凪は日輪と共に   作:蜜柑凪

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今回の話はオリキャラが登場します!


第肆話 柱

義勇が鬼殺隊の隊士となって早二ヶ月が経過した。

現在、義勇は再び産屋敷邸へと訪れていた。

座敷の上に坐すお館様と向かい合う。

 

「義勇。君に『水柱』を任せたいと思う。任されてくれるかな。」

「御意。」

 

義勇は静かに一礼する。

今日この日。鬼殺隊史上最年少の柱が誕生した。

 

 

 

 

 

拝命を受けた義勇は産屋敷邸を後にする。

門の前には、錆兎と真菰が待っていてくれた。

 

「おめでとう。義勇。」

「おめでとう!姉弟子として誇らしいよ。」

 

出てきた義勇の姿に、それぞれ祝いの言葉をかけてくれ、錆兎は頭を撫でて、真菰はギュッと抱き締めてくれた。

 

「ありがとう。錆兎。真菰。」

「さ!鱗滝さんにも会いに行こう!首を長くして待っててくれてるよ!」

「ああ。」

 

我が事以上に嬉しそうな錆兎と真菰の姿に、自分も幸せだと感じる。

けれども、どこか分不相応ではないかとも思う。そんな想いをまた口に出せば再び殴られそうだが。

 

 

 

――…事の起こりは二日前。

錆兎と共に鬼を倒し、任務を終えた帰りのことだった。

義勇の鴉が産屋敷からの、とある手紙を持ち帰った。それは義勇を『水柱』へ任命するという内容のもの。

義勇はこの内容に一瞬、呆気に取られた。

水柱に相応しいのも、なるべきなのも錆兎だと思っていたからだ。

たしかに自分は柱の条件である鬼の五十体討伐は達成していた。

けれども、たくさんの命が義勇の手から零れ落ちた。

『夢』を見る。その度に動こうとも届かないこともあった。知っているのに助けられない。

義勇は鴉から言い渡される指令を休み無く熟した。各地を走り続け、超速で処理をしていく。

それは自分が動くことで少しでも救える人がいるようにと。

気付いたら鬼の討伐数は優に五十は超えていた。

だが、自分の力は所詮紛い物だ。『記憶』の後追いでしかない。

実力もない。柱となっていい人間じゃない。資格もない。

水柱となるべきなのは錆兎だと。

 

そう思ったし、実際口に出していた。

そうしたら殴り掛からんばかりの剣幕で錆兎に怒鳴られた。実際、頬を殴られた。

それからはもう、すったもんだだった。互いに殴られれば殴り返し、端正で整った顔立ちは見る影もなく青痣だらけのボコボコになっていた。

「お前の方が水柱に相応しい」と互いに譲らぬ猛攻。

 

「義勇。お前は強い。『記憶』があろうと関係ない。お前に救われた者はたくさんいる。それはお前の力だ。他の誰でもないお前が…自分自身を冒涜するな。」

 

その言葉になぜか心にストンと落ち着くものがあったのだ。

それなら、錆兎が継子になってくれるなら、としぶしぶながらに了承した。

 

ちなみに、この事の顛末を知った真菰からは盛大に呆れられた。

加えて「錆兎が継子になるなら私も~!」と半ば強引に了承させられたのは記憶に新しい。

 

けれど、まぁ再び三人でいられることは何よりも嬉しかった。

少しは自分を誇っても、認めてもいいだろうか。

 

 

 

 

 

**

 

義勇は皆の待つ狭霧山の道を急ぐ。随分と遅くなってしまった。きっと皆、待ちかねているだろう。

『柱』への就任が終わり、じゃあ皆で鱗滝さんの所へ…となった時、義勇に急遽指令が入ったのだ。

片付けて、すぐ向かうと二人には言い、先に鱗滝さんの所へと行ってもらった。

もちろん任務はすぐに終わった。けれど、年老いた自分の鴉があらぬ方向へ行くものだから、それを捕まえていたらこんな時間になってしまった。

そのことについては、しばし錆兎から苦言を訂されている。新しい鴉に変えてもらった方がいいんじゃないか、と。

俺としては特に変えるつもりは毛頭ない。まぁ、伝達を間違えるし、戦闘中にトコトコ出て来てハラハラさせるが、あいつは大切な友であり仲間だ。変わりはいない。

 

 

 

 

狭霧山への道なりを行く。

 

