流星の配信者   作:メテオG

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日間ランキング上位+評価バーが真っ赤っかで長い!!!こんなの始めてですね…流石にそろそろしつこいので騒ぐのはやめますけど、とりあえずそれを知ったとき驚きすぎて風呂にスマホを落としたのは紛れもない事実です。感想も大量に戴いて…ちゃんと返していきたいと思います。



第四話

 

 

 

 

 

 

 

 

─■コセ。■■ダヲ■コセ。

 

 

「…あげないよ。これは僕のだ」

 

 

──フッ■ウ■!■ュゾ■ノフッ■ウ■!!

 

 

「貴方たちはもう滅んだんだ。亡霊に、居場所なんてない」

 

 

───ナラバ、オマ■ハ■■ダ?

 

 

「…同じ亡霊だよ。貴方たちと違って死に損ねた」

 

 

 

真っ白な何もない空間、そこに佇む黄色い戦士らしき人影達と彼。人影の声はノイズ混じりでよく聞こえない、しかし彼はその内容を理解しているようだった。

 

 

──チカラガホシクナイノカ?

 

 

急に、人影の声がクリアに、この何もない空間によく通る声になる。それは、彼の中の欲望に語りかけてるようだった。

 

 

「振り回されるような力なんて要らない。僕は、僕だけを…いや、ロックを信じてる」

 

 

──ナラバ、ナゼノイズヲカル?

 

 

「それは…っ!貴方たちが強いるからだ!貴方たちがロックの身体から出ていけば…っ!」

 

 

──ホントウニ、ソウカ?ノイズニチカラヲフルイ、コウヨウカンヲエテイルノデハナイカ?

 

 

「そんなことない!僕は、僕は…!」

 

 

──ニネンマエヲオモイダセ。タノシカッタロウ?チカラヲフルウノハ。キモチガヨカッタダロウ?フクシュウヲトゲルノハ。

 

 

真っ白な空間が姿形を変える、より彼の心に響くように。彼の中の思い出を再現し始める。

 

 

「やめろ、やめてくれ…!!」

 

 

そこは、彼にとっての運命の転換期。両親を無くした場所。…二年前の、ツヴァイウィングのライブ会場。半壊し瓦礫に溢れ、そこら中にノイズによって殺された元は人間であったのだろう炭の数々。遠くから聞こえる逃げ惑う人たちの悲鳴。

そして頭を抱えて膝を着いた彼の前に居るのは、父親だった炭の塊を抱いて泣き叫ぶ二年前の彼だった。

 

 

 

──チカラヲサイショニモトメタノハオマエダ、オマエガホッシタノダ。ダカラサズケタ。

 

 

場面が切り替わる。そこは変わらずライブ会場だが、そこにはもう泣き叫ぶ二年前の彼の姿は無かった。代わりにそこに居たのは、ロックマンだった。しかしその姿は二年後の、今のロックマンの姿とは大きく異なっている。

 

インナーは青ではなく黒、その上に白銀の重厚な鎧に身を包み、鋭角なデザインだったヘルメットは二本の雷を模した角の生えた兜らしきものに。最も目立つのは右手に握られている、彼の身長と同じくらいの大きさの、刀身がまるごと雷に包まれた両刃剣。その姿はまさに、歴戦の戦士と言っても過言ではなかった。

 

その二年前のロックマンが50体を超えるノイズを相手に戦っている。しかしその戦い方は戦士というよりと獣、まるでデュランダルに飲まれ暴走した立花響のようだった。剣を手足の様に振るい、ノイズを切り裂き、時にはウォーロックで噛み千切る。

 

それを見つめる彼の瞳がどろり、と濁っていく。

 

 

「今頃こんなものを見せて!一体何がしたいんだ…()()()()()!」

 

 

──シレタコト。ソノカラダガヒツヨウニナッタノダ。

 

 

「何度も言っているだろ!?僕の身体を渡す気はない!」

 

 

