がなくちゃ、犯人が晶子を殺すかもしれない――。

 谷がお金を用意したかどうかを確認をしたら彼女は用済みになるのだから――。

 なるべく引き伸ばすように頼んだけど、そろそろ危ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「商談は成立した――つまりおまえの役目は終わったって事だ!!」

 

「……んんっ!」

 

 あたしが二ツ橋中学校の体育倉庫に駆けつけたとき、犯人はちょうどナイフの鞘を口にくわえながら抜いているところだった。

 

 あいつ、許せない――!

 

「クックック……! 死ね!」

 

「させないわよ! うっ……!」

 

 あたしは犯人の横をすり抜けて晶子を抱えてくるりとナイフを躱そうとした――けど、肩にナイフが掠ってしまう。

 あはは、かっこ悪い……。でも、晶子は無事で良かったわ。

 

「――っ!? てめぇ! 誰だ!?」

 

「い、痛〜い! もう大丈夫よ。よく頑張ったわね」

 

 肩の痛みに耐えながら、笑顔を作り晶子の口を塞いでいるテープを剥がした。

 あとは、この男を捕まえて事件は解決ね……。

 

「このアマ! 何を余裕ぶっこいてやがる!」

 

「っさいわね! こんなに可愛い子を殺そうとするなんて信じられないわ! 許さないんだから〜〜〜っ!」

 

 あたしは側に転がっていたサッカーボールを思いきり犯人の腕に向かって蹴飛ばした。

 すると、ボールは犯人の腕に強烈な衝撃を与えて彼はナイフを手放す。

 おおーっ、さすが新一の身体能力。サッカーボールがまるで凶器ね……。女の子になって筋力が落ちても大した威力だわ……。

 

「ぐはぁっ――! ……くそっ! ナイフが……!」

 

 犯人は自らの腕を押さえて、かなり痛がっていた。

 悔しそうな顔をしているわね。まったく、お金のためにこんなに酷いことをするなんて許せないわ。

 

「ふふーん。女だからってナメないでよね」

 

「お、お姉さん、誰?」

 

 晶子はあたしの顔を見て、何者か尋ねる。そりゃそうだよね。いきなり知らない女が現れて大立ち回りをしてるんだもん。

 

「あ、あたし? あたしは藤峰愛梨寿……、探偵……の見習いかな?」

 

 さすがに“探偵”とは恥ずかしくてまだ名乗れなかった。

 工藤新一の知識や記憶はあるけど、あたしはまだまだ探偵として彼よりも未熟。だから、こうやって、体を張るようなことになっている。

 藤峰愛梨寿の探偵物語は今日始まったばかりなんだ――。

 

「そっちこそ、ナメんなよ! 男に力で勝てると思うな! こいつで叩き殺してやる!」

 

 犯人は体育倉庫にあった金属バットを掴みそれを振り上げて嫌な笑みを浮かべる。

 こいつ、殺人がどんなに重い罪なのか知らないのかしら? 気軽に殺すなんて言ってんじゃないわよ! 絶対に負けないんだから。

 

 あたしは犯人を睨みつけて口を開いた。

 

「あら、それはどうかしら? 強い女の子だって世の中にはいるのよ。ほら、あなたの後ろにも」

 

「はぁ? そんな手に――」

 

 あたしは全力疾走でしかも近道をしてここまで来た。だけど、そろそろ追いつくはずだ。

 空手の都大会優勝者で、とんでもなく強いあの人が――。

 

「はぁああああっ! とりゃあーーーーッ!! はぁっ! とうっ!!」

 

 蘭は目にも止まらない打撃技の連発で犯人を背後から瞬く間に蹂躙する。

 こんなに強いなら金属バットなんて意味を為さないわね。

 空手の都大会優勝でこの強さ――全国大会ってあたしの世界じゃ知らないような戦いが繰り広げられてそう……。

 

「ひでぶっ……!」

 

「あらぁ……犯人さん死んじゃってないわよね〜〜」

 

 ちょっとだけ、犯人が気の毒になるくらいボコボコにされちゃったのであたしは苦笑いした。

 将来、この子の旦那さんになる人は絶対に尻に敷かれるでしょうね……。

 そんなことをボーッと考えていたあたしの元に蘭が駆け寄って来た。

 お見事だったよ。おかげで助かっちゃった。

 

「アリスちゃんのバカ!」

 

「ふぇっ!?」

 

 彼女は涙目になりながらあたしのことを叱った。

 あまりにも大きな声でびっくりしてしまい、あたしは声を失ってしまう。

 

「危ないことしちゃダメだよ。こんな怪我までして……、アリスちゃんに何かあったら……」

 

 蘭は涙を流しながら肩の傷を見ていた。こんなのはかすり傷で大したことないんだけど、彼女にとっては大事だったみたい。

 でも、あたしには耐えられなかったんだ。目の前で人が殺されるということに……。だから、勝手に体が動いちゃってたんだよ――ごめん。

 

「ら、蘭ちゃん……ありがと。守ってくれて。とっても嬉しかったわ」

 

「うん。アリスちゃんも無事でよかった」

 

 あたしが蘭の目を真っ直ぐ見つめてお礼を言って彼女をそっと抱く――。

 すると、彼女はあたしを抱き返してくれた。

 こうしてお互いの体温(ぬくもり)を感じていると癒やされる――時が止まって欲しいと思うほどに。

 

 何故こんな気持ちになるのだろう――この謎はシャーロック・ホームズなら解けるんだろうか……?

