大丈夫でしょうか。もし、そう思われる方がいらっしゃれば、該当箇所は削除するか、差し替えを行います。
鬼滅の刃、終わってしまいましたねぇぇええ!!
毎週の楽しみが…!ショックでなりません。
でも、炭カナ・ぜんねず・伊アオの公式化は素直に嬉しかった。
ところで、ぜんねずが公式で来てくれたのは嬉しいんだけど、だったら204話のさね←ねず描写は一体、何だったんだ…。
刀鍛冶の里を訪れた炭治郎。
探索していた森の中。
何やら揉めている二人の姿が見えた。
一人はひょっとこの面をつけた小柄な少年。ともう一人は――…。
確か柱の…。
裁判で伊黒さんと同じくらい禰豆子のことを猛烈に反対していた人。彼からは常に怒ったような匂いがしていた。
何て言ったっけ…。しのぶさんから聞いた名前…。あ。そうだ。たしか―…
――霞柱 時透有一郎。
有一郎君が少年の胸倉を掴んだ手を止める。
その手はビクともしなかった。なんて力。俺とそんなに年も背も変わらないはずなのに…。
「うるさい。くだらない話につき合ってる暇はない。」
ドンッと首に手刀が落とされ、ぐるりと意識が暗転した。
誰かの声がしていた。
この声…。先ほどの少年の声に、鋼鐵塚さんの声…、それから――…。
―…郎。炭治郎。
「炭治郎。」
この声…。
「義勇さん?」
パチッと目を開け、起き上がる。
そこには先ほどの少年の姿と義勇さんの姿があった。
「ああ。大丈夫か。」
「あ、はい。あれ?今、ここに鋼鐵塚さんがいたような…。」
「いえ。いなかったですよ。」
「そうか。気のせいか…。」
たしかに声がしたと思ったんだけどなぁ。けど、この子が言うならそうなのかな。意識も曖昧だったし…。
「そういえば、義勇さんはどうしてここに…?」
「ああ。俺も刀の調整に来た。それより小鉄に話は聞いた。炭治郎。小鉄。二人とも。有一郎が済まない。代わって謝罪する。」
「いえ!義勇さんが謝ることじゃ…!」
「そうですよ!気にしないで下さい!あなたは全然悪くないですから!」
頭を深く下げ続ける義勇さんを小鉄君と二人して、あわあわと止める。
「そうか…。」
義勇さんがやっと顔を上げてくれたことに、二人してホッとした表情を浮かべた。
ふいにガキィンと物凄い音がした。
小鉄君に案内された先には、六本の腕を持つ耳飾りの剣士の戦闘用絡繰人形と戦う有一郎君の姿。
あの絡繰人形の顔…。どこかで…。
「縁壱…。」
ポツリと義勇さんの呟く声が聞こえた。
「え!?縁壱ってたしか始まりの呼吸の剣士の…。」
「ああ。顔はよく似ている。精巧に作られている。だが…。」
義勇さんは何やら有一郎君の戦闘の様子をジッと見つめながら深く考え込んでしまった。
それにしても、あの人凄いなぁ。見事な刀捌き。俺と年もそんなに違わないのに才能もあって…。
「ソレハ当然デスワ!!アノ子は〝日ノ呼吸〟ノ使イ手ノ子孫デスモノ!アノ子ハ天才デスワ!!貴方トハ次元ガ違イマスノヨ!!」
下から声がした。
そこには、一羽の鴉の姿。有一郎君の鴉かな。
「あの子はそんなに凄い人なのか…。でも日の呼吸じゃないんだね使うの…」
「オ黙リナサイ!!自分ガ日ノ呼吸ノ使イ手ダカラッテ調子二乗ラナイデ下サイマス?貴方ナンテ、マトモ二日ノ呼吸ガ使エナイクセ二!!」
「ウッ。」
心に鋭く突き刺さるものを感じた。
有一郎君の鴉に引っ張られた頬も痛い。
「コレコレ…。アマリ若者ヲ…イジメルデナイ…。」
ヨボヨボと頼りなく震えた鴉が義勇さんの腕に止まる。
「寛三郎。戻って来れたのか…。」
「義勇…。朝餉ノ時間ジャ…。」
