工藤新一に転生したけど、薬を飲まされて女子高生になっちゃった   作:ストロングゼロ

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ついにあの男が登場!


外交官殺人事件 疑惑編

「亡くなったのは、辻村勲54歳……外交官。で、偶然現場に居合わせたのが――」

 

「私、毛利小五郎と」

「助手の藤峰愛梨寿でーす」

 

 通報から間もなく、目暮警部がやって来た。やっぱり、こう何度も事件に遭遇すると呆れ顔になってくるよね。

 小五郎のノリに合わせてるけど、実は頭痛が酷くなっている……。

 

「いつもいつも……君たちは……、で、今回も殺人事件かね?」

 

「いや、それがまだ……」 

「ええーっ!? 先生、毒殺って本当ですかぁ?」

 

 目暮警部が殺人事件なのかどうか聞いてきたので、あたしは彼に毒殺であると告げる。

 これは、死体の状況からすぐにわかったことだ。

 

「毒殺? どういうことだね? 毛利くん」

 

「そ、それはその……」

 

 毒殺だと断定した理由が気になった警部は、それを小五郎に尋ねるが、彼は言い淀む。

 そのとき、間髪を入れずに平次が口を開いた。

 

「死体の髪の毛の生際に小さな赤い点が残ってるし、遺体の側には凶器らしき針も落ちてる。このおっさん頬杖ついとったけど、きっと殺された後にあのポーズ取らされたんやろな」

 

 そう、平次の言うとおり一見して外傷は見当たらない死体だったが、生え際の近くの赤い点があった。これは毒が仕込まれた針で一突きされた跡だろう。  

 つまり、頬杖をついて寝ていたと思われていた被害者は既にあのとき死んでいた――。

 

「しかし、自殺の可能性も――」

 

「はい! 先生の言うとおり自殺の可能性は少ないです。死体の唇と手足の先が紫色に変色していますし、目の結膜に溢血点があります。これは窒息死した証拠です。なのに絞殺された痕跡も溺死させられた形跡も苦しんだ様子もありません。残るは毒で神経麻痺させられて窒息死させられた可能性だけです。しかも一瞬で殺せるような怖〜い猛毒で……」

 

 死体の状況は毒殺を示していた。それも強い毒によって、即死させられた感じだ。

 自殺ってことはない。辻村勲は誰かに殺された――。

 

「なるほど……、では問題はいつ殺されたか……になるが……」

 

「死亡推定時刻は大体予想がつくで。死体がまだ温かかった事と、死斑や死後硬直がまったく見られんことを踏まえると――俺らが書斎に入る30分以内に誰かに殺されたっちゅうこっちゃ。この部屋の近くにおった、誰かにな……」

 

 死亡推定時刻についてはあたしも平次と同じ見解だ。

 これだけ限定されると殺人が可能な人物はかなり絞られる。

 しかし、服部平次はすごい。新一と同じくらいの推理力があるのは確かね……。

 

 

「さっすが平次くん。先生と同じ推理ね」

「…………随分と静かなんやな。そっちのおっさんは。喋っとるん藤峰ばかりやん……」

「先生はあたしをテストしてくれてるの」

「ふーん……」

 

 平次はやたらとあたしを意識している。そして、小五郎がここまで全然意見を出さないことを変に思っている。

 漫画でコナンくんが小五郎のブレーンであり、新一だと見抜いただけあって、既に小五郎の能力に疑いを持っているみたいだ。

 

「アリスくん。この少年は君の友達かね?」

 

「服部平次……、関西の方で有名な高校生探偵です」

 

「服部……、平次……。おおっ! 君か! 大阪府警本部長、服部平蔵さんの息子さんというのは……!」

 

 あたしは目暮警部に平次を紹介すると、彼は大阪府警のお偉いさん息子だということを教えてくれた。

 そっか、そんな設定もあったわね……。うわっ……、頭がハンマーで殴られるくらい痛くなってきたわ……。

 

「……うっ、はぁ……、はぁ……」

 

「アリスちゃん。本当に大丈夫? す、凄い熱よ……。お父さんに任せて休んだ方が……」

 

 あたしがよろけると、蘭が腕を掴みながら支えてくれた。 

 どうやら、高熱が出てるみたいだ。あーあ、そんな気がしてた……。

 

「だ、ダメよ。あたしが推理しなきゃ……」

 

「…………なんで、あいつそこまでして」

 

 あたしが推理しなきゃ、小五郎がポンコツってバレちゃうじゃない。

 

