新原紲の魔法相談室   作:ゼガちゃん

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どうも。

今回は投稿日きっかり!!

物語もいよいよ佳境に入って参りました。

では、続きをどうぞ!!


進む道

 先へ向かう――口で言う程に簡単な事でもない。

 紲と紗香の行く手を敵『魔法使い』は見逃さない。

 真正面へと回り込んできた。

 

「させるか」

 

 しかし、それを察知していた健司が横合いから『魔法使い』を殴り飛ばす。

 ただ殴っているのではなく、腕を鋼鉄へと変化させての突きだ。

 鈍器を叩き付けられているのと同等、もしくはそれ以上の痛みの波が打ってきた。

 

「早く行け!!」

 

「悪い。あとは任せる」

 

「央佳さんもフォローしてあげてよ」

 

「おうよ!!」

 

 親友と姉に応え、健司はこの場にいる敵を全員釘付けにする。

 わざと膠着状態を誘発し、紲と紗香を追わせない。

 今、下手に乱戦へと持ち込んでも良くない――悪い展開だけは避けたかった。

 

(良し、行った)

 

 この場からは見えない所まで走り去ってくれた。

 これならあとはこの場の敵を“殲滅すれば良いだけだ。”

 

「《アイアン・ソード》」

 

 健司は己の『魔法』を発動させた。

 腕が鋼鉄と化し、肘から先が“剣のような刃の形に変化した。”

 

 彼の『魔法』は「身体を鋼鉄へと変化させる」事を主軸にした『魔法』だ。

 健司も含め、この『魔法』を知るのは全員が《アイアン》と呼んでいる。

 

 身体を鋼鉄にする部分は『魔力』の消費量によって変化する。

 全身を鋼鉄化させる事は容易だが、それでは身動きが取れなくなるので1対1で扱わない。

 腕などの部分を鋼鉄にし、接近戦を行うのが健司のスタイルだ。

 

 そして、彼の『魔法』には他にも種類はある。

 今しがたに彼の肘から先が剣みたく変化したように、鋼鉄に関するあらゆる“物”を部分的に生み出せる。

 

「悪いけど、ここから先を通す訳には……いかない」

 

 健司は刃と化した腕を振るう。

 右から左へ、左から右へ、上から下へ、下から上へ、健司は腕を振り続ける。

 

 腕を振るいながら健司は前進していく。

 その度に接近戦に不慣れと思われる『魔法使い』が斬り倒されていく。

 

 接近戦に不慣れな敵を斬り伏せるのに成功しているのは偶然ではない。

 “健司が見極めて倒しているのだ。”

 距離を取っている『魔法使い』に接近し、倒している。

 

「わたしも負けてられないのです!!」

 

 央佳も紲からのアドバイスを受けて、動き続けている。

 雷を落とし、敵を捩じ伏せる。

 無論、攻撃が当たるのには健司からのサポートもある。

 

「さあ、あとは頼むぞ紲、姉ちゃん」

 

 先を行く2人に全てを託す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紲と紗香の進路の先、目の前には二手に別れる扉があった。

 

「ここは……別々に行くしかねえよな」

 

「そうね」

 

 両者の出した答えは実にシンプルだった。

 正解の道筋が分からないのだ。

 ならば別れた方が早い。

 “しかも2人は互いが強いと分かりきっているのだから不安はない。”

 

「じゃあ」

 

「武運を」

 

 互いに拳を突き合わせる。

 真正面にある扉を紗香が『魔法』の剣で破壊した。

 

 そして、彼らは各々の前に敷かれた道を進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい……こっちはハズレなのか?」

 

 紲が進む先には、敵さんが待っていた。

 体格は紲よりも一回り大きい男が立っていた。

 ジーパン、焦げ茶色のベストの下には黒い服だ。

 

「ガキがここまで来るなんて……世も末だ」

 

「ガキに殺られるような連中を集めてるお前らもお前らだとは思うがな」

 

 大男からの皮肉を紲はバットで打ち返す。

 紲は屈伸運動を始める始末だ。

 

