綺礼が進化を遂げている頃、時臣の使い魔から雁夜宛の手紙が渡された。
「まったく.....果たし状なんて、時代がかった真似しやがって.....」
そう、時臣から来た手紙とは、雁夜との決着をつける為の果たし状だったのだ。
「にしても、流石に早く来すぎたかな.....」
雁夜は指定された場所へ、指定された時間より1時間も早く着いていた。
何本目か分からないタバコを踏み消した頃、時臣は悠然とした足取りで現れた。
「おや、待たせてしまったかな?」
「いや、時間ピッタリだよ。」
お互いに目を見据えながら、普通の会話とは裏腹に張り詰めた空気が場を支配する。
「と、決闘と洒落込む前に、お前とは少し話しておきたいことがあるんだ。」
が、そんな空気を和らげる様に両手をあげながらそう切り出す雁夜。
「.....まぁ、聞いてやっても良いだろう。遺言になるかも知れんからな。」
挑発する様な笑みを浮かべながら、そう返す時臣。
「そいつはどうも.....さて、時臣.....お前、どういうつもりで桜を間桐なんかに養子に出したんだ?」
真剣な表情を浮かべながら、時臣にそう問いかける雁夜。
「そんな事か。どういうつもりも何も、うちには双子の娘が生まれ、どちらも捨て置くには持った無い、とても優れた才能を持って生まれた........しかし、魔術とは一子相伝.....その中で吟味した結果、桜の属性は我が遠坂の魔術とは相性があまり良くないと結論を出したんだ。だが、並の魔術師の家柄では、意味が無い.....そこで、昔より親交のある間桐家へと養子に出す事にした。家柄も十分だし、何よりお前という落伍者が出て、臓硯氏も養子を欲しがっていたからな。」
時臣は雁夜の問いかけに、優雅さを見せながら、長々とそう答える。
「なるほど.....だが、お前、間桐の魔術がどの様に継承されるか知っているのか?それに、間桐に養子に出すという事は、将来的に凛と桜の姉妹で争わなければならなく可能性もあると思うが?」
雁夜は時臣の答えに、若干イラつきながらも、何とか冷静さを保ってさらに問いかける。
「さぁ?魔術とは秘匿すべきもの.....なれば、他家の魔術等知るはずもない。それに、私はこの聖杯戦争で勝利するつもりだからな。勝利したとなれば、魔術の根源を極める事になり、凛と桜が闘う理由も無くなる。まぁ、仮に私が負けて、凛と桜が闘う事になろうとも、それは魔術師としての宿命.....寧ろ喜ぶべき事ではないのかね?」
「そうか、分かったよ.....やっぱり、お前はろくでもない父親だって事がなぁ!!」
時臣の語る言葉を全て聞き終えると、雁夜は翅刃虫し繰り出して、時臣を攻撃する。
「話の途中に攻撃とは、品がない。魔術師とは常に余裕を持って優雅たれ、だ!!」
そんな雁夜に対してち時臣は宝珠の付いた杖を振りかざし、火の魔術を持って対抗する。
すると、防火仕様の翅刃虫の繋ぎ目に沿って燃やし、さらには、雁夜へと燃え広がる。
「はははは!そんなものか間桐雁夜!?この決闘私の勝.....っか.....!?」
勝ちを確信し高笑いを決める時臣は、突如として呼吸が出来なくなる。
自分の感知していない謎の存在により、サーヴァントを呼ぶ間もなく絞め落とされてしまう。
「悪いな、時臣。こいつは、正々堂々とした決闘なんかじゃない.....何でもありの戦争なんだよ。」
時臣を締め落としながらそう語っているのは、なんと、雁夜だったのだ。
実は、雁夜は先に到着した時に周りの遮蔽物や地形を確認した上で扮装蟲のデコイを作っていた。
後は、時臣が到着してから扮装蟲を通して会話し、バレない様にゆっくりと後ろに回り込んだのだった。
それから、雁夜は時臣を地下通路に連れ込むと、身動きが取れないように縛り付ける。
