流星の配信者 作:メテオG
改めて毎話投稿する度に誤字報告を下さっている皆様には感謝しております、マジで書いてるとき気付かないんですよね…
外にノイズが現れたことを知らせる警報が鳴り響く。小日向は思わず立ち上がり、雪音に逃げようと伝える。
「お、おい!なんだよ!何から逃げんだよ!?」
「何ってノイズだよ!!ここから避難所は近いから、多分スバルも行くと思うし…!」
「ノイズっ!?」
雪音は、ノイズの警報を知らない。生きていてそんなことがあるのか?と小日向は邪推してしまうが今はそんなことをしている場合ではない、小日向はノイズの恐ろしさを知っている。親友が、ノイズを倒すために戦っているのも。
「…なあ、ノイズは何処に出たんだ?」
「え?え、えっと…商店街の方みたい、近くの避難所から遠いから─」
「商店街、だな?」
小日向はスマホを確認する、ノイズが現れた大体の場所が通知されるので、それを雪音に伝えた。それを聞いた雪音が立ち上がる、小日向は逃げる気になったんだ、と喜んだがそれは違う。まだ熱が残る身体で、雪音は部屋から飛び出した。バンッと玄関が開く。そうすると、入るタイミングを失い玄関の前で佇んでいた彼を押し退ける形になる。彼は情けない悲鳴をあげて転ぶが、雪音の耳にはそれは入らない。
既に避難は始まっている、雪音は避難し始めている人たちとは逆方向…つまり、ノイズが現れているのであろう方向へと走り出した。
「クリスっ!」
「いつつ…い、今のは…?こ、小日向さん?どうしたの…?」
釣られて小日向も部屋から出る。それに驚く彼、いきなりの事に理解が及んでいないらしかった。小日向は尻餅をついている彼の肩を掴んだ。
「す、スバル!大変、クリスちゃんが…!」
「え、あ、え!?く、クリスちゃん…って?!」
「貴方が助けた子!!それより、クリスちゃんもしかしたらノイズの居る方に行っちゃったのかも…!!」
ノイズの居る場所を聞いて飛び出した、しかも鬼気迫る表情だった、それは小日向に最悪の想像をさせるには充分だった。彼は部屋に居るウォーロックに目を向ける、そうすると小日向の発言に間違いはないと云わんばかりにウォーロックは頷いた。
「と、とにかく事情は分かったよ…小日向さんは先に避難してて。クリス…さんは僕が連れてくる」
「え…!?でも!」
「大丈夫…すぐ戻る、から」
小日向は納得しない。どうにかして彼を止めたい、が雪音も助けたい、そんな二つの感情がごちゃごちゃになっているようだった。
「…分かった。じゃあスマホ、ちょっと貸して」
「え」
「貸して」
スマホを渡す。まあロックもかけてるし大丈夫だと思ってたのだが、直後彼のスマホからロック解除を伝える音が鳴った。そこから自身のスマホも取り出して何やら同時に弄る。なんだろうか?彼がそう思っている間に、小日向はさっさと彼にスマホを返した。
「連絡先、入れておいたから」
「えっ」
「クリスを見つけて、避難所まで着いたらちゃんと連絡して。約束だよ」
「…分かった」
しぶしぶ、本当にしぶしぶといった感じで小日向と指切りを交わした。彼が人の手に触れたのはいつぶりだろうか、懐かしくなるくらいには触れていないのは確かだった。何か暖かいものに触れた気分になりながら、彼は雪音が向かった商店街へと走り出した。
『いいのかよ、スバル。あんな約束して』
「仕方無いよ。あそこで約束しなかったら絶対避難所まで引きずられてたと思う」
『おめーも尻に敷かれるもんなんだな、見てて面白かったぜ?』
「見てないで助けてよ」
『俺はお前以外には見えねーんだ、助けようがないだろ』
「…確かにそうだけどさ」
ウォーロックが彼の後ろに追随する。今日二回目の戦闘になりそうだからか、ウォーロックのテンションはやけに高かった。彼は逆にテンションが低い、当然と言えば当然ではあるが。
『にしてもよ。あのクリスってやつを助ける必要があんのか?シンフォギアがあるじゃねーかよ、あの女には』