「それはもう終わっただろう。」
「ム…?ソウジャッタカノウ…?」
「あの…。その鴉、義勇さんの鴉なんですか…?」
「ああ。」
優しくお爺ちゃん鴉を撫でる義勇さんの姿はなんだか和む。
けど、だいぶ年でボケているように思う。大丈夫かな…。
有一郎君の鴉に引っ張られた頬をさする。
「ハッ!思い出した夢だ!!俺、縁壱さんを夢で見た!!」
「オ馬鹿サンジャアリマセンコト?貴方ニモ水柱ノヨウニ『過去ト未来ノ悲シミト死ノ記憶』ガ夢デ見レルッテイイマスノ?」
「うっ…。それはできないけど…」
「ホラゴ覧ナサイ。」
フンッと有一郎君の鴉が鼻を鳴らす。
その言葉に炭治郎は沈んだ。
「なんかごめん…。俺おかしいよね……。」
「いえいえ!!」
小鉄君曰く。それは先祖の記憶の遺伝ではないかと。生き物は記憶も遺伝し、炭治郎は先祖の記憶を夢という形で追体験しているのでは、と。
「…やはり、か。」
それまで喋ることなく、有一郎君の修行の様子を見ながら、何やら深く考え込んでいた義勇さんがポツリと言葉を漏らした。
「義勇さん…?」
瞬時に義勇さんの姿が掻き消える。
「え…」
そして、次の瞬間には有一郎君の刀を止めていた。
すごい…。全く見えなかった…。
「何の真似だ。義勇。」
「有一郎。先ほどから様子を見ていたが、これ以上やっても時間の無駄だ。」
「何。」
「この絡繰人形は縁壱を原型にしたと聞くが、縁壱には遠く及ばない。一辺倒の動作しかしていない。」
ギクリと小鉄君の肩が跳ねた。なんだか焦ったような匂いもしている。どうしたんだろう…?
「着いて来い。俺がお前の相手になる。俺の日の呼吸は到底縁壱に及ぶものではないが、それでもその人形を相手にするよりはいいと思う。」
「ああ。ありがとう。」
有一郎君は弾むように、とても嬉しそうな匂いをさせていた。
「それから小鉄と炭治郎には謝っておけ。お前が余裕のないのは知っているが。それが相手を蔑ろにしていい理由にはならない。」
「…分かった。」
有一郎君はクルリと俺達に向き直る。
「…悪かった。」
義勇さんに言われての渋々感が隠せてない。
小鉄君もフンッと鼻を鳴らせて怒ってるし…。
言うことは言い終えたと言わんばかりにさっさと有一郎君は義勇さんの後をついて行った。
そこは、森の中の開けた場所だった。
二人が刀を構える。見ているこちらにまでピリピリと緊張感が伝わってくる。
二人が動く。
――【霞の呼吸 弐ノ型 八重霞】
――【日の呼吸 拾壱ノ型 日暈の龍 頭舞い】
――【霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り】
――【日の呼吸 参ノ型 烈日紅鏡】
瞬時に切り替わる激しい攻防。
「すごい…。」
そんな陳腐な言葉しか浮かばないほどに圧巻だった。
ふいにそれまでジッと見ていた小鉄君が急に走り出した。
「小鉄君!!」
匂いで後を追う。
小鉄君がいたのは、絡繰人形が鎮座している場所だった。
小鉄君は絡繰人形の動きを何やら調節していた。
「炭治郎さん。これで修行して、あのクソ生意気なガキよりも強くなってくださいね……!!全力で協力しますので…!!」
その後、義勇さんと有一郎君の姿に奮起させられた小鉄君の純真さ故の暴挙とも言うべき修行により、三途の川を渡りかけた炭治郎であったが、そのおかげか匂いにより相手が次に狙ってくる場所が分かるという動作予知能力を獲得するのだった。
**
夜の闇に月が輝いていた。
のんびりと長湯をしていた一人の刀鍛冶は道端に一つ不自然に置かれた壺を見つけた。
