巨乳JSの乳を触ったらヤンデレな許嫁になった件   作:青ヤギ

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パイタッチから始まるラブストーリー 前編

 東郷美森(とうごうみもり)といえば讃州中学のマドンナとして有名な存在だ。

 

 中学生離れした美貌と抜群のスタイル。濡れ光る黒髪に色白な艶肌。おしとやかな物腰に、何事もそつなくこなす姿は、まさに大和撫子と呼ぶにふさわしい。

 

 とうぜん多くの男子生徒が憧れの眼差しを(あるいは思春期特有の感情を)彼女に向ける。

 

「東郷さんみたいな人と付き合えたら、人生が薔薇色だろうな~」

 

 むしろ嫁に欲しい。毎日彼女の手料理が食べたい。

 などと言いつつ、甘い夢想に浸る者のなんと多いことか。

 

 それにしては、浮わついた話はひとつもない。

 東郷さんがあまりにも()()()()ということもあるが……いちばんの理由は彼女が車椅子生活を余儀なくされる身体であり、大親友の結城友奈(ゆうきゆうな)が常に付きっきりで面倒を見ているからだった。

 

 誰の目から見ても彼女たちの友情は強固であり、付け入る隙など微塵もない。

 あの二人の間に入ってまで東郷さんにアタックを仕掛ける度胸のある者はいないし、結城さんの代わりに手助けをする覚悟を持つ者もそういない。

 

 課外授業の一環で老人ホームのボランティアに行った際、車椅子生活をしている人の手助けをしたが……あれは想像以上に大変なことだった。

 レポートには「車椅子を押すことは、その人の身体の一部になることであり『この人なら任せてもいい』という強い信頼関係が必要になると実感しました」と書いて提出をしたら花丸を貰った。

 だから結城さんのように、いつも笑顔を絶やさず東郷さんのサポートをし、絶対の信頼を得ているのは凄いことだ。簡単に真似できることではない。

 

 もしも東郷さんと交際したいというのなら、結城さんと同じくらいか、それ以上の特別な存在になるしかないだろう。

 そして誰もが『それは無理だ』と、菩薩のような優しさを持つ結城さんを見て諦めるのだった。

 

 そんなわけで、べつに不可侵協定があるわけでもないが……ほとんどの男子生徒は学園のマドンナを遠目で見るわけである。

 

 かくいう、俺もそのひとりだ。

 

「なんだよ西条(さいじょう)。また東郷さんのこと見つめてんのか?」

 

「え? いや、べつに見つめてたわけじゃ……」

 

「相変わらず西条は東郷さんにお熱なんだなぁ。まあ気持ちはわかるけどよ」

 

「だから、そんなんじゃないって」

 

 クラスメイトの男子たちは、何かと東郷さん絡みで俺を弄るのが好きだ。

 何気なく東郷さんに視線を配るだけで、すぐにからかってくる。

 

「照れるなって。男ならあの特大バストを凝視しちゃうのはしょうがねえって」

 

「なっ!? 変なこと言うなよ! そんなつもりで見てたわけじゃ……」

 

「いやいや誤魔化す必要はねえぞ西条。あの中学生とは思えねぇ胸と美貌。見るだけで眼福だもんな」

 

「それな。いやぁ、同じクラスになれて超ラッキーだぜ。東郷さんマジ天使! 理想の巨乳美少女!」

 

「お前らな……」

 

 桃色の話題ではしゃぐ男子たち。

 近場にいる女子たちの非難の目が痛いからやめてほしい。

 東郷さんに聞こえていないといいのだが……。

 

 また東郷さんのほうに視線を配る。

 彼女はいつもどおり結城さんと楽しそうに談笑をしていた。

 こちらの品のない会話が届いている心配はなさそうでホッとした。

 

「……?」

 

 自分への視線を感じ取ったのか、東郷さんはキョトンとこちらに顔を向ける。

 俺は慌てて目を逸らした。

 逸らした先で、男子たちのニヤニヤと意地の悪い顔に迎えられた。

 

