流星の配信者 作:メテオG
評価バー赤MAX…!!長年の夢が叶いました。夢かと疑う出来事が起きすぎてちょっと変な笑いが込み上げますね…皆さんありがとう…ありがとう…
今回また戦闘無しの回なんですけど、文字数はこいつが一番長いです。どうしてかは私にも分からない。
「ノイズ、最近出る頻度多いね。なにもこんな時間に出なくてもいいのに」
未明、彼の住む町でまたノイズが発生していた。数は少ないものの、まだ眠っていたい身体を無理やり起こしてノイズをロックマンとして狩っていく。しかしまだ日も上ってないのでとても暗い、更に雨も降っている。遠距離系のカードではノイズに当てられそうにないと判断して、ソードやスタンナックル等の近接系でノイズに立ち向かっていた。
空から鳥型ノイズが槍状に変形しながら襲ってくれば、真っ正面からノイズの槍の先端にスタンナックルをぶつけ強引に粉砕、遠距離から攻撃してくるならかわしながら高速で近づいてソードで切り裂く。時には泡に閉じ込め、時にはハンマーで叩き潰す。相も変わらず、ロックマンはノイズに一切の手加減をしない。
《夜中の突発配信助かる》《雨と暗さでよく見えん》《やっぱこの時間帯だから人少ないな》《ロックマンも眠いのか戦い方が雑だ》《それでも全員一発で終わらせてるんだよなぁ》
「雑なのは許して、暗くて手元がよく見えないんだ」
《しゃーない》《時間問わずノイズが現れたらノイズを狩るのよくよく考えてたら怖いな》《なんでこいつのアカBANされないんだ》《ノイズを始末することに命をかけた男》
「今面白いコメントが見えたから答えようと思うよ。僕のアカウントがBANされない理由だね」
《え、なに理由あんのそれ》《ロックマンのやることだ、今さら驚かん》《最初の方なんてノイズ以外にも機械仕掛けの赤牛とか相手にしてたもんな…》《あれは謎だった》《今こいつリンク張りの回転斬りしなかったか???》《デヤァァァァァ!!》《厄災ロックマンじゃん》《(ノイズにとって)厄災》《特異災害を滅ぼそうとする厄災》
「急に失礼すぎるだろ、まぁいいけど。僕のアカウントがなんで消えないかと言ったら、僕のアカウント自体が僕の正体を特定する手かがりだからっぽいよ」
《マジ?》《冗談ではなさそう》《やっぱ特定しようとするやつはおるんか》《じゃあなんで特定されてないんだ》
「んなのロックマンパワーだよ」
《便利な言葉だ…》《納得してしまう自分が居るの悔しい》
嘘は言ってなかった。実際彼の正体を日本政府や、他の国なども暴こうとしている。特に酷いのはアメリカだろうか?前に彼が配信を止めると同時に、配信していた場所に黒服が群がったことがあった。ロックマンの姿が見えてなかったので事なきを得たが。
彼はその対策としてロックマンとウォーロックの力をフルに活用して自分の正体を隠し続けている。位置情報だとか登録情報、その他もろもろ全てが配信する度に切り替わっているのだ。家で配信しているときもIPアドレスを切り替えているのだとか。ウォーロックさまさまである。
「というかバレても電波体だから捕まったりはしないんだけどね」
《ここまで色々説明するくせに電波体については説明しない配信者の屑》《一回過去の配信で語ってたけど難しい単語ばっかで皆理解を捨ててたからな》《こいつ絶対友達いないゾ》《頭は良さそうなんだけど》
「うるさいよ。元々説明が難しい概念なんだ、学のない僕に説明を求められても困る…今日は嫌に雑魚が多いな」
《雑魚…?人類最大の脅威が雑魚…》《ノイズを雑魚と言える胆力が欲しい》《偽善者め》《お。ロックマンアンチか?死滅したと思ってた》《最近見なかったもんな》
