新原紲の魔法相談室   作:ゼガちゃん

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お待たせしました。

続きです。


侵入者が分かるって便利なんやの~

 紲の通う学園から少しだけ離れた電柱に寄り掛かって2人の男が立っていた。

 片方は細身で長身、もう片方はかなり太っていて身長も低い。

 彼らは共に黒いスーツを着用しており、サングラスも掛けている。更に唾広の黒い帽子を目深に被っていた。

 

「本当にあそこに居るんですかい?」

 

「ああ、ボスからの通達だから間違いない」

 

 太った男が訊ねると、細身の男が頷いて返した。

 質問に確信を持たせるような内容で以て。

 

 明らかに怪しい行為な上に、通報されてもおかしくはない。

 しかし、平日の昼間というだけあって人通りもない。

 故に彼等を疑問に思う人も現れない訳だ。

 

 周囲を警戒しながら2人は正門から場所を移す。

 正しい入口があるのなら、裏口も存在する。

 ややあって、2人は裏口に辿り着いた。

 とは言っても、職員が乗用車で出入りする為の駐車場と一緒になっている。

 

 他にも入口はあるのだが、彼等が用意したシナリオをやり遂げるにはこちらからの侵入が好ましかった。

 

「しかし、こっちからで大丈夫だったんですかね? 最初は正門からの筈だったんでしょう?」

 

「そうは言ってもボスからの通達だからな。オレたちにはどうしようもない話だよ」

 

 太った男の言うように当初は正門からの侵入を計画していた。

 なのに、彼等を束ねるボス様は突然に裏口からの侵入を提案してきた。

 依頼を受ける形である男達からすれば、ボスの意向に逆らえる訳はない。

 疑問はあるものの、頷く以外の選択肢があるとは思えなかった。

 

「まあ、お嬢様の『魔法』が未来予知である以上は念には念を入れてって事なんだろ」

 

「そ、そうですね」

 

 長身の男が励ますように言った。

 それは自分に言い聞かせているようにも残念ながら聞こえた。

 

「っ!! 待て!! 」

 

 長身の男が何かを察したように太った男へ告げる。

 その理由は告げられた瞬間に把握できた。

 

 待ってましたと言わんばかりに駐車場で2人の女子生徒と1人の男子生徒が居た。

 

 女子生徒はどちらも知った顔ではあった。

 1人は標的である龍崎栄華、もう1人はテレビでもたまに見掛ける天宮紗香だ。

 だが、1人。彼女らの真ん中で先頭に立つ少年の事は分からない。

 いや、それよりも――

 

「バ、バレてたって事なのか!?」

 

 狼狽してしまう。

 計画を練っていたと言うのに、結局は栄華の『魔法』に阻まれる形になった。

 未来予知――やはり実際に相対してみると恐ろしさを実感できる。

 

「すげえ。ドンピシャかよ」

 

 少年が感嘆の声を漏らす。

 多分、少年も半信半疑であったらしい。

 

「逃げるぞ!!」

 

 計画は中止。

 長身の男は脇目も降らずに逃走の選択を取った。

 

 それ事態は何の問題もない。

 むしろ正しい選択とさえ言えた。

 彼等は予想外の事態に、頭で考えるよりもパニックに陥っている。

 そんな状態で任務を遂行できるとは考えられなかったからだ。

 

 ただ、惜しむべきは……出会した瞬間に思考するよりも早くに思い付くべき事柄であった位だ。

 

 彼等に剣の雨が降り注いだ。

 それらは堅牢のように男達を取り囲む。

 

「捕まえたわよ」

 

 実行犯は紗香。

 学生相手にこうも容易く捕まる自分が情けなくなる。

 

「けど……」

 

 破れない訳ではない。

 『魔法』を行使しようと、『魔力』を巡らせた時だった。

 

「させるかよ」

 

 上から声がした。

 取り囲むように降らせた剣。

 だが、“上から出入りできるようにはなっていた。”

 

 男達が事態を把握してる間に少年が飛び込んできた。

 地面に着地するなり、狭い堅牢の中で素早く動いた。

 間合いなんて、狭い事から詰める必要性すら無かった

 

「うらぁっ!!」

 

 まず、真っ先に狙いを定めたのは太った男だ。

 彼の腹部に拳を突き刺した。

 

 その様子を見てこちらはほくそ笑む。

 見た目の通りに耐久力はある。

 生半可な拳ごときで倒れる訳が……

 

「がっ、えっ!?」

 

 驚愕の声音と共に太った男は目を見開き、涎を吐きながらうつ伏せに倒れ込む。

 何が起きたのか理解が追い付かない。

 それ程までに驚きに満ち溢れた事柄であった。

 

 狼狽という隙を少年は見逃さなかった。

 鷹のような鋭い目付きで狙いを定めて、上段蹴りを打ち込んでくる。

 直後、長身の男の意識も刈り取られる。

 物の数秒の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とかなったな」

 

 紗香達と共に来たのは無論ながら紲だ。

 彼は気絶させた男達を見下ろしながら安堵の息を吐く。

 

「こいつらが“そう”な訳?」

 

「ええ。わたくしの命を狙う者達です」

 

 紗香が念のために問うと、栄華は頷いた。

 

「とは言え、尖兵でしょう」

 

 栄華はすぐさま苦い顔を作る。

 彼女の『魔法』が未来予知である以上、敵はそれを見越した戦術を立てねばならない。

 そして、今回はあからさまに戦術を気にした風には見えない。

 

「今回は……未来予知の『魔法』の検証といった所かしらね?」

 

「恐らくは」

 

 紗香の推測は間違いではないと栄華も考えた。

 その為にこの2人は囮として機能した――それだけの話だ。

 

「しかし、これで何か分かるものとも思えないんだがな」

 

 紲のボヤきは的を射ている。

 そこのところは紗香も栄華も同様だ。

 

「ですが、万が一にもわたくしの『魔法』の“何らか”を知ったのだとしたら油断なりません」

 

 自身の『魔法』の弱点は自身が一番心得ている。

 「結局のところ、油断大敵って事だよな」

 

 紲は倒れた男達を用意しておいたロープで縛り上げる。

 即興故に『魔法』への耐性はない。

 彼等が目を覚ませば『魔法』での脱出は難しくない。

 

「っで? こいつらはどうする?」

 

 倒れ伏した男達を前に紲は途方に暮れた。

 紲の場合は彼等の顔面に痣を作る以外では気絶させる術を持たない。

 

「今しがたにこちらで彼等を連れていく者達を呼んでいます」

 

「んじゃ、そいつらが来たら引き上げるか」

 

 紲が言うや、昼休みを告げるチャイムが鳴った。

 他の人達が来るまで、途中だった昼食はお預けを喰らうのだった。




如何でしたでしょうか?

こちらも忙しかった為に投稿が遅れています。申し訳ございません。

次回の更新は1ヶ月後の予定です。
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