新原紲の魔法相談室   作:ゼガちゃん

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1ヶ月掛かっちゃいました(;^_^A

続きです!!




疑問

 わたくし達の一族を助けてください――今さっきの言葉を脳内で反芻する。

 内容がとてもぶっ飛んでいる。

 一介の学生風情が首を突っ込める内容などとは到底思えない。

 

 多分、言葉とは裏腹に内容はとてもソフトなのだ。

 そうに違いない――紲はそう信じて栄華に返した。

 

「助けるって、具体的には?」

 

「わたくし達は龍人(たつびと)という種族なのは覚えていますか?」

 

「ああ」

 

「龍人と言うのは龍の能力を一部受け継いだ……いわゆる、人間と龍のハーフなのです」

 

「人間と龍のハーフ……」

 

 栄華から語られる内容を紲は復唱する。

 ハーフ――混血とも呼ばれる存在の事だ。

 紲も知ってはいるが、まさか種族として確立されているとは思わなかった。

 

 ましてや『龍』だ。

 龍は『魔法』の広まった現代においても未だに未発見な存在だ。

 まさしく小説内にしか居ないであろう幻想種。

 なのに、彼女達が『龍』の血筋と呼ばれるのには何かしらの理由があるのだろう。

 

「これまでは忌み嫌われるなどがありましたが、とある御方のおかげでわたくし達はこうやって自由に闊歩できております」

 

「ひょっとして、差別とかあったんですか?」

 

「直接的な被害はありませんでした。わたくし達は仮にも『龍』と呼ばれる幻想的な存在の血を受け継いでいますから」

 

 平たく言えば未知なる存在が故に強さが分からず、勝手に畏怖してしまっているのだ。

 それは解決されたと言外に伝えてくれたが、それを行った人物は本当に凄い。

 努力なんて言葉では片付けられない程の偉業だ。

 

「話が逸れてしまいました。今回、紲様に依頼したいのは一部のグループがわたくしの命を狙っているのです。それから護って頂きたい」

 

「命を狙われているって!?」

 

 周囲に人が居なくて助かった。

 とんでもない話の内容に紲は席を立つ。

 

「気持ちは嬉しいですが、落ち着いて聞いて下さい」

 

「わ、悪い……」

 

 内容が内容だけに落ち着いてはいられないが、狙われる当人が落ち着き払われていると、逆に落ち着いてくる。

 

「犯人の目星は付いてるの?」

 

「はい」

 

 紗香も同じ気持ちだろうに、紲が慌てたのを見て冷静になったらしい。

 犯人に心当たりがあるか?という問いを送り、栄華もまた頷き返した。

 

「犯人についてはまた追々お話しましょう。それよりも依頼を受けてくださった際の紲様への報酬があります」

 

「報酬?」

 

 聞き返したのは紲ではなくて紗香だ。

 彼女はこんなにも大きな案件をやらせるつもりは無かったのでどう断るか考えていた内に栄華に先に切り出された。

 

「はい。こんな大きな案件を受けてもらうなら、それ相応の報酬が必要となると思いまして」

 

「まさか……自分を嫁がせるとか言い出さないわよね?」

 

「それも考えたのですが……恐らく“もっとあなた方が興味を惹かれる内容かと”」

 

 わりと本気で問い掛けたものを栄華はさらりと流した。

 カウンター気味にとんでもない発言を残す。

 あなた方――それは紲だけでなく、紗香も含めたものだ。

 

「単刀直入に申し上げましょう」

 

 栄華の視線が紗香から紲へと向けられる。

 

 

 

 

 

「紲様の《リンク》についてです」

 

 

 

 

 

 一瞬、時間が止まった。

 これはごく少数しか知らない事だ。

 紲は何も彼女に話していない。

 それを伝えるべく、紗香へ無言で頭を左右に振って否定する。

 

「ふふ。驚かれるのも無理はありません。まだ紲様へも話してはいませんでしたが、わたくしの『魔法』は自身の身に起こる未来を見れるのです」

 