ノイズを追いかけながら配信を続けていると導かれるように路地裏に辿り着いた。周りには、ノイズだったと思われる炭が散っている。何者かにノイズが倒された形跡だ。シンフォギアの存在が脳裏に過ったがそれを直ぐ否定した。それにしては破壊の跡が少ない気がしたのだ。
もしこれが立花響ならもっと路地裏の壁が壊れている筈だし、もう一人のシンフォギア装者である風鳴翼ならこのせまい壁の何処かに傷がついていてもおかしくない。しかしこの路地裏は嫌にキレイだ。まるでノイズだけを狙い打ちしたみたいに。
「…あれは?」
《人じゃね?》《壁に寄りかかってうずくまってるな》《確実に気絶してるでしょ》《え、なに?事件?》《大雨が降る路地裏で傘も指さず倒れている女性らしき人影…閃いた!!》《←閃くな》
「ごめん、今日の配信はここまでになるよ」
《しゃーなし》《まあ明らかに不味そうだし…》《おつ》
「今日の夕方頃、出来たらまた歌配信でもやるから。じゃあね」
配信が切れる。周りにノイズの気配はもうないし、丁度良いだろう。電波変換は解除しないまま人影に近寄っていく。
「…!この間の…?」
そこに居たのは、二、三日ほど前に共に迷子の兄弟の親を探したラベンダー色の髪をした少女…雪音クリスだった。その身体は雨に濡れて分かりにくいがかなりボロボロで、どうやら熱も出ているようだ。このまま放っておけば命に関わるかもしれない、ということが素人目にも分かった。
『スバル、気付いてるか?』
「?何が?」
『この女、シンフォギア装者だ』
「…本当?」
『ああ、この女の胸元のペンダントを見てみろ。こいつぁシンフォギアのコンバーターだ。…大方さっきのノイズを倒したのもこいつだろうな』
「つまり、日本政府の管轄外のシンフォギア…?…前にトッキブツのサーバーで見たときに正規起動してるのはガングニールと天羽々斬だけだった筈だし…」
『さっきのノイズ共も、もしかしてこいつを殺すために放たれたんじゃねぇか?』
あり得ない話では無かった。ノイズを操れる存在、ついこの間夢の中で言及されたばかりのその考えは、驚くほど彼の中で抵抗なく受け入れられた。しかし、それはそれとして、目の前の少女をどうしたものか。彼がそんなことを悩んでいると、少女が苦しそうに何か一つ呟く。
「…フィー、ネ…どうして…」
───《フィーネ》。
その単語を彼が、ウォーロックが認識するよりも早く、身体の内側が弾け燃え上がるような熱を持ち始める。まるで今にも彼の身体を引きちぎって何かが飛び出してくる感覚。
『ガッ…ギキ…ッ!』
「ベルセルクが…暴れて…っ!?」
思わずその痛みに膝をつく彼。熱は収まることなく、彼の身体全体に広がっていく。次第に視界が白黒に点滅し、膝をついてることすら辛くなっていた。目の前の少女の様にその場にうずくまる、それでも痛みは引かない。
身体の節々からは、まるで《ウォリアーブラッド》を使った時の様に雷の戦士…ベルセルクのオーラが溢れ出している。流石にこれ以上は許容出来ない、そう言わんばかりに電波変換を彼の意思で無理矢理に解除する。そうすれば、ウォーロックが彼の中から弾かれる様に飛び出し、彼らを飲み込もうとしていたベルセルクの力も依り代を失ったかのように霧散していく。
彼は自分の中の熱が引いていく感覚を覚え、咄嗟にウォーロックの方に顔を向ける。彼が大丈夫でもウォーロックも同じとは限らないからだった。
「ロック!」
『…けっ、心配すんな…こっちも大丈夫だ…』
疲れきった顔でウォーロックは笑う。
『…とりあえず、この女を連れて家に戻ろうぜ。この女には間違いなく何かある』
