流星の配信者 作:メテオG
今回はかなり息抜き回です。配信ものなのに配信要素が減ってる気がしたので急にぶちこみます。平和。
さて、彼が人の意識のデータという、非常に扱いに困るものを手に入れてから更に数日が経過した。と言っても、何か変わったことがあった訳はなく。強いて言うなら、意識データは消すことなく、彼のスマホが重くなったままなくらいだろうか。
「はい、皆さんお久しぶりだね、ロックマンだよ」
《わこつ》《生きとったんかいワレェ!!》《大体二、三週間ぶりくらいの配信か》《久々に見たわ、今日は何するの?またノイズ狩り?》《作るか壊すかどっちかしか出来ない男じゃん》《今回背景違わない…???》《妙にサイバーチックだな》《なんつーか現実感ない場所だな、ロックマンが全身映してるのも初めてじゃないか》
「君ら相変わらず賑やかだな。今日は久々の配信だし趣向を変えて、電子の海からお届けするよ」
《???》《こいつは何を言っているんだ…?》《電子の海ってどういうことよ》《ロックマン以外、特にチラッと見えてる空見てみ。明らかにおかしい》《空なのに雲も太陽もないし色が緑…どっかのオープンワールド?》《3Dモデルを動かしてるだけでしょ》《そうだとしたらロックマンがリアル過ぎる》《え、なに??いつの間にロックマンVtuberになったわけ?》《草》《ノイズを狩るVtuberが居て堪るか》《赤バイザーかっけぇ》
「いやほら、僕は電波体だからさ。インターネットの中にも入れるんだわ」
《【速報】ロックマン、また訳の分からないことする【意味不明の男】》《おめーポリゴン数が異様なんだよ》《キャプチャとは思えんくらい生々しい動きだしな…え、なに?インターネット?》《この第三者視点、誰が撮ってるんだ?》
そして彼は今、久々にロックマンとして配信活動を行っていた。やっとフィーネ戦での疲労やダメージが抜け、電波変換を行っても大丈夫なくらいに回復したのだ。今回の配信は、ロックマンのリハビリも兼ねている訳である。更に今までの配信と違うのは、彼の身体は今現実世界になく、電脳世界で配信を行っているという点。今彼が居るのは自身の持つパソコンの電脳だ。コメント欄は阿鼻叫喚である。彼はそれを見て爆笑していた。
《笑っとんやないぞ》《このロックマンに振り回される感じ…嫌いじゃないわ!!》
「いや、面白いなって。言っとくとこれは3Dモデルじゃないし、オープンワールドとかでもないよ。ここは電脳世界、よくあるインターネットの世界さ」
《あるあ…いやねーから》《新出用語ばっか出すなサムライ8じゃねーんだぞ》《選出が古すぎる》
《インターネットの世界とか今の科学でも何もかも無理なもん出してくるな》《いやでもロックマンだぜ…?》《初回配信で宇宙に居た奴だしな…》《そま?》《マジマジ。IPアドレスもどういうわけか宇宙からだったぞ》《初回配信から見てるやつとか猛者すぎんか???》
「ということで今回はこの電脳世界を渡り歩きながら雑談配信してくよ」
《コメントを無視するのは草》《お前の説明を全視聴者が求めてる》《何がどうなってるのかな》
爆速で流れるコメントを無視して歩き出した彼。彼は自身のPCの電脳世界から、リディアン等がある町の電脳世界へと移動する。そして説明を求められた彼は、本当に仕方がないと言った顔で口を開く。
「コンピュータネットワークによって構成された仮想空間、それが電脳世界だよ。不思議なことに現実世界に対応した形になってたりするんだよね」
《なるほど分からん》《つまり?》《俺たちの知らない世界があるってことよ》《嘘松》《←だからお前ネタが古いんだよ》《相変わらずSFの世界線みたいな話してるな…》《その話詳しく》
電脳世界は主に二つの区域に分けられる。一つが、今彼の居るインターネットエリアだ。インターネットエリアはいわゆる現実世界の町と同じで、電波世界のように現実世界に重なっているのではなく、別個として存在しており、各地域ほインターネットエリアとネットワークによって繋がっている区域である。
そしてもう一つが電脳、此方は各電子機器に設置された空間で、電子機器を制御している。此方は電波世界と重なっている部分が多く、一つの電子機器に電脳と電波、どちらもある場合があるとかないトカ。
