ドラえもんのび太の第四次聖杯戦争   作:テキーラ11

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今回、非常に長くなりましたが、キリのいい所まで書きたかったので御容赦ください。


第4話「絶望破壊者(デストロイヤー)

時は少し遡り、雁夜がエイコーノトビラに入った次の日の朝。

 

「おはよう.......雁夜おじさんは.......?」

 

桜が目を擦りながらリビングに来て、ドラえもんに気が付くとそう質問する。

 

「おはよう、桜ちゃん。雁夜さんは今、魔術をちゃんと使う為の練習をしているんだ。」

 

ドラえもんは桜に気が付けば挨拶を返し、分かりやすくそう返した。

 

「....そうなんだ.......あ.......」

 

桜は、雁夜の事を聞いて、心配そうな表情を見せるが、くーっと可愛くお腹を鳴らしてしまう。

 

「ドラえも〜ん!お腹空いたー!....あ、桜ちゃん、おはよう!」

 

そこへ、のび太がお腹を擦りながら現れ、桜に気付くと挨拶をする。

 

「皆の者、おはよう。」

 

「っ.......お爺様.......」

 

さらに、臓硯が加わり朝の挨拶をするが、桜は臓硯の姿を見て、驚きと恐怖を覚える。

 

「昨日の夜、雁夜に魔術回路を全て渡しての。今は、こんな姿になってしまったが、桜をどうこうするつもりも無ければ、その力もない。安心して欲しい。」

 

臓硯は、必要以上に近付く事はせず、少し離れた位置で膝立ちになりそう諭す。

 

「うん......」

 

臓硯に対して、桜は短くそう頷けば、一応の納得はした様だ。

 

「さぁ、皆、ご飯にしようか。.......グルメテーブルかけ〜!!」

 

リビングに皆が集まった所で、四次元空間からグルメテーブル掛けを出す。

 

「のび太君は知ってると思うけど、食べたい物の名前を言えば、その料理がこのテーブルかけの上に出てくるよ。」

 

ドラえもんの説明に、皆がそれぞれ食べたい物の名前を口にする。

 

「納豆定食!」

 

のび太は、考えた末に、あまり重くない朝食らしい朝食を頼む。

 

「どら焼き!」

 

ドラえもんはやはりというか、自分の大好物であるどら焼きを注文する。

 

「ふむ.......食事を取るのはいつぶりか....そうじゃな.......ブルヌイとボルシチ。」

 

臓硯は長年蟲に身体を置き換えていた為、久しぶりの食事に選んだのは、慣れ親しんだロシア料理だった。

 

「えっと.......パンケーキ.......」

 

桜は何処か遠慮がちに、自分の好きな甘い物を頼む。

 

それぞれの注文に、グルメテーブルかけは即時にそれぞれの料理を生み出した。

 

「どれどれ....ほう.......!これは、美味い!」

 

魔術の名門、マキリの人間として生まれ、貴族の様な生活を送った臓硯も、今まで食べた中で1番美味しいと思える味だった。

 

「あむ.......美味しい.......すごく、美味しいよ....!」

 

桜は、蜂蜜たっぷりにバターを乗せたパンケーキを一口頬張ると、その美味しさに年相応の笑顔を見せた。

 

「「良かった.......!」」

 

そんな桜の笑顔を見て、ドラえもんとのび太は顔を見合わせ、嬉しそうに微笑んだ。

 

ドラえもん達がそんなふうに食事を取っていると、間桐家の表向きの当主である間桐鶴野が入ってきた。

 

「え.......どういう状況.......!?」

 

その微笑ましいと呼べる状況に、間桐臓硯の邪悪さを知る鶴野は、驚きのあまり混乱していた。

 

鶴野は雁夜が出奔した後、押し付けられる形で間桐家の表向きの当主にさせられた。

 

その後は、才能も無いので臓硯の助手や雑用をやらされ、三流魔術師の家系の保菌者(キャリアー)の女と出会う。

 

臓硯に対する反骨精神も持ち合わせず、かといって己を憐憫や欺瞞しきれない一般人だったが、彼女の事は心から愛していた。

 