「うん、そうだね…。…うん…?えっ待って家に?病院とかではなく?僕の耳が腐ったのかな、ロック。それともロックの口が腐った?」
『病院なんかに連れてったら事情が聞けねぇだろ!!』
「いや家に連れてっても事情は聞けないよロック…こう、名も知らぬ女性を家に上げるのはさ…」
『うだうだ言ってんじゃねぇ!こっから病院行くより家の方が近いだろうが!』
「いや、うん…それはそうなんだけど…こう一般常識的にさ…」
『一般社会に馴染めてねぇ奴がなに言ってんだよ』
「ぐ…」
『元々助ける気はあんだろ?』
「いや、うん…」
結局、彼がウォーロックに説き伏せられ少女を家まで運ぶことになった。基本的にウォーロックの勢いが強いので、口論などになれば負けるのは彼の方だったりする。彼は押しに弱かった。因みに救急車を呼ぶ発想も彼には無かった。
さて。それから数時間が経過した。既に日は登って、昼といってもいい時間帯である。少女は彼の布団の上に寝かされていた、着ていた服はどういうわけか乾いている。しかし少女は目を覚まさない、未だに高熱に魘され、意識は深い眠りの中にある。彼は時折額の上に置いたタオルを取り替えたりして看病をしている。
「…それにしても、フィーネってなんだろうね」
少女が無理に目を覚まさないよう、小声でウォーロックに語りかける。フィーネ。その言葉を少女が口にした瞬間にウォーロックの中のベルセルクが反応したのは確かである。ウォーロックと出会ってからの二年間で、ベルセルクが外界の何かに反応したことは一度も無かった。彼やウォーロックが語りかけても反応すらしない、あちらが語りかけることが時折あったとしてもノイズを狩れ、の一言だけである。
『さあな。アイツラにとって何かしら因縁のある相手なのは確かだと思うぜ。問題はなんでそれをこの女が知ってたのかって話だが』
「…うん」
今思い返してみれば、先日の様に悪夢を見ること自体も異常だ。彼はあの時以外にも、例えば巨大ノイズと戦うときなどで《ウォリアーブラッド》を使ったことがあるのだが、その時は使い終わって意識を失うことも無かったし、ベルセルクが何か言ってくることもなかった。
「ねぇロック、ベルセルクが約束を破ってまで出てこようとしたのってこれが初めてだよね」
『ん?ああ、そうだな』
「僕たちは、ベルセルクとベルセルクの闘争本能をノイズを倒すことで満たす代わりに、身体を乗っ取らないって約束をしてる」
『おう。まあ俺にとっては特になんのデメリットもない約束だけどよ』
「…駄目だ、全くわかんない」
むむむ、と頭を働かせるが全く答えが見えない彼。一体そのフィーネとやらが、ベルセルクとどんな関係があるのだろうか。そもそもフィーネとやらが人間なのか、物なのか単語なのかすら分からない。何か答えを導くためのパーツすら足りない気がする。推理パートは彼の担当ではないのだ。
「…この人が起きたときのために飯でも買ってこよっかな」
『なんだ?この間からお前妙に人助けするじゃねえか』
「別に今更変わりたいって訳じゃないよ。ただ、一回成り行きでも助けたんなら最後まで面倒見ないと。家で寝かしました、起きたら追い出します、はちょっと違うでしょ」
『ふーん、そういうもんかね』
「そういうもんだと思うよ」
今彼の家に食べれるのはカレーと白米しかない。当たり前だが病人にカレーは向いてるとは言えないし、白米だけだとちょっとあれかもしれない、それが彼の頭を悩ましていた。
『…お前が買い物行ってる間にこの女が起きたらどうんすんだ?』
「あ、確かにどうしよう」
『はぁ…女が起きてから買い物行けばいいんじゃねぇのか?』
「な、なるほど」
彼とウォーロックが暫く下らないコント擬きをやっていると、遂に件の少女が目を覚ました。