 

 

 

「おまえが犯人だな!? このっ! このっ! 誘拐犯は名探偵毛利小五郎が召し捕ったりぃ!」

 

 しばらく蘭と抱き合っていて、犯人を縛り付けようとか考えてると小五郎が到着した。

 谷の家の使用人にここにいると伝えてもらったからだろう。

 いやー、最初から割と危ない目に遭っちゃったけど一件落着で良いのかな……。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 結局、最初の誘拐事件は晶子の狂言だった。麻生に頼んで仕事ばかりしている父親の気を引きたかったみたい。

 

 子供の発想って怖いわ。段階を何段階も蹴っ飛ばしてるみたいで……。麻生、あんたは乗ってないで代案を考えなさいよ、代案を……。

 

 そんな娘の話を聞いて、谷も仕事に熱中するのも改めるみたいだし、麻生も無罪放免になって、めでたしめでたし……かな。

 きっと、ハッピーエンドだよね。

 

 

「助手に的確な指示を与えて娘の居場所をつきとめるとは――さすが名探偵ですな!」

 

「いやぁ、すべてわたしの教育と経験のタマモノですよ!」

「今日もいい勉強が出来ました! 毛利先生!」

「だーはっはっはっ! お前もよく働いてくれたな! 自慢の助手だ!」

 

 依頼人の谷に事件を素早く解決したことを褒められて小五郎は有頂天だった。

 あたしが彼に頭を下げると、笑いながら良くやったと頭を撫でてくれる。

 なんか、運動会や学芸会でお父さんに褒めてもらってるみたいだ。ちょっと嬉しかったり。

 

 

「ではこのお礼はまた後日……」

 

「ハイハイ。待ってますよ〜」

 

 結構大きな会社の社長からの依頼だったし、スピード解決もしたから報酬はかなり高いんだろうな。相場とか知らないけど……。

 小五郎のニコニコ加減から想像すると、半年依頼がなかったことをチャラにできるくらいなんだろう。探偵って、そんな一発当てたらデカイみたいな仕事なのか……。

 

 

「ありがと。探偵……見習いさん」

 

「バイバイ。お父さんにいっぱい遊んでもらいなさい!」

 

「うん!」

 

 晶子があたしにお礼を言ったので、彼女の頭を撫でると彼女は嬉しそうな顔をして、父親と手を繋いで帰って行った。

 あんな笑顔を見られるなら――探偵を頑張るのも楽しいかもね……。

 

「やったね。探偵見習いだって。今日のアリスちゃん。謎解きに、がむしゃらで――新一みたいだったよ」

 

「あははっ! でも、蘭ちゃんが二ツ橋中学校を見つけてくれたし……あたしはまだまだ名探偵には程遠いかな……」

 

 そう、今日一日謎解きをしてみて思ったのが、あたしは完全にコナン君みたいにはなれないみたいだ。

 新一の知識や経験は頭の中にあるけど、考えるのはあくまでもあたし自身。だから、まったく同じ動きなんて取れないのだ。

 

 ただ、良い面もあった。それは、体が大人という面だ。

 コナン君は子供だから戯言としか発言は取られないけど、あたしは助手として小五郎に意見を一応は聞いてもらえる――つまり、漫画よりも素直にアドバイスを受け入れてくれるってわけ。

 

 彼の頭の中で“助手の手柄イコール師匠である自分の手柄”と変換してもらっているみたいだから、良い意見はウェルカムみたいだ。

 これは捜査をする面では楽になるに違いない。あたしも堂々と助手を名乗れるわけだし……。

 

 しかし、一抹の不安は本当に毛利小五郎の助手として認められたかどうかだ。もしかして彼は今回の事件限定で認めたのかもしれない。

 それは困る。あたしはこの先、黒の組織から薬の情報を手に入れるまで小五郎の助手でいるつもりなのだから――。

 

 

 

 

「ねぇお父さん、アリスちゃんのことだけど……、これからも助手としてウチに来ても良いのかな?」

 

「――助手かぁ」

 

「お願いしま〜す」

「ダメかな? アリスちゃん、とっても頑張ったと思うんだけど」

 

 帰りのタクシーであたしの不安を感じ取ったのか蘭は小五郎に念押しのようにこれからも助手で居ても良いのか尋ねてくれた。

 小五郎は顎を触りながら少しだけ考えているみたい。

 

 あたしは『気が変わった』って言われるのではと怖かったが、彼はニンマリと笑ってこちらを見た。

 

「いいぞいいぞ! こいつが来たとたんに仕事が来て、スムーズに解決できたんだ! 何より、こいつと居ると気分がいい! いくらでも勉強させてやるよ! はーはっはっは!」

 

 小五郎はポンとあたしの背中を叩いて正式に彼の助手になることを認めてくれた。

 あー、良かった〜。これで目標に一歩近付ける。

 ここから彼を名探偵にするのは大変かもしれないけど――頑張るわ。

 

「良かったね」

 

「うん。蘭ちゃんのおかげだよ。知り合ったばかりのあたしのために、ここまでしてくれてありがとう。これからもよろしくね」

 

「う、うん。……な、なんだろう。やっぱり見つめられるとドキドキするよ……」

 

 あたしは蘭の手を握りしめて彼女に改めてお礼を言った。

 そんな彼女の顔はいつもより少しだけ赤くなっている気がする。風邪かしら?

 

 藤峰愛梨寿――毛利小五郎の助手として探偵デビューです。

 

 




これで最初の事件は終わりです。推理モノは初めて書きましたが難しいですね。
今回は麻酔銃が無かったから当然ですが、せっかく助手になったのだからなるべく使わずに解決出来ないものかと考えております。
無理そうな回は諦めますが……。
あとは、アリスと色んな女性キャラを仲良くさせたいとかそんな感じで原作と差別化ができればと思います。
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