ランサー陣営との戦いの次の日の夜、ドラえもんとのび太と雁夜はライダー陣営と合流していた。
ライダーは聖杯の所有者を決めるだけならば戦う必要は無いと言い、聖杯問答なる酒宴を開く事にしたらしい。
そこで、一応は同盟関係にあるドラえもん達を拉致もとい誘いに来たのだった。
「くっ、なんて風圧だっ.....!」
「なんで、お前らは平気なんだよぉぉぉぉ!?」
雁夜はライダーの
ウェイバーは必死にしがみつきながら、のび太とドラえもんが割と平気そうなのを不満に思って叫んだ。
「だって、タケコプターとかで慣れてるし、他にも、ねぇ?」
「うん、タイムマシンとかで時空乱流に巻き込まれたりとかもあったし.....」
ドラえもんとのび太はバツが悪そうに、ウェイバーの叫びに答える。
一行は、セイバー陣営の拠点に行き、誘いに行く事になったのだ。
「恐らく結界がある故、このまま突っ込むぞ?」
「ちょっと待った、それはセイバー達に迷惑がかかっちゃうよ。」
ライダーの言葉にドラえもんはそう止めにかかる。
「なに?じゃあどうやって行くんだ?歩いては行けまいよ。あまり近付き過ぎても、迎撃されるかも知れんしのう。」
ライダーは1度、
「良い宝具があるよ。
ライダーの問いに、ドラえもんは障害無き異次元の車輪《四次元三輪車》を人数分出すとそう説明する。
付け加えるならば、一漕ぎで100mは進み、視認される事も気付かれる事も無い。
そんな
「おー!こりゃ良い!余にはちと小さいが、素晴らしいのう!」
「.....でも、あの絵面は.....」
「ああ.....俺も人の事は言えんが.....」
はしゃぐライダーを見ながら、苦笑いと呆れ顔でそうヒソヒソと話す、ウェイバーと雁夜。
そのため、のび太やドラえもんにはちょうどいいが、ウェイバーや雁夜には小さい。
そして、2mを超える巨体を持つライダーには言わずもがなである。
なによりも、髭面の2m超えのマッチョなおっさんが三輪車に乗って、はしゃぐ様はあまりにもシュールだった。
そんなこんなで無事に、セイバー陣営の拠点の玄関前に着いた一行。
「よう!!セイバー!!」
「「こんばんは、お邪魔します。」」
「ライダーに、
「何故!?結界には何も反応が無かったわ!?」
勢い良く扉を開け中に入って来たライダーと続く一行に、驚愕するセイバーとアイリ。
「城を構えていると聞いてきてみたが.........なんとも、湿気たところだのう。」
驚愕する2人を尻目に、周りを見渡しながらそんな事を言うライダー。
「ライダーそれにフォーリナー、貴様ら何をしに来た。」
「ん?見てわからんか、一献交わしに来たに決まっておろうが。」
「僕達は、ライダーに誘われて。」
セイバーの問いに答える、ライダーとドラえもん。
「ほれ!そんなとこに突っ立ってないで案内せい!どこか宴にあつらえ向きの庭園はないのか?この荒れ城の中は埃っぽくてかなわん!」
ライダーは呆然としてるセイバーに対して、続け様にそんなふうに促す。
セイバーとアイリは顔を見合わせると、とりあえずライダーと一行を庭園に案内する。
案内されたライダーは持って来たワインの酒樽を拳で割ると、杓子でグイッと煽る。
「.....聖杯は相応しき者の手に渡る運命にあるという。それを見定める儀式がこの冬木における闘争だと言うが.........何も見極めるだけならば、血を流すには及ばない。英霊同士、お互いの格に納得がいったなら.....それで、自ずと答えはでる。」
今回の訪問の趣旨を説明しながら、杓子で掬ったワインをセイバーに渡す。
受け取ったセイバーはワインを一気に飲み干し、感心したような笑みを浮かべるライダー。
「それで.....まずは、この場の英霊で格を競うわけかライダー、そしてフォーリナー。」
「その通り。お互いに王を名乗って譲らぬとあれば、捨て置けまい?いわばこれは、聖杯戦争ならぬ聖杯問答.....!誰がより、聖杯の王に相応しいか.........酒盃に問えば詳らかになるというものよ。」
「まぁ、僕らはお酒飲めないんだけどね。」
セイバーとライダーの会話に、そんなふうに話すのはぶどうジュースを飲むのび太だ。
「戯れはそこまでにしておけ、雑種。」
「アーチャー.....!何でここに!?」
突如として現れたアーチャーに、一悶着あったドラえもんは驚く。
「言っていなかったか.....いやぁな、街で此奴の姿を見掛けたので、誘うだけ誘っておいたのさ。遅かったではないか、金ピカ!」
ライダーは事の経緯を簡単に説明すると、アーチャーにそう声を掛ける。
「よもや、こんな鬱陶しい所を王の宴に選ぶとは.........