「危ねぇなあ。誰だ。こんな所に壺なんか置いて…」
スッと壺に触れようとした時のことだった。
「その壺に触れるなッ!!」
「み、水柱殿!?」
突然の怒号に伸ばした手をヒュッと引っ込める。
――【水の呼吸 壱ノ型 水面斬り】
一閃が壺を真っ二つに割る。
けれども、次の瞬間には別の場所に壺が現れる。
…中々に面倒な血鬼術だ。
「よくぞ気づいたなあ。おや。貴様、幾度となく上弦を追い詰めた柱ではないか。これはいい。あの方が望んでいる。貴様の死を。ヒョッヒョッ。」
壺から姿を現した両目部分に口、額と口部分に目があり、身体中から手を生やした異形の姿の鬼。
目の部分には『上弦・伍』と刻まれている。
「まさか…。そんな…。」
刀鍛冶の男から呆然とした声が漏れる。
それも当然か。鬼殺隊の者にすら場所を秘匿された刀鍛冶の里。
そこに鬼、まして上弦の鬼が襲い来るなど露ほどにも思わなかっただろう。
――【血鬼術『千本針 魚殺』】
――【水の呼吸 拾壱ノ型 凪】
迫り来る毒針を全て凪で打ち払う。
「み、水柱殿…」
「あなたは急ぎ事を里に知らせてくれ。」
「は、はい…!」
走り去る刀鍛冶の姿を確認する。
「ヒョヒョッ。私の毒針を全て打ち払うとは中々やりますねぇ。さすがは柱。どんな作品にしようか胸が躍」
義勇はそんなことなどどうでもいいと言わんばかりに話の途中にもかかわらず、玉壺に向かって刀を振るった。パリンと再び壺が割れる。
「私の話を遮ったばかりでなく、一度ならず二度までも…!よくも斬りましたねぇ。私の壺を…。芸術を!!審美眼のない猿めが!!」
「貴様の悪趣味な芸術など微塵も興味がない。」
皆が穏やかに過ごす傍ら。静かに戦いの幕は開ける。
**
炭治郎は鋼鐵塚さんを待ちながら、仰向けになって寝そべっていた。
「やぁ。」
ふいに炭治郎を覗くように一つの顔が見えた。
長い髪を両側で結んだ穏やかな表情の少年の姿。
「わぁ!」
思わず、ガバッと一気に起き上がる。
「あ。驚かせてごめんね。けど、君、反応が鈍すぎると思う。そんなんじゃ君、すぐ死んじゃうよ。」
「いやいや!敵意があれば気づきますよ。そんな。」
「まぁ。同じ鬼殺隊の隊士に敵意は向けないけど。」
有一郎君と同じ顔。
有一郎君の双子の弟。同じ霞柱の時透無一郎くん。
けれども、彼から感じる匂いはいつも怒ったような匂いをさせている有一郎君とは違って、どこか掴み所が無く、穏やかで優しいものだ。
「ねぇ。君。鉄穴森さんっていう僕の新しい刀鍛冶知らない?」
鉄井戸さんが心臓の病で亡くなってしまって、僕の担当の刀鍛冶は鉄穴森さんへと変わった。
鉄井戸さんが亡くなってしまったことはとても悲しかった。
けれども、義勇さんと同じ担当の刀鍛冶に刀を作ってもらえることを誇りに思った。鉄井戸さんにも、義勇さんにも恥じない自分でありたいと強く願う。
「鉄穴森さんは知ってるけど…。多分、鋼鐵塚さんと一緒にいるんじゃないかな?一緒に捜そうか?」
「僕に構うよりも、君には君のやるべきことがあるんじゃないの?」
「大丈夫。俺も行こうと思ってたから、ちょうどいいんだよ。それに、人のためにすることは結局、巡り巡って自分のためにもなっているものだし。」
「…………。」
穏やかな表情。同じ赤い瞳。同じ言葉。大切な面影が重なった。
「やっぱり似てるね…。」
「え?」
「炭治郎。僕の父も君と同じ赤い瞳の優しい人だった。」
「無一郎君のお父さんが…。」
「うん。肺炎で苦しむ母さんのために嵐の日に薬草を採りに行って崖から落ちて死んでしまったけれど。」
「あ…。」
