新原紲の魔法相談室   作:ゼガちゃん

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更新が遅れてしまって申し訳ありません。

思っていたより時間が掛かってしまいましたが続きです。



学校には不思議がたくさんあるものだ

紲、健司、央佳の3人でメイアの追跡劇が開幕する。だけどドラマのように追って追われてなんて事ではなくて、こっそりと追跡している。

追跡を続けていると校舎に入っていく。何処かの教室に用があるのか1階の教室を歩き回っていた。

 

「お前らまで付いてきて、福富先生はどうすんだよ」

 

「紲君を1人にできないのです」

 

「そういう事だ」

 

そんな涙が出てしまうお話をされては、紲とて何も言い返せない。

 

「分かったよ」

 

紲は脱力し、2人の同行を許した。

ストーカー行為……もとい追跡を続行しているとメイアは空き教室に入室した。

 

「央佳の『魔法』を知りたい」

 

その様子を見ていた紲は央佳に訊ねた。

 

「良いのですけど……どうしてですか?」

 

「“念のためだ”」

 

紲の返答に央佳は首を傾げるが指示に従う。彼女の『魔法』を聞いた後に紲は今後の動きを決める。

 

「健司。お前は紗香を直接連れてきてくれ」

 

「分かった。紲はどうするんだ?」

 

「俺は央佳とあの教室に突撃する」

 

真っ直ぐ。メイアの入っていった教室を見る。

 

「気を付けてな」

 

「ああ、行けるか? 央佳」

 

「大丈夫です。メイアちゃんを助けられるならわたしは何でもするのです」

 

央佳の瞳は力強かった。友の為にそこまで強くなれる央佳を見ていると、紲も「やらねば」という気持ちが大きくなる。

 

「よし、行くぞ」

 

紲は正々堂々、正面から突撃した。

教室の扉を勢いよく開いた。

 

「なっ!? えっ?」

 

しかし、“教室には誰も居なかった。”

 

「誰も……“何もないのです”」

 

後から続いた央佳が教室の様相も含めて言った。

メイアも、物も残っていない。

 

「メイアは此処に入ったのは間違いない」

 

窓を調べてみるが鍵は内側から閉まっていた。となると、他の方法を使う筈だ。

 

「空間移動系の『魔法』を使ったのですかね?」

 

空間移動――言わずと知れたテレポートと言った類いの『魔法』だ。テレポートと言えばこれ以上の説明はお節介だろう。

 

「いや、それなら教師も気付く。多分、もっと“古典的な方法のはずだ”」

 

『魔法』の発動には『魔力』を必要とするのは言い換えれば、『魔法』を扱う際に『魔力』を放出する事と同義だ。

腕の立つ『魔法使い』は『魔力』を感知できる。ならば『魔法』を扱えば『魔力』を探知できる事とイコールに繋がる。

教師はそれ位の事ができる。不審な行為を感じ取れば警備員よろしく飛んで来る。

そう考えてみると『魔法』を扱った線は薄くなってきた。央佳にそう説明を付け加え、彼女も納得はしてくれた。

 

「それは分かったのです……けど、そうしたら何処へ消えたのです?」

 

「言っただろ? 古典的な方法だってさ」

 

ここで紗香から貰った情報と組み合わせていく。

メイアは“学園の敷地内から離れる事はなかった。”考え方を変えてみよう。メイアが“別の方法で学園の敷地外へ逃げているのだとしたら?”

その方法は限られてくる。先程の説明の通り『魔法』を使えば『魔力』を感知されるので、『魔法』によって外出した線は消える。

そうなると――

 

「きっと、“この部屋から外に出たんだ”」

 

言うと紲は床を何度も踏みつけた。場所を移動しながら。やがて、教室の真ん中より横にズレた位置で止まる。

 

「ここっぽいな」

 

紲はしゃがみこみ、床を観察した。

 

「何かあるのですか?」

 

「予想が正しければ……あった」

 

央佳の問いに答えている間に目的のものは発掘された。床に小さな窪みがあった。指が3本入る位のもので、紲は迷わずに指を突っ込んだ。

 

「よっ、と」

 

引っ張ってみれば……床がドアのように開いた。そのドアの向こう側には底の深い大穴と梯子がある。

 

「ビンゴだな」

 

「これ……メイアちゃんが作ったのですか?」

 

「そこまでは分からないな。まっ、本人に聞きに行こうぜ」

 

紲は言うや梯子に手を掛けて先に降りていく。

 

「わたしも行くのです」

 

央佳も紲に続く。全ては幼馴染みの友の為に……。

 

 

 

 

 

 

 

