流星の配信者   作:メテオG

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文字数がそんなに膨らんだわけでもないんですけど、ちょっと書いてて悩む回でした。とりあえず響ちゃんは書いてて結構楽しいですね…

あと改めて毎回感想をくださる方々、本当にありがとうございます。めちゃくちゃ書く励みになります。大助かりです、いつもウキウキで返信返してます。


第十一話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「響ちゃん、ロックマンと接触!」

「よし!あおい君はそのままデータの計測を開始しろ!」

 

 

彼が普段トッキブツと呼んでいる、特異災害対策機動部二課の本部。

 

立花響や小日向未来、そして風鳴翼らの通う私立リディアン音楽院の地下に存在するそこでは今、シンフォギア装者である立花響の補助が成されながら、同じ戦場で戦っているロックマンのデータが録られていた。そしてそれと同時並行でロックマンの情報が広がらないように最大限の情報処理、情報統制も行われている。

 

彼は全く知らないことだが、ロックマン、という存在は一種の都市伝説のようなものになっている。この半年という短い期間で、彼の噂は広まっているのだ。しかしそれは逆に言えば、あそこまでやっているのにも関わらず都市伝説程度にしか思われていない、ということでもある。

 

気を抜けば今回のように視聴者が一万人を超える人間が見ることがあるというのに、だ。これを含め、ロックマンがメディアやネットなどで公になっていないのも全て彼ら二課のおかげである。

 

 

 

「やっぱりロックマンは、シンフォギア装者を映さないために配信を切ったのか…?」

「恐らくそうだろうな。ロックマンは毎度装者を映さないように配慮しているようだ」

「俺たちからしたらありがたいですけど…結局目的は分からないですからね。そこまでしてくれるのに、どうして二課と協力はしてくれないんだろうなぁ」

 

 

 

うーん、と首をかしげながらも、聞くだけでもげんなりするような量の仕事をこなす二課職員の藤尭。二課における情報処理を担当しており、この半年はもっぱらロックマン関連の仕事をしてるらしい。そして処理を行う都合上彼の配信を毎回最初から見ており、実質ロックマンのファンみたいなものである。時々、ロックマンの配信が始まるのを見て、喜ぶところを同僚に怒られているのだとかなんとか。

 

それを抜きにしたとしても、恐らくこの二課の中でロックマンへの好感度が高いのはこの藤尭であろう。

 

 

そして二課の予想通り、彼はシンフォギア装者を配信に映さないように配慮していた。別に彼は二課を敵視している訳でもないし、味方になろうとも思っていない。というのも彼は二課に苦手意識を持っている。だが、だからと言って彼は二課の邪魔をする気もない。彼は二課がノイズから人を守り続けている事を、データ越しではあるものの知っている。

 

故に、配信でシンフォギア装者を映すことは、人を助ける為に戦っている二課の努力を無下にすることと同じだ、と彼は考えている。

 

 

 

「ロックマンは謎が多いですからね。二年前のライブ会場に現れたこと、ときたま戦闘中に正体不明の聖遺物の反応が出ること。他にも色々。その謎の中に理由があるのかもしれません」 

 

 

二課の職員の一人が呟くように話す。 

 

 

 

 

 

 

「…敵でも味方でもない、か。本当に我々は、君と手を取り合えないのか…?」

 

 

 

二課の司令である風鳴弦十郎は口には出さないものの、ロックマンは雪音クリスを助けに来たのだと考えている。

 

彼は前にも雪音クリスを助けた事があるのを風鳴弦十郎は覚えている。助けようとした理由は依然として不明ではあるものの、もっとも懸念していたロックマンの人間性は大丈夫なのではないか、と風鳴弦十郎は安心していた。

 

だからこそ、風鳴弦十郎はロックマンを信じる気持ちを強めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立花響。その名前を彼の脳内が勝手に反芻する。まさかここで会うとは、という思いと、そりゃノイズが居るんだったら現れるだろうという考え。他にも多種多様な思考が彼の中に溢れていく。ようは、今の彼は複雑な気持ちなのだ。だがそれで戦闘のパフォーマンスを落とす彼ではない。

 

 

「バトルカード、ネバーレイン1」

 

 

振るう腕。そこからタイムラグなく、立花の周りのノイズ十体程度に群青色の雨が降り注ぐ。当然それはただの雨などではなく、その雨の一粒一粒がノイズへ少なくないダメージを与え、そのまま撃破する。彼からすればほぼ条件反射で適当なノイズに攻撃しただけなのだが、立花はそう考えなかったようで。

 

 

「…っロックマンさん、一緒に戦ってくれるんですか!?」

 

 