「やっぱり気になってるんじゃねえか」

 

「ち、違う! お前たちが変なこと言ってるから……本人に聞こえたらどうすんだよ」

 

「大丈夫だって、お互い教室の端っこなんだし」

 

「それに肝心の東郷さんは結城に夢中だしな」

 

 それもそうだが、当人がいる空間で話すべき内容ではないだろう。

 しかし火の着いた彼らの口は止まらない

 

「それにしても結城が羨ましいぜ。いつも東郷さんと一緒にいられてさ」

 

「まあ家がお隣さんらしいからな~。そもそも結城のコミュ力の高さが異常ってこともあるけど」

 

「わかるわ。なかなか真似できないよな、結城みたいなことは」

 

「結城がもしも男だったらとっくに付き合ってるかもな」

 

「そうしたらあの凶悪な代物が彼氏の特権で触り放題ってことじゃねえか……くっそ! 羨ましい!」

 

「いや、女子同士ならおふざけで、もう触り合ってるかもしれねえぞ!? くっそ! 結城になりたい!」

 

「つぅか、いったい何カップあるんだあのバスト? 大人のグラドルですらあのメガロポリス級は持ってないぜ?」

 

「目測だと、間違いなく90の大台と見たね」

 

「中二でそのサイズだと? ヤバくね?」

 

「はぁ~、一度でいいからあのおっぱいを触れたならな~」

 

「わかるわ。本当に一回だけでいいから、あのたわわなバストを触れたらな。そしたら俺もう死んでもいいわ……ってイテエエエ! 何すんだよ西条!?」

 

「拳骨で殴ることないだろ~!? つぅか武道やってるやつが素人の脳天容赦なく叩くなよ~!」

 

「当然の報いだ。これ以上の下劣な発言は俺が許さん」

 

 会話がさすがに際どすぎる流れになってきたところで武力で沈黙させる。

 女子たちの視線が軽蔑を通り越して殺意に変わりだしている焦りのためでもあるが……実際は自分の内心の動揺を抑えるためだった。

 

 俺は確かに東郷さんが気になっている。

 よく視線で追ってしまうのも否定しない。

 しかし、それは決してクラスメイトたちが期待するような理由からではない。

 ……いや、だからといって『色恋沙汰が絡んではいない』とも言い切れないのだが……

 

 俺が東郷さんをよく見てしまうのは、純粋な好奇心からだった。

 

 やっぱり、似ている……。

 

 初めて東郷さんを見たときは、本気で驚いた。

 もう会えないと思っていた人物と、彼女は瓜二つだった。

 しかし名前がぜんぜん違うし、彼女のほうは俺のことを覚えていないようだった。

 どうも事故のせいで、記憶が一部欠けているらしい。

 だから確かめたくても、確かめる(すべ)がない。

 

 他人のそら似かもしれない。

 最初こそ自分にそう言い聞かせていたが……やはり何度見ても、面影は重なるばかりだった。

 

 きっと何か事情があって、名前が変わった。

 そうとしか考えられないほど、東郷さんは()()()に似ている。

 

 間違いない。やはり彼女は……

 

 

 

 ――鷲尾須美(わしおすみ)さんだ。

 

 

 

 学園のマドンナ、東郷美森。

 学園中の男子がその美しさに見惚れ、大人顔負けの豊満な胸に対して桃色の妄想を浮かべる。

 叶わぬとわかっていても、誰もが東郷さんとお近づきになりたいし、あわよくば、その膨らみを好きにしたいと思っている。

 

 

 ……もしもだ。

 もしも彼女が、本当に俺の知る鷲尾須美その人であるならば……俺は全校男子の憎しみを一身に浴びるようなことをしている。

 それは何か?