それ故に、子供を産んで用済みの彼女が蟲蔵で苗床にされそうなのを必死で止める。

 

懇願し、蟲に嬲られるくらいならと彼女と子供を殺し自死する決意を表した。

 

当然、そんなものに心等動かされない臓硯だったが、彼にさほど関心もないので面倒だと懇願を受け入れた。

 

しかし、その代わりに、桜の蟲での陵辱を手伝わされ、桜を苦しめた蟲の調整等をさせられる。

 

臓硯の趣向もあり、直接蟲蔵に放り込まされたりもした。

 

家族に手を出されないためとはいえ、罪悪感をずっと抱いていたのだ。

 

それが聖杯戦争の準備等で家を少し離れ、戻ると状況が一変していたら誰でも驚く。

 

「おお、鶴野。....ふむ、そうだな.......何処から話せば良いのか.......まずは.......」

 

臓硯は鶴野の混乱を見て取ると、これまでの経緯を話し始める。

 

「そんな事が.......」

 

臓硯の説明に、一応は納得し、神妙な面持ちで桜の方に向き直る。

 

「桜....すまなかった!」

 

膝をつき、手を付き、頭を地面に擦り付けて桜に謝罪する鶴野。

 

その場は桜が赦す事で収まり、鶴野も加えた食事が終わる。

 

 

のび太はその後、桜と一緒に昼寝したりと、サーヴァントとしては不必要な睡眠を取るあたり彼らしい。

 

昼寝から起きたのび太は、ドラえもんと散策を兼ねて冬木市を散歩していた。

 

「誰か、今日、山内さん家の人を見た?」

 

ドラえもんとのび太が散歩をしていると、井戸端会議の内容が聞こえてくる。

 

「ねぇ、ドラえもん!嫌な予感がする!探してあげようよ!」

 

心眼(偽)のスキルが働いたのか、のび太は真剣な表情でドラえもんに訴える。

 

「そうだね。人探し機〜!!」

 

ドラえもんは、宝具(ひみつ道具)を出し、それは矢印のついたパソコンの様なもので、山岸家の人間を探し始める。

 

矢印の方向へと足早に向かうと、大きな一軒家を示し、矢印は止まった。

 

「ここみたいだね.......通り抜けフープ....!」

 

事態は一刻を争うと判断したドラえもんは通り抜けフープを使い中へ入る。

 

中へ入った途端に、濃厚な血の匂いを感じ、のび太達は気が遠くなりそうになる。

 

しかし、誰かの危機かもしれないという状況下での彼等の精神力には目を見張るものがあった。

 

潜り抜けてきた修羅場が、彼等に冷静な行動を可能にさせ、気配を消しながら進ませる。

 

最初に見つけたのは、乱雑に置かれた、男女の遺体と思しきもの。

 

しかし、辛うじて息はある様で、普通なら手遅れであるが、そこは宝具(ひみつ道具)である。

 

お医者さんカバンによる蘇生を行い、男女の命を救っていた。

 

その頃、少し離れた物置に使っていた地下室には、犯人と思しき青年とガムテープで縛られた少年がいた。

 

「悪魔って本当にいると思うかい?坊やぁ。」

 

血の魔法陣で儀式を終えると友達や近所の子にでも話し掛ける様に、気さくに話し掛ける青年。

 

一方。ドラえもんとのび太は次に女の子をみつけ、幸い息はあったので、治療を始める。

 

「新聞や雑誌だとさぁ、良く俺の事悪魔呼ばわりするんだよね....... いや、いいんだけどさ。べつにオレが悪魔でも。」

 

青年は自分語りを始め、前にもこういった事を行ったと仄めかす発言をする。

 

ドラえもん達は女の子が先程の両親より、明らかに重症であったために蘇生に手間取っていた。

 

「でもそれって、もしオレ以外に本物の悪魔がいたりしたら、ちょっとばかり相手に失礼な話だよね。『チワッス、雨生龍之介は悪魔であります!』なんて名乗っちゃっていいもんかどうか。」

 

青年は雨生龍之介というようで、親しい友人に話しかける様に、或は親戚の子にでも語りかける様な口調で続ける。

 

