最近忙しくって。
最後まで書こうとすると長くなりそうなので少し短めになっております。
結局、襲撃の後は何事もなかった。
「おはようございます紲様」
「おはよう紲」
「…………」
その翌日の事だ。
紲に挨拶をするのは制服に身を包んだ栄華と紗香だ。
そこまでは構わなかった。
問題なのは――
「あのさ? 何で“俺の部屋に居るんだ?”」
何故、この2人が紲の部屋に居るのであろうか?
既に紲も着替えは済ませているから良いのだが、2人が彼の部屋を訪れる理由を知りたい。
「紲様に伝えたい事があったので来ました」
「紲を起こしに来たら玄関前でバッタリ会ったのよ」
栄華、紗香の順に事の経緯が伝えられる。
それにしても――
「栄華はよく俺の家が分かったな?」
住所を教えた覚えはない。
「学校の方から教えて貰いました」
「なあ紗香。俺は通う高校を間違えたのか?」
よもや個人情報保護法を学校側が守らないとは思わなんだ。
もう学校側が何を言っても信用できなくなる。
「安心しなさい。教えたのは私よ」
「余計に質が悪くないか!?」
幼馴染みからのまさかの個人情報の漏洩が発生していた。
入学初日に紲の『魔法』を数人に暴露された事といい、彼女には情報漏洩の危険性を説いた方が良さそうだ。
「ところで俺に伝えなきゃならない事って?」
気を取り直し、紲は栄華に問う。
紗香に言い聞かせるよりも用事があっただろう彼女の案件が気になる。
「龍宮コウジ――彼の居場所が分かりました」
「そうなのか?」
それは朗報だろう。
今回は後手に回ってしまったが、今度はこちらから打って出られる。
「ですが手放しに喜べないのが痛いところです」
「それはどうして?」
「既に別の拠点に移動をしてる可能性があるからかしら?」
紲が疑問を投げ、紗香が推測ながら提示してみた。
すると栄華は紗香の推測に「はい」と答えた。
肯定の意味合いを持つ答えを。
「今回、紲様の自宅に押し掛けたのは今後に彼がどう動くのかを簡単にですが予知できたからです」
「予知ができたのか? でもそれっていつ起こるか分からないとか言ってなかったか?」
「申し訳ありません。わたくしの説明不足ですね」
本当にばつの悪そうな表情で、栄華は事の顛末を伝える。
「わたくしの『魔法』は紲様の言うように不規則で発生します。ですが、日に1度のみ、自身に起こる事柄をほんの僅かな時間だけ見れるのです」
その為には莫大な『魔力』を消費すると言う。
その量は100あるなら99は搾り取られるらしい。
自ら「時間」と言う概念に触れるのだ。むしろその程度で済むと考えられる。
調整をすれば2か3度位は発動可能とも補足される。
「彼らはこの付近の宿泊施設を利用し、最終的には天王寺高校へやって来ます」
「なんだって?」
最終目標は学校――その部分に紲は大きく反応した。
「天王寺高校へ来る理由は栄華かしら?」
「その通りです」
紗香は状況把握に務める。
彼女は栄華に確認を取ると肯定された。
「だとしたら、宿泊施設を当たって見付けるしかないわよね。多分、漫画喫茶とかだと思うけど……」
ホテルなんかはこの辺りにはない。
宿泊するなら漫画喫茶の他だとカプセルホテル位だ。
「ですが、当面の問題として彼がいつ攻めてくるかまでは把握できていないのです」
あくまで見れたのは断片的とも言える未来。
見える時間も短く、早送りの映像を見せられているようなものだと言う。
「でも俺の部屋に来た理由は何なんだ?」
「分からない? 学校へ来たと言うなら、裏で手引きしてる奴が居るかもしれないじゃない」
言われて前回の事件を思い出す。
敵は校内――しかも生徒に紛れ込んでいた。
一歩間違えれば生徒全員の命が危うかったろう。
そういった危険を踏まえれば、何の警戒も必要ない紲の部屋に来るのは分かる。
「でもそれなら俺の部屋じゃなくて栄華の家とかでも良かったんじゃ?」