「まぁ、そういうでない。ほれ!駆けつけ一杯!」
相変わらずの様子のアーチャーにライダーはワインを手渡す。
「ふん、なんだこの安酒は.....!こんな物で本当に英雄の格をはかれるとでも、思ったか。」
「そうかぁ?この土地の市場で仕入れた中じゃ、こいつは中々の逸品だぞ?」
顔を顰めながら文句を言うアーチャーに、ライダーはそう返す。
「そう思うのは、本当の
アーチャーはそう言うと、虚空から見ただけで高価と分かる酒樽を出す。
「ほう!」
「見るがいい、そして思い知れ。これが王の
出てきた酒樽に目を輝かせるライダーにグラスを出しながらそう得意げに言い放つアーチャー。
ライダーはこれは重畳とグラスを受け取り、アーチャーのワインを注ぎアーチャーと、セイバーに回す。
「ぬほぉぉ!これは美味い!」
「.........っ!」
アーチャーのワインの美味しさに、ライダーとセイバーは驚く。
「酒も剣も、我が宝物庫には至高の財しかありえない。」
得意げにそう言いながら、アーチャー自身もワインを飲む。
「これで、王の格は決まった様なものであろう?」
ドヤ顔の笑みを浮かべながら、セイバーとライダーを見遣りドラえもんとのび太に目を移す。
「.....ところで、そこの青狸とメガネザルは何故いる?王ではなかろう?そこに目を瞑ったとして、セイバーは場所、
意地悪な笑みを浮かべてのび太とドラえもんにそう言い放つ。
「うーん.....そうだ、食べ物が欲しいでしょ?ちょっと待ってね.....
ドラえもんは少し悩むと、自身の宝具で注文した料理を何でも出せる
「このテーブルかけに食べたい物を言うと何でも出せるんだ。例えば、どら焼きー!」
ドラえもんはそう言うと、どら焼きを出して実演してみせた。
それぞれ、言われた通りに注文すると、出てきた料理に感嘆する。
「凄く美味しい.....量はいくらでも出せるのか?」
「そんなにがっつかんでも良かろうに.....だが、確かに美味いなこりゃあ、1番の味だ!」
爆食いするセイバーに少し引きながらも、料理を堪能するライダー。
「ほう.....口にせずとも至高の逸品と分かる料理.....