──ナゼ、コバム?キサマニミレンハナイダロウ?…アア、イヤ。恐イノカ。

 

──絆ヲ拒ミナガラモ、心ノドコカデハ繋ガリヲ欲シテイル。イズレハマタ誰カト、ソウ願ワズニハイラレナイ。ソノ機会ガ失ワレルノヲ恐レテイル。

 

──カカカッ、配信ナドシテルノガソノ証拠ダナ?擬似的ニ人ト人ノ輪ヲ覗クコトガ出来ルモノナ。先日我々ノチカラノ一端ヲ使ッテマデ、アノ女ヲ助ケタノモ似タヨウナ理由ナノダロウ。

 

──ソレデイテ人ヲ疑イ、裏切リニ怯エテイル。

 

──中途半端ナノダ。ソシテ矛盾シテイル。

 

──心ハ絆ヲ求メヨウト、条件反射デ理性ガ、身体ガソレヲ拒否シテシマウ。

 

 

段々と、ベルセルクと呼ばれた人影の言葉が流暢になっていく。悪辣に、彼の心を蝕むように言葉を選ぶ。更には彼が何かを挟む余地を与えないために複数で言葉を畳み掛けていく。

 

 

「うるさいッ!」

 

 

耳を塞ぎ怒鳴る彼。それでもベルセルク達の言葉の毒は彼に染み渡っていく。当然だった、これは夢の中。耳を塞いだからといって音が聞こえなくなるわけがない。それでも耳を塞がずにはいられなかった、何故ならベルセルクの語る事は全てが真実だったから。

 

堪らず目をそらす。ノイズに恨みをぶつける二年前の自分と、目があった。酷く苦しそうな顔だった。だが、二年前の自分の瞳越しに見えた今の自分が、一番苦しそうな顔をしている。何故?彼には分からなかった。

 

 

──絆デモナク、孤独デモナク。停滞ヲ選ンダ戦士ヨ。最後ニヒトツ教エテヤル。

 

 

 

今見える世界にヒビが入っていく。見覚えのある少女が、彼の横を通りすぎていった…気がした。

 

 

──オマエノ復讐ハ終ワッテイナイ。コノ事件ハ人為的ニ起キタノダカラ。

 

──終ワリノ名ヲ持ツ者。ソレコソガオマエガ恨ムベキ相手ダ。

 

──ソシテユメユメワスレルナ。オマエノカラダハ、ワレワレノ────

 

 

ベルセルクが何かを言い切る前に。世界が、崩壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めれば、そこは自分の部屋だった。1Kの狭い自室に、風が窓を叩く音が響いた。

 

 

「…夢」

 

 

ぽつり、と呟く。最悪な事に夢の内容は一言一句逃すことなく記憶に残っていた。終わりの名を持つ者、最後にベルセルクが言い残した言葉が嫌に彼の中に残っている。彼自身も気付いていた、ノイズは人為的に召喚されていると。この二年間で、その気付きはどんどん深まっていたのだから。

 

 

『おう、起きたかスバル』

「おはよう、ロック。僕、どれくらい寝てた?」

『大体三日くらいじゃねぇか?帰ってきて急に倒れたから心配したぜ』

「そっか。ごめんロック、心配かけた」

『気にすんじゃねぇって。んなことより腹減ってんだろ?前作ってたカレーでも食べとけ』

「うん」

 

 

ウォーロックはこういうとき、彼に何も聞かない。ベルセルクが夢に出てくるのは、何も彼だけじゃない。むしろ、彼の夢に出てくるならウォーロックの夢に出ていなければおかしいくらいだ。

 

ベルセルクの意思は、どこから彼に語りかけていたのか?その答えはウォーロックの体内から、である。正確に言えば、ベルセルクの意思を宿した何かがウォーロックの体内に眠っている。

 

もしかしたらウォーロックの方が彼よりも酷い悪夢を見ているのかもしれない。彼はそう思っても、直接聞くことは無かった。きっとウォーロックも同じことを考えている、そう信じていたからだった。

 

 

