新原紲の魔法相談室   作:ゼガちゃん

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大変遅くなってしまいました。

最近日付の感覚が狂っている……




思いもがけないところから……

業者に窓の修復を頼んだ放課後、天宮紗香を尋ねて取材が来ていた。

 

それよりも本来なら手に入れた手掛かりを元に『エクリプス』の事を調べたい本音が強い。

だが、残念な事に「無下にできない」との紗香の言葉に従うしか無かった。

 

忘れがちかもしれないが天宮紗香は容姿、魔法使いとしての実力――それらがトップレベルで優秀だ。

この話は彼女が高校生になった際に渡りに渡り、遂には雑誌やテレビで取り上げられてからは一種のアイドル扱いだ。

 

学園や近所では彼女の気さくな性格から「アイドル」というよりは「親友」に近い格付けではある。

それでも憧れの対象である事は少なくともあるので、好機の目に晒されるのは致し方無い事だ。

 

さて、紗香は学園の事を考えていつも取材には快く応じている。

その際、基本的に1人であったり、角が立たないように生徒会メンバーの羽生千鶴に同席を頼んでいた。

 

今回、千鶴は別件で出掛けているので居ない。

1人で応対を考えたが取材陣から「新入生で見処のある人は?」のテーマでの質問が放られた。

逡巡した後、紗香は「期待の新人」として選んだのは――

 

「オイラじゃなくて紲で良いじゃんか……」

 

恨みがましい目付きで紗香を睨む。

 

場所は紲達の教室。生徒はほとんど帰宅し、残るのは取材を受ける紗香、彼女が推薦した弟の健司、幼馴染みの友人として紲、学友の央佳が居る。

 

「良いじゃない。目立って可愛い女の子をゲットできるかもよ?」

 

ニヤニヤと笑いながら、紗香は健司にごり押しでこの役を押し付けた。

紲を選びたい本心はあったが、それではあらぬ関係を疑われて紲に害が及ぶのを防ぐのもある。

央佳は贔屓の目で見ていると捉えかねられない。只でさえ、紗香直々の推薦なのだから。

ともなると……一番の案パイは実の弟たる健司に絞られる。

 

「それじゃあ、待たせても悪いからインタビューをしてもらいましょうか」

 

紗香は教室前に待機して貰っていたマスコミの人を呼ぶ。

数人、ボイスレコーダーやカメラを抱えた面子がやって来た。

 

「では、インタビューをさせてください」

 

「はい」

 

普段は見せない、生徒会長の天宮紗香の姿を見せる。

ビシッと伸ばした背中、凛々しさを含んだ雰囲気、可愛いと綺麗の両面を兼ね備えた笑顔を浮かべる。

 

「俺達は出番はまだだからな~」

 

椅子を引っ張って来て、出番が来るまで座る。

央佳は隣で「長いのは仕方無いです」と言った。

 

「なら、暇潰しインタビューしちゃおうかな」

 

ぼさっとしている紲と央佳へ、丸眼鏡を掛けた中年男性の人がメモ帳とペンを持って寄ってきた。

自己紹介をしてない間柄なので、口ごもってしまう。それを察した相手側から名乗りがあった。

 

「僕は鮎川皆斗(あゆかわみなと)だ。今回の取材でリーダーを務めていると言った方が分かり易いかな? よろしく新原紲君に紀藤央佳さんだよね?」

 

「何でわたし達の名前を知ってるのですか?」

 

「天宮紗香さんから聞いたんだ。健司君の友人、特に新原君は2人とは幼馴染みなんだろう?」

 

「ええ、まあ」

 

頬を掻きながら紲は「面倒だな~」と鮎川に対応していた。

根掘り葉掘り聞かれる事はあるが、何処までを具体的に喋って良いのかでは分からない。

そこは健司の様子を伺いながらという事で。

 

「実は健司君の事を聞く前に話があるんだ。特に……新原紲君に」

 

「俺……ですか?」

 

紲からすれば意外すぎる人選としか言えない。

まさか、自分が指名を受けるだなんてこの人生の中で初めての事だ。

鮎川は紗香と健司を取材する面々を横目に“こちらを気にしていない事を確認した上で話してきた。”

 

「取材前、僕は一度天宮紗香さんにお会いしている」

 

打ち合わせがあるのだし、当たり前の事なのだろうとは思ったが口には出さずにおく。

 

「その際、彼女は真っ先に出そうとした名前が『きず』だったんだ。その後、迷った様相を見せて自分の弟を指名した」

 

ああ、この記者が何を言いたいのか……紲と央佳は理解した。

向こう側は、極めて声を絞って結論だけを告げてきた。

 