ノイズを拳で穿ちながら、立花は心底嬉しいような顔をする。しかし彼はそれに答えない、というか答える精神的余裕もあまりないようだ。バイザーの下に隠れた顔も少し硬直しているように見えた。

 

 

「僕は僕で狩らせてもらうから」

 

 

必死に出した言葉がそれだった。いきなり冷たい反応を見せた彼に、雪音は人知れず驚いている。そんな事を言うような人間だとは思っていなかったからだ。

 

彼はロックマンになっている時は性格がガラリと変わる。彼曰く色々と切り替えている、らしいが、それでも彼は彼。立花響への苦手意識が変わるわけではない。更に言えばこの状況が良くなかった。

 

どうしても共闘する形になっている現状。彼はとある理由から自分に立花響と共に並ぶ資格はない、と思っている。彼に根付いた強い罪悪感、それが立花と共闘するという現実を拒否しようとしている。それを理由に、ロックマンは無意識に、彼の望まぬ形で立花へ冷たい言葉を出してしまう。

 

 

「それでもっ、ありがとうございます!」

 

 

しかし、立花はそんな言葉でへこたれる事はない。立花に背を向けノイズへ突っ込んでいったロックマンに、礼の言葉を叫ぶ。

 

 

「でやあああああああっ!!」

 

 

そして今は目の前のノイズに集中するべきだ。大切な先輩の、何よりも大事なライブを台無しにさせる訳にはいかない。立花は深く息を吸い込み、右腕のパワージャッキを引き絞る。歌と拳に意識を集中させる。

 

 

戦場を縦横無尽に駆け巡り、ノイズの間をすり抜けながら、ノイズをその拳一つで打ち砕いていく。彼女が通った跡にノイズは残らず、その殲滅スピードは先程のロックマンとは非にならない速さだ。ロックマンとは違い逐一バトルカードを使う必要もなく、手数の多さとけた違いの馬力でノイズを翻弄する。

 

 

「バトルカードッ、ライメイザンッ!」

 

 

小型ノイズを倒す立花に対し、ロックマンが相対するのは巨大な要塞型ノイズ。小型ノイズを弾丸として打ち出しロックマンを追い詰めようとするが、その一切が切り捨てられ無駄となる。

 

ロックマンが使ったバトルカードは、彼の持つバトルカードの中で最強の部類に入る、名の通り雷鳴の刃。常に刃の周りに発生している、ベルセルクを想起させる目映い稲光は触れるだけでノイズにあらゆる抵抗を許さず灰に変え、彼にノイズが近づくことを許さない。

 

 

「ロォック!」

『暴れるぜェェッ!』

 

 

彼のバイザーにターゲットサイトが出現、それを要塞型ノイズに向けることでウォーロックアタックが発動。

 

立花の歌を背に、100m以上あった距離を零に変え、勢いそのままに要塞型ノイズの身体に足を着ける。

 

そして壁走りの要領でその身体の上を駆け、生えている触手をライメイザンで全て両断、わざわざ一度達磨のような身体に変えた後にその巨大な図体にライメイザンを突き刺し、最大出力の放電。要塞型ノイズはその内側から雷撃で焼かれ、自壊する様に消滅した。

 

 

「ちょせぇっ!」

 

 

雪音はロックマンや立花が撃ち漏らしたノイズや、空を飛ぶ飛行型ノイズを両手に構えたガトリングで蜂の巣にしていく。その精度は正に百発百中、ただの一度の砲撃で100を超えるノイズが消え去る。

 

 

途中、雪音とロックマンの役割が切り替わる(スイッチする)。ロックマンの攻撃の手が緩まったその瞬間、それを見越したように雪音がロックマンが相手をしていたもう一体の要塞型ノイズの相手をし始めたのだ。そしてロックマンはウォーロックの頭部をガトリングに変えて、雪音がやっていた様に小型ノイズや鳥型を狙う。

 

 

 

 

シンフォギア装者二人とロックマン、敵でも味方でもない三人による奇妙な共闘。それが生み出すものは凄まじいものだった。拳撃、斬撃、銃撃。あの特異災害と呼ばれ恐れられているノイズが、たったの三人に手も足も出ずに灰に変えられていく。

 

 

そしてもう一体残っていた要塞型ノイズを立花が倒すことにより、この奇妙な共闘は終わりを迎える。雪音はいつの間にか姿を消しており、この場には立花とロックマンが残った。

 

 

「あの、ロックマンさん!今回もありがとうございました!!」

 

 

彼も既に用は無くなった。前と同じように、インビジブルのバトルカードでこの場から逃走を図るが、それよりも早く立花響が彼の前に立ち塞がり、彼に頭を下げた。頭を下げた立花の姿に思わず立ち止まってしまった彼。

 

 

