新原紲の魔法相談室   作:ゼガちゃん

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お待たせしました。

続きです。


調査しても進展するとは限らない

紲は生徒会長のお達しの通りに朝早くに登校した。

言い出しっぺの紗香は紲よりも早くに家を出たらしい。

紲の携帯に彼女からのメールが届いていた。

学校は8時30分には集合する生徒が多い。

紲が到着した頃は7時より前だ。

部活動の朝練で来ている生徒が励んでいる声が聞こえる。

今回は備品のチェックのついでといった形で事件に繋がるものを見付ける。

その声を聞きながら、紲も早速作業に取り掛かる。

今からなら1時間は余裕がある。

1クラス1クラスの中を確認するのは骨が折れるがやるしかない。

 

 

「さあ!! 頑張るのです!!」

 

 

それに紲1人ではなく、央佳もやるのだ。

さっさと終わらせて1人しかいない蒲倉先輩を手伝うスタンスだ。

ちなみに央佳には備品のチェックの部分のみを説明して参加して貰っている。

 

 

「それじゃあ、片っ端から片付けていこう」

 

 

「はいなのです」

 

 

紲と央佳は揃って教室を隈無く調べる。

この学園は10クラスはある。

故に、1クラス平均6分程しか時間は使えない。

あくまで下調べでもあるし、特別に怪しいところは根気よく調査する。

それまでは大まかなチェックと言ったところだ。

入学仕立てのピッカピカの一年生にやらせる事なのかと紲は思ったが……事件解決の為にはこれ位の労力を費やさねばならない。

 

 

「何もないよな〜」

 

 

「ないって何がなの?」

 

 

「あっ、いや……何でもない」

 

 

紲の呟きに反応した央佳。

備品のチェックだと言っているのだから、ないとなれば反応するのは必然だ。

 

 

「と、ところで央佳はメイアと話せたのか?」

 

 

「会えなかったのです……」

 

 

深く突っ込まれてもと思って話題を念のために逸らした。

央佳も食い付いて、紲の質問に落ち込んだ様相でいる。

今日中には聞く予定だったので、遅かれ早かれ央佳が落ち込む表情は見るはめになる。

幸いなのはクラスメイトが居ない事だ。

こんな現場を見られて、紲が何かしでかしたのではないかとあらぬ疑いを掛けられる。

まあ、間接的に行ってるのであながち間違いと強く言えない。

 

 

「そうなのか……新しい友達でもできたんじゃないか?」

 

 

「なら良いのですが、わたしは心配なのです」

 

 

まるでメイアの保護者のような発言だ。

 

 

「メイアちゃんのお母さんには会えたのですが、詳しい事は聞いてないみたいなのです」

 

 

「メイアの親は何の仕事をしてるんだ?」

 

 

興味本意で聞いてみる。

ひょっとすると、漫画のようなどうしようもないダメ親父の下で生きてきた結果やもしれない。

 

 

「お母さんは専業主婦さんなのです。お父さんはサラリーマンなのです。どちらも良い人なのですよ」

 

 

面白い位に素晴らしい家庭らしい。

となると、家庭の線は消えた。

逆に言えば家庭を絡んだ面倒な展開の線は薄くなる。

 

 

「メイアちゃんに何かあったのですか?」

 

 

「ちょっと気になる事があって……と、それより次に移ろう」

 

 

効率良く回していく。

生徒が来る前に粗方の片付けをしておく。

 

 

「次は……俺達のクラスだな」

 

 

メイアも在籍しているクラスでもある。

何か手掛かりになるようなものを見付けるには打ってつけだが……央佳のいる手前で勝手に見るのは――

 

 

「ではでは、紲君の机に変な物が無いかをチェックするのです!!」

 

 

央佳が真っ先に紲の机の中を覗き込んだ。

 

 

「エッチな本はなかったのです」

 

 

「さも残念そうな声で言わないでくれ。と言うか、あったらどうするつもりだったんだ?」

 

 

「そんなの生徒会長さんに言い付けるに決まってるのです」

 

 

「頼むからあることないことは吹き込まないでくれよ」

 

 

とばっちりは大体が紲に来るのだから。

 

 

「そしたら俺も央佳の机を見てやる!!」

 

 

「あっ!! 見ちゃダメなのです!!」

 

 

しかし、紲のオフェンスは央佳の小さな体躯のディフェンスに防がれる。

お互いに火花を散らし合う。

 

 

「俺の机を見たんだ。そっちのも見せてくれたって良いだろ?」

 

 

「ダメなのです!! 男の子に机の中を見られるのは本当に恥ずかしいのです!!」

 

 

央佳の弁は尤もらしく、紲の方も言葉を詰まらせる。

そう言われては紲も敵わない。

参った――両手を挙げながら紲は降参した。

 

 

「OK。降参だよ。大人しく健司の机でも漁るさ」

 

 

「それはそれで健司君が難儀なのです」

 

 

クスクスと笑いながら紲の進言を返した。

健司も大概とばっちりを喰らう。

 

 

「ついでだからメイアの机でも覗いてみるか。ひょっとしたら来ない理由も分かるかもな」

 

