新原紲の魔法相談室   作:ゼガちゃん

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連続投稿になります。

アドバイスや誤字脱字なんかの指摘もあればよろしくお願いします


自身にとって避けたい展開に限ってやってくる

 時は常に駆けていく。小学生が高校生になる時も必然として訪れる。

 このペースなら気が付いたら老人になっているんじゃなかろうか――入学を果たした高校の校門の前で新原紲は思案した。

 

 

 

「はあ……高校生になっちまったな」

 

 

 

「意外と早いもんだよな」

 

 

 

 紲の呟きに共に登校をした幼馴染みが反応した。癖っ毛でところどころ跳ねた黒髪、世間で「イケメン」とカテゴライズされる少年――天宮健司(あまみやけんじ)である。

 彼は運動神経、成績優秀、魔法もそつなくこなす。天は二物どころか三物さえ与えていた。

 

 

 

「よく俺もここに入学できたよ」

 

 

 

 紲は染々と、新しい学園生活に想いを馳せる。

 そして己の服装を改めて見直していた。

 ここ、『天王寺高校(てんのうじこうこう)』の男子制服は黒を基調とし、胸の襟や裾に白のラインの入った学ラン。女子は白を基調とし、紺色のラインが襟元にある紺で無地のスカートを採用したセーラー服だ。

 

 

 

「オイラが勉強を見てやったんだ。上がってなければ困る」

 

 

 

「へへー。本当に助かりました健司大明神様〜」

 

 

 

 幼馴染みを拝み始める。そんな紲の行動に苦笑した。

悪ふざけではない事は分かっているし、合格をもらった日に感謝の言葉はたくさん贈られたから。

 

 

 

「あと姉ちゃんにも感謝しなよ。居なかったら今頃高校生にして浪人確定だったんだから」

 

 

 

 高校の受験は変わらずに学力試験を行う。

 それ以外に『魔法』が世界中で扱われているので受験でも小・中学校で習う基礎的な『魔法』の実技試験がある。

 

 

 

 しかしながら、紲が入学を成功させるにはそれなりの問題が多々ある。

 紲の成績は中の中、悪いとは言わないが今目の前にある『天王寺高校』への入学は難しかった。それこそ死に物狂いに1年勉強をし続けて“ようやく”入学の切符を手にできる学力を身に付けた。ここは努力をすればクリアできる問題なのでさしたる問題はなかった。

 

 

 

 だが、紲は小・中学校で習う『魔法』を発動できない。本来なら『魔法』の実技試験で躓(つまず)いてしまうところを彼の姉がフォローを入れてくれたので難を逃れた。

 頭が上がらなくなるとはこの事だ。

 

 

 

「さや姉には感謝しないとな」

 

 

 

「おいおい、『さや姉』ってのは止めとけって本人に言われなかったか?」

 

 

 

「あっ!!」

 

 

 

 慌てて手で口を塞ぐ。もはや無意味な行為なのにやってしまうのは人間の本能の起こすところか。

 さや姉こと天宮紗香(あまみやさやか)。姓が同じ、健司の弁からも分かるように彼の姉である。つまりは健司と同様に紲とは幼馴染みに当たる。

 先程の呼び方は彼女が中学に上がった頃に「さや姉じゃなくて紗香って呼んで」と申告された。

 以来、紲は下の名前で呼ぶ事を心掛けている……が、そう簡単に抜ける事も無くてたまに「さや姉」と呼んでしまう。その度に厳しい叱咤(主にゲンコツ)を喰らっている。

 だから条件反射に辺りをキョロキョロと見回す。紗香が聞き耳を立てているとゲンコツが飛んできそうで警戒している。

 

 

 

「校門前で助かった。居ないか」

 

 

 

「そんなビビらなくても良いのに」

 

 

 

「うっかり呼んじまった時の折檻は知ってるだろうがよ」

 

 

 

 思い出すだけで渦巻く恐怖。

 某幼稚園児の母親もビックリの頭グリグリ攻撃にゲンコツの嵐が吹き荒れる。

 

 

 