 あたしたちは状況を整理する。書斎の全ての窓には内側から鍵がかかっていて、外からの侵入は不可能。となると、犯人は唯一の出入口となるドアから鍵を使って書斎に入ったことになる。

 

 書斎の鍵は公江と勲の二人しか持っていない。

 目暮警部は勲のズボンの二重ポケットから書斎の鍵を発見した。

 

 さらに、あたしたちと共に書斎に入った公江が鍵を持っていたことから――。

 

「これは、密室殺人ってことになりますね。先生」

 

「おもろいやんけ。藤峰、絶対に俺が先に事件を解いたるで――」

 

 小五郎ではなくて、あたしにライバル心を剥き出しにする平次。

 やっぱり、この人の目は欺けなさそう。完全にあたしが主導で推理をしていると思ってる。

 

 その後、警部が事情聴取をした――。

 

 死亡推定時刻は3時半〜4時の間。執事の小池は近所の人と3時から4時までおしゃべりしてたらしい。

 貴善と幸子が訪れたのはあたしたちが来る直前で、小池があたしたちを出迎えている間に二階の書斎に行ったけど、鍵がかかっていて一階に降りてきた。

 利光は2時過ぎに来ていて、書斎の隣の居間でテレビを見ていたそうだ。

 

 この証言から、犯行時刻に被害者に近付けたのは貴善、幸子、利光の三人……。つまり、この三人の誰かが犯人ということになる。

 

「それにしても、すごいCDの数ですなぁ」

 

「はい。旦那様はクラシックがお好きでしたので」

 

 ずらっと並べられて収納されていたCDを見て警部がつぶやくと、執事の小池は被害者がクラシックが好きだと教えてくれた。

 

「クラシックねぇ……、はぁ……、はぁ……」

『おかしくねーか? さっきかかっていたのはオペラだった』

「そうね……。凄い音量のオペラだったわ……、ん?」

 

 クラシックという言葉に反応にすると、あたしの頭の中で声が響いた。

 これは、男の人の声だ。まさか……。そして、それと同時にあたしは意識が体から引き剥がされるような感覚に陥る……。だ、ダメよ……、今はまだ倒れるわけには――。

 

「この棚の上の写真は?」

「もういいじゃないですか。そんな二十年前の写真……」

 

「警部! 机の上の本はどうしましょう!」

 

 目暮警部が棚の上の写真について公江に言及しようとすると、机を見ていた刑事さんが彼に声をかけていた。

 そ、そういえばあったわね。机の上に脈絡もなく、まるで本箱からごっそり抜いたような本がたくさん積まれていた……。

 まるで、()()()()()()()のように――。

 

『犯人は被害者の顔を隠したかったのかもしれねーな』

「また、頭の中で声がする……、頭痛もするし……、心臓まで……、はぁ……、はぁ……」

 

 頭で声がするたびにあたしの頭はドンドン痛くなって、動悸も激しくなってきた。

 ヤバい……、死ぬかもしれない……。パイカルは幼児化した体には解毒剤のような働きをしたかもしれないが、あたしにはただの毒薬かも……。

 

 

「警部。被害者の所持していた鍵に妙なものが……」

 

「こ、これは……」

 

 朦朧とする意識の中であたしは目暮警部が見せられたモノに注目する。

 キーホルダーが半分に割れて、中にセロハンテープが入っていた……。

 それに、セロハンテープの真ん中に一本の細い空間が出来てる。何のためにこんなのを……。

 

 待って、ドアには隙間がある。そして、セロハンテープに何かを使えば被害者のポケットに鍵を放り込むことが出来るんじゃない? じゃあ、犯人はあの人……?

 

 でも、引っかかる。大音量のオペラや不自然に積まれた大量の本……。どう考えても、作為的だわ……。

 犯人が無意味にそんな状況にするはずがない。

 

 ま、まさか……、あのとき被害者はまだ――。

 頭の中の声のヒントのおかげであたしは犯人が使ったトリックがわかった。

 

『へぇ、やるじゃねーか。俺も同じ推理だ』

「だから、何なの? この声は――、うっ…………ッッッッッ!?」

 

 頭の中の声がこれまでになく大きくなったとき――あたしは胸を押さえて倒れてしまった。

 だ、ダメだ……、我慢できない……。

 

「アリスちゃん!」

「アリス!」

 

「へ、平気……、だから……、そ、それより……、は、犯人が……」

 

 蘭と小五郎は心配そうにあたしを見る。頑張らなくちゃ、ここで倒れるわけにはいかない……。

 だって犯人がわかったんだもん……。

 

