ドラえもんのび太の第四次聖杯戦争   作:テキーラ11

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今回は、フラグを立てるための話なので、戦争開始は、次回からになります。


第6話「機械はバグによりエラーを起こす」

場面は再び戻り、間桐邸にて、ドラえもん達から事のあらましを聞いた雁夜。

 

「俺がいない間にそんな事が.......兄貴と桜は、もう行ったのか?」

 

「いや、いるぞ。久しぶりだなぁ、雁夜.......元気だったか....?」

 

雁夜がドラえもん達にそう問いかけると、後ろから鶴野が声を掛ける。

 

「ああ.......ぼちぼち、やってたよ.......」

 

少し、気まずそうに答えながら振り向く雁夜。

 

「....そうか、そりゃ.......良かったよっっ!!」

 

そして、振り向き様の雁夜の左頬に、鶴野の右フックが決まる。

 

「.......っ。兄貴.......」

 

雁夜は、鶴野に全て押し付けて、1人家を飛び出した罪悪感から、避ける事が出来なかった。

 

「.......雁夜、すごく、心配してたんだぞ!?めちゃくちゃ、大変だったんだぞ!?.......まぁ、お前が出てったお陰で、俺は愛するカミさんに出会えたし、息子も出来た。だから、感謝もしてる。これが、お前の代役を務めてきた俺の最後の仕事だ。....あー、これでスッキリした。.......さぁ、お前の番だ。臓硯にやらされたとはいえ、桜には、酷い事をした.......お前の好きにしてくれ。」

 

鶴野は雁夜を殴った後、心の内をさらけ出し、吹っ切れた様子で、目を瞑り、好きにしろという。

 

「ああ、分かってる。....ふんっっ!!!」

 

雁夜は鶴野の腹筋に、力任せに拳をぶち込んだ。

 

「がはっっ!!?おっほっ!!げっほっ!!....はぁ....はぁ....ごほっ.......おま....そこは....良いんだ、兄貴.......とか、そういう優しさは.......」

 

腹筋に守られて、さらには形も何も無い力任せの打撃とはいえ、パワーアップした雁夜の打撃にもんどり打ちながら、恨めしそうにする鶴野。

 

 

「ねぇよ、んなもん。俺の娘に手を出したんだ、それくらいで済んでありがたいと思え。」

 

そんな様子の鶴野に、雁夜は吐き捨てる様に言う。

 

そして、しばらくして、お互いの顔を見合わせる鶴野と雁夜。

 

「「ふふ.......はっはっはっ!」」

 

同時に笑い出す2人は、溝を越え、仲の良かった兄弟に戻り、しばらく笑いあった。

 

「.......兄貴、これからどうするんだ?」

 

鶴野に手を貸しながら、そんな事を問い掛ける雁夜。

 

「ああ、明日桜を連れて、飛行機に乗り、明後日の朝にはアメリカに避難させてる家族に合流しようと思ってる。」

 

雁夜の手を借りながら、立ち上がると、そう答える鶴野。

 

「そうか.......桜を頼む、兄貴。」

 

「あくまで、一時的にだからな。今回の聖杯戦争を生き残って、間桐家当主として、桜を育てるのは雁夜、お前以外に居ないんだからな。」

 

覚悟を持った目で鶴野を見つめ、そんな風に頼む雁夜に、鶴野はそう返す。

 

「....そうだな、当たり前だ。桜は俺の娘だからな。で、兄貴は俺が間桐を継いだ後はどうするんだ?」

 

雁夜は鶴野の言葉に、決意を新たに答えると今度はそう問掛ける。

 

「俺は、そのまま、アメリカに残る。やってみたいことがあってな.......俺にも野望の1つや2つあるんだ。」

 

鶴野はそう答えると、ニヤリと笑ってみせる。

 

「兄貴.......見ないうちに、随分、変わったな。」

 

10年以上ぶりに会った鶴野は、雁夜の中の鶴野の性格と、大分食い違っていたようだ。

 