「きっと彼女は君の名前の『(きずな)』を言おうとした。だけど、それを“躊躇ったんだ”」

 

目敏いというよりは、このような凡ミスを起こした紗香に驚いている。

何れにせよ、彼は紗香の当初のご指名が紲なのだと確信を持ったらしい。

 

「いや、俺だとは限らないんじゃ?」

 

現場に居合わせた訳ではないし、当人ですらないから紲は何も言えない。

隣では話に割り込めない央佳がオロオロしていたが、逆に両者の雰囲気を剣呑にはさせないでいてくれる。

無自覚な央佳に感謝しながら鮎川と向き合う。

 

「ふっ、そういう事にしておこう。何やら事情があるようだしな」

 

鮎川は話が分かるようで、これ以上の詮索はしなかった。

マスコミはこういった話には突っ込んできそうなイメージも強かったので、驚いてはいる。

 

―――まあ、本心は知った事じゃないけど。

 

彼が紲だと睨んでいても、それは当人の紗香にしか分からず終いだ。

真実を語れない以上、全ては闇の中。

 

「これは個人的な質問で雑誌には掲載しないと約束する」

 

「まあ、構わないけど……俺に?」

 

「そう。新原紲君に」

 

央佳に「すまないね」と謝る鮎川。

央佳の方も紲と同様に気にした様子はなく、「どうぞなのです」と2人の会話を進めるよう促す。

 

「僕はこれまで記者として様々な『魔法使い』を見てきた。だけどね――」

 

一旦言葉を区切る鮎川。彼が何を言うのか、紲と央佳は次の言葉を待つ。

 

「君ほど……“変わった『魔法使い』は初めてだ”」

 

「変わったって、紲君がなのですか?」

 

「そうさ」

 

メモ帳をペンで叩きながら鮎川は続ける。

 

「こうして相対してみて分かるけど、新原紲君からは高校生になったばかりとは思えない雰囲気を感じるんだ」

 

そう、例えるなら――、

 

「既に『魔法使い』として“幾重もの修羅場を潜ってきたかのように見える”」

 

「……そうか?」

 

紲は少しばかりの空白を置いて返答した。

鮎川は彼の返答を聞いた後、ペンで頭を掻きながら更に言った。

 

「だけど……逆に君からは“そこまで出来る強者特有の雰囲気を感じない”」

 

そこまで言い切る鮎川。発言には確実な矛盾が生じている。

あやふや過ぎる説明に紲は勿論、央佳だってハテナを頭上に浮かべる。

そんな2人の様子に気付いた鮎川が結論を述べる。

 

「新原紲君――つまりは君は“強者にも弱者にもなれる特殊な『魔法使い』というのが僕の見解だ”」

 

「誉められてるのかそうでないのか……分からない評価だな」

 

「取材するに値する興味深い『魔法使い』にはなった訳だよ」

 

鮎川は紲を認めてくれた――そう解釈して良さそうだ。

 

「今後は僕の個人の意思で君を取材させてもらうよ。勿論、天宮紗香さん、天宮健司君と紀藤央佳さんも同様さ」

 

「ありがとうございますです」

 

今後も鮎川と関わる機会はあるらしい。

紲としては良いのか悪いのか……

 

「そうだ。君達に伝えておいた方が良いのかな?」

 

「何がです?」

 

紗香と健司の取材が一段落を終えようとした矢先、鮎川が何やら思い出したようだ。

 

「来る途中でこの学園の制服を着たエルフの女の子と男が一緒に歩いているのを見掛けたんだ」

 

「えっと……それがどうかしたんですか?」

 

現在、エルフであるメイアを追ってはいるが学園にはエルフは他にも何人か居る。

 

「奇妙だったんだ。制服を着たまま、“男女の営みを主に行う”ホテルに入って行ったんだ」

 

「そ、その子は……」

 

央佳は慌てながらスマフォでメイアの写真を見せる。

 

「間違い。この子だ」

 

「なるほど、そういう事かよ。紗香!!」

 

「聞こえてたわよ」

 

紲が声を掛けた時には紗香は答えた。

 

「すいません。緊急事態なので」

 

「どうやらのっぴきならないようだね……送って行こう」

 

取材陣の好意に甘えさせてもらう。

思わぬところから転がってきた情報に飛び乗る。

 




如何でしたでしょうか?

思いもがけない人物からの様々に飛び出した発言、情報という意味を込めたサブタイでした(まあ、適当だったんだけど)

さて、次回は再来週の金曜日の予定です。
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