残念ながら電脳世界は現在完全に廃れてきており、今そこには全く彼以外の電波やプログラムは存在していない。
というのも、この電脳世界が発展して生まれたのが電波世界だからだ。簡単に言えば世界ごとのアップデート、又は引っ越しである。引っ越し先に人が居るのは当然だし、引っ越し前の場所に人がいないのも当然だろう。居るとすればアップデートに対応できなかった旧世代のウィルスくらいだ。
《ロックマンの配信、この現実感の無さが楽しいんだよな…》《この人本当に実在してるんですか?》《してるぞ》《してるか?》《居るわけないだろこんな奴。現実見れないのか?》《実際に助けられた人が居るのにそういう発言は駄目だろ》《今こいつ現実に居ないからな…居ないもんは見れないだろ》
「本当は歌配信でもやろうと思ったんだけどね、よくよく考えたら歌える曲が一つしかないから止めとくよ。んで今回はさっき言った通り、雑談配信なので聞きたいことがあったらどんどん質問してっていいよ。…あと、コメントが賑やかなのは結構だけど喧嘩は勘弁」
《マジ?》《すまん》《あのロックマンがノイズを狩らず飯も作らず雑談…!?さては偽物だなオメー》《風鳴翼のライブ始まるまでここ居るわ》《そいや今日か、復帰ライブ》《テレビで生放送だもんな》
「ああ、例の飛び入り参戦のやつね」
《お、ロックマンも知ってるんだ》《ちょっと意外》
それから彼は電脳世界を練り歩きながら寄せられるコメントたちと会話をしていく。彼が電波変換して一番懸念していたベルセルクからの干渉も特になく、彼としては少し肩透かしをくらった気分だった。
《そういえば、最近ロックマン以外にノイズを倒してるやつ居るらしいよ》《聞いたことあるな、赤い女の子でしょ?》《最近聞くようになったよな》
「…へー、どんなのなわけ?」
《ヒェッ》《なんで声のトーンが下がるんですかね…》《ノイズ狩りの次は同業者狩りか?》
「いいから聞かせてよ」
彼には明らかに思い当たる節があった。間違いなく雪音クリスだろう、噂が流れている時点で間違いない。トッキブツのシンフォギアであれば目撃者が出たとしてもどうにか出来るし、それが噂に繋がるようなことはないからだ。ただ、何故ノイズと戦っているのかは分からないが。声が低くなったのは思わぬ収穫が得られたことにビックリしただけである。
そして話を聞いてみればやはりだ。ここ数週間、雪音クリスはシンフォギアを用いてノイズを倒している。その結果どうやら人命を助けているようで、その助けられた人たちが雪音クリスのことを噂しているらしい。恐らくだが居場所を掴むためトッキブツに泳がされているのだろう。
《というか電脳世界?ってめちゃくちゃ広いのな》《ちょっと不気味かも》
「最初は僕もそうだったよ。でも二回目くらいからは慣れるんじゃない?」
《やっぱロックマンって普通に喋ってると常人なんだよな》《まるでノイズを狩ってる時は狂人みたいな言い草を…》《実際マジで喋らなくなるのは何でだろう》
「逐一雑魚を狩る時に喋るのは面倒くさいでしょ…っと、ちょっと待ってね。ポップアップだ」
《ポップアップ?》《お知らせみたいなもんらしいぞ》
突如ロックマンのバイザーと顔のほぼ真横に、危険マーク付きのポップアップが出現する。その内容はノイズの出現を伝えるものだ。しかも出現したのは先程話題にも出た風鳴翼が出演するライブの会場が見える距離。ただ、その距離故にライブ会場にノイズの被害が行く事はないだろう。しかしそのライブ会場は、二年前に件の事件が起きたあのライブ会場。その付近にノイズ、というのは偶然だとしても皮肉めいたものを感じる。…いや、ノイズは人為的に操ることができるのだったか。
「どうやらノイズが出たみたいだね」
『よしスバル!さっさと向かうぞ!』
「…ええ?僕これでも病み上がりなんだけど」
『いいじゃねーかよ!これもリハビリだリハビリ!』
「……はぁ、分かったよ。行こうロック」
《!?腕が喋った!?》《お前初見か?ロックはこの配信唯一の癒しだぞ》
彼のその言葉を聞いて、ロックマンの左腕であるウォーロックが獰猛に笑った。彼の身を心配しながらも、やはり戦いに飢えていたようだ。腕を振るいポップアップを消去し、ついでに一時的に配信のカメラと音声を停止した。そして今まで彼をカメラプログラムで撮っていてくれていたデンパくんに彼は声をかける。