 

「それは名案なのです!! ではわたしが確認するのです」

 

 

央佳が率先して賛同してくれた。

然り気無く提案をしてみたつもりだったが、意外にも央佳は好意的に捉えてくれた。

後半の「来ない理由」に敏感に反応を示したのは目に見える。

 

 

「でも紲君は見ちゃダメなのです!! 女の子のプライバシーを侵害する事はわたしが許さないのです!!」

 

 

「分かってるよ。デリカシーに欠けるよな」

 

 

央佳の言い分は女子の特権なところもあるし、彼女の方にしたって見てないとは言っても幼馴染みのプライバシーを覗かれるのは気分が悪くなる。

 

 

「ではでは、見てみるのです」

 

 

央佳も随分とノリノリだ。

メイアの机の中身をチェック……どころか、中の物を机の上に置いていく。

デリカシーに欠けているのはひょっとすると紲よりも央佳の方かもしれない。

 

 

「これで全部なのです」

 

 

結局、メイアの机の中身は1分もしない内にさらけ出された。

きっと本人が居れば顔を真っ赤にさせていただろう。

彼女の机の中に入っていたのは意外や意外、教科書やノートの類いだった。

 

 

「俺はメイアが授業に参加してるところを見た記憶がないんだが。央佳の仕業か?」

 

 

「わたしではないのです」

 

 

となると本人以外に有り得そうにはない……。

この状況を見るに授業を受ける気概はありそうだ。

なのに、出ない――否、“出られないのだとしたら?”

紲の最初の不安が的中していそうである。

 

 

―――しかし、手掛かりに繋がるものは無さそうだな。

 

 

紲は嘆息していた。

勤勉なのは分かった。

授業に参加しようとする意志も見られた。

だが、肝心要の教室に姿を見せない理由は闇の中だ。

 

 

「何か教科書の間に挟まってるのです」

 

 

教科書を机の中に戻そうと持ち上げた際に栞代わりに挟まっていた事に気が付いた。

メモ帳サイズ程の紙だ。

 

 

「何て書いてあるんだ?」

 

 

「えと……『今日の午後に来い』とだけ書かれているのです」

 

 

随分と簡素な――もっと言えば“あまりにも内容が伝わりにくい抽象的な表現の文章が綴られていた。”

手掛かりになるようなものはありはした。

しかしながら、悪い方向にしかわからなかった。

こういったものには時間の指定、場所の指定もある。

なのに時間は抽象的であるし、場所に関しては一切記載が無いのだ。

 

 

「ヤバいかも……な」

 

 

紲は頭を抱える。

敵は紲が思う以上に“用意周到だった。”

恐らくメイアに事前に情報を渡しておき、万が一にも居場所が割れないように最大の注意を払っていた。

これを厄介と言わず、あまりにも宜しくない方向と言わずになんと言うのか?

 

 

「ひょっとしてメイアちゃんは何か危ない事に巻き込まれてるのですか?」

 

 

青ざめた顔で央佳は訊ねてきた。

紲はそんな彼女の頭を軽く叩く。

 

 

「正直なところは何とも言えない。ひょっとすると、ヤバいかも知れないのは確かだ」

 

 

判断のほどは?――と聞かれても紲は口をつぐんでしまう。

メイアが本当に取り返しのつかない事を仕出かすのかすらも予測は不可能と言える。

 

 

「けど、分かる事もある」

 

 

「それって……何なのです?」

 

 

央佳の不安そうな顔を晴らしてやりたくて、紲は彼女の頭を優しく撫でた。

そして勤めて明るく、元気になって欲しいと思って宣言する。

 

 

「こんなにもメイアを心配してくれてる友達がいるって事だよ」

 

 

決して他人を見捨てない――素敵な言葉だ。

しかし、それを実行できるかは別の話。

紲には分かる。

央佳は心の底からメイアを心配してくれてるのだと。

だから、メイアはこれ程までに恵まれた環境で育っていないのだ。

 

 

「ありがとうなのです……紲君」

 

 

央佳は微笑む。

紲の一言は元気が内から沸いてきた。

 

 

「でも、紲君もメイアちゃんの事を心配してるならなおのこと良かったのです」

 

 

「はは、これでも気に掛けてるんだぜ」

 

 

紲の言っている事に嘘はない。

メイアが繋いでいる“絆”が裁ち切れる場面など見たくない。

それに……

 

 

「『魔法』の影響とか抜きに……俺はメイアを助けたいんだ」

 

 

きっかけは『魔法』だったかもしれない。

だけど、本心から紲は「助けたい」と願っている。

それを形付かせている。

 

 

「うん。それを聞かせてくれただけでわたしは満足なのです」

 

 

問題は進展したか否かは微妙なところだ。

だが、解決してみせると紲は強く思った。

 

 

しかしながら、備品のチェックを済ませられずにいる事を完全に忘れていた。

この後、しっかり怒られました。

 




如何でしたでしょうか?

今回は央佳にもスポットを当ててみましたが……上手く出来たかな?

次回は、メイアの方にもスポットを当てられればと思ってます。

次回は来週の土曜日の予定です。

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