工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった   作:ストロングゼロ

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劇場版に初挑戦です。見切り発車ですが、甘めに見てあげてください。


瞳の中の暗殺者 その1

「蘭ちゃん、ほら喉乾いたでしょ? 好きな方選びなよ」

 

「ありがと。アリスちゃん」

 

 あたしと蘭は二人でトロピカルランドに遊びに来ている。

 夏休みに新一が居なくて寂しそうな蘭をあたしが誘ったのである。あたしの中にある新一の記憶の中で、この場所での記憶は1番鮮明だ。

 新一があたしになる寸前だったからかもしれない。まるで自分自身の経験のように色濃く脳裏に焼き付いてるのだ。

 

「園子ちゃんが風邪引いて、今日は二人きりのデートだし。蘭ちゃん独り占めしちゃうんだから」

 

「もー、変なこと言わないでよ〜〜」

 

 あたしは蘭にコーラを手渡しながら二人きりのデートを堪能すると嘯くと、蘭は恥ずかしそうに頬を染める。いつも照れる彼女は可愛らしい。

 

「次はジェットコースター乗る? それとも――」

 

「あっ! もうこんな時間……! アリスちゃん、こっち来て!」

 

「ふぇっ? う、うん!」

 

 次にどこに行こうか尋ねると蘭は時計を見て慌てながらあたしの手を引いて走り出す。

 そんなに急いで、どこに行くつもり何だろう……。

 

 

「この広場って……」

「間に合った……、十……、九……」

 

 トロピカルランドのこの広場はとても見覚えがある。来たのは初めてなんだけど……。

 蘭は時計を見ながらカウントダウンを始める。

 

「二……、一……!」

「わぁあああっ! 噴水が!」

 

 突如勢いよく吹き出す噴水。あー、やっぱりこれってあのとき新一が魔法みたいな感じで蘭に見せていた噴水だ。

 よく覚えてるわ。彼が蘭を楽しませようと色々と考えていたことも。

 

「ここ、2時間おきに噴水が出るの。前に新一が――」

「素敵な魔法をありがとね。見せてくれて嬉しいよ。蘭ちゃん」

「う、うん。そんなに喜ぶとは思わなかったけど……」

 

 あたしは水の壁に囲まれながら、蘭を抱きしめてお礼を言った。

 彼女に大事にしてもらえてると思って嬉しかったのだ。

 

「見て蘭ちゃん! 虹よ!」

 

「ホントだ。あのときと一緒……」

 

「じゃ、乾杯しよっか? あ、でも気を付けて開けないと前みたいに炭酸が吹き出るから気を付けないと……」

「えっ……?」

 

 綺麗な虹も見れたことだし、あたしが蘭にジュースの缶を開けようと提案すると彼女は首を傾げながらこちらを見ている。どうしたんだろうか……。

 

「どしたの? 蘭ちゃん。開けてあげようか?」

 

「ううん。大丈夫だよ。新一から聞いたのかな……?」

 

 蘭とあたしはこの日、目一杯二人きりのデートを楽しんだ。

 ていうか、外出して事件に巻き込まれないのって何日ぶりだろう……。最高の一日だったわ……。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

『――でね、新一が連れて行ってくれないから、アリスちゃんとトロピカルランドに行ったのよ』

 

「わ、わりー。事件が立て込んでてよぉ」

 

『そういえば、新一ってアリスちゃんに私とトロピカルランドに行ったこと話した?』

 

「えっ? どーだったかな。覚えてねーけど、どうしたんだ?」

 

 いつものように蘭に公衆電話からあたしは新一の声で電話をかける。

 彼女は何故かあたしに新一に自分と彼がトロピカルランドに行ったことを話したか質問してた。なんか変なこと言ったっけ……。

 

『ううん。何でもない』

 

「あー、アリスさんだー」

 

『新一、なんか声が聞こえたけど誰かいるの? アリスって聞こえた気がするけど……』

 

 電話ボックスの後ろで哀のクラスメイトの歩美があたしに気付いて声をかけてきた。

 結構、大きな声で蘭にもちょっと聞こえちゃったみたいね……。

 

「うぇぇっ!? アイス落としたって子供が言ってたぞ。ちょっと事件で忙しいからよー。また電話するわ!」

 

『えっ? 新一? ちょっと、新一!』

 