「ロックマンさんも、翼さんのライブを守ろうとしてくれたんですよね!」

「…は?」

「配信、さっきまで見てました!ロックマンさん、楽しそうに翼さんのことについて話してて…きっとロックマンさんも私と同じで翼さんのファンなんだって!」

「一体、何の話を…」

「それに、さっきクリスちゃんを助けてたのも見ました!」

 

 

聞きたくない。彼は右手に握り締めたインビジブルのバトルカードをウォーロックの口に放ろうとしたが。ウォーロックは口を開かない、バトルカードを飲み込もうとしない。まるで、彼に立花の話を聞けと言わんばかりに。

 

 

「私、少し前までロックマンさんのことを冷たくて怖い人だと思ってました!!でも違ったっ!私を助けてくれたっ!二年前も、この間も!思い出したんです私!あの時確かにロックマンさんは、奏さんとノイズを倒してた!!」

 

 

その言葉に動揺を隠しきれないロックマン、咄嗟に言葉を返そうとするが声が出ない。立花のその必死の言葉に、ロックマンとしての仮面が剥がされる。立花響のその目は、ロックマンの赤いバイザー越しに、彼の揺れるその眼を見つめている。

 

 

 

「藤尭さんが言ってました、ロックマンさんに助けられた人がいっぱい居るって!悔しいけど、ロックマンさんじゃなきゃ助けられなかった人が居たって!」

 

 

優しくも力強いその瞳、彼はその瞳が苦手だ(好きだ)った。

 

 

「ししょ…二課の司令に聞きました、ロックマンさんは私たちの敵じゃないんですよね!?だったら、私達は分かり合えると思うんです!!」

 

 

彼の目を見つめたまま、立花が彼へと一歩近づく。同時に彼は一歩後ずさる。未だ握られていたインビジブルのカードが地面に落ちて、データに戻る。立花は後ずさった彼の右手を両手で握り締める。掴んで繋いだその手は離さない、その目がそう言っている。

 

 

「…ロックマンさん。一緒に戦ってくれませんか!」

 

 

その言葉は。ひたすらに前を向いて、望んだものへ手を伸ばそうとするその心の有り様は、彼が思っているよりも彼の心に響いた。それは彼が諦めた在り方だ。立花はロックマンを信じている、本気で人と人は分かり合えるのだと、なればこそロックマンとも分かり合うことが出来るのだと。

 

それは彼の心を大きく揺らす。信じることを恐れて逃げた彼の心に波を立たせる。

 

きっと、彼が彼を認めることが出来る一番の機会はここなのだろう。ロックマンの力は誰かのために使うことが出来る、ロックマン(星河スバル)は誰かのためにあっていいのだと。握られたこの手を握り返せば、彼は立花響に正体を明かさぬまま二課の支援者となる道があるのだろう。しかし。

 

 

「…ごめん」

 

 

強く握られた立花のその両手から、彼の右手がすり抜ける。彼は、その道を選ばない。

 

 

「僕に、立花さんの手を取る資格はないんだ」

 

 

ロックマンとしての仮面が剥がれた彼は、星河スバルとして再会してから初めて立花へ言葉を紡ぐ。冷たくも、皮肉混じりでも、毒づいてもいない紛れもない彼の本音。その顔は青ざめてもいないし、罪悪感に駆られているわけでもない。ただ少し、寂しそうな顔だった。

 

 

「ロック、行くよ」

『へいへい、わーったよ』

 

 

ずっと沈黙を保ち続けていたウォーロックが口を開く、開いた口に今度こそインビジブルのバトルカードを放る。ロックマンの姿が薄れていく。

 

 

立花響は呆然としていた。確かに断られたのはショックだった。しかしそれよりも、今のロックマンの姿が一瞬、どうしてか彼女が二年前から謝りたい少年の姿にそっくりに見えたことが、立花の思考を停止させていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…良かったのかよ』

「ロックの事だし、ああなるのは分かってたんじゃない?」

『けっ、何のことだか』

 

 

彼がインビジブルを使ってから少しして。彼は、ウェーブロードを使ってどうしてかあのライブ会場の真上まで来ていた。ライブ会場からは大勢の歓声が聞こえてくる。どうやら今ちょうど、風鳴翼の歌が終わったらしい。

 

 

「ロック」

『なんだよ』

「僕は、向き合えるかな」

『あ?どうした、いきなり』

「いやさ、ずっと思ってたんだ。このままじゃいけないって。二年前を割り切れても乗り越えた訳じゃなかったから。でも、やっと決心が着いたんだ」

 

 

まだ少し悩んでいる顔つきだが、それでも少し晴れやかだった。悩みの解決法を見つけた、そう言わんばかりに落ち着いた顔をしている。

 

