凪は日輪と共に   作:蜜柑凪

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私の中での鬼滅CPは、ぎゆしの・さびまこ・炭カナ・ぜんねず・伊アオ・さねカナです。


第拾参話 兄弟

無事、炭治郎、そして禰豆子は裁判を終え、蝶屋敷にて療養することになった。

 

「炭治郎。禰豆子。」

「「「「お兄ちゃん!お姉ちゃん!」」」」

 

「母ちゃん!竹雄!花子!茂!六太!」

「ム―!」

 

蝶屋敷に着いて、入院着に着替え寝具で横になっていると、ほどなくして家族の皆が訪れてくれた。

こうして家族皆で集まるのは実に二年ぶりだった。

二年の歳月を埋めるかのように、俺達はいろんなことを話した。

無惨に襲われ、禰豆子が鬼にされたあの惨劇の後、義勇さんの計らいで皆は水柱邸へと移り住むこととなった。

それからというもの、母ちゃんは同じく母となった義勇さんのお姉さんである蔦子さんと子育てについて話したり、弟妹達は義勇さん、錆兎さん、真菰さんによく遊んでもらったりしているらしい。

あの惨劇で失われたものや、やはり炭治郎と禰豆子がいないことは物寂しくもあるが、楽しい日々を過ごしている。

炭治郎もこの二年間のことを話した。鱗滝さん達との修行、そして鬼殺隊としての活動の過程の中で出会ったかけがえのない仲間達のことも。

那田蜘蛛山での任務での大怪我で全身酷い痛みだったけど、大好きな家族に囲まれていれば痛みも我慢できた。俺は長男だから痛みも我慢できる。弟妹達に情けない所は見せられない!

禰豆子は寝不足なのか、よく寝ていた。そんな禰豆子を年下のはずの竹雄や花子、茂、六太が頭を撫でるものだから、なんだか禰豆子が幼い妹のように見えて可愛かった。

 

誰もかれもが皆、笑顔だった。まるで、何事も無くあの頃に戻ったようで。

得たものも失くしたものもたくさんある。けれども、たしかに幸せだった。

 

 

それからお見舞いにもいろんな人達が来てくれた。

まずは、村田さん。

彼はサラツヤな髪をなびかせて、どこか虚ろな表情を浮かべていた。なんだか隈もひどい気がする。ちゃんと寝れてるのかな。大丈夫かな。

村田さん曰く、那田蜘蛛山での仔細報告のため柱合会議に召喚されたらしい。酷いやつれようで、愚痴ばかりだった。

 

「地獄だった…。怖すぎだよ柱…。なんか最近の隊士はめちゃくちゃ質が落ちてるってピリピリしてて皆。そんなこと俺に当たられても困るってもんだよ。だいたい柱になれるような人間なんかそう出るわけないじゃんか。それなのにさぁ…。」

「いつまで過ぎたことにぐちぐち言っているつもりだ。村田。男らしくない。」

「げ。錆兎。」

「は~い!私もいるよ!」

「あ!錆兎さん!真菰さんも!お見舞いに来てくれたんですね!ありがとうございます!」

 

 

「おい。炭治郎。その可愛い人、誰だ…?」

 

ふいに善逸に袖を引っ張られた。

その匂いは何だかおどろおどろしかった。目も据わっているような気がする。

 

「ああ。あの宍色の髪の人は錆兎さん。花柄の羽織を纏った女の人は真菰さん。俺の兄姉弟子なんだ!」

 

カッと善逸の目が開かれる。

 

「――炭治郎。お前………。いいご身分だな………!!!」

「へ?」

「炭治郎!お前、ふざけんなよぉぉおお!!!禰豆子ちゃんという可愛い妹がいるだけじゃなく!こんなに可愛い姉弟子までいるとか!どんだけ恵まれてんだお前はぁぁああ!!ふざけんなぁぁああ!!一つでもいいから寄越せよコンチクショウ!」

 

首元を掴まれ、ガックンガックンと揺らされる。目、目が回る。

 

「ふふっ。」

 

ふいに花のように朗らかな笑い声が響いた。

 

「炭治郎の友達はおもしろい子だね。」

「いえ、そんな…。」

 

パッと首元から手が放される。ホッ。

 