「さて、随分と広い部屋だな」

 

 部屋の広さは例えるなら学校の教室の2つ分といったところか。

 そして、部屋の奥には扉が1つある。

 

「前へ進むにはそこしかねえようだな?」

 

「進んだとして、目的地に着けると思っているのか?」

 

「思ってるんじゃない。繋がってなきゃ“此処に見張りなんて置く意味はないだろ?”」

 

 二手に別れる扉、もしも確実に先に進ませまいとするなら分断をさせた後に2対1にでもして複数人での待ち伏せを行うべきだ。

 それをしない……もしくは出来ないのだとしたら、自然とこの先には重要地点があるのが分かる。

 

「仮に違っても構いはしない」

 

「無駄骨にしかならないのにか?」

 

「いや……」

 

 紲は不敵な笑みを見せて、大男に対して宣言してやる。

 

「厄介そうなのを、何の邪魔も入らずに潰せるからな」

 

 それは見栄でも何でもない――紲の“本音だ。”

 体格も一回り違い、紲の扱える『魔法』は虚弱なものが多い。

 だが、この敵を“倒せるのだと遠回しに言っているのだ。”

 その自信は何処からやって来るのか?

 

「言ってくれるじゃないの……」

 

 大男は容赦の欠片もない。

 ただ全力で、目の前にいる少年を叩き潰すつもりだ。

 

「覚悟しろ」

 

「来いよ」

 

 大男が見た目に反してダッシュする。

 それを迎え撃つ小柄な紲に悲壮感は見られなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 紗香は紲の方とは違い、目的地に辿り着けていた。

 目の前にはメイア。場所は、圧山剛毅と相対した廃墟となったホームセンターだ。

 

 あの基地と此処とは繋がっていたらしい。

 地下から徐々に登り坂気味になっていき、扉があったので開けてみればホームセンターの事務所だった。

 そうと分かった瞬間、紗香は事務所を飛び出して店内だった場所を走り回る。

 メイアの『魔力』は以前に出会った時から把握できていたので、捜すのは手間取らなかった。

 

「やっと会えたわねメイアさん――いえ、メイア」

 

「いきなり呼び捨て? 生徒会長さんは随分と気さくなんだね?」

 

 紗香の呼び方が気に食わなかったのか、メイアの口調は冷たい。

 これはほんの挨拶だ。

 

 左右がホームセンターに置かれていた棚に囲まれている事を確認する。

 横への逃げ道はなく、ただひたすらに前後への道しかない。

 引き下がるのか……はたまた“前進を決めるのか?”

 紗香が選んだのは当然、後者だ。

 

「私は……“私達は”あなたを助けに来たのよ」

 

「アタイを“助ける?”」

 

 紗香の言い分が信じられないとばかりにメイアは鸚鵡返しする。

 それもそうだ。メイアは命令を受けたとは言え紗香に危害を加えた。

 下手をすれば天宮紗香という少女の人生にカーテンコールがあったのかもしれない出来事が起きたのだ。

 

「ここだけの話、あなたは“私に似ているの”」

 

「冗談も休み休み言いな。アタイがアンタみたいな学園の模範の生徒会長と似てるだって?」

 

 紗香の言葉は到底頷けるものじゃない。

 メイアからすれば生徒からの信頼の厚い紗香から皮肉を言われたとしか捉えられない。

 そうだとしても紗香には“どうでも良かった。”

 例え受け入れられなくとも“天宮紗香自身がそう感じているのだから関係がない。”

 

「メイアの言う通りね。私も紲から聞いた内容と“調べた事しか分かってないから”」

 

「調べた……? アタイを?」

 

 自分を「調べた」という点が実に気になる。

 何故調べる必要がある?

 央佳という情報源に出会えたのなら彼女から聞けば良い。

 

 確かに央佳に聞く事も大きく見れば「調べる」に該当しよう。

 しかしながら、メイアの心を揺さぶるなら幼馴染みである央佳の名を出してもおかしくはない。

 

「ええ。ちなみに教えてあげると、央佳から聞くよりも以前の話よ。知ったのは偶然だけれど」

 

 紗香の話に背筋が凍る。

 ならば何故、天宮紗香はメイアに辿り着けた?