「ひょっとすると照れ隠しかもしれないぞ」

 

 

 

「はは、だとしてもゲンコツは勘弁願いたいね」

 

 

 

 痛い思いをするのはお断りだ。

 

 

 

「それよか体育館に行く必要があるだろ」

 

 

 

 入学式は体育館で行われる予定だ。ここから移動する必要が出てくる。

 

 

 

「話しすぎたな。向かうとするか」

 

 

 

 男2人で長話の末に体育館に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり体育館。入り口から入れば手前側に設置された倉庫、両側にはバスケットゴール、真正面にはステージと舞台袖が両側にある。

 カーテン付きの窓もあるが、舞台袖にあるスイッチでカーテンの開け閉めが可能。

 形状は一般的な体育館と同様だが、『魔法』の練習も行うのでかなり頑丈な造りになっている。

 2人は合格証と共に送られたクラスの列に紲、健司の順に並ぶ。

 

 

 

「同じクラスなのは……本当に腐れ縁だよな」

 

 

 

「小学生の頃からだから10年か。本当、これが女子だったら運命を感じるところだよ」

 

 

 

「それは嫌味か?」

 

 

 

 健司(イケメン)が女子に飢えた発言をすると、彼氏なしの女子が彼の周りに群がってくる事間違いなし。

 それに毎回のように巻き込まれる自分の身にもなれ。小学、中学時代に健司目指して突っ込んできた女子の軍団に揉みくちゃにされながら追いやられた。その度に女の子の良い匂いやら柔らかな肌が当たってきた事もあって――

 

 

 

―――あれ? 思い返すと良かったのでは?

 

 

 

 冷静になって考えてみると非常に痛い思いはしたが合法的に女子の身体に触れた事は役得なのではと思え始めた。

 

 

 

「あの~、そろそろ始まるので静かにしていた方が良いと思うのです」

 

 

 

 紲の前方からお声が控え気味に掛かる。

 

 

 

 身長が紲の腰辺りという程に低い少女だった。黄色いショートカット、目はクリッとした実に「可愛い」の称号を与えられる美少女だ。そんな彼女の両方の側頭部の付近に2センチ弱の小さな角がある。なんというか、実に愛らしくて「マスコット」という言葉は彼女の為に生まれてきたのではないかと錯覚してしまう。

 そんな小学生とも見間違えそうな容姿の彼女も同級生、そして『鬼』と呼ばれる種族であると伺えた。

 

 

 

「悪い悪い。ちょっと人生を振り返っててな」

 

 

 

「さっきお二人は腐れ縁と言ってましたが……幼馴染みなんですか?」

 

 

 

 『鬼』の少女に首を傾げられながら問われる。

 

 

 

「そうなんだ」

 

 

 

「それはとっても良い事です。わたしにも小学生の頃からの居るのですが、最近は構ってくれなくて困ってるのです」

 

 

 

 プンスカと自分の口で言うもので可愛い。紲達とほぼ同じ境遇の人に会えるとは、これまた珍しい。

 

 

 

「そういえば自己紹介がまだでした。わたしは紀藤央佳(きとうおうか)と言いますです。この角を見て分かる通りに『鬼』なのです。気軽に央佳とお呼び下さいです」

 

 

 

 この語尾に「です(でした)」を付けるロリっ娘は紀藤央佳と言うようだ。今更のように思い出された自己紹介ではあるが、こちらも倣っておくべきだろう。

 

 

 

「俺は新原紲。俺も紲で良いよ」

 

 

 

「オイラは天宮健司さ。健司で良いから。よろしく央佳さん」

 

 

 

「よろしくなのです」

 

 

 

 静かにしようと注意していた筈がいつの間にやら楽しいお喋りの時間と化していた。

 

 

 

「さて、そろそろ始まるみたいだな」

 

 

 

 ステージ、その壇上に教師が立つ。始業式、引いては入学式が開始された。

 どこの学校でも行われるような校長の長話が行われる。生徒達も退屈を持て余す。皆の目的は“この後だ。”

 

 

 

「それでは、生徒会長から一言貰おうかね」

 

 