「炭治郎は私達の大切な弟弟子なんだ。仲良くしてあげてね。」

 

真菰さんは優しい笑顔を浮かべ、ギュッと善逸の手を握る。

 

「はい!もちろん!!喜んで!!」

 

善逸は顔を真っ赤にして元気よく返事をする。

なんか前にもこんなことがあったような…。

 

 

 

そういえば、と一つ気になっていたことを思い出した。

 

「あ!そういえば、錆兎さんと村田さんってお知り合いなんですか?」

 

村田さんは錆兎さんのことを呼び捨てにしていたし、錆兎さんの方もなんだか気の置けない雰囲気だった。

 

「ああ。そうか、炭治郎は村田と同じ任務に就いていたんだったな。」

「はい。」

「俺と村田、そして義勇は一緒に選別を勝ち抜いた同期なんだ。」

「いやいや。勝ち抜いたって言っても俺、選別でお前らに助けられただけだし!お前と冨岡が藤襲山の鬼、ほぼ全部倒しちまったから!つーか、同期って言っても錆兎も冨岡も俺にとっちゃ天の上の人だし!」

「そんなことはない!お前は俺達の大切な同期で仲間だ!義勇も同じように思っているぞ。」

 

錆兎は村田の肩に手をやる。その手は力強い。

 

「お前も冨岡もそういう所あるよな。」

「?何がだ?」

「いや。分かんねーならいいや。」

 

つーか、その反応までそっくりだ。さすがは兄弟弟子。

強く男前な上に、天然。

女達によくモテてんのも分かるわ。まぁ、こいつらは微塵も気付いちゃいないが。

その原因には、真菰さんとしのぶ様の存在もあるんだろうけど。

よくこいつらに近づく女達を笑顔で牽制してるから。あの笑顔怖いんだよなぁ。なんだか含みがあってさ。皆、蜘蛛の子を散らしたように逃げていくもん。気持ちは痛いほど分かるけど。

まぁ、当事者たる錆兎と冨岡は、真菰さんとしのぶ様の気持ちなんか分かってねえんだろうな…。恋愛面は幼児だから。

 

 

「んじゃ、俺行くわ。炭治郎達もお大事にな!」

 

そう言って村田さんは帰って行った。

 

 

 

 

 

「よォ。なんとかやってるみてェだなァ。」

「……………よかった。」

 

「義勇さん!不死川さん!わざわざすみません。ありがとうございます!」

 

義勇さんと不死川さんもお見舞いにやって来てくれた。

不死川さんは見舞いの品におはぎをくれた。不死川さんからはよくおはぎの甘い香りがしているし、おはぎが好きなのかな?

 

ちなみに今、この部屋には俺と義勇さん、不死川さん、そして箱の中で眠っている禰豆子しかいない。

善逸は柱である義勇さんと不死川さんが来た途端、脱兎のごとく伊之助の服の襟を掴んで逃げ出した。

 

「あの!義勇さん、不死川さん、禰豆子のこと本当にありがとうございました。命を懸けていてくれてただなんて俺、知らなくて…どう感謝を伝えたらいいのか…」

「…たいしたことはしていない。気にするな。」

「俺も同意見だァ。…それに自己満足だった部分もあったしなァ。」

「あ…。」

 

その言葉に炭治郎の脳裏に、珠世の屋敷で会った一人の鬼の女性の姿が浮かんだ。

不死川志津さん。

禰豆子と同じように無惨に鬼にされた不死川さんのお母さん。

その時、初めて不死川さんも俺と同じ痛みを抱えていることを知った。

 

「あの!不死川さん!俺…珠世さんのお屋敷で、志津さん…不死川さんのお母さんにお会いしました。」

「お袋に…?」

「はい!まだ完全に自我は戻っていなくてぼうっとしていたけれど、とても温かい手をした優しい人でした!」

「そうか…!そうかァ…!」

 

不死川さんの瞳に涙が滲んだ。

 

「ありがとなァ…。炭治郎。」

「いえ!」

 

むしろ、お礼を言うのはこちらの方だ。

 

きっと炭治郎は知らないだろう。

実弥にとって、炭治郎の言葉がどれほどの希望を与えたのか。どれほど嬉しい言葉だったかが。

 

 

 

 

 

**

 