アーチャーの舌も認めた様で、ドラえもんは参加を許可された。
「....して、そちらのメガネザルは何を差し出す?」
「え?えっと.....んーと.....そ、そうだ!今からあやとりを見せます!まずは.....ギャラクシー!それから.....ビックバン!それに.....ダンシングフェアリー!」
アーチャーの言葉にのび太はしばらく悩んだ後、あやとりを取り出し常人ではまず不可能な華麗な技を見せる。
「たかが毛糸であの様な.....」
「ほほう!なかなかどうして!やりおるではないか!」
セイバーは不思議そうに、ライダーは手を叩きながら見入っている。
「ふはははは!児戯も鍛錬をすればここまで見られるようになるとはな!良かろう、赦す。」
アーチャーにも認められ、のび太も聖杯問答に参加する事になる。
「ふん、これならば、貴様らでも飲めるだろう。有難く思え。」
アーチャーは褒美とばかりに、アルコールの入っていないぶどう液をドラえもんとのび太に手渡す。
「こんなに美味しいぶどうジュースは初めてだ!!」
「うん!すっごく美味しい!」
ドラえもんとのび太はぶどう液に舌鼓を打ちながら、大いに喜んだ。
「.........!」
そんなやり取りの中、アイリはマスターであるウェイバーと雁夜を睨みつける。
ウェイバーは首をブンブンと横に振り、雁夜は会釈しながら苦笑いを浮かべる。
「さて、話の腰は折れてしまったが、貴様らがどれほどの大望を聖杯に託すのか.....それを聞かねば始まらん。まずは、貴様は何を望むのだ、アーチャー?」
「仕切るな、雑種。だいいち、聖杯を奪い合うという前提からして、理を外しているのだぞ?」
聖杯問答を進行するライダーに、そう返すアーチャー。
「.....そもそもにおいて、あれは
「じゃあ貴様、聖杯を持っていた事があるのか?その正体も知っていると?」
アーチャーの言葉に、そう問いかけを投げるライダー。
「知らぬ。雑種の尺度で測るでない。
アーチャーはライダーの問いに、当然とばかりにそう言い放つ。
「お前の言は、キャスターの世迷言と全く変わらない。錯乱したサーヴァントは、奴1人では無かったらしい。」
アーチャーの言葉を世迷言と切って捨てるセイバー。
「いやいや、どうだかな.....なんとなーく、この金ピカの真名に心当たりがあるぞ余は。」
なにか知っているのか、アーチャーをフォローする様にそう話すライダー。
「.....でもな、アーチャー。貴様、別段、聖杯が惜しいというわけでもないんだろう。」
「無論だ。だが、
アーチャーはライダーの言葉に、そう説明を返す。
「ふむ.....つまり、なんなんだアーチャー。そこにはどんな義がありどんな道理があると?」
「法だ。
「うむ.....そうなると.....後は剣を交えるのみ。」
アーチャーの語る言葉に、納得した上でそう返すライダー。
「征服王よ、お前は聖杯の所有権が他人にあると認めた上で、尚且つそれを力で奪うのか?そうまでして、聖杯に何を求める?」
「.....っ.........受肉だ.....」
ライダーはセイバーの問いかけに、恥ずかしそうにモジモジしながら答える。
「はぁぁぁ!?お前!!望みは世界征服だったとぅえぇぇ!!?」
ライダーの言葉に驚きながら走り寄り、うるさいとばかりにライダーにデコピンで吹き飛ばされるウェイバー。
「馬鹿者.....いくら魔力で現界してるとはいえ、所詮我らはサーヴァント.....余は転生したこの世界に、一個の命として根を下ろしたい。身体1つの我を張って、天と地に向かい合う.....!それが.....!征服という行いの全て.....!その様に開始し、推し進め.....成し遂げてこその我が覇道なのだ。」
イキイキとして、かつ真剣な表情を浮かべながら己の言葉を伝えるライダー。
「.....そんなものは、王の在り方ではない。」
静かにライダーの言葉を聞いていたセイバーは、そう異を唱える。
「ほう?ならば、貴様の懐の内.....聞かせてもらおうか。」
ライダーはセイバーの言葉に面白くなって来たとばかりにそう返した。
「私は.....我が故郷の救済を願う。万能の願望器をもってして.....ブリテンの滅びの運命を変える.....!」
セイバーは真剣な表情でそう答える。
「.....なぁ、セイバー.....貴様は運命を変えると言ったか?それは過去の歴史を覆すという事か?」
ライダーは少しバツが悪そうな、突拍子も無い様な事を聞いという表情で聞き返す。