「まぁそうだけど…もしもがあるから。あの熱がある状態でシンフォギアを纏えても戦えるとは限らないでしょ?一回助けたんだ、筋は通す。…それに」
『それに?』
「あの人は、僕や小日向さんの事を考えて、自分がノイズに追われてることを知ってて巻き込まないようにノイズの居る方に行ったんだ。…そんな好い人が割を食うのは、納得いかない」
『けっ、そーかよ』
「うん」
彼は人と関わる事を嫌うが、別に人が嫌いな訳ではない。そして彼は理不尽をとても嫌う。ノイズに襲われて死ぬ、災害だからどうしようもない。…そんな理不尽が一番嫌いなのだ。誰かのためになにかをしてる人が不幸な目に遭う、それも彼からすれば理不尽だ。それだけで、彼には充分助ける理由が出来ていた。
「電波変換!星河スバル、オン・エア…!」
この町のウェーブホールの場所を彼は全て把握している。彼は避難所へ逃げていく人々の流れに逆らい進みながら、往来のど真ん中にあるウェーブホールを踏み抜き、彼は姿を変えていく。その姿は、既に誰にも見えなくなっていた。
見えなくなればあとはどう動いてもいい、彼は空に伸びるウェーブロードへと跳躍し、最短距離で商店街へと向かう。その途中で雪音が居るはずだからだ。しかし、どういうわけか道中に雪音の姿は見当たらなかった。
「…っ一体何処に…?」
『あそこだスバル!!』
ウォーロックの声に視線を下げる。そこには、座り込んでいる雪音を取り囲んでいるノイズ達の姿があった。雪音は咳き込んでおり、シンフォギアを纏うための聖唱を歌えていないようだった。まずい、そう思ってウェーブロードから、飛び降り、彼の出せる最高速度で雪音の元に向かう─────が。
雪音の元に辿り着くまであと少し。そんな時に、彼の横を嵐が通る。いや違う、それは人だ。赤いシャツに2mを越えていそうな巨大な肉体、もはやそれは芸術的なまでに鍛えられている。漢、その言葉がもっとも似合う存在が、今、大地に立った。
そして今、有り得ないことが起きたことに彼は気付いた。彼は何度も言うが電波体、つまり電波で肉体が再構成されている。その彼の最高速度とはつまり電波が出す速さ…光とほぼ同等な訳である。それを今、彼の最高速度を越える速さで何が通った?人だ、人が、光の速さで動く彼を一瞬であろうと上回る速さで動いたのだ。一体それは人類に可能なのか?彼は、それが出来そうな人物を知っていた。
「風鳴、弦十郎…っ!?」
トッキブツ、特異災害対策機動部二課の司令。風鳴弦十郎。それが今、この場に現れた。
風鳴弦十郎は雪音の真正面に飛来、その勢いのまま着地する。そうすればその着地よ勢いに耐えきれなかったアスファルトの地面は悲鳴を上げ、クモの巣状のヒビが入り、一部は砕け捲り上がる。捲り上がった地面はなんと、飛行ノイズの突撃攻撃を受け止める盾として雪音を守った。偶然か?否、必然である。この漢は、アスファルトをただの着地だけで捲り上がらせ、あまつさえ盾として使ったのだ。
それからも風鳴弦十郎の行動は続く。捲り上げたアスファルトの壁を拳で粉々に砕きその破片をノイズへと打ち出しノイズ達を牽制、臆さずやってくるノイズの攻撃はまたアスファルトの盾をつくり耐える。最終的には、雪音を抱えて近くのビルの屋上まで跳躍してしまった。
まるでジャンルの違うアニメを見ているようだ、と彼は思ってしまう。それほどまでに、風鳴弦十郎は圧倒的だった。
「っ!僕たちも行くよ、ロック!!」
『ったりめぇだ!!あのゴリラに負けてたまるかよ!!!』
突然の出来事に硬直するが、負けじと彼も飛び出す。ソードを展開しビルの屋上に視線を向けているノイズ達を切り裂きながら、ウェーブロードにまた跳び移り雪音たちを追いかける。
「バトルカード、ジェットアタック1」
ウェーブロードに乗ればあとはこっちのもだと言わんばかりに、立花戦でも使ったジェットを展開し、ジェットの推力でビルの屋上まで直進していく。