「おい。そこの若いもんや。」

 

ふいに声がした。

バッと振り返れば、そこには地に腰かけている一人の小柄な老人がいた。

いつからそこにいたのか。全く気配を感じることができなかった。

この人は一体…。

 

「すまんが、この先に用があるんじゃが、生憎と儂は腰をやってしもうてな。ちょいと目的地までおぶってくれんか。」

 

そう言って老人が指差す目的地は義勇と同じ狭霧山へと向いていた。

スッと義勇は静かにしゃがみ、老人に背を見せた。

老人を背負う。

 

「すまんな。」

「いや。」

「そう言えば、お主、名は…?」

「冨岡義勇。」

「そうか。そうか…。やはりお主が…」

 

老人は何やら思案気に、それでいて、どこか感慨深げに優しい笑みを浮かべていた。

この人は義勇を知っているようだ。

加えてこの人の目的地も狭霧山。やはり鱗滝さんの知り合いだろうか。

 

そうしない内に鱗滝さん達の待つ家へと着いた。

 

「おお…。ここじゃ…。わざわざ、すまんな。礼を言う。」

 

懐かしそうに、それでいて優しげに老人の瞳が細められる。

やはりこの人の目的地も鱗滝さんの家だったようだ。

 

ふいにバンッと戸が開け放たれ、真菰、錆兎、そして鱗滝さんが待ちかねたかのように家から出てきた。

 

「もう義勇遅いよ~!!私達、ずっと待ってたんだからね!」

「すまない…。」

「謝ったからよし!あれ?義勇、その人は…?」

 

率先して真菰がぶうたれるが、ふいに義勇におぶわれていた老人の存在に気付いたようだ。

 

「ああ…。この人は…」

「ん?お前、佐竹か…?何故ここに…。」

「おお…。久しぶりじゃな。鱗滝。」

 

彼は俺の背から軽々と降り、鱗滝さんの下へと駆け寄った。

 

「鱗滝さんのお知り合いですか…?」

「ああ。この男は佐竹風太郎。元『風柱』。儂の盟友だ。」

「よろしくな。」

 

「「「よろしくお願いします。」」」

 

 

 

 

 

互いに挨拶を終えた俺達は家の中へと上がった。

 

「して、お前は何用で此処に来たのだ?」

「ん?何。ちょっとした様子見じゃよ。お主の自慢の弟子達にも会ってみたかったしな。」

 

彼は朗らかに笑った。

 

 

 

 

**

 

それから、元『風柱』の佐竹さんはしばしの間、滞在することとなった。

鱗滝さんは佐竹さんといるとき、俺達といる時とは違った気の置けないやり取りがあった。

そこには俺達の知らない鱗滝さんの姿があった。それは長年の友としてのものなのだろう。少し羨ましい。

 

彼は真面目で心優しい人だった。鱗滝さんによく似ている。

彼は、しばし俺達に稽古をつけてくれた。

さすがは元『風柱』というべきか。佐竹さんは強かった。

水とは違う風の動きは実にためとなった。

 

「お主ら、鱗滝は好きか?」

「はい!」

「もちろん!」

「………(コクリ)。」

 

フッと佐竹さんは笑った。

その笑みはどこか儚く、それでいて本当に嬉しそうなものだった。

彼もまた鱗滝さんを友として大切に思っていることが伝わってくる。

 

「そうか。これからも鱗滝の奴をよろしくな。」

「「「はい!」」」

 

 

 

 

 

儚く美しい真っ赤な夕焼けが照らす。

 

「それじゃあ、またな。鱗滝。達者でな。」

「ああ。お前もな。」

「佐竹さん。いろいろとありがとうございました。」

「何。大したことはしとらんよ。また何かあったら儂を頼るといい。いつでも力になるぞ。」

「はい。ありがとうございます。」

 

それを最後に佐竹さんの姿は夕日の中へと消えていった。

 

義勇はまだ知る由もない。

この出会いから数年後。再び彼の力を借りることを。

 

数奇な運命の輪廻の輪に彼も巻き込まれてゆくのだから。

 

 

 

 

 




実はこのオリキャラの性格を考えるのに難儀しました。
最初はちゃらんぽらんな性格にしていたのですが、読み返す内に「ん?」と思うようになりまして…。
で、結局真面目で優しい性格にしたというわけです。
そして、それで、ほとんど出来上がっていた話を大幅に修正するハメに…。
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