「それ考えたらさ、もう確かめるしか他にないと思ったワケよ。本物の悪魔がいるのかどうか。でも、ホラ、万が一本当に悪魔とか出てきちゃったらさ、何の準備もなくて茶飲み話だけ、ってのもマヌケな話じゃん?だからね、坊や…もし悪魔サンがお出ましになったら、ひとつ殺されてみてくれない?」

 

「んー!?んー!!」

 

しかし、龍之介は両親と姉に手をかけ、返り血塗れの姿でそれをするのは異常であり狂気そのものだ。

 

少年の目には涙が溢れながら、くぐもった悲鳴をあげる。

 

「あーっははははははは!!悪魔に殺されるってどんな感じなんだろうねっ!?....痛っ....なんだこれ....?」

 

龍之介の右手の甲に令呪が宿り、血で書いた召喚陣が光り、サーヴァントが現れる。

 

「問おう。我を呼び、我を求め、キャスターの座を依り代に現界せしめた召喚者、貴殿の名をここに問う。 其は、何者なるや?」

 

「えと、雨生龍之介っす。職業フリーター。趣味は人殺し全般。子供とか若い女とか好きです。最近は基本に戻って剃刀とかに凝ってます。」

 

「よろしい、契約は成立しました。貴殿の欲する聖杯は私も悲願とするところ.......かの楽園の釜は、必ずや我らの手にするところとなるでしょう。」

 

「せい....はい.......?」

 

キャスターのクラスのサーヴァントを召喚するも、微妙に話が噛み合っていない様子。

 

「まぁ、とりあえず....ご一献どうですか?....あれ、食べない?」

 

しかし、特に気にする様子もなく、龍之介はキャスターに少年を指さしながら、そう物騒な話をする。

 

「んー!!!んー!!!」

 

だが目の前の悪魔の様な風貌の男に差し出される少年は恐怖を感じながらも、ある種の希望を捨てずにいた。

 

少年は、特撮ヒーローが大好きで、憧れていて、少年にとって正義は絶対だった。

 

故に少年は自身が全幅の信頼を寄せ、幾多の危機を乗り越えた正義の味方を待っていた。

 

英雄(スーパーヒーロー)が来ると本気で信じていたのだ。

 

「なるほどなるほど。君は神か或は別のなにかか.......何れにしろ救世主を信じているんだね?」

 

その少年の目は、キャスターがこれまで手に掛けてきた、神を信ずる子供のものと同じだった。

 

キャスターはおもむろに、懐から本を取り出した。

 

「すげー!それ、人の皮でしょ?」

 

キャスターの取り出した本の表紙は龍之介の見立て通り人の皮膚により

作られていた。

 

「クトゥルフ・ムグルナフ.......」

 

興奮気味の龍之介をよそに、何やら呪文を唱えると、縛られた少年に近づく。

 

「んー!んー!」

 

キャスターに近付かれ、少年は声にならない声で叫んだ。

 

キャスターは少年に近付くと、口元のガムテープを剥がし優しい声で語りかける。

 

「さぁ、君の信じる救世主を呼んでいいんだよ?大きな声で助けを呼ぶといい。」

 

「ちょ.......」

 

「しー.......」

 

キャスターの不可解な行動に、龍之介が止めに入ろうとするも、キャスターがそれを制す。

 

少年の目の前には、先程の呪文で召喚された異形の化け物が近付いていた。

 

その化け物は、ヒトデとタコとイカを混ぜて、鋭い牙を生やした2mほどの体格をした、海魔と呼ばれるモノだ。

 

「さぁ、助けを呼ばないと、喰べられてしまうよ?大きな声で呼ぶんだ!」

 

キャスターは興奮した様子で少年に助けを呼ぶ様に訴えかける。

 

「助けてー!!!スーパーヒーローっっ!!!」

 

少年は、声の限りを尽くしてスーパーヒーローに届く様に助けてと叫ぶ。

 

しかし、数瞬してもなお助けなど来る気配は無かった。

 

特撮ヒーローなど、所詮は作り物であり紛い物だ。

 