『もう撮らなくても大丈夫なんデスカ?』
「うん。わざわざ手伝ってくれてありがとうデンパくん」
『イエイエ!この間助けてもらったお礼デス!!』
そのデンパくんは彼が薬品工場地帯で立花と戦った日、工場地帯に向かう前に彼が助けた、あのHELPメールを送っていたデンパくんである。彼に何か恩返しがしたいと訪ねてきたのが丁度配信する少し前で、ならば、と彼はデンパくんにカメラ役を頼んだのだ。しかしそれもここまで、デンパくんから貸していたカメラプログラムを返してもらい、危なくなる前に帰るよう告げる。
『じゃあまた機会がアレバ!!』
そうすればデンパくんは彼にお辞儀をして、このインターネットから脱出した。デンパくんからすれば電脳世界は無法地帯だ、やはり怖かったのだろう、と彼は思った。
……彼やウォーロックは知らないことであるが。この捨てられた電脳世界は、今やバグやノイズの温床となっている。ロックマンは体内に
「じゃあ、久々に暴れようか。ロック」
『へっへっへ…その言葉を待ってたぜェ!スバル!!』
それを確認した彼も、このインターネットから行けるセキュリティの甘い電脳を伝い、現実世界へと向かう。
現実世界、ライブ会場付近の無人の港。彼が配信の中断してから1分も経たず、彼はそこに降り立った。同時に耳当て操作し配信を再開する。
《お、戻った》《急に真っ暗になったからびっくりしたわ》《え、というか視点がいつものロックマン視点になってる》《現実世界だなここ》《まさかコメントで現実世界とか書く日があるとは思ってなかった》《これもしかしてもしかする?》
「勘がいいやつが居るね、うん。ノイズ狩りだ」
《許して…》《来ちまったか》《命だけは助けて》《待ってたけど待ってなかった》《なんかノイズ目線のコメントない??》《よし皆、酔わないように気を付けるんだ》
「とりあえず音声は切るよ、大分煩くなると思うし」
既に目の前にはノイズの群れ。その数はざっと数えただけで100以上は居るだろう。しかし彼は臆さない、何故ならばこの程度の数は脅威ですらないからだ。まず彼は空に伸びていた電波の通り道であるウェーブロードを踏み台にし、高く跳躍、大量のノイズを見下ろせる位置にまで跳べば、慣れた動作でウォーロックの口にバトルカードを投げ込む。
「バトルカード、デスサイズ1」
まず彼が初手に選んだのは、彼がノイズ狩りの際に最も愛用しているバトルカード、デスサイズ。自由落下しながら彼が放り投げた回転する小さいミニチュアの鎌は、まるでノイズの数に比例するかのように、10m以上に巨大化。その特大の鎌ミキサーのように回転し数多くのノイズを切り刻んでいく。
しかし、それだけではノイズは狩りきれない。彼はまだ終わらないと言うように、次のバトルカードをその手に出現させる。
「バトルカード、カウントボム1」
デスサイズによって生まれたノイズの群れの中の円形の空白地帯に突如直径50cmほどの時限爆弾が出現。それは3秒を数えた瞬間に大爆発を起こし、低空飛行をしていた鳥型ノイズすらも巻き込んで無数のノイズを爆殺していく。範囲と威力はデスサイズよりも大きいだろう。ここが広い港でなければかなりの被害が出ていたかもしれない。
そして爆発の直後、彼が地面に着地。その頃には、ノイズは既に数を半分ほどに減らしていた。
『…スバル、気付いてるか?』
「うん、さっきから異様に身体の調子がいい。バトルカードの威力も、間違いなく上がってる」
『なんでかは分からねぇが…強くなったことに変わりはねぇ!!ガンガン行くぞ!』
彼は返事の代わりに次のバトルカードのウォーロックの口に。そしてノイズが四方八方から彼へと迫る。たった一瞬で、彼はノイズの山の中に包まれた。
「───ビッグアックス1」
シンフォギア装者ですら、今のようにノイズに囲まれ潰されれば致命傷に成りうる。しかし彼はそのレベルの拘束を、ただの巨大な斧の一振りで打ち砕いた。元はウォーロックの頭部だった大斧は一度振るえば数十のノイズを叩き潰し、風圧だけで港にある建物の窓にヒビを入れる。
彼とウォーロックが言った通り、明らかにロックマンの力が増大している。身体能力と体力、そしてバトルカードの威力。その全てが数週間前の彼とは別人だ。まるでウォリアーブラッドを使ったときのような、道理すらもねじ曲げる強さ。それが今のロックマンにはあった。