炭治郎は、はぁと深いため息を吐く。

蝶屋敷での療養にて、だいぶ身体も回復した炭治郎達は機能回復訓練に励むこととなった。

けれど、カナヲには勝てることなく、善逸と伊之助は訓練に来なくなってしまった。

 

ビショビショになった顔を手拭で拭う。

 

「待ってくれよ。兄貴。話を聞いてくれ。」

「うるせェ。俺には聞く話なんてねェ。」

 

ふいに声がした。

蝶屋敷の廊下の突き当り。二人の言い合う姿が見える。

あれは不死川さんと…、もう一人はたしか最終選別で会った…

たしか、すみちゃんが名前を教えてくれた…。えーと、そうだ!不死川玄弥!不死川さんと同じ名字の人だ!あの人、不死川さんの弟だったんだ…。知らなかった…。

 

「いい加減、しつけェんだよ。テメエはよォ。俺にはテメエみたいな弟はいねェ。馴れ馴れしく話かけんじゃねェ。それからテメエは見た所、何の才覚もねェから鬼殺隊辞めろォ。呼吸も使えないような奴が剣士を名乗ってんじゃねェ。」

「……そんな…。」

 

不死川さんからはすごく怒ってる匂いがする。二年前、あの雪の中で初めて会った時よりも濃い怒りの匂い。

玄弥を意に返すこともなく、不死川さんはさっさと歩き出す。

 

「まっ…待ってくれよ。兄貴。俺はずっと兄貴の力になりたくて。約束したよな。ずっと一緒に母ちゃんと弟妹達を守ろうって。」

 

それでも不死川さんの足は止まることはない。

 

「俺…鬼を喰ってまで…戦ってきたんだぜ…」

 

瞬間。ビリビリと鋭い殺気が空気を震わせた。

 

「何だとォ?今何つった?テメエ……。鬼をォ?喰っただとォ?」

「玄弥!」

 

間一髪の所で玄弥を庇う。蝶屋敷の障子が何枚か壊れた。

 

「やめてください!不死川さん!」

「どけェ。炭治郎。テメエには関係ねェだろォ。」

 

 

指を鳴らす兄貴の姿を玄弥は呆然と見つめる。

なんで…。どうしてだよ…。兄ちゃん…。

 

 

 

 

**

 

玄弥にとってあの日のことは、今でも鮮明に記憶に焼き付いて離れない。家族の幸せを壊されたあの日のことを――。

 

あの日。夜が明けようとしても帰ってこない母ちゃんとそれを探しに行った兄ちゃんを俺達は家で待っていた。

ふいにひどく扉を叩きつける音がした。

扉が開け放たれると同時に、玄弥の顔が何かに爪で切り裂かれた。一体、なんだ…?獣か…!?

 

「真菰!家族を頼む!」

「わかった!任せて!」

 

そこには俺達を守るように二人の男女が立っていた。

男が獣を外へと連れ出す。

突然のことに何が何だか分からなかった。

 

ふいにフッと優しく誰かに抱き締められた。

それは俺達を守ってくれた花柄の羽織を着た女の人だった。

温かい…。母…ちゃん…。

ずっと張り詰めていた緊張が解かれるかのように玄弥はそのまま意識を落とした。

 

 

 

 

それからしばらくして。

玄弥はパチリと目を覚ました。

知らない天井。知らない部屋。ここはどこだ…?

母ちゃん…。兄ちゃん…。就也。弘。こと。貞子。寿美…。

 

ガバリと起き上がる。

そうだ。俺はたしか…。

 

「あ!目を覚ましたんだね!よかった~!ね。義勇!」

「…ああ。」

 

そこには、俺達を助けてくれた、右半分が小豆色の無地・左半分が亀甲柄に分かれた羽織を纏い、後ろで髪を束ねた凪いだ蒼い瞳を持つ男の人と、花柄の羽織を身に纏ったほわほわとした可愛らしい雰囲気の女の人がいた。

 

「「「「「玄弥兄ちゃん~!!」」」」

 

ガバッと勢いよく抱き着かれる。弟妹達だった。

 

「よかった。お前達、無事だったんだな…。」

「うん…!うん…!」

 

ギュッと抱き締め合う。自然と涙が零れてきた。

 

 

 

