最後のサーヴァントの召喚者である、ウェイバー・ベルベットは少し後悔していた。
何故ならば、召喚したライダーのクラスのサーヴァントは言うことを聞かないどころか、小突いてきたりするのだ。
「たわけ!!......坊主、貴様は何を見ていたのだ。アサシンが、死んだ?だから、どうした。余が戦うとすれば、生き残った方であろうが!そやつはどうやって、アサシンを倒したのだ?」
今もまた強烈なデコピンを受け吹き飛ばされれば、そんなふうに問い詰められる。
「いや......暗かったし、砂埃は舞っていたし、良く見えなかったけど......あ、剣を10本も20本も投げつける様な宝具は有り得たりするのか......?」
強烈なデコピンに目を白黒させながらも、何とか状況を思い出し話すウェイバー。
「ふむ......無数に分裂する剣......か。有りうるな、それは単一の宝具として定義しうる能力だ。」
((......でも....あれは分裂したと言うには、一つ一つの形が違いすぎるような......))
「まぁ、よい。敵の宝具等、相見えれば知れること。ふん!」
ライダーはそんな風に語れば、ウェイバーの背中を景気良く叩く。
叩かれたウェイバーは、目を白黒させながら前に倒れ込む。
「ゲホッ!?ゲホッ!?......そんなんで良いのかよ......?」
咳き込みながら涙目になりながら、消え入りそうな声で問いかける。
「よい!寧ろ、心が躍る!!食事にセックス!眠りに戦!!......何事につけても、存分に楽しみ抜く......!それが、人生の秘訣であろう......!ぬははは!ぬふふふ!」
ライダーはそう語り心底楽しそうに豪快に笑いながら立ち上がる。
「さぁ!ではそろそろ、外に楽しみを求めて見ようか。出陣だ坊主!支度せい!!」
立ち上がれば唐突にそんな事を言えば、ウェイバーを急かす。
「しゅ、出陣て......どこに......?」
あまりに唐突なライダーの提案に、困惑しながら問いかけるウェイバー。
「どこか適当に。そこら辺へ。」
「ふざけるなよー!」
ライダーのあまりにも適当な答えに、不満の声をあげるウェイバー。
「遠坂を見張っていたのは貴様だけではあるまい。......となれば、アサシンの死も知れ渡っていよう。ここからは、他の連中が一斉に動き出すぞ?」
ウェイバーの不満の声に反論する様にそう答え、ブラインドを指で開き、窓の外を覗く。
「そやつらを見つけた端から狩って行く。」
そして、獰猛な野獣の様な笑みを浮かべるライダー。
「見つけて、狩るって......そんな、簡単に...........」
ライダーの単純明快なその答えに、今度はウェイバーが反論しようとするが、ライダーが遮る。
「余は、ライダー!......こと、足に関しては他のサーヴァントより優位におるぞ。ふふんっ。」
自らの優位性をウェイバーに説き、見せてやろうと言わんばかりに室内で宝具を出そうとする。
「待て待て待て!?ここじゃ不味い!!家が吹っ飛ぶ!!!」
そんなライダーを必死に止めて、仕方なくライダーの出陣とやらに着いて行くウェイバー。
一方その頃、ケイネスのランサー陣営も動き出していた。
だが、マスターたるケイネスも、サーヴァントたるランサーも思い悩んでいた。
それは、信頼関係を上手く築けないという致命的な弱点の要因ともなっている。
他の陣営にも言えなくはないが、ライダー陣営はライダーがウェイバーを引っ張る事で解決している。
セイバー陣営も、マスターである切嗣との溝が深いが妻のアイリが緩衝材となる事で、アーチャー陣営はアーチャーに敬意を払う事でそれぞれ一応の解決はしている。
しかし、ランサー陣営のこの問題は一切の打開案も無く、放置されたままになっていた。
事の発端は、ランサーであるディルムッド・オディナを召喚した時に起きた。
まず1つ目の要因は、ディルムッド・オディナという英雄が、裏切りの伝承を持っていた事。
だが、これだけならば承知の上での召喚であるが故にそれ程問題にはならなかった。
しかし、残る2つの要因により信頼関係を築くこと無く崩壊していく。
次の2つ目の要因は、ランサーに聖杯への願いを聞いた際に、何も無いと答えた事にある。
この時のランサーの答えは間違いでは無かったが、端的で説明の欠けたこの答えにケイネスは疑惑を向ける結果となった。