少年は、邪悪な海魔の触手に絡め取られ、その肉を喰い千切らんとする口に近づいて行く。

 

少年はその瞬間、希望を打ち砕かれて、確かに絶望していた。

 

そんな姿を見ながら、キャスターはうっとりとした表情で龍之介に語りかける。

 

「恐怖というものには鮮度があります。怯えれば怯えるほどに、感情とは死んでいくものなのです。真の意味での恐怖とは、静的な状態ではなく変化の動態――希望が絶望へと切り替わる、その瞬間のことを言う。」

 

今まさに、少年の身体が、海魔に喰い千切られようとしていた。

 

龍之介はその様子に、目を輝かせながら、かぶりついて見ている。

 

しかし、少年は1つだけ、英雄(スーパーヒーロー)について忘れていた事があった。

 

英雄(スーパーヒーロー)は、いつでも、少し遅れて(ピンチの時に)現れるという事を。

 

「ドカーンっ!!!」

 

扉が開け放たれ、不可視のエネルギー弾が少年を喰らう寸前の海魔を粉砕する。

 

扉の向こうには、右手に空気砲を構えたのび太と、ドラえもんが立っていた。

 

ドラえもんとのび太は、少女から弟を助けて欲しいと、地下室に連れていかれたと聞いて飛んできたのだ。

 

「来てくれたんだ.......スーパー.......ヒーロー.......」

 

化け物の触手から解放された少年は、英雄(スーパーヒーロー)の登場に緊張の糸が切れたのか意識を手放した。

 

「我々の至福を邪魔するなどと....... 許さぬ……思い上がるなよ匹夫共めがァ!!」

 

せっかくの甘美な絶望と悲鳴の虐殺(シンフォニー)を邪魔されたキャスターは激昂する。

 

しかし、理性は残っているのか、何体もの海魔を召喚し少年とのび太達に襲いかからせる。

 

「ドカン!ドカン!ドカン!....キリがないよ、ドラえもん!」

 

繰り出される海魔を、空気砲にて的確に倒すも、増え続ける海魔に苦戦を強いられるのび太。

 

「どうすれば....そうか!あの本がこの怪物を生み出してるんだ!!....取り寄せバッグ〜!!!」

 

のび太と共に、海魔を倒しながら、しっかりと観察していたドラえもん。

 

キャスターの持つ本が宝具であると看破し、取り寄せバッグでその本を奪い取る。

 

「なっ!?私の螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)が!?」

 

キャスターの宝具である螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)を奪い取る。

 

ドラえもんの宝具(ひみつ道具)、取り寄せバッグで手から離れた状態の宝具は使用不能になる。

 

「宝具を奪ったくらいで、このジル・ド・レェを、甘く見ないで頂きたい。」

 

キャスターこと、ジル・ド・レェは激昂から一転して、冷静で冷酷な眼差しで話す。

 

魔道に堕ちようとも、救国の英雄であり、オルレアンを聖女と共に奪還した有能な元帥である。

 

自身の主要戦力である螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)を奪われ窮地に立たされてもそれは変わらない。

 

その様な窮地に立たされてこそ、冷静に戦局や戦力差を分析し、その本領が発揮される。

 

のび太が残りの海魔を掃討している僅かな間に作戦を実行していた。

 

龍之介が所持していたナイフと、その場にあったロープを組み合わせて仕掛けを作る。

 

少年の首にナイフが括り付けられたロープを巻き、それをジルの身体に括りつけていた。

 

「動くな。動けば即、この坊やの首からは鮮血が噴き出す事になりますよ?」

 

ジルがほんの少しロープを引くと、少年の首に巻かれたロープが絞まり、ナイフが首を少し傷つける。

 

「私を殺せば倒れる重みで、坊やは息絶えます。龍之介を殺せば、私が坊やを殺します。縄を切れば、龍之介が坊やを殺します。こちらの要求はそちらの宝具と私の宝具を投げ渡すこと.......さぁ、どうしますか?」

 

ジルはドラえもんとのび太が突入し、攻撃してきた時点で、少年を保護しようとしているのは分かった。

 

マスターの命令かサーヴァント自身の心情故かは分からないが少なくとも少年は人質になりうる。

 