「っ!はぁ…はぁ…」
「ああ、良かった起きたんだ───「てめェッ!!!」」
彼が起きた少女に声を掛けて駆け寄れば、彼が言葉を発し終わるよりも早く少女の渾身の右ストレートが彼の顔面を殴り抜いていた。まさか少女が自分を殴ってくるなんて思わなかった彼は、衝撃を顔面だけでは殺しきれず、勢いそのままに後ろにひっくり返った。どんがらがっしゃん、そんな効果音がよく似合う転び方だ。
「ふーっ…ふーっ……あ?アンタはこの間の…?それに、ここは…」
「ろ、路地裏に倒れてたから…病院もあそこから遠くて、それで放っておけなかったんだ。ここは僕の家だよ」
少女が辺りを見渡す、少し悩んだ顔をしたものの状況を理解したらしい。少女は申し訳なさそうな顔をしてどもってしまった。
助けを元々望んでいなくても、一応助けてくれた人間を殴るのは駄目だよな、みたいな顔だ。彼にはその思いが余すところなく分かっていた。ウォーロックもそう言うところあるよなぁ、なんて殴られた事を忘れて微笑ましい気持ちになっていた。
「…そうかよ…殴ったのは悪かった。でも、別に助けなくてもよかったんだ」
少女が睨むように彼に告げる。きっと紛れもない本心だ。だがしかし、彼はそれを聞いてクスッと笑ってしまう。予想通りの反応だったからだ。
「何笑ってんだ!!」
「ご、ごめん。…それより、お腹減ってるんじゃない?今から何か軽く君の腹に入るもの買ってくるからさ、もう少し寝てていいよ」
「別にんなの要らねぇよ!助けてくれた事は礼を言うが、これ以上ここに居る理由は…!」
急に少女が立ち上がる。するとやはりまだ熱は退いてないらしく、ふらり、とよろけて布団の上に尻餅をついてしまった。この調子では、また何処かで倒れてしまってもおかしくないだろう。
「喉が乾いたら、そこの冷蔵庫に冷えたコップとスポドリが入ってるから飲んでいいよ」
「だ、だから!勝手に話を進めるな!」
「じゃあ大人しく待ってて」
少女、雪音クリスは心の奥底に隠しきれない孤独を抱えている。彼、星河スバルも同じだ。
孤独を抱えるに至った過程が違おうと、二人は何処か似ているのだ。例えば関わりを持つのが怖いところだとか、他人を拒絶しきれないところとか。だからこそなのか、彼はこうすれば少女は家から出ずに待ってくれるだろう、と半ば直感で当たりをつけていた。きっと自分もそうだからだ。
ウォーロックに念のため少女を見守ってほしいと告げて、まだ雨は降っているので傘を片手に玄関を開ける。
…さて、本当にいきなりだがここで少し話を変えよう。
彼の住む場所についてだ。彼は先程の路地裏から徒歩7分程度、木造の築うん十年のボロアパートの101号室に住んでいる。そして玄関のドアを開けて左を向けば直ぐ道路が見えるタイプ、しかもドアは右に開くので、このアパートの前を歩いてる人間には、特に101号室は部屋から出るところが丸見えだったりする。
「…スバル?」
「!!!??」
このように。
何が起こったかと言えば。彼が玄関を開けて道路に目を向けたその瞬間に、見知った顔である、彼にとっては会いたくない人でもある小日向未来と目が合ったのだ。
何故ここに彼女が?今は朝、寮暮らしであるはずの彼女がリディアンから遠いここに要る筈が、なんて考えが脳裏に過った。
彼は知らない、小日向未来が同室の立花響と喧嘩していることを。一緒にいるのが辛くなって早朝から出掛けていることを。
彼は理解を捨てた。本能が危険信号を鳴らして、彼はそれに逆らうことなくそのまま勢い強めで玄関のドアを閉めた。この間僅か2秒弱である、遅い。
「?おい、どうしたんだよ。行かないのか?」