 何か変な雰囲気になったのであたしはさっさと電話を切ってしまった。

 まぁ、蘭に正体はバレるはずがないとは思ってるけど……。

 

「ふひぃ〜〜、危なかったー」

 

「何が危なかったんですか? アリスさん。まさか事件では?」

 

「うおっと、少年少女諸君。これから遊びに行くのかね?」

 

 電話ボックスの外では雨で傘をさしている、歩美、光彦、元太が立っていた。

 夏休みだし、これから何処かに遊びに行くところなのかしら……。

 

「なんだその変な口調? そんな言葉遣いでも頭良さそうには見えねーぞ」

 

「うぐっ……」

 

 元太にさっそくヘコまされるあたし。

 な、何よ……。これでも現役JK探偵として明晰な頭脳の持ち主って報道されたりしてるのよ。

 

「そうだ。アリスさんに推理クイズを出してもいいですか?」

「クイズ? いいわよ」

 

 そんな会話をしてると、歩美があたしにクイズを出したいと言ってきたので、あたしはそれに乗っかった。よし、賢いところを見せてやるわよ。

 

「灰原さんに“アリスさんってどんな人”って

聞いたら、彼女は月を見ながら“夏じゃない”って答えました。灰原さんはアリスさんを褒めたでしょうか? それとも貶した?」

 

「月……、夏じゃない……。あー、そっか。哀ちゃんはあたしのことを貶したのね」

 

「えーっ、どうしてですか?」

 

「夏の月は6月、7月、8月……でしょ? で、続けて読むと“ロクナヤツ”じゃない。だから、貶したが正解よ」

 

 あたしは自分の解答を3人に示した。何だろう……。小学生の出す問題に真剣に答えてドヤ顔ってよく考えたら恥ずいかも……。

 

「やっぱ、探偵は探偵なんだな」

「今度、少年探偵団の顧問をやって欲しいですよね」

「こんなに早く解かれると思わなかったね」

 

「でも、凄いわよ。こんなクイズ、あたしが小さいときには作れなかったもん」

 

 てか、この子たちって小学一年生よね。コナンとか哀は大人だからいいとして、子供にしては優秀すぎない? あたしの小1のときなんかかけ算も出来なかったのに……。

 

「やった。アリスさんに褒めてもらえましたよ」

「じゃあ、アリスさん。またクイズ出来たらやってみてください!」

 

「――これ、渡っちゃいかん。青の点滅は黄色と同じなんだよ。次の信号まで待ちなさい」

 

 あたしらが点滅する青信号で横断歩道を渡ろうとしたら、おじさんに怒られた。

 率先して走ろうとしてたあたしはなんとも気まずい。

 

「「はーい」」

 

「……あはは、怒られちゃったね。いつもパーッと走っちゃってるからなー。さすが刑事さん、外でもしっかり子供に注意できるなんて」

 

「えっ? あの人、刑事さんなんですか?」

「なんで、んなことわかるんだよ?」

「あー、分かりました。事件で知り合ったんですね!」

 

 電話ボックスで電話してる男を刑事だと口にすると子供たちはどうして分かったのか不思議そうにする。

 あー、そこ気になっちゃうか。さすが少年探偵団。

 

「ううん。刑事さんってメモを取るとき、あーやって警察手帳を縦に開いて横書きして使うんだよ」

 

「へぇー、知らなかった」

「やっぱり、刑事と一緒に事件を解決してる人は違いますね」

「おっ! 青になった。渡ろうぜ!」

 

 刑事についての知識を披露してると、信号が青に変わったのであたしたちは横断歩道を渡る。

 しばらくして、あたしが何気なくさっきの刑事さんを見ようと振り返ると――。

 

「――っ!? んっ? う、撃たれた……!?」

 

 何者かがサイレンサー付きのピストルでその刑事を撃った。

 刑事はその場で倒れて、犯人は逃走する。あたしは電話ボックスまで走ろうとするも――。

 

「アリスさん! 危ない!」

 

「ちっ! 歩道橋から行くしか!」

 

 既に信号は赤になっており車が行く手を阻む。こうなったら、歩道橋を走っていくしかない。

 あたしは全力疾走で犯人を追跡しようとするも、歩道橋を渡りきったとき、既に犯人の姿は消えていた。

 

 

「こんな白昼堂々になんて大胆な……! それでも見失うなんて!」

 