人は脆く儚い。
たとえ、それが鬼のせいでなくとも、簡単に死んでしまう弱い生き物だ。
「兄さんはずっとそんな父さんを罵ってた。馬鹿だって。」
「無一郎君…」
スッと無一郎君の手が炭治郎の首元に触れた。
「義勇さんから聞いた。兄さんがごめんね。けど、兄さんを責めないであげてほしい。たしかに兄さんは言葉のきつい人だけど、誰よりも優しい人だから。」
「うん。分かるよ。」
有一郎君はいつも怒ったような匂いをさせていたけれど、同時に奥底で優しい匂いもしていた。
それはどこか実弥さんから感じた匂いと似ていた。
「炭治郎なら兄さんを変えられるかも…。」
「え?」
ポソリと告げられた言葉はよく分からなかった。
「ううん。なんでもない。頑張ってね、炭治郎。応援してるから。」
「ありがとう!」
ニコッと屈託なく笑う無一郎君につられるようにして炭治郎も笑顔を浮かべた。
「カ…カア……。」
ふいに一匹のヨボヨボと年老いた一匹の鴉が窓から入ってくる。
たしか、義勇さんの鴉の…。
「寛三郎さん。また迷ったの?」
「有一郎…。」
「僕は無一郎だよ。僕と兄さんは双子だから間違うのも無理ないことかもしれないけど。」
義勇さんの鴉を腕に止まらせ、無一郎君が静かに告げる。
それは随分と慣れたものだ。きっと、こういうことは初めてじゃないんだろうなぁ…。
義勇さんの鴉は荒い呼吸を繰り返している。それはこちらの方が心配になるほどに。大丈夫かな…。
「里ヲ上弦ノ鬼ガ襲撃…。義勇ガ上弦ノ伍ト戦ッテイル…。」
「「!!」」
その言葉に両者共に刀を持ち、立ち上がった。
**
ふいに気配を感じた。
襖が開かれる。そこにいたのは角が生え、額に大きな瘤を持つ涙を流し怯えた小柄な老人の鬼の姿。
無一郎でさえも、目視するまで鬼と認識できなかった。
裏返っているのか目には数字を確認できない。けれども、その気配のとぼけ方の巧さ。間違いなく上弦の鬼…!
残る上弦の内、弐と参は容姿・能力共に判明している。
上弦の伍は義勇さんが相対している。伍よりも格段に強い上弦の弐と無惨を追い詰めたことのある彼のことだ。そう易々とやられる筈もない。
ならば、残る上弦の内の壱か肆のどちらか。
けれども、この鬼は気配を隠す巧さには瞠るものがあるが、そこまでの威圧感は感じられない。しかれば、この鬼は上弦の肆…!
――【霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り】
無一郎、続いて炭治郎と禰豆子が攻撃を仕掛ける。
こちらでも新たな戦いの幕が開ける。
**
新たに現れた六体目の鬼。憎しみを具現化した姿。
その鬼の召喚した木の竜が炭治郎達の身体を圧迫する。
苦しい。技を出さなければ…。けど、身体が押しつぶされて…
ふいに圧迫感が無くなった。
「邪魔だ。お前ではこの鬼に勝てない。下がってろ。」
「有一郎君!」
有一郎君の攻撃が『憎』の鬼の攻撃を切り裂く。
凄まじい技の応酬。攻防。
有一郎君の刀が鬼の頸を捉えた。速い。
有一郎の視界に鬼が攻撃へと転じようと口を開けているのが見える。
何をしようとしているのか知らないけど、その前に頸を斬ってしまえば関係ない。
「有一郎君。そいつは本体じゃない!!頸を斬っても死なない!!」
――【血鬼術 『狂圧鳴波』】
鬼の衝撃波が有一郎を襲う。
しまっ…!!
「ガハッ…!」
鬼の拳が迫るのがやけにゆっくりと見える。
炭治郎達が何やら叫んでいるのが遠くで聞こえた。
ああ。駄目だ。俺は死ぬ。
『自分の終わりを自分で決めたらだめだ。』
炭治郎…?