「もう、そんなのどうでもいいよ。お父さんも服部くんもいるんだから。あ、あのう。どこかに休む場所はありませんか?」

 

「ああ、だったら俺の部屋を使え」

 

 蘭があたしのために貴善に部屋を借りてくれた。

 そ、そうね……。もしも、このままここで新一になっちゃうようなことがあれば大変だし……。ちょっと休むべきかしら……。

 

「そういえば、服部くんはどこにいるのかね?」

 

「彼なら和室の場所を聞いて出ていきましたよ」

 

 平次が和室に……? 和室って利光が居たところよね……。

 

「アリスちゃん。歩ける?」

「う、うん……、ありがとう……、蘭ちゃん……」

 

 蘭に体を支えられて、あたしは部屋を出ようとする。

 心臓がとても痛い……。骨が軋むような、そんな不快な感覚もある――。

 

「藤峰、体調が悪うなるのは不運やったな。分かったで、密室の謎も、犯人もな……!」

 

「「――っ!?」」

 

 そんな中、平次はさっそうとこの書斎に戻ってきて、自信満々に全ての謎が解けたと宣言した。

 良かった……。平次も謎が解けたんだ。それなら問題ない。

 

「じゃあ、任せたわよ……、はぁ……、はぁ……」

「なんや、もっと悔しがるかと思っとったんやけど」

 

「――っ!? そ、それはテグス? だ、ダメ……、うっ……、はぁ……、はぁ……」

 

「アリスちゃん。早くこっちに……」

 

 おそらく、平次は間違った推理をしている……。

 でも、あたしはこれ以上どうにも出来ない。

 

 とりあえず、ベッドに横になって、蘭に氷とか色々とすぐには用意出来ないものをお願いして、部屋から追い出す。

 

「く、苦しい……、心臓が痛い……、し、死んじゃう……、んんっ、んっ…………、うううっ………」

 

 あたしの勘が正しければ――今から自分の体は――。

 

「――はぁ、はぁ……、どういうことだ? 黒ずくめの男を追って……、俺は……」

『あー、やっぱり頭の中の声は新一だったか。やっとお話できたわね』

 

 頭の中の声が自分の口の中から出る。そして、あたしの意識とは関係なしに体が動く。

 やはり彼は薬を飲まされた状態までの記憶しかないみたいだ。

 

「藤峰愛梨寿だったか? なんで、蘭や毛利のおっちゃんと一緒にいる? それに、俺は今……」

 

 でも、パイカルを飲んでからの一部始終は見ていたみたいで、あたしの名前も知っていた。

 さすがに頭脳明晰な彼でも今の状況は推し量ることは出来ないらしい。

 

『簡単に説明するから、よーく聞いてね。あなたは――』

 

 あたしはかなり手短に新一に現状を告げた。薬を飲まされた彼が性転換してあたしの魂に憑依され、阿笠博士の助力の元で組織について調べるために毛利小五郎の助手になったことを――。

 

「なんてこった。そんなに長いこと時間が経っていたなんて……。俺の体が女になっちまって、オメーの魂が入ってきて……。信じられねぇけど、さっきまでこの体は別人だったし……、信じるしかねぇか……」

 

 新一はさっきまでこの体が女の子の体だと知っている。それが自分の体に変化したことも――。

 だから、状況を受け入れざる得ないみたいだった。それに格好はさっきまでのあたしの格好のままなんだよなぁ。帝丹高校の女の子用の制服のまんま……。

 

『あっ、いつ元に戻るかわからないからブラとか下着は取らないでね』

 

「はぁ!? そ、そういや、俺、完璧に女の格好じゃねぇか!? こんなの蘭に見られちまったら……」

 

 新一はようやく自分が女装していることに気が付いたみたいだ。

 帝丹高校の制服は上はネクタイさえ取れば男女ほとんど変わらないから問題は下よね……。

 

『ごめん。あと、今あなたが身に着けてるの有希子さんの下着だから』

 

 あたしは勝手に工藤家のお金を使うのも後ろめたくて、ほとんど有希子の服を着ている。下着も含めて……。

 もちろん、新品も買っているけど、今日は彼女の下着をつけていた……。

 

「母さんの!? くそっ! な、なんで俺がこんな目に遭わなきゃ……」

 

 新一にとって母親のブラジャーとショーツを身に着けているのは精神的なダメージが大きいらしい。

 まぁ、普通に考えて嫌だよね……。スカートのボタンが弾けて取れてるから脱げかかってる。多分ショーツもエライことになってるんだろうなー。

 