 

 校長は最後にそう言うと舞台袖に消えていった。入れ替わりに1人の女生徒が校長とは逆側の舞台袖から壇上に上がる。

 瞬間、周囲の空気が変わった。真正面の央佳でさえ息を呑む。変わらないで要られるのは多分世界広しと言えど紲と健司くらいなものだ。

 校長の紹介によればこの学校の生徒会長である。

 

 

 

「皆さん初めまして」

 

 

 

 腰まで伸びた艶やかな黒髪、男の視線を釘付けにする胸にある凶器(推定でも最低D)、そこいらのモデルでさえも顔負けする綺麗な顔立ちにプロポーションは同性でさえ目を奪われる。

 彼女の佇まいは実に凛としていて見た目からクールな女性、大和撫子と評せる。

 

 

 

「私はこの天王寺高校の生徒会長で2年、天宮紗香です」

 

 

 

 彼女がこの天王寺高校の生徒会長――名前を天宮紗香。先程も言ったように健司の姉、紲の幼馴染みである。

 

 

 

―――相変わらず紗香は人気だな。

 

 

 

 1つ上だが、幼馴染みの特権で呼び捨てにしている(しないとゲンコツを食らうのが正しい)。

 

 

 

 彼女は2年ながらに生徒会長を任されている。

 当然、実力も折り紙付きだ。学園内でも1、2を争えるとの話を入学前にネットで調べて知った。

 彼女の強さは紲と健司も理解はしていたが、まさかそこまでのものとは予想外だった。

 そして、その美貌と強さから学校に渡らず、メディアにも取り上げられる始末なので一種のアイドル状態だ。本人的には悪い気はないようだが、迷惑な話だと語る。

 

 

 

 滞りなく生徒会長の挨拶も終わりを迎え、校長の言葉を最後に入学式は閉会した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入学式+始業式は生徒会長の話で幕を閉じ、生徒は自分のクラスに移動する。

 紲達は全6クラスある内の1-6。教室の席は決まっており、横6、縦5列の中で紲は窓際の列の真ん中だ。手前には央佳が座っていて、入り口に近い位置に健司が居た。

 

 

 

 今は担任が来るまでの暇な時間を思い思いに潰している。

 友好関係を築こうと皆も動く。

 紲は昔からの付き合いの健司、知り合ったばかりの央佳と話す。

 

 

 

「じゃあ、健司君は生徒会長さんの弟さんなのです?」

 

 

 

「そうだよ。まあ、姉程に優秀じゃないから」

 

 

 

「んな謙遜するなよ。お前は学年トップだったんだからよ」

 

 

 

 健司は同学年では魔法の実技、筆記においては常に首位を取っていた。彼が謙遜するので紲は突っついた。

 

 

 

「学年トップなんて凄いのです」

 

 

 

「そうは言うけど、紲の方が凄いぜ。何たって――」

 

 

 

 健司の倍返しはそこで途切れた。担任が教室に入ってきた。

 黒のスーツを着て黒の髪をオールバックにした男性。「I'll be back!!」と口ずさみそうで恐い。

 

 

 

「全員、そのままで良い」

 

 

 

 席に着こうと動いた面々渋い声でを静止した。

 

 

 

「俺は担任の福富(ふくとみ)だ。早速だが服装はそのままで構わないからグラウンドに集合しろ。小、中学校で習う魔法が使えるかをテストする。ちなみにこのテストでお前らが春休みにどれだけ鍛えていたのかを測るつもりだ。もしもこの学校の平均値を下回るようならVIP待遇で鍛えてやる」

 

 

 

 それだけを告げると担任の福富は教室を去った。

 

 

 

「マ、マジか……」

 

 

 

 紲が珍しく青ざめる。どうした事かと央佳は首を傾げる。その様子に気付いた健司が「今朝にも似た話をしたな~」と思いながら放心状態の彼に代わって答える。

 

 

 

「紲は“普通の魔法が使えないんだ”」

 

 

 

 そう、これは新原紲にとってテストなんて生易しいものではなくて試練の宣告なのだ。

 

 

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