「未来を……っ!?」

 

 紲は驚きに唾を飲み込む。

 紗香も同様の反応で、2人揃って栄華の次の言葉を待った。

 

「はい。何もかもを見れる訳ではなく、ランダムなのとその日に起こる出来事に限られますが」

 

「いやいや、凄いって!!」

 

 紲からすれば何で羨ましい『魔法』であろうか。

 

「でも俺の『魔法』を知ってるって事は……今日にでも使うのか?」

 

「そこまでは存じ上げてはいませんが……少なくともわたくしに自身の『魔法』を教えて頂きました」

 

 それに――彼女は更に言葉を紡ぐ。

 

「とある御方から紲様の『魔法』は聞いておりました。なので、紲様よりも知っている事が多いのです」

 

「俺の『魔法』を、か?」

 

 紲の『魔法』を知っていそうなのは後は師匠位なものだ。

 だとすると、彼から伝え聞いたと思うのが尤もだろう。

 

 

「細かい事は今は置いておきましょう」

 

 栄華が教えたい内容からは脱線してしまっていた。

 無理矢理に軌道を元に戻す。

 

「紲様。あなたはご自分の『魔法』が如何に他のものと違うかご存知でしたか?」

 

「他の『魔法』と違う?」

 

「それって、もしかして……」

 

 紲はピンと来なかったが、紗香はそうでもなかったらしい。

 彼女には思い至る節があった。

 自然、彼女の方に注目が集まる。

 紗香は自身の意見を主張する。

 

「私のもそうだけれど、本人が新しく覚えていく『魔法』は最初に扱えるようになったものに近い部類のものが多いの」

 

 例えば紗香であれば、彼女の『魔法』は「剣」を主体としたものだ。

 イメージした剣士の動きを真似するなど、結局は彼女の『魔法』は「剣」に由来している。

 

 ただし、例外は“その『魔法』の使い方を覚えた際だ。”

 

 例で挙げるなら『基礎魔法』なんかが良い例だ。

 その中の《アーマー》。これは全身を覆って防護する『魔法』で“習えば誰もが扱える。”

 

 あくまで“自然と覚えていく”『魔法』に関しては本人が自然と最初に覚えた『魔法』に類似していく。

 ただそれだけなので、訓練さえ詰めば他の種類の『魔法』を覚える事は可能なのだ。

 『基礎魔法』はその中でも特に「発動がしやすい」というだけの話である。

 

「けど紲。あんたの覚えていく『魔法』は“統一性が全くないでしょ?”」

 

 紲の『魔法』は《ヒール》、《フィーリング》、《ライト》、《サンド》だ。

 回復、感覚変化、光、砂――いずれも統一性が見受けられない。

 

「それを言ったらメイアは?」

 

「確かに統一性がないという点では彼女の『魔法』も似たようなものだけれど思い出して。彼女の『魔法』の根幹にあるものは少し違うわ」

 

 統一性がない事で挙げるならばメイアの『魔法』も様々な現象を引き起こす。

 だが、根本が自然界にあるものを発生させる――それを思い出す。

 

「でも栄華も言ったように全く関係ない『魔法』を覚える事は珍しいだけで、前例がない訳ではないわ」

 

 最初の『魔法』が「炎を生み出す」だったにも関わらず、次に「水を生み出す」になる。

 そんな事例はいくつかあるのだから気にするだけ無駄だ。

 

 だというのに、あえてそこを指摘したのなら――。

 

「紲が使う“たった1つの『魔法』が別の『魔法』を派生させている事が不思議なのよ”」

 

 言われて理解した。

 紲の『魔法』は“他人との繋がりを感じた際に新しい『魔法』を覚える。”

 彼の本来の『魔法』の《リンク》は「他人との絆」に関与する。

 新しい『魔法』を覚えるのに《リンク》が関与していると思うのは必然とも言えた。

 

 この件は紲の師匠も認めている事柄だ。

 今更、揺るがない事である。

 