 

 

 ひとつ。

 男子一同が憧れるその豊満な乳房を、俺は一度触っているということ。

 

 

 ひとつ。

 俺が彼女の――許嫁である、ということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の家は、そこそこ伝統のある弓道教室だった。

 古いしきたりとやらで、小学生時代は親元を離れて祖父母の家で暮らし、跡継ぎとして必要な教育を受けた。

 弓を持つのは中学生になってからという決まりだったので、主に礼儀作法を徹底的にたたき込まれた。

 

 通う小学校も『神樹館』という、四国でも特に有名な学園だった。

 人類を死のウイルスから守り、すべての恵みの源である《神樹様》の名を冠していることから、その格式高さは伺い知れる。

 通う生徒も、教育が行き届いた良家の子息令嬢が多い。

 

 鷲尾須美さんとは、同じ6年2組に通うクラスメイトだった。

 礼節を弁えた子どもが多い中でも、特に際立って決まり事に厳しい、いわゆる委員長タイプで、孤立していたわけではないが少し教室で浮きがちな少女だった。

 もう少し肩の力を抜いて柔らかな態度で人と接していれば友人も増えただろうし、綺麗な容姿も相まってさぞ男子の間で人気となっただろう。

 

 けれど神樹様にまつわる『御役目』とやらで一緒になった乃木園子(のぎそのこ)さん、三ノ輪銀(みのわぎん)さんと仲良しになってからは、親しみやすい一面を見せるようになっていた。

 のんびり屋の乃木さん。

 活発な三ノ輪さん。

 タイプのまったく異なるふたりと親交を結べているあたり、そこまで堅い人ではなかったらしい。

 

 その『御役目』とやらは基本的に極秘だったので、三人がどんなことをしていたのかは知らない。

 しかし、しょっちゅう怪我をしているところを見るに、穏やかな内容ではなかったのは間違いない。

 

 鷲尾さんのことを意識しだしたのは、たぶんその頃だ。

 

 鷲尾さんは怪我をしていても、いつも通りクラスのまとめ役をしていた。

 それがときどき無理をしているように見えて、どうも気になってしまった。

 特に、乃木さんと三ノ輪さんが御役目後の検査などで保健室に行って不在の間は、フォローしてくれる気安い相手もいない。

 

 鷲尾さんに声をかけたのは、ちょうどそんな日だった。

 

「鷲尾さん、ノート運ぶの手伝うよ」

 

 鷲尾さんは怪我をしているにも関わらず、クラス分のノートを職員室に運ぼうとしていた。

 念のため言っておくと、押しつけられたわけではなく、彼女本人が「持っていく」と言ったのだ。

 先生に頼まれたわけでもないのに、鷲尾さんは積極的にそういうことをする。

 だが、さすがに怪我をしている女の子にノートの山を持たせるわけにもいかないだろう。

 

 困った人が居たら見て見ぬフリをするな、とは祖父の教えだが、その教えがなくともひと声かけるべき場面のはずだ。

 そう思ったのだが……

 

「結構です。西条くんは次の授業の予習でもしていてください」

 

 鷲尾さんの反応は素っ気なかった。

 乃木さんや三ノ輪さんには砕けた態度を見せるようになった彼女だが、打ち解けていない相手にはまだ壁を作ってしまう。

 加えてもともと頑固な性格なのか、一度やると決めたことは他人に頼らず成し遂げないと気が済まないようだった。

 普通ならば、ここで彼女の雰囲気に気圧されて教室に戻る者がほとんどだろう。

 

 しかし、その日は俺も、鷲尾さんと同様になにやら頑固だった。

 危なっかしい彼女を見ていると、断られても尚食いついてしまう。

 

「怪我してる人にそんな重いの持たせられないよ」

 

「これしきの負傷、銀やそのっちと比べたら問題ないわ。神樹様に選ばれた者として、怪我を言い訳にせず普段どおりに生活しないと」

 

 その志は立派だが、やはり無理は良くない。

 ここは少し押し気味にいったほうがいいかもしれない。

 

「人に素直に頼ることも大事だと思うよ。ほら、せめて半分持つからさ」

 