 犯人はもういい。それよりも被害者の刑事だ。

 あたしは彼の元に駆け寄ると。刑事は血まみれでもう助かりそうになかった。

 

「しっかりして! 誰に撃たれたの!?」

 

「ううっ……、ああっ……」

 

 刑事は既に何かを言葉にすることも出来ず……。何かを指し示すように左胸を押さえて絶命した。

 なんてこった。みすみす犯人を目の前で逃して何も出来ないなんて……。何が探偵よ……。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「何度もすまないが、我々にも説明してくれるかな?犯人の特徴を」

 

 目撃者として事情聴取に行ったあたしたち。刑事が撃たれた事件だと小五郎に告げると、彼もあたしの下に蘭と一緒に駆けつけてくれた。

 目暮警部が子供たちの証言を集めてるけど――。

 

「若い男でした」

「若い姉ちゃんだったぞ」

「中年のおじさんだったよ」

 

 見事に3人ともバラバラね。高木刑事が、犯人の傘について尋ねても、光彦が黒い傘、元太は緑、歩美は青と全く違う意見を答えているし……。

 多分、見たのがほとんど一瞬でよく分かってないからバラバラの答えになってるんだわ。

 

「おい、アリス。本当にこのガキたちと一緒に居たのか?」

「うん。あたしは犯人の性別はわからなかったですね。レインコートと傘は灰色に見えたから子供たちの意見とは食い違いますし……。でも、犯人は右手で傘を持ってましたから。拳銃は――」

 

「左手で持っていた。つまり左利きってことね」

 

 あたしもレインコートや傘の色はほんの一瞬しか見てないので自信がない。

 ただ、犯人の利き手――これだけは確実だと言える。

 

「すみません。現場に居たのに大したヒントも得られずに……。あと、奈良沢さんが左胸を押さえてた件って――」

 

「ああ、あれは警察手帳を示しているのではと、我々は見解を出している。手帳に記されていることを徹底的にあたってるよ」

 

 と、こんな感じで事情聴取は終わった。

 現場に落ちていた薬莢から犯人の使った拳銃が女性でも扱える9ミリ口径のオートマチックであることなどが判明したらしく、それらを基に徹底的に捜査が進められるみたいだ。

 

 

「でも、良かったよ。アリスちゃんや子供たちに怪我がなくて」

 

「まー、そうなんだけどさ。赤信号じゃなかったら捕まえれたって思うと悔しくて」

 

 あたしは目の前で犯人に逃げられたことが悔しかった。

 蘭の言うとおり子供たちに何も無かったのは良かったんだけど……。

 

「ダメだよ。銃を持ってる殺人犯なんだよ? 向かっていくなんて女の子のすることじゃ――」

「でも、新一ならきっと追いかける。だから、あたしだって負けてらんない」

 

 銃を持つ犯人に向かっていくのは無謀かもしれない。

 でも、工藤新一ならヤツを逃さなかったかもしれないと思うと胸に熱いものがこみ上げてくる。

 

「別に新一と張り合わなくても良いんじゃない? アリスちゃんだって沢山事件を解決してるんだし」

 

「そうだね。蘭ちゃんの言うことはわかるよ。でも意地を張っちゃうんだ。工藤新一なら出来たことが出来ないのは嫌だってね」

 

 確かにそれなりに多くの事件を解決して、自信みたいなものを持てるようにはなった。

 だけど、それだからこそ余計なプライドみたいなものが芽生えたのかもしれない。

 

「どうしてそんなに新一にこだわるの? アリスちゃんがライバル視してるのは知ってるけど」

 

「約束したんだ。あいつが居ない間はあたしが全部解決するって。新一が解くはずだった事件を全部……」

 

「約束……?」

 

 あたしは新一から記憶と体を借り受けている。だからこそ、彼が本来なら解くはずだった事件を解決していかなければならないと思ってる。

 

「んで、あいつの代わりに蘭ちゃんを守るってね」

 

「わ、私を……?」

 

「あはは、でもあたしなんかより蘭ちゃんの方がずぅーっと強いもんね。守るのはちょっと無理か」

 

 さらに蘭を守りたいとも思ってるけど、空手の達人である彼女を守ろうだなんておこがましいと思ってしまった。

 これには、見守る的な意味合いも含んでるけどね。

 

「ううん。アリスちゃんのこと頼りにしてるよ。何かあったら真っ先に相談したいと思うくらい」

 