「あ、あはは。…体調悪いと思うけどカレーでも良い?」
「はぁ?」
ピンポーン。彼の部屋のチャイムが鳴った。彼は硬直する、確実に小日向未来だ。出たくはない…が出なければ確実にまずい。…少し間が空いてもう一度チャイムが鳴る。彼は十数秒悩んだあと、もう一度玄関を開ける。
「…ひ、ひひ、久し、ぶり」
「久しぶり、スバル。…ごめんね、いきなりこんなことして。久々にスバルの顔見て、ちょっと焦っちゃって…」
どうやら彼の顔を見て条件反射でこんなことをしてしまったらしい。そんな事を言われても、彼にはどうしたらいいか分からない。一体何を焦ったと言うのか。
「…スバル、元気だった?」
「え、あ、うん…?」
「そっか」
小日向は彼の事をとても心配していたようだが、彼にはそれが一切伝わってなかった。はやくこの玄関を閉めたいな、しか考えていない。それと後ろの少女の事がバレたらなんかヤバそうだな、と。その予想は大正解なわけだが。
「ご、ごめん、小日向さん。僕、買い物に行かなくちゃいけないんだ…」
小日向さん、という、少し他人行儀な呼び方。それが小日向の心に小さくない動揺を与える。昔の彼は小日向の事を未来ちゃん、と呼んでいた。呼び方が変わっている、つまり心の距離が遠退いたという事でもある。二年会わないうちに、幼馴染みは何処か知らない人物の様になってしまったのでは、そんな風に小日向は不安を感じてしまう。
久しぶりに会えなくなった親友に会えて浮かれてしまった、これからどうすればいいのか?小日向の動きが止まる、つい彼から目線を反らしてしまう。…なにか、彼の部屋に見覚えのないものが見えた。
「スバル、その人、誰?」
彼の部屋は玄関から直線状に布団が置いてある。当然そこに居るのは少女な訳で。指摘されたくなかったものを指摘された彼はもう混乱の極みにいた。
「あ、いや!そのこの人は別に彼女とか友達ってわけじゃなくて…!?」
「え!?と、友達でもないのに部屋に居るの…?」
「う、拾った、というか…」
「女の子を!?」
ありえないくらい間違えた選択肢を全力で選び抜いていく彼。誤魔化して友達とでもなんとでも言っていれば素直に小日向もこの場を去ったであろうに。小日向はこの場を去る理由は無くなっている。更に、既に彼に生まれていた遠慮や申し訳なさは全て吹っ飛んでいた。
「スバル」
「は、はい!」
「詳しく話聞かせて」
反射的に頷いてしまった、彼は昔から小日向未来にだけは弱かった。尻に敷かれていたとも言う。いくら二年間会ってなかったと言っても、共に過ごした十一年間が無くなる訳ではない。残念ながら彼の身体は小日向に逆らえないと言うことを覚えていた。
結局彼はずるずると小日向に事情を大体全て話す。当然話せないような所は省いているものの、ギリギリ小日向の理解は得られた。
「スバル、買い物行くんでしょ?」
「う、ん」
「じゃあ、スバルが帰ってくるまで私がその女の子のお世話するよ」
「へ!?」
「スバル、女の子の身体拭ける?話聞いてた感じだと、シャワーとかも浴びてないんじゃない?」
「あー…」
「お願いスバル、手伝わせて」
『変なことになってきたな、スバル』
ウォーロックはそう言いながらも面白いものを見ているといった感じで、少女の横でケラケラ笑っている。
彼は彼で小日向に断りきれていなかった。一度小日向に待ってもらって少女に事情を説明する。当然少女は難色を示すがなんとか受け入れて貰えた。そして小日向を部屋に上げ、拙いながらも物の場所だけ教えて彼は買い物に出掛ける。彼の精神はこの短時間で大分疲弊していた。
◆
「…ありがとう」
「うん」