「バトルカード!モジャ、ランス1!!」
雪音と風鳴弦十郎が視界に入る。同時に二人に襲いかかろうとする鳥型ノイズも。風鳴弦十郎は強いが、ノイズに通用する何かを持っているわけではない。位相差障壁は越えられず、ノイズに触れれば抵抗できず炭に変えられる、ただの人間だ。流石にそれはまずい、彼はウォーロックの頭部はジェットのまま、右手に長槍を出現させる。
身体は宙に、更に加速がついているという大分不安定な体勢でありながら、彼はノイズに槍を投擲する。かなりの速さで放たれた槍は一寸の乱れなく、直線上に並んでいた鳥型ノイズ二体を貫通する。それとほぼ同時に雪音が聖唱を歌い、その身に赤いシンフォギア、イチイバルを纏う。
「君は…!ロックマンか!?」
そして彼が二人の居るビルに着地、どうやら風鳴弦十郎には彼の姿が見えているらしい。聖唱により彼の存在比率、周波数が調律されたのだろう。雪音は警戒からか、条件反射でボウガンを彼に向けた。
「おっと。僕は別に二人の敵って訳じゃないよ、むしろその逆さ」
「なんだと…?」
「まぁ、細かい話も後にしてノイズを倒そうよ。ね、風鳴弦十郎さん」
「!驚いたな…俺のことも知っているのか」
「僕の事を調べてる相手のことくらい、こっちも調べるよ。そりゃあね」
彼は喋りながらも攻撃の手を緩めない、ウォーロックの頭部をガトリングに変え、一発も外さずに滞空しているノイズを撃滅していく。ここで風鳴弦十郎と敵対するのはあまりにも厳しい、恐らく彼が全力で戦っても勝てない相手だ。
「アタシのことはいいからアンタは他の奴らの救助に向かいな!」
雪音が風鳴弦十郎に告げる、滞空しているノイズへの攻撃手段を持たない風鳴弦十郎は、残念ながら足を引っ張ってしまう。それを本人も分かっているようだ。雪音はそのままノイズを引き付けるようにボウガンでノイズを撃ち抜き、ビルから飛び降りて、遠いもののノイズを倒すには充分な広さがある河川敷へと向かっていく。
「ついてこいっ!ノイズ共!!」
彼もそれに付いていこうとするが、風鳴弦十郎がそれを止める。何か、聞きたいことがあるらしい。
「…なんですか」
「君に、聞きたいことがある。君は敵か?味方か?」
風鳴弦十郎からすれば、彼が雪音を助けるようなメリットがあるようには見えない。トッキブツのシンフォギアたちと共闘したこともなく、出会えばすぐ逃げてしまう。それでいてノイズだけは狩りつくす、そんな不気味さすら覚える存在であったロックマンが、暗に雪音と風鳴弦十郎を助けると言ったのだ。
政府はロックマンを捕まえたいと思っている。誰にも見えず、それでいてシンフォギアと同等の戦闘能力をもつ。そんな存在を放っておける筈がない。しかし、ロックマンは一切その正体を掴ませない。半年間、政府は一筋の手がかりすら得ていない。どんな手を打とうともロックマンはそれを嘲笑うようにかわしている。そんなロックマンに、最近になって政府は対応を変えた方がいいのではないかと案が出た。
ロックマンが政府に味方をしないのなら、もしも敵なら排除した方がいいのではないか?そんな考えだ。シンフォギアを用いれば撃破も可能だ、とそんな声が。風鳴弦十郎はこれに反対していた、理由は色々あったが、一番はロックマンを信じたかったのだ。
そして、今、ロックマンを真意を聞く機会がある。
「…僕は味方でも敵でもありませんよ。僕は、僕のやりたいようにやるだけだ」
「なら─」
「ただ。貴方たちの邪魔はしません」
彼は言うだけ言って雪音の後を追う。彼の答えを聞いた風鳴弦十郎の心意は、まだ誰にも解らなかった。
◆
河川敷を駆ける
「てめぇ!!何のつもりだッ!!!」
「言ったでしょ、僕は敵じゃないんだって!」
「んなの信じられるかよ!」
ノイズの残り数もあと52を切った所。折り返し地点な訳だが、どうも雪音が歌を歌いながらも器用に突っかかってくる。雪音からすればロックマンはほぼ初対面、最初にあった時に圧倒的な力で立花響を止めていたのが、雪音がロックマンを少し恐れている理由だった。