「そうだ。例え、奇跡を持ってしても叶うぬ願いだろうと、聖杯が真に万能であるならばかならずや.....」
「ふっくっくっく.....」
「セイバー.....貴様よりにもよって、自らが刻んだ行いを否定すると言うのか?」
セイバーの言葉に、アーチャーは笑い、ライダーは訝しむ。
「そうとも!何故、訝る!?何故、笑う!?剣を預り、身命を捧げた故国が滅んだのだ.....それを悼むのがどうして可笑しい!?」
自分の言葉が理解出来ないというふうなアーチャーとライダーにそう問いを投げかける。
「おいおい、聞いたかライダー。この騎士王と名乗る小娘はよりにもよって、故国に身命を捧げたのだとさー、はっはっは」
セイバーの言葉に、堪えきれないとばかりに笑うアーチャー。
「笑われる筋合いがどこにある!?王たる者ならば、身を呈して治める国の繁栄を願うはず。」
セイバーは、2人の様子にふざけるなとばかりに、そう言い放つ。
「.....いいや、違う。王が捧げるのではない.....国が、民草が、その身命を王に捧げるのだ。断じてその逆ではない。」
セイバーの言葉に、真剣な眼差しでそう語るライダー。
「何を.....それは、暴君の治世ではないか.....!」
「然り。我らは暴君であるが故に英雄だ。だがな、セイバー.....自らの治世を、その結末を悔やむ王がいたとしたら.....それは、暗君だ.....!暴君より尚、始末が悪い.....!」
ライダーはセイバーの返しに、信念を持ってそう答える。
「イスカンダル、貴様とて世継ぎを葬られ、帝国が3つに引き裂かれ終ったはずだ。その結末に、貴様はなんの悔いも無いと言うのか.....!?」
「ない。.....余の決断、余に付き従う臣下達の生き様の果てに辿り着いた結末であるならば.........その滅びは必定だ。悼みもしよう、涙も流そう、だが、決して悔みはしない.....!」
更なるセイバーの言葉に、キッパリとそう言い放つライダー。
「そんな.........」
ライダーの言葉にセイバーは、信じられないとばかりにそう答える。
「まして、それを覆すなど!そんな愚行は、余と共に時代を築いた全ての人間に対する侮辱であるっ!」
「滅びの華を誉とするのは武人だけだ!力無き者を護らずしてどうする!?正しき統制、正しき治世、それこそが王の本懐だろ!」
セイバーとライダーの意見がぶつかり合う。
「で、王たる貴様は正しさの奴隷か?」
「それでいい。理想に殉じてこそ、王だ。」
今度はライダーの問いに、キッパリと言い切るセイバー。
「そんな生き方は、人ではない.........」
酒を飲みながら、憐れむように言うライダー。
「王として国を治めるのなら、人の生き方等望めない。征服王、たかだか我が身の可愛さのあまりに、聖杯を求めるという貴様には分かるまい。飽くなき欲望を満たす為だけに、覇王となった貴様にはっ!」
「無欲な王など飾り物にもおとるわいっ!!」
ライダーはセイバーのそんな言葉に、怒鳴りつける。
「セイバーよ、理想に殉じると貴様は言ったな?なるほど、往年の貴様は清廉にして潔白な聖者であった事だろう。さぞや、高貴で侵しがたい姿であった事だろう。.....だがな、殉教等という茨の道に一体誰が憧れる?焦がれる程の夢を見るっ.....!.....王とはな.....誰よりも強欲に、誰よりも傲笑し、誰よりも激怒する。清濁含めて、人の臨界を極めたる者。そうあるからこそ、臣下は王を羨望し、王に魅せられる。一人一人の民草の心に、我もまた王たらんと憧憬の火が点る。」
そして、ライダーの中の王という存在を語る。
「騎士道の誉たる王よ.....確かに貴様が掲げた正義と理想は、1度国を救い臣民を救済したやもしれん.....だがな.....ただ、救われただけの連中がどういう末路を辿ったか.........それを知らぬ貴様ではあるまい.....?」
「なんだと.....?」
ライダーの問いかけに、動揺した様に震えた声で問い返すセイバー。
「貴様は臣下を救うばかりで、導く事をしなかった。王の欲の形を示す事も無く、道を見失った臣下を捨て置き、唯一人で澄まし顔のまま、小綺麗な理想とやらを想い焦がれていただけよ。故に貴様は生粋の王では無い、己の為では無く人の為の王という偶像に縛られていただけの.....小娘に過ぎん。」
「わ、私は.........だ、だとしても.....!だからこそ.....!私は今一度故国を救いたいんだ!」
「だから!貴様には王の資格等ない!!」
ライダーの言葉にムキになって返すセイバーとそれにイライラするライダー。