少女の背中を濡れたタオルで拭く小日向。少女の背中は、青アザや切り傷、火傷の跡だらけだった。思わず小日向は息を飲む、その傷痕が少女の辿ってきた人生の過酷さを語っていた。しかし小日向は少女に傷のことを聞くような事はしない、何も知らない自分が、聞いてはいけないと思ったのだ。
「なんにも、聞かないんだな」
「…うん」
少女と小日向の間に、沈黙が残る。それでも小日向は少女の身体を拭いている。少女の言葉に、小日向も何か思うことがあるようだった。きっと、小日向が寮ではなく、ここに居ることに関係があるのだろう。
「私は、そういうの苦手みたい。今までの関係を壊したくなくて…なのに、一番大切なものを壊してしまった」
「それって、誰かとケンカしたってことなのか?」
小日向は無言で頷く。また二人の間を沈黙が満たす。結局少女の身体を拭き終わるまで、沈黙は続いた。
「なあ」
「なに?」
「なよなよしたアイツ、お前の知り合いなんだろ?」
「スバルのこと?…うん、幼馴染みで、幼稚園の頃からの付き合いなんだ」
「…なんでアイツはアタシを助けたんだ?普通、路地裏で倒れてる奴をわざわざ家まで運ばねぇだろ」
少女は心底不思議そうな顔だった。それだけが納得いってないんだ、そう言いたげで。
「スバルは不器用だからなぁ」
「不器用とか、そういう問題か?」
「ふふっ、不器用で、優しいんだよ。だからきっと、貴女を助けたのに深い理由なんて無いと思う。倒れてるの見て、つい咄嗟に助けたのかも。家に運んだのは救急車呼ぶみたいな発想が浮かばなかったからかな?」
「…変なやつだな」
「うん。昔から、最初に会ったときからスバルは変なんだ」
小日向の言葉は、案外的を射ていた。きっと彼はウォーロックに言われなくても少女を助けようとしただろうし、確かにフィーネという言葉が気になったりもあったが、あの時少女を助けたのに、理由らしい理由は無かった。
「なぁ。お前その喧嘩したやつ、ブッ飛ばしちまえよ」
「え?」
「どっちがつええのかはっきりさせたら、そこで終了…とっとと仲直り。そうだろ」
「できないよ、そんなこと」
少女の暴論を小日向は否定する、その光景を見ていたウォーロックは強く少女の言葉に頷いていたが。
「…そうかよ、わかんねぇな」
「でも、ありがとう」
「ううん、ほんとにありがとう。気遣ってくれたんだよね…あ、えっと…」
「クリス。雪音、クリスだ」
雪音が小日向から視線を反らす。
「私は小日向未来。…優しいんだね、クリスは」
「んなことは─」
「私は!」
雪音が否定の言葉を吐き出す寸前で、小日向は言葉に言葉を被せる形で遮り、雪音の両手を包むように握る。
「私は、クリスさえよければ、クリスの友達になりたい。よければ、スバルとも友達になってあげて?」
優しい言葉だった。なにかを強要するわけじゃない、雪音に委ねるように、雪音の気持ちを縛らないように。そんな優しさが込められている、気がした。
だが雪音はそれを拒否しなければならない。雪音の過去が、それを許さない。
「ッ!アタシは、お前たちに酷いことをしたんだぞ…?今更、今更!そんな都合のいいこと…ッ」
絞り出すように吐き出されたその言葉。小日向にその意味は分からない、当然ウォーロックにも。雪音自身も、どうしてそんなことを言ったのか解らなかった。
そんな時。ノイズの出現を告げる、避難警告の音が街中に鳴り響く。
…そして、買い物を終えて帰ってきていた彼は玄関越しに聞こえる会話を背に、気まずくて入るタイミングを失っていた。
因みにクリスちゃんの服はバトルカード使って乾かしてます。ロックマンの無駄遣い。
あと原作になぞると原作写してるみたいな感じが出てる気がします…申し訳ない。