そして、最後の3つ目の要因が1番の問題となる。
その3つ目の要因は、ランサーの顔に呪いとも呼べる
それにより、ソラウはランサーに対して激しい恋心を抱いてしまう。
そんな3つの要因が重なり、ランサーの想いとは裏腹に、ケイネスはランサーを信頼出来なかった。
だが、これは何もランサーにだけ原因がある訳では無い。
何故なら、ソラウ程の魔術師であれば呪いに対して
それは、彼女が恋心を抱く事も愛を感じる事もなく今日まで至っていたからだ。
要するに、ケイネスのソラウに対する想いが、ソラウ自身に伝わっていない事に原因があった。
だが、それでも何とか信頼して貰おうとランサーは頑張っていた。
敵サーヴァントを打ち倒せば信頼されるだろうと、魔力を垂れ流しながら誘い街を練り歩いた。
武技に秀でたランサーは、どんな敵が来ようとも何とかできるという自負があるのでそういった戦法に出たのだ。
そして夜も深けてきた頃、漸く最初の訪問者がコンテナの積まれた港に現れた。
「良くぞきた。......今日1日、この街を練り歩いたものの、どいつもこいつも穴熊を決め込むばかり......」
槍を肩にかけそう語り掛けながら、訪問者の前に姿を現すランサー。
「俺の誘いに応じた猛者は、お前だけだ。......その清澄な闘気......セイバーとお見受けするが、如何に?」
ランサーの誘いに乗った訪問者は、アイリを伴ったセイバーだった。
「如何にも。そういうお前は、ランサーに相違ないな?」
ランサーの問いに堂々たる雰囲気で答えるセイバー。
「ふっ、これより仕合うという相手と、尋常に名乗りを交わす事もままならぬとは......興の乗らぬ縛りがあったものだ......」
セイバーの問いに残念だと言わんばかりにそう答えるランサー。
アイリと一言、二言交わせば、自身の魔装に切り替えるセイバー。
互いに目の前の敵を見据えながら、得物を構えるランサーとセイバー。
だが、セイバーはランサーの端正な顔を見据えてある事に気付き呟いた。
「
その呟きを聞いたランサーはヤレヤレといった表情で、自笑する様に語る。
「......悪いが、持って生まれた呪いの様なものでな......こればかりは如何んともし難い。......俺の出生か、もしくは女に生まれた自分を恨んでくれ。」
「その結構な面構えで、よもや私の剣が鈍るものと期待してはいるまいな?槍使い。」
ランサーの言葉に、いたって冷静な表情でそう淡々と返すセイバー。
「そうなっていたら、興醒めも甚だしいが......なるほど、セイバークラスの抗魔力は伊達ではないか......結構。この顔のせいで腰の抜けた女を斬るのでは俺の面目に関わる。最初の1人が骨のある奴で嬉しいぞ。」
「ほう?尋常な勝負を所望であったか。誇り高い英霊と相見えたのは、私にとっても幸いだ。」
ランサーはセイバーの言葉に、セイバーはランサーの言葉に共に嬉しそうに獰猛な笑みを浮かべる。
「それでは......いざ......!」
ランサーのこれより先は語るに及ばずといった言葉を皮切りに、両者は得物を握る手に力を込める。
先に動いたのはセイバーで先の先を取りに行き、受けるランサーは後の先を取りに行く。
お互いの得物がぶつかり合えば、その衝撃でアスファルトが抉れ吹き飛ぶ。
互いに相手の動きを見極めながら、高度な剣術と槍術の応酬を繰り広げる。
しかし、セイバーは一振の剣、ランサーは長槍と短槍の2本と互いに警戒する武器の数に差があった。
故にセイバーは攻め手に欠け、先ずはランサーが少し押していた。
「どうした、セイバー?攻めが甘いぞ!」
攻め手を増やし、セイバーを追い込んでいくランサー。
しかし、セイバーの持つ剣は透明で間合いが見えず、セイバー自身の技量も相まって先に傷を負ったのはランサーだった。
互いに互いの技量を認め合いながら、次なる一手を思案していた。
戦いの余波で、積み上げられていたコンテナは抉られ吹き飛んでいる。
その裏では、マスター同士の策謀が繰り広げられていた。
ケイネスは隠蔽魔術を使い身を隠し、戦闘を観察しながら戦場を支配する機会を伺っている。
切嗣はアイリをマスターと見せかけて舞弥と共にスナイパーライフルでマスターを狙う。
綺礼はアサシンを使い戦闘の行く末を監視し、時臣と策を練っている。
そして雁夜は蟲を使い、それらのマスターを同時に監視していた。