「ご丁寧に灯りまで用意してやがるな」

 

梯子を降りきると、今度は横に掘られた人1人が入れる大穴だ。穴の上部にはランプが紐で吊るされていた。

 

「何処に繋がっているのでしょうか……」

 

「良い予感はしない」

 

紲と央佳は並んで横穴を歩いていく。

歩くのに然程の時間に掛からなかった。気付けば、真正面に梯子があった。

 

「この上だな」

 

「さあ!! 行くのです!!」

 

央佳が意気揚々と梯子に手を掛けようとするのを紲が止めた。

 

「俺が先に登る。央佳は続いてきてくれ」

 

「分かったです」

 

そして、紲が先鋒を務める。高さはそれほどなく、すぐに天井に辿り着いた。

 

「俺が先に行く。それでな――」

 

すぐ次に続いてくる央佳にとある指示を出した。理由まで説明する暇はない。こちらを信用してもらう。

 

「分かったのです。任せて下さいなのです!!」

 

央佳は意外と……いや、これまでの彼女を見ていれば納得できた。

 

「よし、行ってくる!!」

 

言葉とは裏腹に、ゆっくりと天井を押し出した。マンホールの蓋のように丸く作られたものが競り上がる。

紲はゆっくりと顔を出しながら前後左右を確認した。

 

―――人の気配はないか。

 

少なくとも紲のすぐ近くに人が居ない事は分かった。蓋を完全に開いて、穴から出てきた。

 

「大丈夫そうだな」

 

紲は辺りを見渡して他に人が居ないのを目視で確認してから央佳を引っ張りあげた。

 

「ここは何処なのです?」

 

「ホームセンターだった……みたいだな」

 

頭に「元」が付くホームセンターである。その確証を得たのは店に設置してありそうな大型の棚がいくつもあり、そこには汚れきったセロハンテープやボールペンなどなどの雑貨が置いてあった。電気は通っている様子で、灯りが頼りなく辺りを照らす。

 

「メイアを追い掛けた時間から考えて遠くはない筈なのです」

 

「でも慎重に行くぞ」

 

敵の潜伏地が分からない以上、紲達は常に神経を張り詰めていく必要がある。央佳もそこの辺りは分かっているようで、コクりと頷いた。

陣形は先程と同じで紲が前衛を務める。周囲を警戒しつつとなるので、必然と歩む速度も落ちていく。

 

「居た……」

 

棚の長さが一区切り付こうという場所で紲は制止した。背後から続いていた央佳も止まる。

 

「見付かったのです?」

 

小声で問う央佳に首を縦にする事で対応した。

棚に背中を預けて顔だけをゆっくりと出していく。

これで限界というところでメイアの姿は捉えた。彼女は誰かと話しているようだ。声はこの位置からでも聞き取れる。

 

―――さすがに位置が悪いから顔までは見えないな。

 

むしろ、相手側に見付からない位置を取れただけでも幸運だ。このまま、2人の会話に耳を傾ける。

 

「待ってたぞ。遅いな」

 

「アタイは入学したてなんだよ。むしろ、これ以上授業をサボるとバレる可能性があるよ」

 

相手側の声質から男なのは分かった。メイアは人目を気にして逢瀬に来た――だなんて話でも無さそうだ。

 

「でもあとたった1回だ。1回で良い」

 

「本当だね?」

 

「何かしらの問題が起こらない限りは」

 

会話からメイアが何かしらの取引を申し込み、もしくは準ずるなにかをしているのは受け取れた。

 

「全く、こんな場所を知ってるなんて何者なのさ?」

 

「おっと、そいつは詮索しない手筈だ。答えられない」

 

手を組んでいるだけで、友好的な態度は話し合いだけで1つとして見えないのが窺えた。

 

「さて、これを渡しておこう」

 

メイアが何やら受け取っていた。小さめの布袋に入っていて中身はさっぱりだ。

 

「っで? これは誰に渡せば良いの?」

 

 

 

 

 

「天王寺学園の生徒会長――天宮紗香だ」

 

 

 

 

 

瞬間、紲の全身の血が沸騰しそうになった。幼馴染みを巻き込むだなんて黙っていられない。

 

「央佳、俺が合図するまで待っててくれ」

 

「ちょっ、紲く――」

 

最後まで口にする前に紲は2人の前に飛び出した。紲の登場に思わず目を見開いたメイア、ただ冷静に紲を見極めようとする男。

 

「ようメイア。久し振り……って訳でもないか」

 

「気安く名前で呼ばないで」

 