「紲様の《リンク》が何故そのような作用を起こすのかまでは分かりません。ですが、それが『基礎魔法』を使えない理由なのではとも考えております」

 

「俺が『基礎魔法』を使えない理由?」

 

 紲は問いを返球する。

 これまでいくら考えても知り得なかった事実。

 それなのに、まだ出会って少ししか経たない彼女が気付いているのかと不思議に思う。

 

 それ事態に紲は戸惑った。

 不思議に思うのみで、決して“訝しいとは思わない事実に。”

 紲の心中は知らず、栄華は問いに答える。

 

「等価交換という言葉はご存知でしょうか?」

 

「まあ、さすがにな」

 

 有名なマンガにでさえ載ってるような四字熟語だ。

 何かを得る為には同等の対価を支払わなくてはならない――というものだ。

 

「これはわたくしの持論ですので参考程度に考えて下さい」

 

 そう前置きをしてから栄華は続ける。

 

「わたくし達の扱う『魔法』は発動に『魔力』という対価を支払っています」

 

 買い物で商品を『魔法』、お金を『魔力』と考えるのがイメージしやすい。

 

 お金――『魔力』――を支払う事で商品を手に入れる――『魔法』が発動する――仕組みだ。

 

 ゲームのように様々な種類の『魔法』を使うのに見合った『魔力』を消費しなければ不発に終わる事が多い。

 しかし、これがどういった事に繋がるのか?

 紲は栄華の言葉を待った。

 

「もしも、紲様の『魔法』の発動条件が“『魔力』だけではないのだとしたら?”」

 

「えっ!?」

 

 これまでの話の内容はきちんと理解していた。

 “だからこそ飛び出た驚愕の声。”

 

「つまり、俺の『魔法』は普通なら出来る筈の『基礎魔法』を対価に存在してるってのか?」

 

「正確には『覚えて使えるようになるもの』じゃないかしら?」

 

 紗香もまた自身の中で出てきた答えを口に出す。

 試した事は無いので確証は無い。

 しかしながら、今後も覚える『魔法』は出てくる。

 そう考えても自然ではあろう。

 

「はい。わたくしもあなたと同意見です」

 

 紗香の意見に栄華もまた同調する。

 

「しかし、それだけの価値があるとも思えんがな」

 

「それは紲様が御自身の『魔法』の特性を把握する事で分かります。現にまだあなたの『魔法』に関する疑問点は多いですから」

 

 小さく微笑みながら栄華は告げた。

 だが、彼女のおかげでこれまで小骨のようにつっかえていた疑問と向き合った。

 しかも、妙に説得力のありそうなものでもある。

 栄華は「あくまで推論ですので、くれぐれも鵜呑みにはしないで下さい」と付け足す。

 彼女自身、憶測のみで話したのだろう。 

 伝聞のみで、ここまでの推測を立てられるだなんて優秀だと思う。

 こちらの『魔法』に関してもまるで見た事があるかのようだ。

 

 せっかくなので、気付いてる疑問点を吐き出してもらおう。

 使ったり、身近であるが故に見えない所もある。

 

「――っ!? 紲様!!」

 

 しかしながら、紲の思惑とは別の方向に出立しそうだ。

 突然血相を変えて栄華が席を蹴るように立ち上がった。

 並々ならぬ雰囲気だ。

 心なしか彼女の瞳が金色に輝いてるようにも見える。

 

「何かあったのか?」

 

「敵です……」

 

 震える声で栄華は返す。

 想定外の事――栄華にはそう感じられたのだろう。

 

 話の内容は、紲達の度肝も抜くものだった。

 

「今から10分もしない内に敵が、校内へ来ます……」




如何でしたでしょうか?

長くなりそうなのでここで切っちゃって申し訳ない。

紲の『魔法』に関して少し掘り下げました。
まだまだ疑問となる部分はありますが、今後を読んで頂ければ。


次回は1ヶ月後の予定です。

ではまた
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