「俺と決着を付けないか、セイバー。」
それは、ランサーの唐突な一言から始まった。
「今なら、貴様は万全の状態。それを討ち取ってこそ、我が主への宝物となるのだ。」
ランサーは騎士として、誉ある戦いをしたかったのだ。
故に、セイバーの状態が万全の今が、決着を付ける好機だというわけである。
「マスター.....」
「私は構わないけど.........」
アイリに許可を得るように目配せするセイバー。
アイリ自身は構わなかったが、真のマスターである切嗣が邪魔しないか心配なのだ。
「水を差されたくないのであれば、余が見届け人となろう。」
2人の心配を半ば見抜いているのか、そんな提案をするライダー。
「互いに万全、場も用意してくれた。どうだ、セイバー.....これ以上の条件は無いと思うが?」
「ああ、決着を付けようランサー!」
ランサーの言葉に、力強くそう返すセイバー。
ライダーはそんな2人を満足気に見ると、
「はじめぃぃぃ!!!」
ライダーが高らかにそう叫ぶと、ランサーとセイバーが切り結ぶ。
「これは見ものだなぁライダー、それにフォーリナー共よ。」
「ああ!英雄同士の死合いとあらば見届けん訳にはいかん!!」
「どっちが勝つんだろう.....?」
「本当は止めたいけど.....決闘なら、仕方ないよね.........」
アーチャーの言葉に、三者三様の反応を返す。
ドラえもんは純粋に疑問を、のび太は争い事への心配を口にする。
ランサーはセイバーに
迎撃で放たれたセイバーの斜め下からの切り上げを、バックステップで躱し鋭い突きを放つランサー。
ランサーの銃弾の様なスピードの突きを掻い潜ると、居合の様に斬り込む。
ギリギリでセイバーの剣を受け止めるが、大きく吹き飛ばされたランサー。
明らかに、セイバーの方が優勢であった。
それは、宝具の特性が知れている事と、ランサーの
すると、明らかな劣勢の状態のランサーを援護にかかるケイネス。
「令呪をもって命じる!セイバーを亡きものにせよ!」
令呪の効果が、肉体を躍動させ一時的にではあるが、ランサーを強化した。
先程とは比べ物にならないスピードで襲いかかるランサー。
しかし、セイバーもその技量は負けていない。
令呪を使って、ようやっと互角に近い戦いが出来ているのだ。
しかも、ランサーはセイバーの宝具である
この点で、どうしてもセイバーに半歩程劣ってしまうのだ。
何度も繰り返される攻防に、攻め立て続けなければならないランサー。
ランサーの猛攻を受け流しながら、息を整えられるセイバー。
この差により、ランサーに若干だが疲労の色が浮かび上がってくる。
「ランサー、貴様に全幅の信頼を置いてやる。」
「マスター.....?」
劣勢のランサーにケイネスはそう声を掛け、ランサーは疑問を返す。
だが、その隙を放って置くほど、セイバーは甘くは無かった。
「
隙を生じさせない為、威力を絞り放たれる勝利を約束された斬撃。
「重ねて令呪をもって命じる!セイバーを亡きものにせよ!!!」
重ねられた令呪が、その言葉に最大の誇りをもって答えようとするランサーに答えた。
本来ならばランサーのクラスでは使えない、
「我が主の命と我が誇りにかけて、貴様を討ち取ってみせる!!生死を分かつ境界線……見定める! はああああっ! ここだ!
ランサーの超跳躍により、遥か上空から落下しながらの初撃必殺のランサーの誇りを乗せた攻撃。
「騎士王の意地にかけて貴様を退ける!!
迎え撃つは、セイバーの意地を乗せた勝利を約束された斬撃。
「ぐはっ!!!ま、だ.........ぐっ.........」
「どうやら、私の勝ちの様だな。」
決闘の行方は、セイバーの勝利に終わる。
ランサーの敗因は、令呪により使える様になったとはいえ、クラスに合わない宝具故に威力が殺されていた事だ。
何とか立ち上がろうにも言うことを聞かない、ランサーの身体。
そこへ、ケイネスが駆け寄ってきた。
「我が令呪を全て使ってなお、負けおって。」
ランサーにかけられる厳しい言葉とは裏腹に、怒りの感情は混じっていなかった。
「我が主.........申し訳ありません.........」
それに対して、本気で悔しがるランサー。
「だが貴様の忠義、しかとこの目に焼き付けたぞ。ランサー、大義であった。貴様の忠義には、我が最大の信頼と礼をもって答えよう、貴様を誇りに思うぞ、ディルムッド。」
「有り難きお言葉.........!.....セイバー.........俺にはこんなにも素晴らしき主がいるのだ.........!ああ.....世界はこんなにも美しく.....こんなにも幸福をもたらしてくれるのだな.........聖杯に祝福あれ.........その願望に幸福あれ.........いつか.........座に戻る事があれば.....このディルムッドの.........敬意を思い出してくれ.....セイバー.........主よ.........私は.....幸せ.........でし.....た.........」
ランサーは光に包まれ、笑みと感涙を流しながら、幸せそうに光の粒となり消えていった。
「ランサー、私は貴様に敬意を表し.....そして、この聖杯戦争を勝ち抜くと誓おう。」
こうして、意地と誇りの戦いは意地の勝利で終わった。
だが、誇りは敗れても、幸福であった。
それは、願望が叶えられたからである。
「さて、今宵はこの辺でお開きとしようか。」
ライダーが全てを見届けた後、
「ふん、中々に良き物が見られた。我《おれ》も帰るとしようか。」
「ちょっと待って!」
帰ろうとするアーチャーをドラえもんが呼び止めた。
「ねぇ、アーチャー.....いや、ギルガメッシュ。君は1人きりなんでしょ?だったら、僕と友達になってよ。」
ドラえもんは人の為に作られた、心があるロボットだ。
それ故に一人きりのアーチャーに思う所があり、そう告げた。
「ふん、今宵は無礼講だが、少々不敬が過ぎるぞ。貴様の生き様はまさに奴隷、最下級の存在だ。そんな貴様が至高の存在の王であるこの
アーチャーはドラえもんにそう吐き捨てて、消えていった。
「僕は諦めないよ.........」
アーチャーが消えた虚空を見つめながら、そう呟くドラえもん。
ケイネスは、その日のうちに聖堂教会に赴き、敗退の手続きと保護をソラウと共に受ける。
綺礼は傷を手当し終えてから、教会のキリスト像に祈りを捧げていた。
「綺礼、その傷は.....!?」
そこへ、父である言峰璃正が通りがかり心配そうに駆け寄る。
「父上.....私は敗退しました.........ですが.....負けたくないのです.........越えたい壁があるのです.........!」
綺礼に生まれて初めて越えたいという挑戦欲求が芽生えた。
その初めての感情は綺礼を悩ませ、璃正に胸の内を吐露させた。
「そうか.........」
璃正は初めて見る息子の姿に、そう呟くと無言で抱きしめた。
「父上.........私は.....私は.........!」
抱きしめる父の背中は偉大だった、それ故か綺礼は涙を流していた。
「大丈夫だ、綺礼.....!お前は必ず乗り越えられる!私の奥義を授けよう。」
この日、綺礼は更なる進化を遂げる事となる。