体調が戻ってきました!!
続きです!!
話し合いを終え、紲達は移動を開始していた。
横を走る車の騒音が煩わしく、移動しながらの会議とはいかなかった。
仮に出来たとしても、何処に龍宮コウジの仲間が居るのか分からないので口に出せるものではないが。
「ん?」
そんな中で紲のスマフォが着信を知らせる。
相手はメイアだ。
さすがに帰ってこない状況を心配して電話してきたのだろう事が窺える。
「もしもし?」
仮に何か言われるとしても、心配してくれているなら出ない方が申し訳が立たない。
なので、応答した訳なのだが……
「? もしも~し?」
電話口から聞こえるのは雑音だけだ。
「どうしたの?」
「いや、メイアから電話があったんだけど……出てくれなくて」
紲が電話の主を呼び掛けている様子を見て、紗香が質問してくる。
メイアの事は紗香も知っている。
どういう訳なのか……紲はとにかく耳を傾けていると――
『悪いけど。手短に話すよ』
電話に出たと思えば、向こうが勝手に話し始める。
彼女の様子からただ事ではない事が分かる。
紲はすぐさまスピーカーをONにし、紗香と栄華も話に加わるよう促す。
「何かあったのか?」
『龍宮コウジとか言う奴が学校の生徒を人質に取ったのさ』
「何ですって!?」
「どういう事です!?」
真っ先に驚きの声を上げたのは他でもない紗香と栄華だ。
それを言うなら紲だって同様である。
人質に取った――それなのに電話できている事の矛盾もある。
だが、それ以上に――――龍宮コウジはファミレスで話し合っている間に“学園の生徒を人質に取ったのだ。”
時間にしても早すぎる。
話し合っていたのは20分もない。
漫画喫茶から学園までも同じ位の距離である。
彼が連れてきたキリヤとはつい1時間程前まで話していた。
つまり、その間に龍宮コウジは学園の生徒を人質にしたのだ。
教師も生徒を盾にされては迂闊に手出しがしづらい。
指を加えて見ているだけではないだろうが、何とかなるかまでは分からない。
けれど、こうやってメイアが電話掛けている事への不自然さがある。
「縛り上げられたりとかされている訳じゃないのね?」
『生徒会長も居るのね。今図書室に居るのだけれど、全員無事。犯人の姿も見えないわ。だからこうして電話できてる訳さ』
「犯人の姿が見えない……」
その場には居合わせていないだけなのか、それとも単に来ていないだけなのか。
犯人は2人だ。
学園の生徒が文字通り、学園全体を意味しているならば手は足りるとは考えにくい。
「他に分かる事は?」
『それについてはわたしが説明するのです』
今度は央佳の声が割り込んできた。
こちら同様にスピーカーをONにして通話を行っているのだろう。
『ドア、窓も含めて鍵が掛かったみたいに開かないのです』
「施錠されているのなら壊して良いわよ。緊急時だしね」
『悪いとは思ったけど……先に既にやってみたさ』
央佳が状況を説明すると、今度はメイアが申し訳無いと言わんばかりの声のトーンで割り込んで返してきた。
内容に関しては別に気にはしない。
『普通に考えたら学園は窓も含めて壊れないように「魔法」が掛けられているのですよ?』
央佳の至極全うな意見が飛ぶ。
紲が以前に窓を粉々にした事から忘れがちではあるが、通常なら窓や壁の破壊は難しいに等しい。
強化ガラスを素手で破壊しようと試みているのと意味は同じなのだから。
紲が破壊した前例を目の当たりにしたメイアが自身で今告げた筈の内容を忘却していたのが目に浮かぶ。
破壊できない様子を見て、央佳に指摘された事だろう。
「学園が壊れない為の仕掛けが裏目に出た訳ね」
正直、紗香も壁を“壊せるので”失念していた。
『魔法』の行使で校舎が破壊される話が出ていた。