「というか米無いじゃん」

『おう。だからお前が寝てる間はルーを飲ませてた』

「寝てる人間に!!!?僕を殺す気かロック!?」

 

 

あ、と台所に立った彼は気付いた。空腹で少しふらつくが、歩けない程ではないらしい。しかしこいつはなんてことを、鍋の中身を見てみれば確かに中身が減っている。カレーを飲ませたと言うのは冗談ではないらしい。言われてみれば少し舌にカレーの味が残っている、気がした。

 

服装は三日前のまま。流石にそのままだと臭そうだったので軽くシャワーを浴びて、さっさと服を替えて出掛ける準備をする。最近嫌に出掛ける度に面倒事に巻き込まれてるが、今度は大丈夫だろうか。

 

 

「…今度こそ米を買いにいくよ」

『三日ぶりのリベンジだな』

「にしてもまだ身体の節々が痛い…」

 

 

玄関を開ける。まさかの夜だった。

 

 

「…夜じゃん」

『おう』

「おうじゃないよロック、そういうのはちゃんと言ってくれないと」

『いや、お前が時計見なかったのが悪いだろ』

「…おっしゃる通りで。相当寝てたんだね、僕」

『そりゃもうな』

「しばらくバイト入れてなくて正解だった奴だね、これ」

 

 

夜の道を二人で歩く。こうやって夜に外出することは普段しないので、彼は浮かれていた。夜空で綺麗な光を放つ星、そして天の川の様に夜空に架かる無数のウェーブロードを見ながら、スーパーへの近道である公園を横切っていく。

 

 

「やっぱり星は良いよね。見てると嫌なこと全部忘れられるし」

『そんなに良いもんかァ?俺からしたら何の面白みもないんどけどな』

「おいおい、仮にも宇宙人がそんなこと言わないでよ。この間のしし座流星群の時もそんなんだったし、ロックはこう、割と無粋だよね。なんでこの星の良さが分からないかなぁ」

『んなの、ずっと宇宙空間を漂ってたら飽きてくるもんなんだよ。お前も宇宙を漂えば分かるぜ』

「電波体ならともかく生身なら死んじゃうからねそれ」

『かもな』

「かもなじゃないよ、かもなじゃ。間違いなく死ぬよ…」

 

 

流石に夜だからか、声のボリュームを下げながら話す彼。久々に落ち着いた時間を過ごしている気がした。気分が乗りに乗っている彼は鼻歌を口ずさんでいるのだが、何故か段々と進む足がゆっくりになっていく。子供の泣き声が聞こえたからだった。

 

 

『行くのか?』

「…うん」

『スバルにしちゃ珍しいな、自分から他人を助けるとは』

「今日は、そんな気分なんだよ」

 

 

泣いている子供はすぐそこのベンチに居た。泣いているのは小さな女の子で、その目の前に立っている男の子が困ったような顔をしていた。

 

 

「ひぐっ…えぐっ…」

「泣くなよ。泣いたってどうしようもならないぞ!」

 

『…苛めか?』

「多分違うよ」

 

 

その様子から兄弟だろうか?と予想を立てる。男の子、兄の口調の当たりが強いのはきっと泣いた妹にどうしたらいいのか解らないのだろう。彼は深く深呼吸をすることで気合いを入れて、久々に人に声をかけることになった。

 

 

「大丈夫?迷子…かな」

「ひっ!」

「わぁっ!?」

 

 

ただ立ち位置が最悪だった。街灯を背にしながら声をかけたせいで、彼の顔が完全に影になって異様な不気味さを醸し出してしまっている。しかもガチガチに固まった笑顔も更に不審者感を増大させていた。

 

子ども達はまるで化け物を見たような反応をして驚いてしまった。そんな反応をされた彼も心の中の何かを刺激されて硬直。ウォーロックが呆れた顔をした。

 

 

「おいお前!子供を苛めんじゃねぇ!!」

 

 