メイアは戸惑いもそこそこにすぐに紲を「敵」と認識したらしい

男がメイアよりも前に出てきた。

その様相を改めて確認する。

ワックスで固めたかのようにツンツンとさせた灰色の髪、肌は日焼けした時みたいに茶色に近い。そして黒のジャンパーの上下セットで身を包んだ三十代程の男だ。

 

「お前は誰だよ?」

 

「オレは『圧山剛毅(あつやまごうき)』だ」

 

そう言いながら紲は男を観察していた。あっさりと自分の事を明かした男に紲は眉を潜める。

 

―――自分の情報をさらけ出して何の意味があるんだか……。

 

ひょっとすると『魔法』の発動条件かもしれないと紲は考察した。

 

「体育着で来たのか……それを見る限り、おまえは天王寺学園の生徒だな?」

 

「だったら何だってんだよ?」

 

「オレはおまえみたいな子供と違って忙しいんだ。帰ってくれ」

 

「そう言う割にはメイアを動かそうとしてたみたいだが?」

 

忙しいなどとほざく剛毅の揚げ足を取る。

訝しい顔を作る男に紲は疑問を抱く。揚げ足を取った事に対してとは思えず、きっともっと別のものによるのだと推測できた。

 

「と言うか、おまえはオレを知らないみたいだな」

 

「知らねえよ。知って欲しければ教えれば良いんだよ」

 

紲は極めて乱暴な口調で言い放つ。

 

「ふん、最近の子供はテレビを見ないみたいだな」

 

もう良い――紲にそう言うと、剛毅は手のひらを紲に向けてきた。

 

「ここで消せば問題はない」

 

ズドンッ!! まさしく剛毅の宣言した直後に紲の腹部に殴られたような感覚が襲い掛かる。

 

「がっ、がぁぁぁあああああっーーーーっ!!」

 

紲の身体は後ろへと吹き飛び、固い床の上を二転三転した。

 

「今の……は?」

 

紲は足に力を込めて立ち上がる。

凄まじく『魔法』の発動が早かった。『魔力』の練りと『魔法』の発動までのモーションがあまりにも綺麗過ぎてお手本にしたくなる。

 

「思ってたより頑丈だな。もっと力を込めてやろうか……」

 

剛毅が不適に笑い、紲への攻撃の手を緩めない事は見て取れた。

 

「待って。アイツは1年で、しかも『魔法』に関しては『基礎魔法』すら使えない奴よ。放っておいても大丈夫だから」

 

横槍を入れるようにメイアが口を挟んできた。

 

「ぷっ、はははははっ!! まさか『基礎魔法』すら使えない『魔法使い』が居るなんてお笑いだな!! そんな落ちこぼれがオレに楯突こうって言うのか?」

 

紲を指差して笑う。

別にこの反応は構わない。だけども“そんな事よりも”紲には確かめねばならない事がある。

 

「お前の目的は何だ?」

 

「馬鹿か。教える訳はないだろ」

 

明らかに小馬鹿にした態度に普通なら苛立つ所だが重要な事に気づけた。

 

―――目的は存在する。それが個人か、組織によるものかは知らないが。

 

そして、何よりもその渦に紗香を巻き込もうとしている事が紲には気に食わない。

 

「なら、天宮紗香を狙おうとしているのは何でだ?」

 

「ちっ、聞いてたのか……」

 

剛毅は誤魔化すつもりもなくて、あからさまに「失敗した」と顔に出していた。

 

「天宮紗香が邪魔みたいなんでな、ちょっと退場していて貰いたいんだ」

 

「もう良い」

 

紲はピシャリと剛毅の言葉を切り伏せた。

 

「紗香を巻き込むってんなら……俺達はお前をぶっ倒す」

 

紲の宣言の直後だった。

 

 

 

 

ズバンッ!!

 

 

 

 

 

紲と剛毅の間に雷が落ちた。

 

「な、何だ?」

 

剛毅が困惑している間に紲は駆け出していた。

彼の脇を通り抜けて……メイアへ向かっていく。

 

「っ!?」

 

「メイ、アっ!!」

 

紲は必死に手を伸ばす。

 

「させるか!!」

 

それを阻もうと剛毅が行動を移そうとする。

 

「させないのです!!」

 

しかし、棚の陰から出てきた央佳の声に一瞬だけ怯む。

 

「《オーグ・サンダー》」

 

怯んだ事に気付きはしなかったが、央佳の選択は正解だった。

剛毅めがけて手をかざし、雷が飛んでいく。

 

「くっ!!」

 

雷を身体をよじる事で回避される。それは折り込み済みだ。

なんせ目的は紲がメイアを捕まえる事にあるのだから。

こうしている間にも紲はメイアの目の前に迫っていた。

 