と、ここで戦闘に動きが見られた。
ケイネスがランサーに宝具の使用を許可したのだ。
ランサーの
つまり、魔術的な装備であるセイバーの鎧は、無いのと同義になったのだ。
そこで、セイバーは魔装の鎧を消し身体を軽くする事でスピードを上げその不利を覆そうとした。
だが、それはランサー相手にはただの失策であった。
それは、ランサーにはもう1つの宝具、
鎧を消したセイバーの左腕を
その事でランサーの真名を看破するセイバー。
「セイバー、この次は取る!」
「それは、私に取られなければの話だぞ、ランサー!」
そして、再び向き合い打ち合おうとする両者に割って入る者が現れた。
「アララララララァァァイィィィ!!!」
その者とは、ウェイバーを伴い宝具に乗ったライダーだった。
「双方、剣を収めよ。王の前であるぞ!」
2人の顔を交互に見て、とりあえずは戦いが止まったのを確認して名乗りをあげるライダー。
「我が名は、征服王イスカンダル!此度の聖杯戦争では、ライダーのクラスを獲て現界した。」
誇らしげに、真名とクラスを名乗れば威風堂々とした笑みを浮かべるライダー。
そんなライダーに抗議するウェイバーはデコピンで黙らされる。
「うぬらとは、聖杯を求めて相争う巡り合わせだが......先ずは問うておく事がある!」
ウェイバーを黙らせれば、セイバーとランサーを見遣りそう宣言する。
「うぬら......1つ我が軍門に降り、聖杯を余に譲る気はないか!?さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する快悦を共に分かち合う所存でおる!」
そして、ライダーから出た言葉はまさかの勧誘であった。
ランサーは呆れた様子で首を振りながらその勧誘を蹴った。
セイバーに至っては、戦いの邪魔をされ侮辱されたと怒っていた。
「んー......待遇は、応相談だがな......?」
「「くどいっっ!!」」
ライダーは諦めず金マークを作りながら問いかけるが、2人揃って一蹴する。
さらに、セイバーがアーサー王であると名乗りをあげ、断る理由を説明する。
その説明を聞いたライダーは、素直に少女の姿に驚いたが、セイバーは侮られたと感じ更に怒る。
と、そこへケイネスが拡声の魔術を持ってウェイバーに語り掛ける。
「やぁ、私の聖遺物を盗み出してくれたウェイバー・ベルベット君。君には、私自ら課外授業をしてあげようではないか。......そして、学ぶといい。魔術師同士の戦いにおける恐怖と苦痛を余す所なくね。光栄に思いたまえ。」
ケイネスの言葉に恐怖心から涙を浮かべて怯えるウェイバーの背中をさすり任せろと笑うライダー。
「おう!?魔術師よ!!察するに貴様はこの坊主に成り代わって、余のマスターになるハラだったらしいな。......だとしたら片腹痛いのう。余のマスター足るべき男は、余と共に戦場を馳せる勇者でなければならん!姿を現す度胸すら無い臆病者では、役者不足も甚だしいぞ!!はーっははははは!!」
ケイネスに対し、ライダーはウェイバーの方がよっぽど度胸があると笑い飛ばした。
「おい、こらぁ!!他にもおるだろうが!?闇に紛れて覗き見してる連中は!!」
そして辺りを見渡しながら、そう叫ぶライダー。
「どういう事だ、ライダー。」
セイバーの言葉に、親指を立て任せろと制止するライダー。
「セイバー、それにランサーよ。うぬらの真っ向切っての競い合い、真に見事であった!あれ程清澄な剣戟を響かせては、惹かれて出てきた英霊がよもや余1人という事はあるまいて。」
2人の戦いを賞賛しつつ、自らの意図を話すライダー。
「聖杯に招かれし英霊は、今此処に集うが良い!!尚も顔見せを怖じる様な臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れぃ!!!」
集まって来てるであろう英霊達に向け、挑発しながら呼び掛けるライダー。
「ごめんなさい、2人の戦いがあまりに見事だったから、つい見とれちゃって......僕、ドラえもんです!」
「僕も右に同じだよ......僕は野比のび太!2人ともフォーリナーだよ!」
ライダーの呼び掛けに、近くで見ていたドラえもんとのび太が真っ先に出て名乗りをあげた。
「
続いて、アーチャーが出てきた所で、今宵の役者は揃ったのだった。