さらに、そこに見知らぬ誰かが介入してくる。薄いラベンダー色の髪の少女だ。恐らく彼と同い年くらいだろうか?整った目鼻立ちと、更にグラマラスな体型をこれでもかと強調するファッションがとても目立つ。そんな少女にいきなり声をかけられた彼は更に硬直…

 

 

冤罪です!!!!ま、迷子っぽい子が居たので心配を声をかけて…!!」

 

 

──はせず、必死に自身の無実を訴えていた。結構な大声で。その姿は結構情けないもので、逆にこんな情けない奴が何か出来るようには思えない、という印象を少女に与えていた。

 

 

「…そうかよ。悪いな、勘違いしちまった」

「い、いえ…」

 

 

初対面の二人の間で何故か気まずい雰囲気が流れる。勘違いで言いがかりをつけてしまった事を恥じる少女と初対面の人と会話するプレッシャーに押し負けている彼、という図である。しかしそんな図は五秒も持たない。

 

 

「えぐっ…」

「妹を泣かしたな!!」

「えっいやちがっ…ご、ごめん…」

「わ、わりぃ」

 

 

何故か女の子がまた泣き始めた。大声を上げた彼と険悪な雰囲気を出した少女が怖かったらしい。兄はそれを見て彼と少女に怒る、それを直ぐ察した彼は秒で頭を下げた。少女もそれに釣られてしまって謝罪を口にする。年上の筈の二人が一回り小さな男の子に負けていた。

 

空回りしながらも彼は妹を泣き止ませようと行動を起こす。空に見える星の解説を始めたり、顔芸をしたり。すると、妹は涙は止まってないもののクスリと彼を見て笑った。彼の必死さがどこか面白く感じたようだ。

 

暫くして妹が泣き止む。それを見た兄は多少警戒を解いてくれたようで、彼と少女に自分たちが迷子であること、父親を探していること、そして妹が疲れて歩けそうにないことを簡単に説明してくれる。

 

 

「…じゃあ、一緒にお父さんを探そう。もうこんなに暗いし、二人だけじゃ危ないよ」

「…いいの?」

「うん」

 

『大丈夫なのか?スバル』

「な、なんとか…」

 

 

しゃがんでベンチに座る妹に目線を合わせて、出来るだけ強張らないように、優しい声色で提案をする彼。内心心臓ばくばくである。それに対して妹は嬉しそうな顔で彼に聞き返す、いくら兄が居ても暗い夜道、二人きりでは怖さは拭えないのだろう。それを横目で見ている兄の方も、少し表情が明るくなっていた。

 

 

「お父さんとは何処ではぐれたの?」

「あっち!」

「繁華街の方だね。じゃあ、歩けるようになったら繁華街の交番に行ってみようか?」

「うん!」

「君もそれでいい?」

「…は?アタシに聞いてんのか?」

「え、あ、うん…こ、この子達の事気にしてたみたいだったから」

「な、なんで私が!」

 

 

つい横に居た少女に会話を振れば不機嫌そうな反応を返される。予想外の反応だったので言葉を詰まらせる彼、そもそもこうやってまともに人と話すこと自体が彼にとっては久々だったりする。バイト先でも店長と一言二言話すことがあるかないか、配信に至っては自分のペースで話せる。前まで普通に出来ていたことがいつの間にか出来なくなっているのは、少し不思議な気分だった。

 

 

「お姉ちゃんは来てくれないの?」

「は、はぁ!?」

 

 

兄の方が少女に問い掛ける。妹も少女の方を見て頷いた、この二人は最初から少女が着いてきてくれると思っていたようだ。二人の小さな子供に無垢な期待の目を向けられて断れるほど、少女は悪人では無かった。

 

 

「わーった!わーったよ!だからアタシをそんな目で見るな…!」

 

 

照れてるのか、それとも本当に嫌がってるのかは彼には解らなかったが、なんだか接しやすい人だな、と思った。同時にウォーロックみたいな人だ、とも。口は悪いが面倒見はよく、がさつに見えて人の事をよく見ている。そうじゃなければ、街灯があるといっても中々に暗いこの公園で、怯えている子供が居るなんて分からないだろう。