何故こんなにもロックマンは強くなったのか?単純な話だ。今彼は、ベルセルクの力の一部を無意識に引っ張り出している。
フィーネとの戦いで彼が得たのは肉体のダメージだけではなかった。あの時の彼は復讐心によりベルセルクと一種の
《視点動くの速すぎてなにがなんだかわからねぇ…》《オエッ》《吐くな》《こいつだけ無双ゲーやってんだよな》《斧ぶんぶん振り回すとノイズが死ぬってことはわかった》《*ただしロックマンに限る*》
《つーかここの連中はなんでこんなにロックマン肯定的なの、怖くないの》《怖いわけないだろ》《コメントしてる連中の殆どがロックマンに助けてもらった奴らだからな。命の恩人を怖がるとかありえないわ》
爆速で流れていく配信のコメント欄。現在の視聴者人数は一万と八千人、恐ろしいほどの人数が彼の戦いを観戦していた。当然その中にはトッキブツ等の政府組織も紛れているが、それら全て含めて、視聴者たちは彼の戦いぶりに絶句していた。
彼の腕がウォーロックの頭部に戻ったあと、直ぐ様エネルギーの刃に切り替わる。彼の持つバトルカードで最も癖がなく使いやすい、ソードである。彼はそのままノイズを切り裂きながら群れの中に突っ込んでいった。
「だあああああっっ!」
切り裂く、切り裂く、切り裂いていく。そうして腕の剣を百回ほど振るった所で、ここら一帯のノイズは全て撃破された。
「ロック、他にノイズは?」
『まだ居るみたいだな、さっさと行くぞスバル』
「もう大分倒したし良くないかな…」
『オレが満足してねーんだよ!オラ!行くぞ!』
「うぇ~…」
ウォーロックの頭部が彼の身体を引っ張り、ノイズが居るらしい方向へ無理やり進めていく。彼も抵抗しているがウォーロックの方が力は強いらしい。
「…分かったよ、行けばいいんでしょ」
溜め息混じりに彼が跳躍、ウェーブロードに乗り上げ次のノイズの元へと走る。そして辿り着いた先のノイズを見て、彼は一瞬硬直。何か迷う素振りを見せて、配信の音声を入れ直す。
「っ!ごめん、今日の配信はここまで!」
《え?》《なになに?》《どうしたいきなり》《急に音声が入ったと思ったらマジか》
「また後でお詫び配信でもするから!本当にごめん!」
耳当てを操作し配信を終了、そして改めて、大量のノイズに囲まれている雪音クリスの姿を視認する。ノイズの数は此方もまた大量、雪音は多少苦戦しているらしかった。だが、このまま放っておいても雪音はノイズを倒しきるだろう。
『どうする、スバル?』
「あの人には助けてもらった恩があるからね、当然助けるさ」
そう言って彼はもう一度ウェーブロードから飛び降りる。先程と違うのはウォーロックの頭部を地面に向けているということだ。
ウォーロックアタック、という技がある。簡単に言えばウォーロックの頭部が彼の身体を力の限り引っ張る、ただの突進である。しかしただの突進と侮るなかれ、超高速のその突進は最早必殺であり、更に言えばこれは彼の攻撃のサポートでしかないのだ。
そして、彼は落下しながらウォーロックアタックを発動。
「バトルカード、スタンナックルッ!」
瞬間、轟音。彼はウォーロックアタックの発動から瞬く間に、雪音クリスを襲おうとしていた巨大ノイズをスタンナックルで貫き、その拳は地面に突き刺さっていた。
「な、てめぇは…!?」
「や、恩返しに来たよ」
いきなり現れたロックマンに驚愕の表情を浮かべる雪音。後ろから迫るノイズをソードでまた斬りながら彼は雪音へ軽口を叩く。そんな彼をアホを見るような目で見る雪音だが、それも一瞬だ。
彼以外に、もう一人乱入者が現れる。
「あれ!?クリスちゃんに…ロックマンさん!?」
立花響。風鳴翼のライブを守りたいという理由から単身ここに乗り込んで来た心優しき少女が、
やっぱりブランクがあるせいで前より書けてる気がしません。でも色々悩みながら書くのはこれはこれで楽しいんですよね。
余談ですが、戦闘中のスバルくんはほぼコメントを見てません。コメント欄の人たちの殆どが前に助けたことのある人なのも知りません。そしてコメント欄の方々はロックマンを信頼してるのでいきなり配信を切ったりしても、きっと人助けのためだろうと判断してます。