近年では破壊防止の為に『魔法』で校舎そのものを破壊しづらくコーティングさせる手段があった。
紗香も言ったように裏目に出てしまっているのが現状だったりする。
「生徒会のメンバーも今は居ない筈なのよね……」
紗香不在が生徒会メンバーへの負担を掛けてしまっている。
千鶴や蒲倉は別行動な訳だ。
「学園に今、何人残っているんだ?」
「予想がつかないわ」
放課後に残るのは自主学習に勉める者や部活動の生徒だ。
それを見物している生徒だって多い。
「図書室には何人残っているの?」
『アタイと央佳を含めて6人。教師は居ないね』
教師が居ない事で、混乱している可能性があった。
けれど、メイアが連絡を取れているのでその心配もなかろう。
もしくはこういった荒事に慣れている紲を指名しただけかもしれない。
メイアも央佳も、紲や紗香がこういう出来事に慣れっこなのは知っているから不思議はない。
「とにかく、下手に奴等は刺激するな。あとは俺達で何とかする」
状況判断が可能であれば、アドバイスも深く出来たであろう。
それは許されず、現場も知らない人の言葉で余計に悪化するなんて事も有り得る。
少しでも最悪の状況を回避すべく、かなり無難な選択を取る。
『うん。それを聞けるだけで心強いよ……ありがとう』
メイアは安心しきった声で通話を切った。
「学園に戻ろう」
メイアとの約束を果たすべく、紲は提案をした。
「待って。学園に来たのが龍宮コウジだとは限らないわ」
「いえ、間違いないようです」
紗香が提案に待ったを掛けた瞬間に栄華が新たな情報を開示する。
さっきの電話の途中から彼女は会話に参加していなかった。
片手に持つスマートフォンで電話をしていたのが分かる。
「今、漫画喫茶に居る仲間から連絡がありました。調べさせたところ……龍宮コウジの借りた部屋はもぬけの殻だったようです」
あの後に仲間を配備していたらしい。
それで入手した情報は紲達の疑問を解消すると共に、向こうに潜むのが本物の龍宮コウジだという宣言でもあった。
「そうなると、急がないとまずいわ」
ここからどうしたって20か30分は掛かる。
全速力で走って、援軍が力尽きてては意味を成さなくなる。
「とにかく走るしかないよな!!」
紲達には他の移動手段も用意されていない。
そうなると、必然的に肉体に負荷の掛かる方法を選択せざるを得なくなる。
「こんなところで何をやってるんだい?」
そこで、声を掛けられる。
声は道路側からであった。
1台の車がハザードを点けて停車していた。
乗っているのはスーツを着用した丸眼鏡の中年の男性――鮎川皆斗である。
車は助手席側が歩道を向いていた。
紲達の進行方向と同じなのも何と言う偶然であろうか。
「鮎川さん!! 丁度良い所で!!」
これは天の助けだと言わんばかりに勢いよく紲は助手席のドアを開ける。
「ごめんなさい鮎川さん」
「失礼いたします」
紗香と栄華も謝罪の言葉を口にしながらも紲に倣って後部座席に乗り込む。
「何かあったんだね?」
「学校までフルスロットルで向かって下さい!!」
鮎川の質問を切羽詰まった声音で叫ぶのは紗香だった。
学園の模範となるべき生徒会長の発言とは到底考えられない。
しかし……彼女がそうなるだけの事態が起きているのだと鮎川は直感した。
「構わないさ。どのみち君達の学園には行くつもりだったからね」
鮎川がそう切り返し、アクセルを力強く踏んだ。
予告なしだが、彼女の願い通りに一刻も早く学園へ辿り着くべく車を走らせる。
こんな事をしてくれる鮎川に感謝の念を抱きつつ、紲達は学園へ急ぐ。
如何でしたでしょうか?
変な区切りとなってしまいましたが、次の話はなるべく早く……早くに更新の予定です。
次回は何としてでも2月までには……