 

それから少しして。休んで元気を取り戻した妹と、嬉しそうに妹と手を繋ぐ兄。そして現状をさっそく後悔している彼に加えてどうも納得してないらしい少女という、変てこな四人が繁華街へと足を運ぶ。ウォーロックは空気を読んでか、彼のスマホの中に入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の繁華街。子ども達はあまりこの時間帯に出歩いた事がないようで、見慣れない町並みにはしゃいでいた。それを見た彼が時折寄り道をして子ども達に軽いお菓子を与えたりして甘やかす。はしゃぎすぎた子どもたちがまた迷子にならないように少女が抑制する。なんというか、彼と少女の息は妙に合っていた。

 

 

「~♪」

 

 

少女は鼻歌を交えながら子ども達の父親を探している。彼はそんな少女を眺めていた。

 

 

「…何見てんだ」

「ご、ごめん。つい…」

「つい、なんだよ」

 

 

綺麗な歌だったからつい聞いてしまった、とは言えなかった。そんなキザなことを言う勇気は彼には元々備わってないし、もし言えたとしても少女の地雷を踏み抜きそうな気がしたからだ。そもそも少女は自分が歌っていたことに気付いていないようだった。しかし言葉を濁したせいで少女は不機嫌になっていく。

 

 

「お姉ちゃん、歌好きなの?」

 

 

棒つきの飴を舐めながら妹が問い掛ける。思わぬところから助け船が出た。

 

 

「大嫌いだ、歌なんか」

「なんでー!?お姉ちゃん、凄い綺麗な歌だったよ!!」

「っ、どうでもいいだろ!そんなのは!!」

 

 

やはり、少女にとって歌は触れられたくない所だったのだろう。怒鳴ったあとに、思わずそんなつもりじゃなかった。と後悔した表情になる少女。怒鳴られた妹はその目に涙を貯め始めている。

 

 

「っ~♪」

 

 

そんな中、彼が急に歌い始めた。明るい曲調で、アカペラではあるものの中々に上手い。今にも泣き出しそうだった妹は虚を突かれたという顔をして、歌っている彼の顔を見つめた。

 

 

「歌、好きなんでしょ?」

「う、うん」

「じゃあお兄さんと一緒に歌おっか」

「でも私、お兄さんの歌ってる歌知らないよ…」

「じゃあ君も知ってる曲を歌おう。ツヴァイウィングは知ってるかな?」

 

 

妹が頷く。既にその目にもう涙はなかった。更に先ほどから少女を睨んでいた兄の方も一緒に歌いたいと彼の話に乗っかってくる。兄弟揃ってツヴァイウィングのファンらしかった。

 

 

「「「聞こえますかー?、激情奏でるムジークっ」」」

 

 

三人で仲良く、歌い分けなんか一切気にせずに《逆光のフリューゲル》を歌う。音程もバラバラでお世辞にも上手いとは言えないかもしれないが、歌っている三人は中々楽しそうだった。

 

歌が二番まで差し掛かりそうになった頃。丁度当初の目的地であった交番が見えてくる。それとほぼ同じタイミングで、やけに疲れきっている年配の男性が交番から出てきた。その視線は此方に向いている。

 

 

「あ!父ちゃん!!」

 

 

妹が交番に向かって駆け出した、それに釣られて兄も。駆け出していった方向には此方を見ていた年配の男性、どうやら迷子問題は解決したようだ。一時はどうなることかと思っていたが、そう言わんばかりに彼は安堵の行を吐く。本当に久々に長く喋ったり歌ったせいで喉もからからだ。

 

 

「…ありがとな」

「へ?」

「アンタがあの場でいきなり歌わなかったら、アタシがあの子を泣かせちまう所だった」

「あ、いや…べ、別に大丈夫ですよ。さっきのだって、誰かが悪かった訳じゃないと思います、し…」

 

 