もし、少年を切り捨てる判断をしたとしても、最初の様子から迷いが生じる可能性が高い。

 

故にその隙をついて、隠し持つ目潰しの魔道具を用いて宝具を奪い返し体制を立て直せばいいという所までジルは考えていた。

 

のび太とドラえもんは、少年を見捨てる事などとても出来ない。

 

だからドラえもんは、のび太と目線を交わし螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)をジルに投げる。

 

ジルの目が螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)に向いた瞬間の出来事だった。

 

のび太は空気砲で、瞬時に少年の首のロープとナイフの柄の部分を正確に撃ち抜き、少年を解放する。

 

ほぼ同時に、龍之介を出力を下げた空気砲で撃てば間髪入れずドラえもんは取り寄せバッグで少年を保護した。

 

のび太の神業とも言える射撃スキルと、ドラえもんとのび太の絆による離れ業だ。

 

しかし、螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)はジルの手に渡ってしまった。

 

取り寄せバッグによる奪取は1度行った以上、2度目はそう易々とはやらせてくれないだろう。

 

「これで、形勢はこちら側に有利になりましたね。ジャンヌとの再会は、誰にも邪魔させはしない!!」

 

「ちょっと待って!君の望みはそのジャンヌって人に会うことなの?」

 

ドラえもんは、静止を求めながら、ジルにそう問い掛ける。

 

「ええ、ですが聖女は陵辱され汚され、国は聖女を見殺しにし、神もまた、救うべき聖女を救わず、結局は魔女として焼き殺された!私は必ずやジャンヌを復活させる!.......さぁ、無駄話はこのへんでいいでしょう。」

 

ジルはそう言うと、再び海魔を召喚しようと螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)を開いた。

 

「僕なら、僕の宝具なら君をそのジャンヌと会わせてあげられる!」

 

ドラえもんはジルの話を聞き、その深い恨みと憎しみと悲しみを感じ取りそう申し出た。

 

「.......いま、なんと言いました....?」

 

ジルはドラえもんの言葉に、疑いを持ちながらも、一縷の望みが捨てきれず、耳を傾ける。

 

「あの人は居間ー!!!この、宝具は使用者の望んだ人と会う事が出来る宝具なんだ。君の言うジャンヌが、あのジャンヌ・ダルクなら、きっと会えるはずだよ。」

 

ドラえもんの出したあの人は居間は、遠くにいたり、居場所が分からない人と会う事の出来る道具だ。

 

流石に、死者には会う事は叶わないが、この世界の法則で英霊となっているならば可能と考えた。

 

そして、ジャンヌ・ダルクは、誰もが知る英雄であり、英霊となっている可能性が高い。

 

「.......いいでしょう。あなたの甘言に乗ります。この扉ををくぐれば良いのですね?ああ、かの聖女に、ジャンヌ・ダルクに会わせて下さい。」

 

「ちょっと旦那!?今はそれどころじゃ....がはっ!!?」

 

ドラえもんの言葉に乗り、襖に手を掛けるジルを止める龍之介。

 

しかし、ジャンヌの事しか頭にないジルは、龍之介を無言で、容赦なく振り払った。

 

普通なら尻もちを着く程度で済むが、筋力Dのサーヴァントによる振り払いは衝撃の桁がちがう。

 

龍之介は吹き飛ばされ、勢い良く戦いの余波で壊れた金属の棚に激突し、運悪く腹を割かれてしまう。

 

「....うわぁ....そっか.......気付かねぇよな.......自分の腸ん中に探し求めてたもんがあったんだ.......それに....して.......も....きれ....だなぁ.......」

 

龍之介は自身の腹部から飛び出す、臓物を見て、満足気に意識を失う。

 

ドラえもんとのび太は急ぎ駆け寄ると、お医者さんカバンで治療を始める。

 

そんな彼等を余所に、ジルは襖を開けて中に入ると、そこには心の底から焦がれていた聖女が座っていた。

 

「ジャン....ヌ.......?ジャンヌ!ジャンヌジャンヌジャンヌジャンヌジャンヌジャンヌジャンヌジャンヌジャンヌぅぅぅぅ!!!.......があぁっ!?」

 