「ふふ....どうだろうな.......だが、カミさんとの出会いが、俺を変えてくれたのかもな.......それより、お前の方も、大分頑張っていた様じゃないか。読んだぞ、お前に関する記事。なんでも、戦争孤児を救ったり、お前の記事のお陰で紛争が幾つも解決したそうじゃないか。」

 

照れくさそうに笑えば、そう答え、次に雁夜に関する話題を振る鶴野。

 

「いや、俺は何も大した事はしていないさ.......紛争地域に行ったのだって、もともとは金のためだし.......少年兵にされそうな子供を放っておけなかっただけだ....それに助け出したと言っても、荷物に紛れ込ませて、ボランティア団体に送り届けただけだしな。20人くらいしか助け出せなかった.......戦場には、そんな子供がその何十倍、何百倍もいるんだ.......俺はひと握りにも満たない数を助けたに過ぎない。....それに、あれらの記事は、俺の手柄じゃない.......俺なんかよりもっと凄いライターが、死に際に俺に託したもんだ。名前もそいつの名になるはずだったんだがな.......」

 

鶴野の言葉に、憂い混じりの顔で自嘲気味に答える雁夜。

 

「そうか....だが、お前は意味のある事をやったんだ。俺には到底出来ない事をな。俺は、兄貴としてお前を誇りに思うよ.......お前は英雄(ヒーロー)さ。」

 

鶴野はそんな雁夜を、褒め称える様に言った。

 

「いや、俺はそんな柄じゃない.......ただ、桜を守れればいい。それだけだ。」

 

鶴野の言葉に謙遜しながらも、何処か救われた様な顔を見せる雁夜。

 

「さて、しばしのお別れの前に、桜達とどっか出掛けてくる。そのくらいの時間はあるはずだしな。....兄貴、準備の方は任せた。」

 

「ああ、楽しんでくるといい。こっちは任せておけ。」

 

その会話を最後に、ドラえもん、のび太、桜を連れて出掛ける雁夜。

 

映画や買い物など、穏やかな時間を楽しんでいた。

 

だが、雁夜を除いた3人だけで買いたい物があるそうで、しばし別行動をする事になった。

 

雁夜は近場で、少し時間が潰せないかと店を探していると、ホテルに併設したスイーツ店を見つける。

 

冬木ハイアットホテル内に併設されたその店は、ケーキバイキングを売りにしているが、喫茶店としても営業しており、その店に入る雁夜。

 

だが、あいにく店は満席の様で、相席なら案内出来るかもしれないと店員に言われ、少し待つ事にする。

 

しばらくして、店員に案内された4人掛けの席では、女性客が1人、黙々とケーキを食べていた。

 

「すみません、相席、ありがとうございます。」

 

雁夜は女性客に会釈をし、お礼を言うと席に着く。

 

「....いえ、お構いなく.......」

 

雁夜をチラリと見ると、軽く会釈をし一言返せば、また黙々とケーキを食べていく。

 

女性客は深緑色の髪のショートヘアで、端正な顔立ちだが、仏頂面で化粧っ気はなく、黒を基調としたスーツ姿だ。

 

そんな女性客は、感情を表現するのが苦手というよりは、感情を押し殺した機械の様に見える。

 

そんな彼女が雁夜の目には、救われる前の桜と重なって見えた。

 

そして、愛していた女性、禅城.......もとい、遠坂葵。

 

雁夜は、背丈や髪の色など、何処か彼女と重なるものを感じてしまう。

 

「あの....!あ、いや.......えっと、もし良かったら、オススメとか教えて貰えませんか?」

 

それ故か、自分自身でも理解しないうちに、目の前の女性客に声を掛けていた。

 

そして、咄嗟にメニューを見て、そんなふうに問い掛ける。

 

「え.......そうですね.......これとか、美味しいですよ.......」

 

声を掛けられた女性客は、無表情ながら、困惑した様子で、しかし、メニューを指差し答えてくれた。

 

「.......ありがとうございます。すみません、このケーキのセットをコーヒーで。」

 

答えてくれた女性客にお礼を言うと、店員を呼んで注文する雁夜。

 

雁夜が女性客を観察した様に、女性客もまた、雁夜を観察する様に見ていた。

 