 央佳の事が無ければ紗香はメイアの事を知らなかった筈だ。

 現に紲と健司はそうであったのだ。

 

(アタイの知らない“何か”があった?)

 

 そうとしか思えない。

 何処かで下手を打ち、それを察知した天宮紗香が気付いてしまったのだと。

 それと気になるのは語尾に付け加えられた「偶然」の一言。

 彼女は本来、“何を追っていたのだ?”

 

「悪いけど、それに答えるのは後でかしら」

 

 肘を軽く曲げて正面にまで持ち上げる。

 直後に紗香の背後に無数の剣が出現し、浮遊した。

 

「私はあなたを助けるつもりではいる。でも、あなたにとってはお節介でしかないでしょう?」

 

「そうだよ」

 

 紗香の問い掛けにメイアはぶっきらぼうに返事した。

 メイアにはメイアの目的がある。

 それを果たす為なら、差し伸べられる手を振り払う。

 

「“なら、仕方ないじゃない”」

 

 紗香は浮遊する剣の内の1本を右の手に納める。

 

「あなたが私の助けを拒むのは構わないわ。それなら、“私はあなたの目的を踏みにじってでも私の目的を果たすだけ”」

 

 メイアの言葉はどうしようが紗香には届きはしよう。

 だとしてもメイアがテロリストと一緒に居る状況が“心配で口を出す。”

 

「そんなの、アンタの我が儘でしかないじゃないか」

 

「ええ、“そんなのは百も承知よ”」

 

 それで例え疎まれようとも、例え受け入れられなくとも、例えメイアとの間に深い亀裂が生じようとも――天宮紗香はメイア・アトリブトを闇の中からから引っ張り上げる。

 

「私は、幼馴染みを心配させるあなたのやり方が“間違っているようにしか見えないわ”」

 

 同性の幼馴染みではないが紗香にも幼馴染みの少年が居る。

 メイアを救おうと立ち上がった少年が……。

 紗香はそんな幼馴染みと一緒に“歩んでいく為に”遠回しに彼に依頼としてメイアの件を持ち掛けて、さりげなく彼と一緒に事件の行方を追った。

 

 そして今、幼馴染みが居るという同様の境遇でありながら心配を掛けさせる少女(メイア)の目を覚まさせてやる。

 

「覚悟しなさいメイア・アトリブト」

 

 掴んだ剣を左から右へ力強く振るった。

 空を裂き、助けるべき少女を眼前に見据える。

 

 彼女にはこの場は似合わない。

 勝手だと何度言われようが、天宮紗香は何度でも否定しよう。

 

「あなたの進む道に闇が立ち篭めるなら……」

 

 自分の身勝手だろうと、このまま世界に仇なすテロ組織で彼女の未来が輝かしいものになるだなんて絶対に思えない。

 たった1人の幼馴染みを心配させるのなら尚更だ。

 

「その闇は私が断ち斬る」

 

 それらを断ち斬り、彼女の進む道のりの先に光を差し込ませる為に――天宮紗香は剣を抜く。




如何でしたでしょうか?

今回は前回に出来なかった健司の『魔法』の解説も交えながらさせて貰いました。
結構紲と良い勝負の地味さかもしれませんが、少なくとも彼のよりは攻撃性能は高いですよ(多分)

そして紗香の弁であればメイアとは「似た者同士」との事でしたが……まだそんな風潮は見えない。

まだ見せていないだけなので、そこのところは掘り下げていこうと思います。

次回は再来週の水曜日かと……。

遂に紗香とメイアが激突(予定)

主人公さんと違って両名の『魔法』はド派手なので、そもそも建物が持つかどうか……作者は今から心配です。

メイアの『魔法』、そして前回では書かなかった紗香の『魔法』についての解説も交えての戦闘になるかもです。

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