「じゃあ、困ったらあたしに何でも言ってよね。必ず何とかするから」

 

 蘭には言えないけど、あたしは新一でもあるから……。彼のやるはずだったことは全部やっときたいんだ。

 でもあなたを守りたいと思うのは――新一の代わりじゃなくて……。

 

 

 

 今回の事件はこれで終わりじゃなかった。同じ8月22日の深夜未明のこと、今度は緑台にあるメゾンパークマンションの地下駐車場で芝陽一郎という名前の刑事が射殺されているのが発見されたのだ。

 

「過激派の犯行か?」 「暴力団による報復?」 「深まる謎」 「個人的怨みか?」 

「警察への挑戦!」

 

 ――それを新聞が大々的に報じ、あたしも目の前で犯人を逃した手前、責任を感じていた。

 

 そしてその記事を見た小五郎も気になったのか、事件の事を詳しく聞こうと目暮警部に電話をする――。

 

「警部殿、昨夜の事件について詳しく聞かせて――」

『今は忙しい、またにしてくれ』

 

「先生、目暮警部はなんて……?」

「忙しいんだってよ。何かいつもと違う感じに聞こえたが……」

 

「違う感じ……」

 

 小五郎が警部に電話しても返ってきたのは素っ気ない返事だけだったみたいだ。

 それは変ね。どんなに忙しくてもそんな感じになるなんて。

 

「あんな事件があったんだから忙しいのは当然でしょ」

 

「でも、割と目暮警部って困ってたらあたしや先生に相談するから……」

 

「それだ。名探偵・毛利小五郎の力を借りようとしないのは変だな」

 

「何か隠したいことがあるなら別ですけどね」

 

「隠したいこと……か」

 

 目暮警部が事件に行き詰まってるなら、なおさらあたしたちに相談してくると思う。

 それをしないのは、恐らくこの事件で何か言えない部分が出てきたからに違いない。

 あたしは彼の態度からそう推測した――。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「しっかし、白鳥の妹もあれだな。こんなときに結婚披露パーティーなんてしなくてもいいのに」

 

「仕方ないでしょう。パーティーが決まったのは一ヶ月も前なんだから」

 

「それに披露パーティーじゃなくて、祝う会ですよ。先生。主催者も友人みたいですし」

 

 次の日、あたしは小五郎と蘭それに園子と一緒に米花サンプラザホテルに行った。その日……15階の鳳凰の間では白鳥警部の妹である白鳥沙羅と画家である晴月光太郎の結婚を祝う会が催されることになったのである。

 

「ねぇ、新郎の晴月さんってどんな人なの?」

 

「えーっと、画家さんだっけ?」

 

「頭に“売れない”がつくけどな」

 

「売れない画家かー。こりゃ、友人関係の男は期待出来ないわね」

 

「こらこら京極さん、泣いちゃうわよ……」

 

 園子は相変わらず男の人を探しに来る目的があるみたいね。

 京極さんというボーイフレンドがいるのに逞しいというか何というか……。

 

 エレベーターを降りて会場に辿り着いたので、小五郎は受付で記帳をしている。そんな彼にきれいな女性が近付いてきた――。

 

「相変わらずぶっきらぼうな字ね……」

 

「お母さん!」

 

「お前も来てたのか……」

 

「ええ、沙羅さんが弁護士の卵だからその関係で……」

 

 小五郎に声をかけたのは、妃英里――つまり彼の奥さんだ。まぁ、絶賛別居中なんだけど……。

 そっか、白鳥の妹の沙羅は司法修習生か何かなのか……。

 

「うわぁ、おばさま達筆……!」

 

 英里の書く名前を見て園子がそんな感想を漏らす。

 ていうか、夫婦なのに別々に記帳って……。相変わらずだなぁ……。

 

「お願いします」

 

 蘭は荷物を預かってもらってるみたいね。あれ? 晴れの日なのに傘立てに傘があるわ。忘れ物かしら……。

 

 こうして、あたしたちは会場の中へと入っていった――。

 

「うわぁ。いっぱい来てる」

「目暮警部も来てるな」

 

「警察の人はすぐにわかるわ。目つきが鋭いし、重苦しい雰囲気だわ」

 

 英里の言うとおり、会場の至るところにいる警察の人たちの雰囲気は重たかった。

 刑事が二人も同じ日に殺されたのだ。面目丸つぶれなのだろう。

 