女性客の名前は久宇舞弥、今回の聖杯戦争に参加する衛宮切嗣の陣営のものだ。

 

舞弥と切嗣の関係は、仲間や相棒というよりは、部品やパーツと言った方が正しい。

 

舞弥自身、自我を持たず、道具として使われる事を望み、切嗣も舞弥を道具として使った。

 

舞弥は、戦争の絶えない貧国の出身で、そこでは少年兵として、また、性処理道具として過ごしてきた。

 

そんな舞弥の自己防衛方法は、鈍感に、そして無感になる事だけだった。

 

昼は、機械の様に感情を殺しながら敵兵を殺し、夜は人形の様に感情を封じながら男達に犯されるがまま。

 

最初から希望を捨て諦める事で、絶望も生まれなくなった。

 

感情を殺す事で、罪悪感や嫌悪感を抱く事も無くなった。

 

自らの記憶を消す事で、過去に苦しまなくなった。

 

自己を殺す事でしか、自己を保てなかった女、それが舞弥だ。

 

切嗣もそれは分かっており、自らのパーツとして使う以上、余計な希望や感情を与えると、却って苦しむ。

 

そう思い、舞弥には、敢えて人間性を殺したままの状態で居させた。

 

その事への罪悪感や己の無力さに苦しむ切嗣を知っているからこそ、舞弥も何も求めなかった。

 

そして、目の前の男、間桐雁夜。

 

舞弥はまだ情報を共有しておらず、間桐雁夜を知らないが、危険性と、既視感を感じていた。

 

常人を遥かに凌ぐ鍛えこまれた身体、幾千....いや、幾万の修羅場を潜り抜けて来たというのだろうか。

 

この男は、切嗣の纏っている、戦場の雰囲気と同じものを感じさせる。

 

にもかかわらず、こちらに向けられるあの目は、敵意でも、警戒心でも、ましてや好色によるものでもない。

 

悲哀と慈愛が混じりあっている.......と、言うのだろうか、切嗣が1番最初に自身に対して向けた表情に似ていると舞弥は思った。

 

それは、普段の完全なる殺人機械である切嗣とは、真逆の表情であり、感情だった。

 

そして、決して嫌な---そこまで、考えたところで、我に返る舞弥。

 

自分は機械であり、切嗣を構成するパーツの1つに過ぎない。

 

そう思い返し、何故、この様な下らない考えを持ったのだろうと、理解出来ずにいた。

 

否、希望は容易く絶望に変わる、世界とはそんな非情で無慈悲な場所だと知っている舞弥は、無意識に理解出来ないふりをしていた。

 

「あ、あの.......煙草を吸っても、大丈夫ですか?」

 

と、そんな思考にふけっている舞弥に、雁夜は再び声を掛けてきた。

 

「....どうぞ.......」

 

雁夜は、舞弥の答えを聞くと、懐から煙草を出し、口に咥え火をつけ、紫煙を燻らす。

 

雁夜が吸っているのは、切嗣と同じ銘柄の煙草だった。

 

煙草を吸いきると、腕時計を確認し、席を立つ雁夜。

 

「相席、ありがとうございました。俺は、そろそろ時間なので、失礼します。....その、またいつか.......いや、何言ってるんだろう.......とにかく、ありがとうございました。」

 

色々感情が混ざり合い、テンパった様子で、そう言い残すと、お辞儀をして、店を後にする雁夜。

 

「いえ.......」

 

そう短く、言葉を返し、去って行く雁夜の背中をただ見つめている舞弥。

 

切嗣に似ているようで、相反してもいるその不思議な人物に、舞弥の中で、エラーとしか呼べない関心が生まれていた。

 

しばらくして、切嗣からの連絡が入り2時間後に落ち合う予定になったので食べ放題を延長する舞弥。

 

気持ちを切り替えようと、また仏頂面でケーキを爆食いすれば、店員達の間で、都市伝説が生まれるが、それはまた別の話。

 

「待たせてしまったか?」

 

1時間後、冬木ハイアットホテルの駐車場にて、舞弥の乗る車に乗り込んでくる切嗣。

 