そして、詠唱やサーヴァントを呼ぶ事が出来ない様に、
「おい、起きろ、時臣、起きろ。」
「う.....ここは.....はっ.....!アー.....」
「止めておけ。俺の使い魔で今すぐ干からびさせて、殺す事も出来るんだぞ?魔力が無くなれば、念話も出来なくなる。まずは、俺の話を聞け。」
アーチャーを呼ぼうとする時臣を制して、そう脅しをかける雁夜。
「分かった.....」
「それでいい.....なにも殺そうって訳じゃない。お前、間桐の魔術に興味はないか?」
雁夜は少し怯えた様子で素直に従う時臣にそう話を持ちかける。
「なに.....?それはどういう意味かね?」
「なに.....今から、間桐の魔術の修行を体験させてやろうと思ってな。桜がどんな修行をしてるか、気になるだろう?」
怪訝そうに問いかける時臣に、嗜虐的な笑みを浮かべてそう返す雁夜。
「ふ、ふん.....良いだろう、間桐の修行とやら、体験させて貰おうじゃあないか。」
時臣はそんな雁夜の様子に、虚勢を張るようにそう答える。
雁夜はそれを聞くと時臣に向けて大量の淫蟲を解き放つ。
「ひぎゃぁぁぁ!?やめっ.....うぎゃぁぁぁぁああああ!?」
「俺は少し飯を食わせてもらう。」
時臣の悲鳴が響き渡る中、雁夜は少し席を外すと言って出ていく。
とはいえ、きちんと監視をしており、すぐ近くに待機しているだけだった。
10分程してから雁夜は戻ってきて、淫蟲を時臣から退けてやる。
「おぼろろろぉぉぉ!!.....ごほっ.....はぁ.....はぁ.....頼む.....桜を.....助けてくれ.........」
時臣は身体の穴という穴を淫蟲に出入りされ吐瀉物に塗れながらも、桜の事を気にかけ雁夜に懇願する。
「.....少しは思い知った様だな.....安心しろ、桜にはもうこんな事はしていない。父親として愛情をもってキチンと育てていくつもりだ。」
時臣はそれを聞くと、安心と極度のストレスからの解放で気絶してしまう。
「雁夜さん!?大変なんだ!!」
そこへドラえもんが、慌てた様子でどこでもドアから出てくる。
「どうした?何があった?」
「僕にもよく分からないけど、街が大変な事になってるんだ!!とりあえず、行こう!!」
ドラえもんと一緒に雁夜がどこでもドアで移動したその先は、まさに地獄だった。
黒い雨が降り注ぎ、溢れ出る泥のようなものに触れた人間は血を吹き出しながら死んでいく。
街は火の海になり、悲鳴や泣き声が辺りに響き渡る。
「なんだなんだ.....これは.....」
あまりの光景に雁夜は茫然自失となっていた。
「あれは.....キャスターか.....?」
そんな中で優雅に空中を歩くキャスター陣営を見つける雁夜。
「あはは♪すっごく楽しいねぇ♪君達も仲間に入ってきなよ♪」
フランチェスカがそう愉しそうに言うと、80体の夜鬼がドラえもんに襲いかかる。
「ぎゃあっ!?」
完全な不意打ちにドラえもんは為す術なく、夜鬼達に叩き伏せられる。
ドラえもんの頑丈さから、なんとか原型を保っているも80体の攻撃では反撃もままならない。
すぐ近くにはのび太もおり、糸を切られた操り人形の如く倒れ伏していた。
さらに、夜鬼の一体に雁夜も殴り飛ばされ、道端を転がっていく。
トラックに轢かれたかのような衝撃を受けては立ち上がる事も叶わない。
「ぐっ.........あ、あれは.....セイバーのマスター.....?」
雁夜の視線の先には、切嗣が倒れ伏していた。
切嗣の腕と足は、おかしな方向へと折れ曲がっており、骨折してるのが見て取れる。
「こんな.....はずじゃ.....!頼む.....!せめて.....殺してくれぇ.....!!」
切嗣は手足が折れてもなお死んでおらず、芋虫の様に這いながら血の涙を流して慟哭していた。
