とある世界のバンドリーダーが夢を諦めきれなかったら

とある世界のアイドル会社の社員がもし、その姿に心を打たれ、プロデュースしようと思ったら

あの時2人が出合っていればーーー

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ふと、書きたくなった、もし彼女がこうなってたらーーー


君の声が聞きたくて

ーーー駅前の路上ライブが日々行われる場所で、私は彼女を見つけた

 

 

 歌っていた訳ではない、ただ手に持ったギターを奏でているだけ、実力はある、しかしギターを弾いている間は歌えない方なのか…どうなのか、私はギターの弾き終わりを待って、話し掛けた

 

 

「君…私は美城プロダクションの美城と言う者だが、アイドルに興味はないか、そして君の名前を聞かせてほしい」

 

 

 話し掛けるだけだと考えていたが、彼女の絶望しながらも、尚も上を目指しつつける眼、それに惹かれたのか、気付けばそんなことを言っていた、そうするとびっくりした様な表情で、彼女はプラカードになにかを書き込み、私に見せた…まさか

 

 

『私は脳梗塞による失語症です』

 

 

 そのまさかだった、だが私は諦めきれなくて、どうしても彼女の声を取り戻したくなった、聞けば家庭内暴力が激しいこと、これは彼女の親を説得し、私と共同生活することで難を逃れた

 

 次にバイトだが、失語症になってからはやっていないのでパス、しかしなにかをしたい様なので、脳梗塞と失語症に関するデータを集めて読んでいた、そしてギターの練習

 

 たまにアイドル部門のレッスンなどを見せてどうなるかも試した、一緒になって踊る彼女は笑顔が増えた、そして彼女と家でプラカード越しだが話していた時のこと、たまたまプラカードを書く時にコップを倒してしまった時だ

 

 

「あっ」

 

 

 私の声ではない、もっと若い声だ…これは、と思い彼女を見る、震える声で発声練習を初め、徐々に…綺麗な声が室内に響く、私は感動のあまり彼女に抱きつき、彼女も笑顔で泣きながら抱き締め返してくれた

 

 

「やっと、これでやっと、君の本当の歌が聞ける」

 

「はい、これでやっと、私の本当の歌が歌える」

 

 

 彼女がずっと作曲もしていたのも知っている、たまにアイドルを見て曲を組み上げ、そのまま持ち歌にしたアイドルだっている、気付けば彼女はアイドルではなく、プロデューサー側に回っていたが、私はまだ彼女のプロデュースを諦めた訳ではなく、彼女もアイドルを諦めていた訳でもない、その日のうちにレッスンルームを確保して、彼女の歌を聴く、レコーディングルームは、彼女自身がアーコスティックギターなので大丈夫、その時まで取っておきたいと言っていたが

 

 

「ーーーッ!!」

 

 

 感動だった、あの日初めて聞いた曲、それは自身を呪い、周りを呪い、だけれども明日へと向かう歌、失語症で夢を絶たれ、それでも…と言い続けた彼女の人生、それがこの歌だった、その日はたまたま近くを通りかかったアイドルやプロデューサーが感動して、そのまま快復祝いのパーティーにまでなった、そして私はその日のうちにスケジュールを整え、彼女とのアイドル生活を共に歩めることに涙した

 

 

「これからよろしく、プロデューサー」

 

「あぁ、これからもよろしく頼む、私のアイドル」

 

 

 お互いに笑いあう、そしてふと…あることを思い出した、それは最初にプラカード越しでしかしなかったもの、それをもう一度、彼女と正式に取り交わそう

 

 

「君、私は美城プロダクションの美城と言う者だが、アイドルに興味はないか? そして君の名前を聞かせてほしい」

 

「はい、私はアイドルになります、私の名前はーーー」

 

 

ーーー岩沢まさみ、です









綺麗な美城常務と、失語症でも前を向き続けた岩沢まさみ、平行線が混じる時、新たな道が開かれるーーーはず


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