「捕まえ――」

 

「無駄だよ!!」

 

紲が手を伸ばし、メイアを捕らえようとするが……彼女は『魔法』を発動させた。

 

「《フレア》」

 

『魔法』の発動を発声させる。メイアの右手に巻き付くように炎が灯る。

 

「はあっ!!」

 

それをそのまま、紲めがけて振るってきた。

 

―――当たるかよ。

 

顔面を狙っていたのは丸分かりだったので、紙一重で頭を横にずらしてかわした。その際に炎が掠めて熱さを感じたが堪える。

 

「おっ、らっ!!」

 

紲は拳を握り込んでお返しとばかりに正拳突きをかます。

 

「《ウインド》」

 

真正面から風が吹き荒れる。数秒だけの強風が紲に当たり、少しだけ足を思わず止めてしまう。メイアからすれば“その数秒だけで十分だった。”

 

「《フレア》」

 

今度は拳に巻き付けず、弾丸として炎を放ってきた。

 

「なっ!?」

 

足を止めていたからこそ紲は反応できたと言って良い。強く地面を蹴って、横にジャンプした。

紲が先程まで居た場所に炎の弾丸が到着し、床を焦がした。

 

―――今だ!!

 

紲は ダッ!! と床を蹴って『魔法』の発動した後に動作を止めているメイアに飛び掛かる。

両手を伸ばして今度こそメイアの両腕を掴む事に成功し、そのまま押し倒した。

 

「アタイに何をしようってんだい!!」

 

「人聞きが悪いな!!」

 

確かに事情を知らず、このワンシーンだけ目撃すればあらぬ誤解を生みそうだ。だけども紲にそこまで構っている余裕はない。

 

「紲君はエッチなのです!!」

 

「央佳まで言ってる場合か!!」

 

紲は焦っていた。央佳の『魔法』は「雷」だ。彼女には「俺達」というワードを唱えた後、奇襲による雷を剛毅に放つように指示してあった。その後はもう1度の奇襲として姿を見せて『魔法』を撃つのだ。これだけで成功率は一気に上がる。

 

「おまえら……オレを舐めてやがるな」

 

紲の背筋に寒気が走った。

メイアを抑え付けながら剛毅の方を向いた。彼が怒りに満ちた顔でこちらを凝視してるのだ。

 

「がっ、あああああっ!?」

 

紲の背中を見えない“何か”が当たる。それによってメイアの拘束を解いた上に前方に押し出されてしまう。

 

「はあっ!!」

 

「う、がっ!?」

 

メイアに巴投げをされた紲は床にキスをするはめになる。

 

「メイアちゃん!!」

 

巴投げを終えたメイアが立ち上がると、今度は央佳が立ち塞がる。

 

「何があったのです? こんなのメイアちゃんらしくないのです」

 

「こんなの……って、何なの? 央佳はアタイの事を何にも知らない癖に!!」

 

「メイアちゃんが誰かを傷付けるなんてらしくないです。それに――」

 

スゥッ!! と息を大きく吸って言い放つ。

 

 

 

 

 

「少なくともメイアちゃんがこんな風に無意味に人を傷付けるなんて事をしないのは知ってるのです!!」

 

 

 

 

 

力強く、幼馴染みに言葉をぶつけた。

それに一瞬ながらも怯むメイア。

 

「あのな……オレもそう気長な性格じゃないんだ」

 

この空気に割り込む声が央佳の真後ろから聞こえた。振り返ると、剛毅が仁王立ちをしていたのだ。

 

「終わりにして――」

 

「させるかボケ!!」

 

雰囲気的な意味で空気になり欠けていた紲が剛毅の横を取っていた。

 

「喰らっとけ!!」

 

紲は殴るモーションに入っていて、剛毅の左の頬を紲の右拳が正確に捉えた。

 

 

 

 

ガァァァンッ!! と剛毅の身体は殴り飛ばされて棚の側面に激突した。衝撃音はその際に生じたものだ。

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫なのです」

 

央佳に真っ先に問う。次にメイアを見た。

 

「…………」

 

だが、目線をそらされてしまう。紲も剛毅に目を離してると足下を掬われる。

 

「おまえ……高校生のガキの癖に」

 

「そんなのに殴り飛ばされるなんて鍛え方柔なんじゃねえか?」

 

完全に喧嘩を売り付ける言葉だ。

 

「殺すぞ……」

 

剛毅の『魔力』が溢れ出す。それだけで央佳もメイアも身体を動かせなくなる。きっと、彼女達は体験をした事がない量なのだろう。

 

「はっ、やる気は十分な訳かよ」

 