紲の指摘に栄華は頬を赤らめる。
「そ、その……紲様がわたくしの部屋に来て下さるのは嬉しいのですが……」
言葉は最後の方になるにつれて小さくなる。
「紲、女の子がそう簡単に男を部屋に誘える訳ないでしょうが」
言いながら紗香は呆れたように紲にそう指摘した。
密かに不機嫌さを混ぜていたのは秘密である。
栄華はことあるごとに紲へアピールする。
紗香としては実に面白くない。
彼へ特別な感情を持つ者として、栄華の行動は警戒に値する。
「で? これからどうするんだ?」
「今日の放課後に一番に怪しいと思われる場所へ向かいます。来て頂けないでしょうか?」
「当たり前だ」
栄華の懇願に紲は一も二もなく頷く。
彼女からは《リンク》についての情報を推測とは言え貰っている。
それに個人的にも助けたいと思っている。
「はあ……そうなるわよね。私も行くわよ」
生徒会長として、幼馴染みとして紲を心配する彼女も同行をする。
はたして、このメンバーで挑む事になりそうだ。
はてさて、放課後の件もあるがそれより前に学校へ赴かねばならない。
栄華は紗香と同じクラスらしい。
なので後の事は紗香に任せる事に決めた。
美人の転校生が来た事は瞬く間に学園内に伝わる。
一目見ようと学年問わずに教室を訪れる訳だ。
しかし、不思議な事に噂の転校生は教室には居なかった。
「こちらが紲様の教室ですね」
当の本人は新原紲の教室に足を運んでいた。
名前を呼ばれた紲は周囲の好奇な視線を一身に受けていた。
「あの人はひょっとして噂の転校生さんですか?」
「だろうね。見覚えがないからね」
央佳が訊ね、メイアが彼女の問いに肯定で以て返す。
「なあ、気のせいか? 今紲様って言ったよな?」
健司が目敏く栄華の言葉を拾い上げた。
途端、近くにいた2人も紲を見る。
特にメイアからの視線は痛々しさがあった。
「紲様!!」
表情を輝かせて、栄華は紲へ歩み寄る。
「うっす」
全員の反応から好奇な視線に晒されるのは分かっていた。
だが、紲としては無視するつもりはない。
こちらへ来るように手招きする。
「どうしたんだよ?」
「紲様にお会いしたくて……来てしまいました」
悪戯っ子のような反応を以て、彼女は返した。
「ちょっと栄華」
「姉ちゃん」
栄華へどう切り返そうか考えている間に新たな来客があった。
生徒会長たる紗香――それを「姉」と呼ぶのは弟である健司だ。
「どうかしましたか?」
「さすがに1人にする訳にはいかないから追って来たのよ」
紗香は頭を悩ませる仕草をしながら近付いてきた。
どうやら栄華は紗香と同じクラスらしい。
「どうせ紲に会いに行ったんだろうと思ったけど……案の定ね」
彼女の行動原理が到ってシンプルが故に目的地は容易に想像ができた。
「紲。これヤバい状況だぞ」
「何がだ?」
そんな2人のやり取りを余所に健司は紲に耳打ち掛ける。
紲は彼の言う事がさっぱり理解できずにいた。
「栄華さんだっけ? あの美人さんが来たのはお前が目当てな訳だろ? っで、有名人になりつつある姉ちゃんまで来たんだ」
「あー、なるほど」
ここまでの説明を経て、ようやく理解できた。
原因である紲に飛び火が降り注ぐのは時間の問題。
しかも、このまま手をこまねいては全員の奇異の視線を浴びる形となる。
只でさえ紗香と幼馴染みで悪目立ちしているのに、更に目立ち具合が上がる。
「つまり、百計……連れ出すのが正解って事だよな?」
「仕方無いからオイラも手を貸してやるよ」
さすがにこれ以上に奇異の目に当てられたくなかった。
教室から連れ出し、一先ずは戻って貰う事に成功した。
だが、今のを問い詰められない訳ではなくて――しばらく質問攻めにあったのだった。
如何でしたでしょうか?
今回は日常的な話を持ってきたかったので、こんな感じですがグダグダ感が……
次回から物語も急展開(予定)です。
来月末に更新の予定です。