「てめぇにはアタシを助ける理由なんてねぇだろうが!!」
「小日向って子に頼まれたんだよ、クリスを助けてほしいってね」
「なっ!?」
嘘は言っていない、嘘は。正確には自分から言い出したのだが。しかしその言葉を聞いた雪音は少なからず動揺していた、まさか小日向が雪音を助けたいと思っているとは微塵も考えていなかったらしい。
「っ、それが本当だとして、なんでお前がアタシを雪音クリスだって知ってんだ!?」
「言えないな、強いていうならロックマンパワーだよ」
「もっと上手い言い訳はねぇのかっ!?」
「ないなぁ」
「だーくそ!!気に食わねぇ奴だなお前!!!」
話している最中に巨大なノイズが唐突に出現、いきなり現れたことに雪音は一瞬引き金を弾くのを止めてしまうが、逆に彼は巨大なノイズ目掛けて跳躍し、頭の上で静止。
「バトルカード、ビッグアックス1」
彼の左腕まるごとが、巨大な両刃の斧に姿を変える。その大きさは彼の四倍はあるだろうか?そして斧は重力に従いノイズの脳天を目掛けて、彼の身体をまるごと引っ張りながら落ちていく。斧の切れ味は恐ろしいほど良く、現れたばかりの巨大ノイズを何もさせることなく真っ二つにしてしまう。
「口を動かすより手を動かしてくれ」
「~っ、言われなくてもやってやるよ!!」
雪音の感情に呼応するように構えるボウガンがガトリングに変形、合計12門から息つく間も無く弾幕と呼べる量の弾丸が放たれていく。《BILLION MAIDEN》、正に必殺技と言える威力である。彼の一撃に見劣らぬ、いやそれ以上の火力、彼は思わず息を飲む。先程彼が使ったガトリングを、ガトリングと呼ぶことが許されるのか疑問になるほどだ。敵に回したら勝てないかも、とすら思う。
「その調子で頼むよ!撃ち漏らしは僕がっ!」
「出来るもんならやってみろ!」
正に暴力、正に蹂躙。ほんの少し河川敷の地形を変えるほどの戦いが繰り広げられていく。ノイズは彼と雪音に一撃も加えることなど出来ない、攻撃のモーションを行うことすら許されない。彼は宣言通り雪音が撃ち漏らしたノイズをウォーロックバスターやデスサイズなどの出の早い技で倒す。さらにはまるで曲芸の様に、回転するデスサイズにウォーロックバスターのチャージショットを当てることで、チャージショットは乱反射拡散し周りのノイズを無差別に撃ち抜く。あり得ない速度で、全てのノイズが跡形もなく消滅した。この量のノイズと戦えてウォーロックもご満悦の様で、解りにくいが獰猛な笑みを浮かべていた。
「けっ」
「お疲れ様、本調子じゃないのにやるね」
「…わかんのか?」
「そりゃあね。じゃなかったら僕のサポートなんて要らなかったと思うし」
「…そーかよ」
体調不良を指摘された雪音は緊張の糸が解けたようで、どてっと川の上で座り込んでしまう。彼もロックマンとして戦いはじめて初の共闘、ノイズ狩りで慣れている彼も少し疲れてしまっているようで、今雪音が座り込まなければ彼が同じような事をやっていたであろう。その証拠に、彼の気はもう抜けきっていた。
それに少しは雪音のロックマンに対する恐れは抜けたらしい、無防備な彼にボウガンを向けるようなこともしていなかった。
「ロック、これからどうしようか?」
『ん、ああ…』
彼はどうやって雪音を小日向の元まで連れていけばいいのかを考える。このままでは確実に雪音を連れていくなんて無理だろう。一旦電波変換を解除してから改めて雪音の元に行って説得?駄目だ、その前に雪音は姿を消すのだろう。疲れきった彼の頭に良い考えは浮かんでこなかった。
彼がそんなことを考えている中で、ウォーロックだけが、今の戦いに違和感を覚えていた。相手はシンフォギア持ちとはいえたった一人にこの量のノイズを差し向けるものか?と。生まれながらの戦士の勘、という奴だろうか。あの数はまるで、最初から二人を相手取るためのものだった気までしてくる。いや違う、二人を倒すためではなく、体力をある程度削るための。
