序章 : 回り続けるだけの地面
「バカみたいだな。俺って。」
寂れた建物の中で独り言ちる。近くで拾った破けたブルーシートを広げて何をするでもなく座っている。こうやって1人工場の空き地で黄昏てみても 何も変わりゃしないのにな。
誰かに直接言われた訳じゃない。
もしかしたら自分の勝手な妄言なのかもしれない。
疲れて手足を投げ出してみても 何も起きない。突然天啓が降ってくるわけでも、ヒーローが肩を抱いて励ましてくれる訳でもない。
結局逃げただけじゃ何も変わらない。ただただ周りに迷惑をかけるだけ。自分だけじゃなく家族の信用も失わせるだけの本当に無価値な行為だ。
雨が今にも降りそうな真っ黒の雲、まだ夕方でさえないのに 太陽の光を通すこと無く 辺りは薄暗い。街灯が点くような時間でもないし、そもそもここには電気が通っていない。
もしこのまま夜が来れば 携帯すら持っていない俺は真っ暗闇の中 誰が助けに来てくれるわけでもなく 凍えそうな寒さの中1人で過ごすしか無いだろう。
きっと両親は心配するんだろうな。
息子が帰ってこない、なんて事があって平気で過ごせるような人達じゃない。寝ずに俺の事を探してくれるだろう。そんな人を俺は裏切って、家出なんて馬鹿な真似をしている。
「本当にどうしようもないやつだ」
誰に聞かせたい訳でもないけれど、声に出してみる。少しだけ、心が軋んだような気がする。でもその瞬間、同じぐらい少しだけ 心が軽くなったような気もする。
父さんや母さんは心配してくれるだろうけど、あいつらはどうなんだろう。
一個下の妹たち、2人のことを考える。
あいつら、今頃何やってるんだろう。
俺にない才能を持った、太陽みたいに明るいあいつ
俺よりずっと頑張り屋の、月みたいに綺麗なあいつ
俺だって頑張ればあいつらみたいに成れたかもしれない あいつらみたいに立派な、人に頼られるようなやつに成れたかもしれない。
でも、俺はそれが出来なかった。
勉強やスポーツ、どれを伸ばしてみても 伸び悩んで飽きて辞めてしまう。人並みか以上か、人並みまでしか出来ない。決して悪い方では無かったとは思う、でもそこまで。
そっから更に、目から血が出るぐらい努力すれば俺もあいつみたいに立派な人間に慣れたかも。
最初から周りより何倍も上手に物事をこなせる才能があれば俺もアイツみたいにすげぇ奴になれたかも。
『かも』だとか『もし』だとかを妄想するだけのしょうもない人間にしかなれなかった、そんな俺はきっと。
救いようのない馬鹿なんだろう。
同じ事をぐるぐる繰り返すだけの、何かの明かりに照らされていなきゃいけない 誰かに守ってもらわないといけない。
そんな自堕落な人間だ。
ただ一つなにか特別な事があるとしたら。
誰かの気持ちをわかってやれるぐらいかな。
次回予告
「最近どうよ」
「主語が無いと分からないわ」
『逃げないで』
「別れ話ぐらいきちんとしろよ」
「あのさぁ お前」
「逃げたらもう、誰も〇〇のこと助けてくれないぞ」
壱章、『ごめん』
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