「きゃっ! ほ、本当に大丈夫だから!」

 

 半ば強引にノートを取ろうとすると、鷲尾さんは避けるように身体を捻った。

 それがよくなかった。

 

「あっ……」

 

「っ!? 危ない!」

 

 バランスを崩した鷲尾さんが前のめりに倒れる。

 俺は咄嗟に手を伸ばして、崩れる身体を支えようとした。

 

 ここで、刹那の葛藤があった。

 

 鷲尾さんは怪我をしている。

 触れる場所によっては痛がるかもしれない。

 もし腹部を怪我しているなら、傷が開いてしまうかもしれない。

 肩なら、掴んだことで悪化させてしまうかもしれない。

 

 どこだ? どこに手を伸ばせばいい?

 一瞬の間、悩みに悩んだ末、俺の手が伸びた先は……

 

 

 

 むにゅ。

 

 

 

「「あ……」」

 

 よく、それはマシュマロに例えられる。

 しかし、初めて触れたソレは、とてもではないが、マシュマロと比較しきれるものではなかった。

 大きく、柔らかく、弾力性があって、瑞々しい。

 

 ――鷲尾さんのアレって、もう小学生レベルじゃないよね。

 ――すごいよね。アレで小学生は無理でしょ。

 

 よく女子たちがそう言って、羨んでいたことを思い出す。

 なるほど。

 確かに、ソレは小学生の少女が持って良い代物ではなかった。

 

 知らなかった。

 こんなにも想像を絶するほどの感触だったのか。

 

 いわゆる……

 

 

 

 おっぱい、というものは。

 

 

 

 誤解を承知で言い訳させてもらうと、それは本当に事故だった。

 決して狙って鷲尾さんの小学生らしからぬ膨らみを鷲掴んだわけじゃない。

 

 ……が、どうあれ。

 触られた彼女からすれば、セクハラ以外のなにものでもなかった。

 

「うわあああ! ごめん鷲尾さん! わざとじゃない! わざとじゃないけど……とにかくゴメン!」

 

 胸から手を離し、ひたすら謝る。

 鷲尾さんは廊下に落ちたノートも気にせず、胸元を庇うように身を抱きしめ、プルプルと震えている。

 

 怒っている。

 当たり前だ。

 アクシデントはいえ、胸を男子に触られてしまったのだから。

 ビンタで済むならまだラッキーだ。

 最悪、クラス中に告発して、俺を吊し上げにするかもしれない。

 女の敵、爆誕。

 俺はクラス中の女子から卒業まで白い目で見られることだろう。

 うぅ、小学校生活最後の年で教室が居心地悪くなるのは辛いな……。

 

 いや、しかしこうなった以上、俺も男だ。

 どんな罰も甘んじて受けよう。

 祖父もよくやらかして祖母に叱られるとき、そう言っている。

 

「……西条ナガトくん」

 

 俺のフルネームを呼び、ユラリと怨霊のように振り向く鷲尾さん。

 怖い。

 だが逃げるな俺。

 男なら責任を取れ。

 それが日本男児ってもんだ。

 

「こうなった以上、わかっているわね?」

 

 ああ、わかっているとも。

 鷲尾さんが望むなら、どんな罰でも……

 

「せ、責任を取って……私と結婚しなさい!」

 

 うむ、そうだな。責任を取って鷲尾さんと結婚……はい?

 

「よ、嫁入り前の娘の胸を触ったのよ!? お嫁にいけない身体にしたのよ!? だ、だから触ったあなたが責任を取らなきゃダメなの!」

 

 涙目で顔を真っ赤にした鷲尾さんがビシッと指を突きつける。

 

「これは決定事項よ! 有無は言わせない!」

 

「え、ええー……」

 

 

 

 神樹館6年2組、西条ナガト。

 齢十二歳にして、同級生で、美人でスタイル抜群で、少し思い込みの激しい許嫁ができた瞬間だった。

 

 

 

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