「ジル....なのですか....?.......落ち着きなさい。」

 

愛しき乙女に、望み続けた聖女に、ジャンヌ・ダルクに、会えた歓びで狂喜乱舞するジル。

 

ジャンヌは久方振りに見るジルの変わり果てた姿に驚きながらも、冷静に目潰しを決めて諌める。

 

「これは、飛び出しがちな私の目玉を諌めてきたジャンヌの目潰し!....やはり、ジャンヌ、貴女に間違いないのですね.......」

 

目潰しをされた事により、飛び出していた眼球が戻り、ハンサムと呼べる顔に戻ったジル。

 

この目潰しをきっかけに、夢や幻ではないと実感が持て、気が付くと涙が溢れていた。

 

「ええ、安心してください。私は、ジャンヌ・ダルクです。.......ジル、私は、ここに召喚される時.......貴方に関する知識も得ました.......本当....なのですか.......?」

 

ジャンヌは、あの人は居間の効果により、サーヴァントとして召喚されていた。

 

その際に本来ならそんな必要もないのだが、スキルによる影響で、ハッキングに近い形で聖杯を通じて呼び出されたのだ。

 

だから、聖杯により、ジャンヌには現代や歴史の知識を与えられていた。

 

「.......ええ、本当の事です。貴女が殺され、絶望し憎悪し悲憤し慷慨しました.......ですが、誰に復讐すればいいのか、私はどうすれば良いのか分からず....ひたすらにただひたすらに神に祈りました.......そんな時でした....盟友プレラーティが言うのです。『神など本当に存在するのかい?僕の水晶で聖女の末路を見てみるといい....考えが変わるはずだからね。』と。....そして、私は見てしまった.......貴女が敵兵に犯され、拷問される姿を....!汚されていく姿を....!にも関わらず、貴女が敵兵への許しを神に祈る姿を.......!そんな貴女を、三日三晩見せられ続けた私は、復讐すべきは神なのだと理解した.......いや、神など存在しないと悟った!神は貴女という、最も救うに値すべき聖女を救わなかった!ならば私は神を糾弾し、冒涜し、背徳し、悪逆の限りをつくして、神の存在を否定するしかない!神などいない!その証拠に8年私は生かされ、処刑された理由も私の財を奪いたいという欲望が為!!神は私に罰等与えなかった!!!」

 

ジルは静かに語り出すと、徐々に激昴し、やがて慟哭にも近い吐露をした。

 

ジャンヌは口を挟まず、涙を流しながら、ジルの叫びを受け止め、口を開く。

 

「....私の所為で貴方を苦しませてしまったのですね.......ですが、ジル....勘違いをしてはいけません。神は....主は、私を見捨ててなどいませんよ。....... いや、そもそも主は誰一人として見捨てていらっしゃらない。ただ、何も出来ないだけです。祈ることも、供物を捧げることも、全ては己のためではなく主の為の行いです。主の嘆きを、主の悲しみを癒すために我々は祈るのです。それに、私は汚されて等いません.......元々この手は血に塗れていたのですから.......さらに言えば、例えこの身が陵辱され、拷問され、最期は焼かれ朽ちようとも.......我々の心は、我々が生きた証は、思い出は、我々だけのもの。その輝きだけは誰にも穢せはしません。」

 

ジャンヌは自身の偽ざる心の内をジルに語った。

 

「.......っ!?そうか.......そうでしたね.......貴女と共に戦えた栄誉は誰にも貶める事は出来はしない.......!貴女と共に過ごした輝かしき日々は、失われはしない.......!」

 

ジルはジャンヌの言葉に、彼女との輝かしき日々を思い出し、涙をながした。

 

「私の....なんと....なんと、愚かしい事か.......そんな事にも気づかず.......無垢なる者を殺した.......殺し続けてしまった.......主を、糾弾し、冒涜し、背徳し、悪逆の限りを尽くしてしまった.......なんと、罪深き存在か.......」

 

そして、自身の手で行った非道を、魔道に堕ちた自身を悔恨し、螺湮城教本(プレラーティーズ・スペルブック)を開いた。

 