─────事実。その予想は完璧なまでに当たっていた。戦いはまだ、終わっていない。
『スバルッッ!』
ウォーロックだけがそれに気付き叫ぶ。彼の背後に向かって伸びる、鞭と思われる武装。彼は気が抜けていたせいで気づかない、反応できない。しかしウォーロックが気付いていたのは幸運だった。彼の意思に反して、ウォーロックの意思によって右腕を背後に伸ばす。拳の先に六角形のエネルギーシールドが生成され、紙一重の差で意識外からの攻撃を防ぐことに成功した。
「ほう?これを防ぐか」
それは、音もなく、いつの間にかそこに立っていた。金色の鎧に、蛍光色に発光する鞭を構えた、異様な威圧感を放つ金髪の女。
「誰だ…!?」
当然、彼はこの女を知らない。だが放つ威圧感は彼が出会ってきた敵の中でも最も強い、視界に入れているだけで、冷や汗が流れる。…そして、その女に呼応するように、彼の心臓が跳ねた、気がした。
「フィーネ…!?アタシを始末しに来たのか!!?」
「ハッ、今さらお前に興味などない。用があるのは…お前だ、ロックマン。いや、ベルセルクの適合者と言った方がいいか?」
ドクン、ドクンドクン。心臓が暴れる。
「私に復讐せんがためにその身を聖遺物へと作り変えていたとは…流石の私でも予想していなかったぞ、ベルセルク」
「フィー、ネ?…どうしてベルセルクの事を…!?」
フィーネと呼ばれたその女に、彼の言葉は届いていない。彼に用があると言っていたくせに彼に意識は向けておらず、フィーネの意識は彼らの体内に眠る…ベルセルクにあった。
『フィーネっつったか!?俺たちに何の用があんだよ!』
「簡単なことだ。私の計画の邪魔になりそうなお前を始末しに来たのさ」
『始末だぁ!?』
ウォーロックが吠える、それだけ警戒している証拠だ。フィーネのその発言から読み取れる、自分が弱者を殺す、絶対的強者なのだという自信。それが是が非でも彼とウォーロックに警戒を持たせる。最も恐ろしいのはウォーロックも無意識の内に自分達が弱者なのだと分かってしまっていることだった。あまりにも、存在の格が違いすぎる。
そんな中でふと、彼はフィーネという言葉の意味を思い出していた。それは、楽曲の終止を表す用語で、五線譜法の終始記号。つまりは、終わりを示す言葉。ベルセルクの見せた悪夢での言葉が甦っていく。彼の中で、何かが繋がった。
「フィーネ、終わりの名を、持つ者…」
「…知っているのか?私の事を」
ほぼ無意識で呟いた言葉に、フィーネの警戒が強まる。フィーネの中にほんの少しあった慢心が消えた。今にも戦いが始まる、そんな緊張感がこの場を支配していた。
「二年前のライブのノイズをけしかけたのは、お前?」
「この問答になんの意味がある?」
「…いいから、答えろ」
「もし、そうだと言ったら?」
彼はこの二年間で忘れてしまったものがあった。復讐心、彼から家族を奪った者に対する持っていて当たり前の感情。彼はそれを、きっと家族が悲しむ、望んでいないと、それだけで復讐を捨てた。あの日に自分の復讐はもう終わったのだと、自分に言い聞かせて。その筈、だった。
その筈だったのに、目の前に本物の復讐相手が居るというだけで、彼の血は蒸発するくらいに熱く、その目はこの世の何よりも濁り始める。抑えきれない、表現仕切れない何かが混ざりあったどす黒い感情が全てを塗り潰す、ウォーロックの言葉も何も届かない。
彼の内側で、ベルセルクが歓喜する。そうだ、それでいいのだと。怒りに、憎しみに、狂気に身を任せればいいと。既に肉体を無くした醜い亡霊の、
「───殺す」
─戦いの火蓋が、切って落とされた。
前回の話で厄災ロックマンが少し人気なのに笑いました。今思えば確かにパワーワードだ…。あと司令の強さはどれだけ盛ってもいいと思ってるのは私だけでしょうか。