「無理もない。例の事件でそれどころじゃないんだろう」

 

「でも、佐藤刑事はいつもと同じで明るいわよ」

 

「ホントだ。何話してるんだろう、高木刑事と……」

 

 会場には高木刑事と佐藤刑事も来ていた。佐藤刑事は高木刑事に服装のことで何か言っているみたいね……。

 

「おっ、小田切警視長だ。ちょっと挨拶してくる」

 

「誰? あの人……」

 

「小田切警視長――あのヘボ探偵が現役の刑事だった頃の刑事課長よ。今は刑事部の部長だったかしら」

 

「へぇー、お偉いさんなんですね〜」

 

 小五郎は元上司で刑事部部長の小田切警視長に挨拶に行っていた。

 こういう所はしっかりしてるのよね。

 英里ったら、まだ小五郎をヘボ探偵と言うか〜。当たってるけど……。

 

 

「それでは新郎新婦の入場です!」

 

 司会の人の言葉で新郎新婦が入場して、祝の会とやらはスタートした。

 スタートしたのに早々ここを立ち去ろうとする男の人がいるわね……。トイレかしら……。

 

「よぉ、白鳥。おめでとさん」

 

「ありがとうございます。毛利さん、紹介します。僕の主治医で米花薬師野病院、心療科の風戸京介さんです」

 

「風戸です。よろしく……」

 

 小五郎が白鳥警部に声をかけると、彼は隣に居た男を主治医だと紹介した。

 へぇ、主治医ねぇ。心療科ということは精神的に何か……。

 

「毛利です。――妻の英里に、娘の蘭……そして、助手のアリスです」

 

「あの、白鳥さん。心療科にかかってるんですか?」

 

「いやね。管理職っていうのは、結構心労がかかってね。毛利さんも事件ばかりで心に負担はかかってませんか?」

 

「んあっ? 余計なお世話だよ……。――っ!? 警部殿! 捜査の方は?」

 

 白鳥に心療科を勧められても、必要はないと答える小五郎――ちょうど目暮警部が彼の横を通り過ぎたので、彼は警部に捜査状況を尋ねた。

 

「悪いがその話はナシだ」

 

「け、警部殿……?」

 

 しかし、警部の言葉は暗く相変わらず素っ気ないものだった。

 やはり、何か隠したいことがあるのね。間違いない。

 そこであたしは後ろを歩いていた高木刑事を捕まえる。

 

「ねぇ、高木さぁん。こっそり教えてくれないかしら? 何か言えない秘密……あるんですよね?」

「――そこまで、察してて何で聞いてくるのかな?」

 

 高木刑事はあからさまに困った顔をした。

 秘密があるってもうバラしてるわ……。じゃあ、あの手でいきましょう。

 

「……あれれ? 教えてくれないの? じゃあ仕方ないか。佐藤刑事に高木さんの気持ちを伝えて来よっかな〜〜」

 

「ちょっと、待ってアリスちゃん。ここだけの話……芝刑事も警察手帳を握りしめて亡くなってたんだ……」

 

「なんだと!」

「えっ? マジで……? ということは――」

 

 あたしがちょっとだけ脅すとあっさり高木は大事な情報を吐いた。

 二人の刑事が警察手帳を握りしめるってその意味は恐らく――。

 

「アリスさん、いけない子ですね。それ以上の詮索は許しません」

 

「し、白鳥警部……」

 

 白鳥警部に肩を掴まれたあたしはかなり強めの注意を受ける。

 彼のこの感じであたしの予感は確信へとシフトした。

 

「おい、白鳥! どういうこった?」

 

Need not to know(知る必要のないこと)――こう言えばわかるでしょう?」

 

「「――っ!?」」

 

 Need not to know……知る必要のないこと。確か、警察内で使われてる隠語で……。警察の内部犯である可能性を示してる……。思ったとおりだわ――だから話せないんだ……。

 いや、もしかして警察の上層部。ううん……。最悪警察全体が関わってるかもしれないってことね……。

 

 しかし、あたしたちはまだ知らない。これがまだ序章に過ぎないことを――。

 そして、身内がそれに巻き込まれてしまうことを――。

 

 

 




トロピカルランドでのアリスの失言ですが、彼女は気付いてません。自分が転生する寸前の記憶過ぎて自分の経験みたいな感覚になっていたからです。
いつもよりも解決まで長丁場になりますがよろしくお願いします。

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