少女が彼に頭を軽く下げる。基本人に頭を下げられたことのない彼は対応に困っていた。

 

 

「あの…すみません、ご迷惑をおかけしました」

 

 

兄弟二人と手を繋いだ年配の男性が、子ども達が迷惑をかけてしまったと謝罪を彼と少女に伝えてくる。彼と少女は同じように少し困った顔をした、二人ともお礼を言われるのに慣れていないらしい。

 

 

「いや、なりゆきだから、その…な?」

「そ、そうですそうです。だから全然迷惑なんて。むしろ楽しかったです」

「そ、そうですか…?ほら二人とも、ちゃんとお兄ちゃん達にお礼は言ったのか?」

「「ありがとう!!」」

「歌のお兄ちゃん、またいっしょに歌おうね!」

「約束だよ!」

「…うん」

 

 

兄弟達はまるで最初から迷子じゃなかったみたいに元気で、少し二人との別れを惜しんでるようだ。そして妹が気まずそうに少女の手を握る。

 

 

「お姉ちゃん、さっきはごめんね」

「…なんでお前が謝るんだよ。悪いのはアタシの方だ、アタシの方こそごめんな」

「…うん!じゃあ仲直りしよ!」

「ああ」

 

 

妹が勢いよく少女に抱きつく、この短時間で大分懐いたみたいだ。その光景はとても微笑ましく、少女も満更じゃない顔である。

 

 

「そうだ。そんな風に仲良くするにはどうすればいいのか教えてくれよ」

「そんなのわからないよ。いつもケンカしちゃうし…」

「ケンカするけど、仲直りするから仲良しなんだ!」

「…そっか」

 

 

親子は何度も彼らにお礼を言ってその場を後にした。今の少女の質問には、どのような意図があったのだろう。

 

 

「…あの、もう大分時間遅いけど大丈夫ですか?」

「ん?ああ、大丈夫だ。心配は要らねぇよ」

「良かった、じゃあ僕はここら辺で。父親探し、手伝ってくれてありがとう」

 

 

そそくさと立ち去ってしまう彼。結局、二人はお互いの名を知ることなく別れることになった。もう会うこともないだろうし聞く必要もない、とでも思ったのだろう。それは少女も同じだった。しかし二人には少し違う点があって。彼は少女のことを明日にでも忘れてしまうかもしれないが、少女は彼のことが嫌に印象付いていた。前に何処かであったかもしれないという不思議な既視感。ただそれは間違いではない。

 

少女と彼は三日前に会っていた。お互いに顔は隠れていて、話すらもしなかったが。少女の名前は雪音クリス。三日前に立花響とデュランダルを巡って戦っていたあの少女である。どうしてそんな少女があの公園に居たのかは謎であるが。

 

 

 

 

『スバル、結局飯はどうすんだ?』

「あー…せっかく繁華街に来たんだし、米買うのはやめてラーメンでも食べてくよ。結構歩いて、人と話したからお腹ぺこぺこでさぁ」

『そんなこったと思ったぜ』

 

 

 

彼は何も気付いていない。これから食べるラーメンのことで頭がいっぱいなのだろう。今度の配信は歌でも歌おうかな、なんて言いながら財布を確認する。

 

 

『にしてもよ、名前聞かなくて良かったのか?せっかく普通に話せそうな相手だったのによ』

「いいんだよ。別に」

『俺の勘だけどよ、あの女とはまた会う気がするぜ?』  

「まっさか!」

 

 

ま、そうか。とウォーロックも冗談半分で言ったようだ。しかしウォーロックのこの勘は、後日当たることになる。

 

彼にとっての不幸は、もうすぐそこに来ているのだから。

 

 

 

 

 

 




まさかの戦闘無しでこの文字数!!!どうしてこうなるんでしょうか、いつの間にか膨れ上がってます。特に難産なポイントは無かった筈なんですけど。

あと始めて楽曲の使用を致しました。コピペしてコード張り付けるだけなのに緊張しました。
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