ようやく落ち着いた頃。

俺達を助けてくれた人は冨岡義勇さんと鱗滝真菰さんといった。

彼らから話を聞いた。

鬼のこと、鬼殺隊のこと。そして、母ちゃんが鬼となったことも、兄ちゃんが母ちゃんを元に戻すために、俺達を守るために、鬼を狩るために鬼殺隊に入ったことも。

 

俺達はそれから義勇さんの屋敷で世話になった。

母ちゃんも兄ちゃんもいなくなってしまって、現実を中々受け入れられず、気落ちしていた弟妹達も義勇さん達と過ごす内に元気を取り戻すようになった。

 

 

 

――それから数年後。

 

「兄ちゃん!」

 

兄ちゃんが風柱となって、俺達はまた一緒に暮らせるようになった。

嬉しかった。幸せだった。

けれど。

任務を終えた兄は、毎回血を流して帰って来た。

いつか本当にどこかもっと遠くへいなくなってしまうんじゃないかと気が気でなかった。

 

だから、兄ちゃんの力になるためにも俺は鬼殺隊に入りたかった。

そして何より、兄ちゃん一人に全てを背負わせていることが何よりも辛かった。

 

『これからは俺とお前でお袋と弟たちを守るんだ。』

 

かつて交わした約束が脳裏を巡る。

 

 

義勇さんに頼み込んで修行をつけてもらった。

けれど、俺には才能がなかった。呼吸も使えなかった。

そんな時だった。鬼喰いのことが分かったのは。

これで強くなれる。兄ちゃんの力になれる。鬼殺隊に入れる。そう思った。

けれど、義勇さんはいい顔をしなかった。止めるように何度も勧められた。俺は止める気はなかった。やっと得た力だったから…。

 

義勇さんは優しい人だった。

悲鳴嶼さんを紹介してくれたし、胡蝶さんに身体を診てもらうことを勧めてもくれた。

義勇さんは鬼喰いは反対したけれど、兄ちゃんのために力を得ようとしたことを否定することはなく、才能もない俺に変わらず修行をつけてくれた。

 

そして、俺は最終選別を突破し、鬼殺隊の一員となることができた。

嬉しかった。これで俺も兄ちゃんの力になれる。一緒に母ちゃんと弟妹達を守れる。

俺は兄ちゃんに嬉々として報告しに行った。

喜んでくれると思った。なのに…。

 

『テメエみたいな愚図、俺の弟なんかじゃねェ。鬼殺隊なんかやめちまえ。』

 

なんで…。なんでだよ…。兄ちゃん。なんでそんなこと言うんだよ…。

 

 

 

 

 

**

 

「…………。これは一体、何があった。」

 

蝶屋敷を訪れた義勇は思わず呟いた。

そこには、どデカいたんこぶを頭にこさえた実弥、玄弥、炭治郎。そしてドス黒い笑顔を浮かべて仁王立ちになっているカナエとしのぶ。彼らの周りで泣きじゃくる不死川家の弟妹達。

これは何事だ…?

 

「義、勇……!」

「どうした。」

 

泣いてこちらに縋りついてきた不死川家の弟妹達を宥める。

彼ら曰く。周りを盛大に巻き込んだ実弥と玄弥の兄弟喧嘩。そして、それをカナエとしのぶに咎められ彼らはお灸を据えられたのだという。

 

義勇は思わず頭を抱えたくなった。

実弥の心情も、玄弥の想いも理解しているから尚更に。

 

「カナエ。しのぶ。空いてる部屋はあるか。」

「あるけど。どうしたの?冨岡くん。」

 

「実弥。玄弥。お前達だけに話がある。着いてこい。」

「あァ?俺は別にテメエと話すことなんて…」

「俺が玄弥の『記憶』を見たと言ってもか。」

「!!」

 

ガッと実弥に胸倉を掴まれる。

 

「おい!義勇ゥ!そりゃあどういうわけだァ!!なんで玄弥がッ!!」

「実弥。お前が玄弥を大切に想うからこそ命の危険のある鬼殺隊にいてほしくないのは分かる。だが、兄を想う玄弥の気持ちも汲んでやれ。」

「…………。」

 

その言葉にユルリと掴まれていた手が放された。

実弥の唇は、ギリッと血が出そうになるほどに噛み締められていた。

 