「お、おい.....舞弥さん.....!?.....どうして.........」
「いやぁぁぁ!!止めさせてぇぇぇぇ!!」
舞弥は魔術で操られているのか、泣き叫びながら切嗣の折れた手足を踏みにじり、周りの人間を撃ち殺していた。
「なっ!?馬鹿な!?桜っ!?」
舞弥を止めようと、無理矢理立ち上がり歩き出した雁夜は何かに躓いて転ぶ。
それは、内蔵をぶちまけ、海魔に貪り食われながらも生きている桜だった。
「おと.....さ.....たすけ.........」
すぐに、助けようと藻掻く雁夜だったが、別の海魔に足を貪られてしまう。
「ねぇ、今、どんな気持ち?♪どんな気持ち?♪わけわかんないだろうから説明してあげるね♪」
雁夜の前に、愉悦をしたためた笑みを浮かべながら、降り立つフランチェスカ。
「実はね、もう聖杯は満たされたんだよ♪最初のキャスターとアサシンとランサーとセイバーとライダーとフォーリナーが召喚した2体で7体♪.....だけど、聖杯はまともなものじゃなかったんだ♪簡単に言えば呪われてたの♪で、今はその呪いが解き放たれている状態♪」
そう、セイバーとライダーは既に倒されていたのだった。
ライダーは、フランチェと同盟を結んだ切嗣によりマスターを狙撃され現界出来なくなった。
セイバーは、切嗣を裏切ったフランチェスカとキャスターの召喚した80体の夜鬼に嬲り殺しにされた。
「まぁ、君が気になってるのはそんな事じゃないか♪.....君の娘さん.....桜ちゃんだっけ?そこに転がってる女の子♪.....私さ、魔法って大嫌いなんだ。人の限界を勝手に定義して、挑む事を許さないでそれを叶えちゃうでしょ?人の美しさは、そんな限界に挑む愚かさにあるのにさ.....だから、フォーリナーが大っ嫌い。フォーリナーが使ってる宝具って魔法じゃない。だから、それを召喚した貴方にも罪があるわけで.....だから.....拐って来ちゃった♪凄いでしょ♪その子、まだ死ねないんだよ♪苦しいねぇ♪辛いねぇ♪早く殺して欲しいよねぇ♪」
フランチェスカは高らかに笑いながらそう語る。
「あと、切嗣は勝手に聖杯を破壊しようとした罰を与えてるんだ♪あの顔笑えるでしょう♪」
さらに、切嗣を見遣ると、嗜虐的な笑みを浮かべて事の顛末を告げる。
「殺してやる.....!殺してやる!!殺してやる!!!」
雁夜はそう叫ぶも、海魔に貪り食われながら、フランチェスカに手が届かない。
「うわぁぁぁぉぁ!!!ふざけるな!!!ふざけるな馬鹿野郎!!!なんでこんな.....こんな事ってあるかよ!!?ちくしょう!!!くそっ!!!」
雁夜は慟哭しながら、貪り食われている足をカランビットナイフで切断する。
しかし、押さえつけられて身動きを封じられてしまう。
しだいに、出血量の多さから、意識も混濁していく。
((.....フォーリナー.....令呪をもって命じる.....頼む.....!こんなクソったれな結末を変えてくれ.....!重ねて令呪をもって命じる.....頼む.....!こんな地獄を変えてくれ.....!さらに、重ねて命じる.....頼む.....!どうか.....こんな.....運命ん.....かえ.....て.....く.....れ.....))
話す事もままならなくなった雁夜は、心の中でそう懇願した。
するとコーティングが剥がれて、回路もいくつか切断されていたドラえもんが立ち上がる。
意識があるのかないのかハッキリしない状態で、周りの夜鬼達を頭突きで吹き飛ばす。
そして、四次元ポケットからベルトを取り出すと、自身に巻き付けて起動させる。
「分かってるよ.....雁夜さん.....絶対にこんな
そして、その瞬間、ドラえもんはこの世界から姿を消した。