いや。違う。とてもよく似ているけれど、炭治郎じゃない。その赤い瞳、優しい面影…。父さん…。
『絶対どうにかなる。諦めるな。必ず誰かが助けてくれる。』
結局、人任せかよ。そんなんだから、死んじゃうんだ。
誰も俺を助けられない。
どれだけ善良に生きてたって誰も助けてなんかくれない。自分も。大切な人も。
だから、俺がやらなきゃならない。
けど、俺は無一郎や義勇のような選ばれた人間じゃない。
死に物狂いで努力するしかなかった。俺には余裕なんて持つ暇がなかった。
俺がしくじったせいで皆死ぬ。俺はいつも守れない。選ばれた人間じゃないから。
『有一郎は間違ってない。大丈夫だよ。』
大丈夫なわけないだろ。しくじったから死ぬんだ。
ドサリと庇うようにした炭治郎達の姿が見えた。
なんで…。
「希望の光だ!!絶対に死なせたりなんかしない。みんなで勝とう!!誰も死なない。俺たちは…」
『託されたものを繋げ。』
かつて義勇に言われた言葉が脳裏にこだました。
『人のためにすることは巡り巡って自分のためになる。』
うん。
父さん…。義勇…。無一郎…。
今なら、俺にも分かるよ。
ありがとう。炭治郎。
――【霞の呼吸 伍ノ型 霞雲の海】
鬼の攻撃を切り裂く。
視界が鮮明に見えた気がした。
身体が熱い。
想いに呼応するかのように有一郎の顔には痣が覆っていた。
**
鬼を斬る。
身体が灰となって消え去っていく。
刀鍛冶の人に促されて、後ろを見やる。
そこには、日の光に灼かれることなく立つ禰豆子の姿があった。
目も牙も鬼のもののままだけれども、人間に戻ったわけじゃないけれども、たしかに日の光の下で禰豆子は歩いている。
そのことに、炭治郎の瞳から自然とボロボロと涙が零れ落ちていく。
ギュッと禰豆子を抱き締める。よかった。本当に無事でよかった。
ふいに炭治郎と禰豆子を包み込むように優しい抱擁を感じた。
「炭治郎。禰豆子。」
「義勇さん…。」
「よく頑張ったな。お前達は凄い子だ。」
義勇さんの瞳からも涙が零れていた。
優しい温もりに包まれながら、声を上げて炭治郎は泣いた。
優しい日の光がどこまでも炭治郎達を照らしていた。
――禰豆子が太陽を克服し、それから数日が経った頃…。
風柱邸。
そわそわと一人の少年が忙しなく室内を歩き回っていた。
「もう!いい加減、落ち着きなさいよね。就也!」
「そういう貞子だって。さっきから、少しも針仕事進んでないじゃん!」
「う。」
他の不死川家の弟妹も似たり寄ったりで、皆、一様にそわそわと落ち着きを失くし、目の前のことに集中できていない。
それは、とある一通の手紙によるものだった。
猫を介して届けられた珠世からの手紙。そこには母が自我を取り戻したこと、無惨の支配からも解放され少量の血で生きていられることが記されていた。
ならば、家族と共に暮らしても、もう大丈夫だと判断され、母は現在、家族の暮らす風柱邸へと向かって来ていた。
「まだかな?まだかな?」
「もう。ホントしょうがないんだから。」
窘める声にも嬉しさが隠されていなかった。
コンコンと扉を優しく叩く音がする。
あの時とは違う優しい母のものだ。
扉を開ける。目と牙は鬼のもののままだったけれど、そこには確かに優しい母の姿が存在していた。
「ただいま。迷惑かけてごめんね。みんな。」
「「「「「「「母ちゃん!!」」」」」」」
ギュッと皆で母と共に抱き締め合う。
ああ…。
ずっと待ち望んでいた。この日が来るのを。
いつまでも優しい温もりの中、抱き締め合っていた。
やっと戻れた…。
無惨に壊されてから、それでも願っていたのはたった一つのこと。
もう一度、家族皆で再び一緒に暮らしたい。
ただ純粋な想いだけだった。
やっと叶ったんだ…。
失ったものもあるけれど、そこには確かな幸せな家族の形が存在していた。