まだ見ていない人は見ないことをおすすめします。
《傀儡王》 オル=ゴール、
実力は魔人故に高く、自他が認めるモノだが、彼は今、ある場所にいる、草木が生えない、岩石だらけの荒野、今彼の相手には相性の悪い場所、負けるはずがない、コイツも人形にしてやろう、と、息巻いていたオル=ゴール……それも5分ほど前のことではあった。
「がっ――ごほっ!」
膝をつくオル=ゴール、身体が文字通り痺れ、今にも倒れそうな様子。
「あんれぇ?、どぉしたのかぁなぁ?」
暗い白の花のブローチを身につけ、岩山の上で、オル=ゴールを見下ろす男、カンに触る言動と、余裕に満ちた表情からは性根の悪さがうかがえる。
「こんな……ボクが……!」
オル=ゴールは糸を放つが、それは男の目の前で焼き切れる、彼は指一本動かしてはいない、ただ彼の纏う電気が強いのだ、本来どんな炎でも攻撃でも切れることなどなかった糸が、切れてしまうほど。
「何故だ……クソ!」
想定外すぎる、今まで隠れて、まずバレることなく暮らしていた、数百の人形で世界を操っていたが、今はそんなことよりも自分の命、人形を停止させ、彼と対峙することにすべての力を行使している、それでも、遠い、まるで《暴君》、解放軍のリーダーのようだが、彼よりは弱い、だが、現実問題、勝てない、逃げようにも、電気の檻によって閉ざされ、空からでも不可能だ、地中は固く、選んだ場所が相手に悪いはずなのに今は自分に振りかかる。
「……もういいや、なんかもう飽きたよ」
子供が玩具を捨てるかのように、欠伸をしながら、男は指先から高電圧の雷の弾丸で、オル=ゴールの頭を貫いた。
確実に死んだ、だが、オル=ゴールには、それは反撃の狼煙とも言うべき最強最悪の
《
「お前なんて!、この姿になったら、負けることなんてないんだよぉ!」
オル=ゴールは跳躍、その限界を超えた膂力で、男を殴りかかる。
「……あっそ」
それでも男の興味は既に失せていた、オル=ゴールをその一撃は片手で防がれる、彼からは骨と肉が潰れ砕ける音が聴こえはするが、何の反応を示すことはない。
「あぁあ、せっかくの
男はオル=ゴールの頭を掴みとる。
「ぐっ、くそ!、離せ!、離せっていってるんだ!」
その膂力でも、骨を砕いても、その手は離れない。
「――あ?」
電気が流れてくる、そして、自分が徐々に消えていく感覚がしてくる。
「人格を持ってるなら少なからず、電気信号はある、頭を潰されても、それは変わらない、よねぇ?」
「やめろ……やめろやめろやめろやめろやめろ!」
「けひ、かひ、きひひひひひ」
男は下卑た笑い声をあげ、オル=ゴールの命乞いに愉悦する。
「やめてく――」
――オル=ゴールは完全に消え去った。
「……駄目だねぇ、やっぱり魔人はどうあっても人格は消去はできるが、洗脳はできない、強いお人形は作れないのが私のこの《}電脳魔眼《ラプラス》》の不満点かな」
男は義眼型の自らの霊装の右目に触れる。
「――《
「んー?」
突如、起き上がったもう一人ここにいた魔人、アイリスに殴りつけられる、頭の半分が吹き飛んだが、倒れる様子はない。
「あはは、こわぁいこわぁい、もう私の
大量の血液が流れても、彼は何ごとなく喋り続ける。
「私の、私の弟をよくも!」
涙ぐんだアイリスの声に、男は嗤う。
「あは、けひ、これは生かしておいたほうが楽しめそう、じゃあねぇ、この身体は棄てるし、転がっているのもあげるぅ」
「待て!」
瞬間、男の身体は力なく崩れ落ち、残されたのは、アイリスのみになった。
「――私は、私は……!!」
アイリスは一人、悲しみに悶える、護れなかった、魔人になった理由の大切な弟の亡骸を見ながら。
○
「……やはり、エイブラハムの坊主や暴君、アーサーほど楽しめないな、これは」
炎を拳に纏い、ローブの者は、《同盟》の死体の山の上で一人、立ち尽くし、欠伸をする、まるで
「エーデルワイスのお嬢さんも行方が不明だし……なんだかなぁ、俺はもっとやりたいなぁ……はぁ」
また別の場所に放浪しようとした時、携帯に着信が入る。
「んー?なんだ……はぁ、日本、故郷だな、そこに行けと」
その者はメールの内容を流し読みする、命令だから仕方ない、つまらないかと思っていたが、ある一文が興味を引く。
「……ほう、七星剣舞祭、そうか、そんな時期だな」
その者は笑みを浮かべ、身体が燃え盛る。
「楽しませてくれるだろうなぁ、わが故郷の戦士達!」
その者は火の玉となって、目的の場所へと向かっていく、強者と戦うために、それだけのために