『やだー、あたしの新品の下着が良かったっていうの?』

 

「バーロー! そんなんじゃねーよ! とにかく、服部ってやつが間違った推理をしようとしていた。俺がなんとかしねーと」

 

 新一は気を取り直して平次の間違いを正すことに意識を向けるみたいだ。あたしもそれがいいと思う……。

 

『スカートはズボンと替えるしかないから、あたしのカバンに入れといて。もし、途中でヤバくなったら誤魔化さなきゃいけないから』

 

「ああ、それしかねぇみてーだな。慣れねぇ、格好だから動きにくい……!」

 

『あたしだって恥ずかしいわよ。さっきまで身に着けてた下着を男の人が着てるなんて』

 

「うるせー。でも、ありがとな。蘭の側に居てくれて……」

 

 彼はいそいそと着替えながらあたしに蘭の側に居たことのお礼を言ってくれた。

 なんだかんだ言って、彼女のことを一番に心配するところが彼らしい――。

 

『蘭ちゃんは放っておけなかったから……。それより、あたしの推理当たってるかな?』

 

「当たってるかな? じゃねーよ。もっと自分に自信を持て。オメーは論理的に筋道を立てて、パズルをちゃんと解いたんだ。悪いな、お前が真相を話すべきだったのかもしれねーけど――」

 

 新一はあたしが辿り着いた真相を自分が喋ることを悪いとか言う。 

 でも、そんなことはない。だって――、

 

『ううん。ヒントを出し続けてたのは、新一なんでしょ? あたしだけじゃ解けなかったかも』

 

「それじゃ困るぜ。もし俺がオメーに戻っちまったら、藤峰愛梨寿にはシャーロック・ホームズになってもらわなきゃいけねーんだから」

 

 彼はあたしに自分の推理に自信を持てと言った。 

 ホームズか……。あたしなんかが世界中の誰もが知っている名探偵に近付けるかわかんないけど……頑張ってみるよ……。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「証拠は居間のゴミ箱で俺が見つけたこの針付きの“テグス”や! このテグスは新素材で出来とる細うて、強い特殊な釣り糸なんや! 釣りをやっとるあんたが知らんとは言わさへんで!?」

 

「それにあんたは俺らと奥さんがこの書斎に向かう途中、階段の所で、“和室で待っていてください”て言われとったな。つまりあんたは犯行後に和室に行ったんや。完全犯罪を確認してな。その和室のゴミ箱からこのテグスが出てきたんが何より証拠ってヤツや」

 

 平次の推理が聞こえる……。彼の推理は簡単に言うと書斎で被害者を殺したあと、ドアの隙間からテグスを伝わせて被害者のポケットまで鍵を放り込むというトリックだ。

 そして、それが可能なのは利光だけとして、彼が居た和室からテグスを見つけ出し糾弾していたのだ。

 

「すみません。アリスちゃん、見ませんでしたか?」

 

 蘭はあたしが部屋から消えたことに気付いて探しているみたいね……。

 

「どうや! 違うんか!? じいさんよぉ!?」

 

「そうじゃ、息子の勲を殺したのは、このわしじゃ……」

 

 平次の推理に対して利光は観念したように、自分の犯行を認めた。でも、それは――。

 

「そいつは違うな……」

 

「「――っ!?」」

 

 新一が声を発するとこちらに視線が集中する。

 あれま。みなさん何があったのかという表情をされているわね……。

 

「そいつは違うぜ」

 

「あっ……!?」

 

「く、工藤くん……!」

 

「こ、こいつが工藤? 工藤新一……」

 

 新一がもう一度言い直すと、小五郎や目暮警部は彼の存在に驚き、平次も工藤という言葉に反応した。

 

「どこ行ってたのよ!? 居なくなったと思ったら、いきなり現れて……ぐすっ……、私、心配してたんだから……」

 

 そして、涙を流しながら蘭は新一に近づいた。

 あーあ、よっぽど寂しかったのね……。

 

「バーロー、泣いてんじゃねーよ」

『謝れ! 馬鹿!』

「うっ……、ま、まぁ。悪かったな……、心配かけちまって……」

「ぐすっ……、でも、良かったぁ……」

 

 あたしに促されて新一が謝ると蘭は素直に彼の無事を喜んだ。

 こうして、あたしは初めて目の当たりにする。平成のホームズと呼ばれた高校生探偵の推理ショーを――。

 

 

 




次回で平次の初登場回は終了です。
ラストの方は原作とはまた違った感じになりそう。

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