桑原先輩との試合に夢中で気付かなかったが、いつの間にか俺と桑原先輩以外の試合が終わっていてほぼ全員が俺たちの試合を観戦していたらしい。
まぁ幸村部長の一声でその試合も終わってしまったけど。
「10分休憩後に俺と試合をしよう。」
気づいたら1時間も桑原先輩と試合をしていたらしく、桑原先輩も驚いていた。
幸村部長との試合ということもあって周りの注目度も一気に上がる。
周りが戸惑う中、試合を終えた赤也が俺の元へ寄ってくる。
「おいおい桐生大丈夫か?1時間試合した後に幸村部長と試合だなんて」
「まぁ、体力的には。そういえば赤也は幸村部長とやったんだっけ?どうだった?」
「あぁ、正直あの人の強さは化け物並みだぜ、6-0のストレート負けなんて俺久しぶりだったし。あと、幸村部長と試合してるとさ段々目が見えなくなって、耳も聞こえなくなっていくんだ。後で先輩達に聞いたんだけど、幸村部長って人の五感が奪えるらしい」
赤也でストレート負け、化け物並みの強さか。
つーか、五感奪えるってどういうことだ?
念能力者には見えないし、念を使わずに五感奪えるのか?何だそれ凄すぎだろ。
まぁそんなに強い人相手なら俺のやることは決まっている。
幸村side
桐生との試合が始まり、俺はワクワクしていた。
俺の相手の一年は経験者だったけど、赤也みたく潰しがいがなかったし。
ほとんどの試合が終わっていく中、ジャッカルとある1年の試合だけは終わってなくて暇つぶしに覗いてみて俺はすぐに分かった。
1年が全力でないことに、手を抜いたプレーをしていることに。
ジャッカルはまだ発展途上の選手だけど準レギュラーとしての実力は持っていて決して弱い選手ではない。
その後もしばらくラリーが続いた所でジャッカルが自分が手を抜かれたと気づいた。俺はそこで試合を無理やり2人の試合を切り上げた。
無理に俺との試合をこじつけたはいいものの、あっという間に桐生とのゲームは6-0で終わってしまった。
勿論俺のストレート勝ち。
この1年、さっきの桑原との打ち合いでは考えられない程の凡ミスをわざと繰り返してきた。
周りは期待していた分落胆していたが、俺からしたらただただ苛立ちが募るだけだった。
あぁ、どうやらこの子にもお仕置きが必要のようだ。
「ありがとうございました」
そう言って1年は俺に握手を求めてきた。仮にも後輩で試合相手、握手を求める手に応えないわけにはいかない。
でもそのまま握手して終わり。なんてあまりにつまらないから、彼が手を引こうとした瞬間に強く彼の手を握りしめ、腕ごと引っ張る。
「俺との試合で手を抜こうだなんていい度胸だね。明日から俺がいいと言うまで朝練前にグラウンド100周して柳から受け取るトレーニングを終えておくこと。終わるまでコートに入ることもラケットとボールを触ることも許さない。いいね?」
「はぁ」
彼の耳元でそう告げると俺は手を離し、コートから立ち去る。普通あそこまで無茶を言われたら困惑するか、苛立つか何らか感情が出るはずなんだが。
・・本当、生意気な子だ。赤也みたいに目に見えるバカだったらどんなにやりやすいか。
「蓮二、彼の名前何だっけ?」
「桐生葵だ。俺としたことが全くマークしていなかった。不覚だ。」
蓮二に彼用のトレーニングを今日中に渡すことを告げるとさっそく蓮二は彼の元へ駆け寄っていったのだった。