「私は償わなければなりません.......許されはしなくとも、裁かれねばなりません.......少なくとも、あの無垢な子らと同じ末路を辿らねば、なりません.......ジャンヌ、ここから先はおぞましく、見るに堪えないものですから-----

 

-----海魔を召喚し、自らを餌にしようとするジルの頬に、ジャンヌの平手打ちが飛ぶ。

 

「ジル!お止めなさい!自分で自分を裁くなど.......それは、裁きでは無く自己満足です!!.......貴方の罪は貴方だけのもの。償えないとしても、その絶望はやはり貴方だけのもの。貴方は自己満足で償った気持ちにでもなるつもりですか!?私も貴方も罪人(つみびと)であり、犠牲となった者たちに償う方法など存在しない!」

 

ジャンヌはジルのやろとしていた事に涙を流しながら叱責した。

 

「その苦悩を、その絶望を抱え続けるしかない。神は全てを許すでしょうし、貴方が殺した子供たちは全てを許さないでしょう。その罪、その罪悪感、それは永遠に背負うべき罰です。.......それでも、裁かれねば前に進めないと言うのなら.......私が貴方を裁きます!.......そして、共に進みましょう、大丈夫です、肩は貸してあげます。」

 

ジャンヌは真剣な顔で自身の決意を告げると、悲しみと慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。

 

「なりません!魔道に堕ちたのは、私だけだ!貴女まで道連れになる事は無いのです!!」

 

ジャンヌの決意とその後の微笑みを見て、自らも消滅しようとしているのを理解し、必死に懇願する。

 

「いいえ、私もまた、血に塗れた罪人なのです。ですから、貴方と同じ道を歩まなければなりません。....それに.......独りぼっちは寂しいでしょう.......良いですよ.......一緒にいてあげます.......」

 

ジルの懇願に、優しくそう答えると、ジャンヌは聖剣カトリーヌで自らの掌を切り裂き、祈りの言葉を捧げる。

 

「我が心は我が内側で熱し、思い続けるほどに燃ゆる

我が終わりは此処に。我が命数を此処に。我が命の儚さを此処に

我が生は無に等しく、影のように彷徨い歩く

我が弓は頼めず、我が剣もまた我を救えず

残された唯一の物を以て、彼の歩みを守らせ給え

主よ、この身を委ねます――― 紅蓮の聖女(ラピュセル)!!」

 

祈りの言葉が終わると、宝具を解放し生前自身を焼き殺した炎を具現化した。

 

「これからも共に歩んでいきましょう.......アーメン.......」

 

ジャンヌは宝具の炎に包まれながら、ジルに手を差し伸べる。

 

「ジャンヌ.......私は今とても幸福です.......神は確かにおわしました.......アーメン.......」

 

その手を取ったジルは、ジャンヌの宝具に灼かれながら、穏やかな笑顔を浮かべていた。

 

((ああ.......そうか.......私が悪逆の限りを尽くしたのは.......主を否定する為でなく.......こうして、彼女に裁かれたかったからか.......我ながらなんと、愚かな.......ですが....やはり、ジャンヌは聖女だった.......))

 

ジルはそう己の心の内で想いを馳せながら、ジャンヌと共に消失した。

 

その後、龍之介は命を助けられ、警察に突き出された。

 

普段の彼であれば、言い逃れをしておしまいだったかも知れないが、事前にウラオモテックスを貼られていた。

 

ウラオモテックスの効果は隠していた事柄や裏の顔を表に引き摺り出すというものだ。

 

これにより、警察で自供した事から、捜査が始まり、殺人罪で逮捕される事となった。

 

とある場所のとある実験場にて、少女と思しき人影が、興奮を隠しきれぬ様に独白をしていた。

 

「まさか私の親友が召喚されるなんてねー!ああもう!想定外想定外!完ッ全に想定外だよ!でも、こういう事があるから人生って止められないよね!楽しいよね!アハハハハハ!でも、わざわざ、魔道に堕としたのに、救われちゃうのはなんだかなー....でも、まぁ、いいや!傍観なんかやめて、介入だ〜!」

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