「いえ、こちらも先程到着したばかりです。機材は全て用意してあります。資料の方は?」

 

既に、資材搬入員の格好に着替えていた舞弥が、切嗣にそう問い掛ける。

 

「流石だな舞弥、これが資料だ。その内の1人、ケイネス・アーチボルト・エルメロイが、このホテルに宿泊する事がわかった。故に最悪の場合、ここを丸ごと爆破させる。」

 

切嗣は舞弥に資料を渡せば、同じく、作業員の格好に着替えながら、作戦を伝える。

 

「なるほど.......っ!?....こ、この、間桐雁夜という男.......」

 

資料を見ながら、間桐雁夜の資料を見つけ、普段無表情の舞弥ですら、驚きを隠せずにいた。

 

そして、現実の残酷さ、醜さ、非情さを再認識していた。

 

「.......どうした?何か問題か、知っている事でもあるのか?」

 

舞弥のタダならぬ様子に、切嗣は険しい表情で、舞弥に問い掛ける。

 

「.......およそ、2時間半前に、冬木ハイアットの喫茶店にて、間桐雁夜と接触しました.......」

 

「なにっ....!?.......状況を詳しく教えてくれるか。」

 

舞弥の予想外の答えに、驚きつつも、状況を聞き出す切嗣。

 

「.......なるほど.......君の存在がバレて、向こうから接触してきたのか.......?」

 

状況の説明を聞き、あらゆる可能性を思考する切嗣。

 

「その可能性は低いと思います。.......もし、そうだとするならば、あの状況下でも、私を暗殺するだけの技量を、間桐雁夜という男は持っています。」

 

切嗣のパーツとして、忠実に見たままの評価を話す舞弥。

 

「君が、それ程までの評価をするのか.......舞弥....僕は、今から、君にかなり危険な命令を下す.......」

 

切嗣はどこか悲しみを滲ませる、真剣な表情で舞弥を見つめ、そう語る。

 

「前にも言ったはずです。私に生命や感情など、とうにありません。貴方に拾われた道具に過ぎない。....であるならば、貴方が私をどう使い潰そうとも、私は構いません。」

 

切嗣を見つめ返しながら、切嗣の言葉にそう返す舞弥。

 

「そう....だったな.......舞弥、君の顔は奴に割れてしまった。.......だが、正体はバレていない可能性が高い.......だったら、それを逆手に取り、間桐雁夜に再接触し、出来る限りの情報を盗み出してくれ....もし、可能なら---」

 

「---分かっています。可能であれば、暗殺します。」

 

切嗣から言葉が紡がれる前に、舞弥はそう言い放つ。

 

切嗣の理想(ユメ)の為に、他人を殺す。

 

それは、舞弥にとって、当然とも言える行為であった。

 

故に、ただのエラーに過ぎない、胸を締め付ける痛みを無視する。

 

場所は移り変わって、間桐邸の玄関前。

 

ドラえもん、のび太、桜の3人と合流し、少ししてから帰宅すれば中に入る前に呼び止められた

 

「ほら、桜ちゃん。」

 

ドラえもんが、桜の背中を押すように、そう呼びかける。

 

「うん.......あのね.......これ、開けてみて.......」

 

ドラえもんの呼び掛けに頷けば、雁夜の前に歩み出て、包みを差し出す桜。

 

「くれるのかい、桜。.......これは.......」

 

桜から差し出された包みを雁夜が開けると、そこには御守りが入っていた。

 

「雁夜....おとう....さん.......まだ、上手く呼べないけど.......桜....ちゃんと、呼べる様になるから....だから....死なないでね.......?」

 

桜はどこかぎこちなく、恥ずかしそうに雁夜をお父さんと呼べば、自身の胸の内を語る。

 

「桜.......ありがとう....!お父さん、ちゃんと無事に生き残って、桜を幸せにしてやるからな....!」

 

雁夜は桜を抱きしめながら、嬉しさのあまり、涙を流していた。

 

そんな2人の光景を、少し涙を浮かべながら、微笑んで見届けるドラえもんとのび太。

 

空は、オレンジ色に輝き、日が沈み始め、間桐邸を照らしていた。

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