しかし……紲は全く動じない。『魔力』からの威圧に気付いてない訳ではない。言うなれば“こういった事に慣れている風に見える。”

 

「面白いガキだ。殺すには惜しい位だな」

 

剛毅は「殺せる」と断言している。それは口からではなく、それだけの力を持っているから言えるのだとわかる。圧倒的なまでの自信に満ちている。

 

 

 

 

 

「あのね、気軽に私の幼馴染みに『殺す』なんて連呼しないでくれない?」

 

 

 

 

 

その言葉の後、剛毅の頭上から10程の刀剣の雨が降ってきた。

 

「剣だと!?」

 

唐突な出来事ながら剛毅は反応した。降り出した刀剣の雨の範囲を逃れる為に全力で駆け出す。

彼が先程まで立っていた位置に10を超える刀剣が突き刺さる。

 

「予定バッチリだよ!!」

 

上手く逃れた剛毅の背後、そこから健司が迫って来ていた。

 

「《アイアン・ハンド》」

 

健司の『魔法』が発動する。彼の右手が比喩表現抜きで“鋼鉄となった。”

 

「うっ、らっ!!」

 

健司の乱雑な拳が振りかざされる。だけど、彼の拳は見た目の通りに鋼鉄となっている。非力な人間と言えど、鈍器を用いれば凶器にできる。

 

「な、ん……っ!?」

 

しかし、剛毅はまたも凄まじい反射神経を見せた。身体を無理矢理に捻って健司の攻撃を回避した。

 

「と、とっとっ!!」

 

健司は前につんのめりながらバランスを保とうとする。

しかし、それは剛毅に反撃のチャンスを与えるのだった。

 

「馬鹿めが」

 

剛毅はほくそ笑みながら健司を潰そうと画策し――

 

「お前は本当に迂闊だよな」

 

健司と入れ替わるように、彼の脇を通り抜けて紲が剛毅に再び突っ込む。

 

「ちっ、しつこい!!」

 

「うっ、りゃぁぁぁあああああっ!!」

 

一度吹き飛ばされた記憶など紲にはないように、彼は強く固い拳を握り締めた。

対する剛毅は手を真上に挙げていた。

何かを企んでいようと、駆け出した紲は止まれない。相手よりも速く動いて攻撃を止めるだけだ。

 

「待ちなさい紲!!」

 

そんな紲の決心を制止させる声が響いた。彼はそれに従って駆ける足を止める。

直後、紲と剛毅の間に一本の大剣が2人を阻むように降ってきた。

 

「紲、こっちだ」

 

健司に襟首を掴まれて後退する事に。

剛毅も同様の選択を取ったようで、紲達から大きく距離を取った。

 

「このままじゃ部が悪い……逃げるぞメイア!!」

 

剛毅の提案に頷く事で肯定の意思を見せるメイア。

 

「逃がす訳には――」

 

「見逃してもらうわ」

 

メイアは既に『魔法』の発動の準備を終えていたらしく、彼女の手には光の塊があった。それを思いっきり握り込むと辺り一面を眩い光が覆い込んだ。

 

「くっ!?」

 

全員は眩しさに目を開けてられず、閉じてしまう。そして、光が止んだ時には――

 

「逃げられた……」

 

紲は大きく肩を落とす。

 

「仕方無いわ。むしろ、ここまで頑張ってくれてありがとう」

 

「さや姉。助かったよ」

 

棚の陰から出てきた紗香。先程の刀剣を生み出したのは他ならぬ紗香だ。それこそが彼女の『魔法』。

 

「それにしても……一体なんだってんだ? あいつは何者なんだ?」

 

オレを知らないのか?――剛毅はそう言っていた。無知である事こそがおかしいと分かる発言に紲は首を傾げる。

 

「彼の名前は圧山剛毅でしょ?」

 

「ああ、何で知ってるんだ?」

 

紲の疑問を解消したのは紗香だった。しかし、到着の遅れた彼女は彼の名前を聞いてない筈だ。

 

「テレビ位は見なさいよね」

 

呆れた声音で紗香は紲が思った疑問を真っ先に解消する一言を教えた。

 

「あいつは国際的な……テロリストなのよ」

 

しかしながらその回答は紲の口を半開きにするには十分なものだった。

 




はてさて、如何でしたでしょうか?

紗香、健司、央佳、そしてメイアの『魔法』も遂に公開する機会が訪れました。
いやはや良かった良かった。

次回更新なんですが、これから書いておきたい作品があるので2週間後になってしまうかもしれません。
遅くとも6月の頭には更新するので見捨てないで待っていて下さい。

時間に余裕があれば続きを更新します。

それではまた。
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