「兄ちゃん…。」

 

不安気な玄弥の眼差しが注がれる。

けれど、実弥は何も言うことはなく、ただ始終無言で義勇の後を付いて来るだけだった。

 

 

 

 

借りた部屋にて、義勇の見た玄弥の『記憶』について告げる。

 

上弦の壱との戦い。

玄弥の想い。実弥の想い。

互いに共通する守りたいという願い。

想いの先に行き着いた哀しい〝死〟という結末…。

 

「――――…以上が俺が見た玄弥の『記憶』についてだ。」

 

実弥も玄弥も何も言わなかった。ただ沈黙だけが支配した。

これで何かが変わるとは思えない。けれど、ほんの少しでも良い方向へ行けばいいと思う。

互いに大切に想う故にすれ違ってしまうのは、あまりにも悲しいから。

 

「お前達は一度、しかと話し合うべきだ。」

 

後は当人達の問題。ともあれ、俺にできるのは導くことぐらいだ。下手にでしゃばるものではない。

 

ただ上手くいくことを願う。

義勇はそっとその場をあとにした。

 

 

 

 

 

**

 

炭治郎は背を地に、はあはあと荒い呼吸を繰り返す。

全集中・常中。まさかそれがこんなにも大変なものだったとは…。

そういえば、あれから玄弥と不死川さんどうなったかな…。仲直りできていたらいいけど…。

 

「よぉ。大丈夫か。」

「わっ。玄弥!!」

 

ガバリと起き上がる。玄弥もその隣に座った。

 

「悪かったな。いろいろと巻き込んで。」

「いや、そんな…。」

「これ、兄貴から。」

 

風呂敷包みを渡される。中身はおはぎだった。

 

「あ。仲直りできたんだね!良かった!」

「ああ。」

 

玄弥と二人並んでおはぎを食べる。

 

「選別の時は悪かったな。俺、早く兄貴の力になりたくて焦ってイライラしてたからよ。お前にもお館様のご息女にもひどいことしただろ。」

「気にしてないよ。俺も玄弥の腕折っちゃったし。お互い様!」

「そうか…。」

 

それから玄弥とはしばし話をした。

不死川さんの話がほとんどだった。玄弥は本当にお兄さんのことが大好きなんだなぁって分かる。

仲直りできて本当によかった。やっぱり義勇さんはすごいなぁ。

 

「これから兄ちゃんが稽古つけてくれるんだ。炭治郎も頑張れよ!」

「うん!」

 

そう言って玄弥は帰った。玄弥からはとても嬉しそうな匂いがしていた。

 

 

 

 

 

**

 

蝶屋敷の屋根の上。

座禅を組み、瞑想しながら炭治郎はヒュゥゥウウと呼吸を繰り返す。

 

「頑張っているのね。」

 

ふわりと優しい花の香りがした。

思わず声につられて顔を向ければ、そこには長い髪の左右に蝶飾りをつけた綺麗な女の人がいた。

 

たしか、花柱の胡蝶カナエさん…。

あの裁判で禰豆子が人を襲わないことに賛成してくれた人だ。

 

「訓練頑張ってくれて嬉しいわ。それは必ず君の力になるものだから。辛いかもしれないけど、諦めないでね。」

「はい!頑張ります!」

 

クンとカナエの匂いを嗅ぐ。

 

「なんだかいいことでもありましたか?カナエさんから嬉しそうな匂いがするから…。」

「あら。炭治郎くんは本当に鼻がいいのね。」

 

ふふっとカナエさんは朗らかに笑った。

 

「私ね。ずっとある夢があったの。」

「夢、ですか?」

「そう。鬼と人が仲良くする夢!だから嬉しいの。禰豆子ちゃんのような優しい鬼がいてくれて。」

「そうなんですね…!」

 

「炭治郎くん。頑張ってね。」

 

それは月に溶け入るかのようにとても美しい笑みだった。

カナエさんは、そう言ってサッと姿を消した。

信じてくれる人がいる。そう思うだけで力が湧いてきた。

 

 

――それから十日後。

俺は無事常中を達成でき、瓢箪を割れ、カナヲにも勝つことができた。

身体が変わったのを感じる。強くなってる。

早く刀を振りたい。よりたくさんの人を救うためにも。

 

 

 

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