 

 

────何ヲ、言ッテイル。オマエニ必要ナノハ復讐ダ、怨敵デアルフィーネヘノ────

 

 

 

突如、ロックマンの中で眠っていたベルセルクの意志が目覚める。否、見定めていたのだ、戦いが始まってからずっと。

 

彼が本当にフィーネへの復讐を遂げることが出来る器なのか、その力は使えるのかを。今ここでわざわざ彼とウォーロックへ語りかけたということは、何かベルセルクにとって不都合が起きているらしい。

 

未だ電波変換を解除していないロックマンの身体に不穏な稲光が走る。先程彼が使っていたライメイザンのものとはまた別種の、何処か荒々しいその光。それはウォリアーブラッドを使った際の様に、彼の身体から溢れ纏わりついていく。

 

 

 

 

()()()()()()()()

 

 

 

 

だがその力の奔流は、彼のその一言で霧散する。更には浮上してきていたベルセルクの意識も抑え込み、彼とウォーロックの意識の中から姿を消した。彼は今、彼の遺志でベルセルクをコントロールしている。それほどまでに、強い意志が今彼にはある。

 

 

「僕はずっと、立花さんに会うのを怖がってたんだ。あのライブの日に大怪我を負わせたことを思い出すから。でもそんな僕と違って立花さんは向き合おうとしてるんだ、僕はそれにすら気づけなかった」

 

 

あの日、立花と小日向に会った日のことを思い出す。確かに彼女は彼へ謝ろうとしていたのだ、謝るべきは彼女ではないというのに。少なくとも彼からすればそうだ。立花は向き合っている、辛い過去に、向き合わなくてもいい過去に。

 

 

「眩しかった。けどそれよりも、恥ずかしかったんだ」

 

 

勇気の足りない自分が恥ずかしかった、と彼は続けた。

 

 

「僕に足りなかったのは向き合おうとする勇気だ。乗り越える必要なんてない、ロックは前に僕にそう言ってくれた。でも、それは向き合わなくてもいいってことじゃない」

 

 

彼は夜空に手を伸ばす。視界の先には無数の、天の川の様に空に架かるウェーブロードとその奥で輝く星。

 

 

「さっき立花さんには、本当に申し訳ないことをしたと思ってる。でも彼女の手を取るのは()じゃないんだ」

 

 

それは暗に、彼は彼女の手を取ろうとしていたということ。前の彼ならやろうとすらしなかった。彼は確実に変わろうとしていた。

 

 

星河スバルは、辛い過去と向き合い、乗り越えようとしている少女と再開した。孤独でありながら、信じることをやめなかった少女を知っている。そして、変わってしまった自分に、昔と変わらず接してくれた、元親友の少女を思い出す。

 

 

彼は勇気付けられたのだ。少女達の在り方に。何度でも言うが、彼は二年前に起こった事件自体は割りきっているし、彼なりのけじめはついていた。

 

 

ただ、それを起因に起こってしまったことに関しては彼は目を向けられないでいた。大事な親友を自らの手で傷つけたこと、親を犠牲に生き残ったのだと根も葉もない噂を立てられ、信頼していた人達に裏切られたこと。この事だけは二年経った今でも彼の心に残り続けているトラウマだ。

 

彼の中でそのトラウマは乗り越えられるようなものではないと思っていたし、そもそも彼の言う通りトラウマに向き合う勇気がなかった。

 

しかしその考えも覆された。雪音クリスの持つ勇気に勇気付けられ、トラウマに向き合う勇気を得た。立花響の向き合う心に影響を受け、自分はそもそもトラウマと向き合ってすらないのではないか?という思いを持てた。

 

そして何よりも、星河スバルを心配してくれている小日向未来に、そして自らが傷つけてしまった立花響に謝りたいと思った。

 

 

 

───変わりたい、と彼は明確に決意する。

 

 

 

「僕は向き合うよ。過去にも、孤独にも。それからちゃんと立花さんや小日向さんにも謝る。…だから、手伝ってくれないかな。ロック」

『はんっ!おめーはいつもだらだら、だらだらと話が長いんだよ!最初からそう言え!』

「うん。ロック、改めてよろしく」

 

 

 

 

 

その顔に、もう迷いはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






というわけで、スバルくんの決意回でした。本当はもっとうじうじしてるスバルくんを書いていたいんですけど、そうするとちょっとあれなので。スバルくんは人に勇気付けられるのが似合うよなと個人的には思ってます。

シンフォギア一期も今回の話で九話までが終わりました。つまりもうクライマックスは近いってことですね。具体的にはあと六話もかからずシンフォギア一期は終わるかなー、と。実際は分かりませんが。
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