巨乳JSの乳を触ったらヤンデレな許嫁になった件   作:青ヤギ

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浮気はダメ、絶対

「さ、西条くん! 好きです! 私と付き合ってください!」

 

 思春期まっただ中の中学生男子にとって、女子に告白されることほど喜ばしいイベントはない。

 告白してきた相手が、とびきり可愛い女子ならば尚更だ。

 

 

 甘酸っぱい青春のいちページ……のはずだが、俺にとって、それは死刑宣告に等しい。

 

「ご、ごめん。気持ちは嬉しいけど……付き合えない」

 

「どうして!? お付き合いしている人がいるの!?」

 

「それは……」

 

 まさか許嫁がいるから、とは言えまい。

 それも超のつくほどに嫉妬深くて、浮気したら迷わず「心中してもらう」と断言するような許嫁が。

 説明したところで、からかわれているとしか思えないだろう。

 

 そもそも学園のマドンナと許嫁関係であることがバレたら、全校男子すべてを敵に回すことになるので、はなから打ち明ける勇気などないが……。

 

 なので。

 

「好きな人がいるんだ。だから、ごめん……」

 

 こう言って断るのが、無難にして最善だろう。

 誠意を伝えれば、向こうも納得してくれるはず……

 

「……いや!」

 

「え?」

 

「いや! 諦めきれない!」

 

「ええ!?」

 

 しかしお相手は決して退かない『頑固さん』だった。

 

「好きな人がいるですって? 関係ないわ! 私がその人のことを忘れさせてあげる!」

 

「わ、忘れさせるって……」

 

「『私のほうが好き』ってなるように振り向かせてみせる! 自信があるわ!」

 

 なんだその根拠のない自信は!?

 

「そ、そんなこと言われても困るよ!」

 

「いや! 諦めたくない! 好きなの!」

 

「なっ!?」

 

 彼女は俺に力一杯に抱きついてきた!

 ま、まずい!

 こんなところ、東郷さんに見られたら……

 

「……ナ~ガ~ト~く~ん?」

 

「ひっ!?」

 

 背後にはいつのまにか東郷さんが立っていた。

 案の定、目から光が失われた般若顔で。

 

「あれほど浮気は許さないって言ったのに……。裏切ったわね、ナガトくん?」

 

「ご、誤解だ東郷さん! 俺はちゃんと告白を断ろうと……」

 

「だったら何で抱擁を受け入れているの!? 何ですぐにその女を突き飛ばさないの!?」

 

「いや、怪我させたら悪いし……」

 

「キィィィー! 私への愛が本物ならできるはずでしょ!? あなたの愛はそんなものなの!?」

 

「そ、そんな無茶苦茶な!」

 

「問答無用! 私の愛を裏切った罪は重いわ!」

 

 そう言って東郷さんが取り出したのは……

 

 出刃包丁!?

 

 どこからそんなものを!?

 

「さようなら、愛しい人……来世ではきっと結ばれましょうね……」

 

 虚ろな瞳で刃先を俺に向ける東郷さん。

 ヤバい!

 

「と、東郷さん! 落ち着いて! 話し合おう!」

 

「話し合いで済んだら国防仮面はいらない!」

 

「国防仮面って何!? というかほんとうに待って! シャレにならないから!」

 

「私はいつだって本気よ! うわあああああああ!! 国防ばんざぁぁぁぁぁい!!」

 

「ぎゃあああ!!」

 

 謎のかけ声と共に東郷さんは出刃包丁をふるい落とす。

 神聖なる学び舎に、悲惨な血しぶきが吹き上がり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああっ!!!」

 

 というところで、ベッドから起き上がった。

 

「ゆ、夢か……」

 

 自分の身体がどこも傷ついていないのを確認して、ほっと胸を撫で下ろした。

 

 なんて恐ろしい夢だ。

 とても「夢でよかった」とは言えない。

 充分に現実でも起こりえそうな内容なあたり、なんともタチの悪い夢だ。

 

 自分みたいな堅物に告白してくる物好きはいないとは思うが……万が一、そういう状況にでもなったらと思うと、震えが止まらない。

 正夢にならないことを願うばかりである。

 

「どうしたのナガトくん? いきなり叫び声を上げて」

 

「うわあああ!? 東郷さん!?」

 

「きゃっ。ほんとうにどうしたの?」

 

 自室にいる東郷さんに声をかけられて、思わず跳ね上がる。

 まさか悪夢の続きか、と慌てたが……そうだ。休日の朝は、こうして俺を「起こしに来る」と約束をしていたんだった。

 

 記憶を取り戻し、改めて許嫁関係を結んできた東郷さんは、頻繁に俺の実家に来るようになった。

 物腰が丁寧な彼女はあっという間に俺の両親に気に入られ、すでに顔パスの状態である。

 

 今日は午前から一緒に出かける約束をしていたので、ここにいるのは別に不自然なことではない。

 ただ、タイミングが悪かっただけだ。

 

「ご、ごめん驚かさせちゃって。ちょっと、夢見が悪かったもんだから……」

 

「まあ、そうだったの? 確かに凄い寝汗だわ。かわいそうに……よほど怖い夢を見たのね?」

 

「そ、そうだね……」

 

 悪夢の原因は目の前の君だ、とは口が裂けても言えないな……。

 

「ジッとしてて。汗拭いてあげる」

 

 そう言って東郷さんはハンカチを取り出し、額の汗を拭ってくれた。

 

 必然的に東郷さんとの距離が近くなる。

 

「……っ」

 

 やっぱり、東郷さんって綺麗だな。

 

 間近で見れば見るほど、その整った顔立ちに見惚れてしまう。

 しかも、いまの東郷さんは私服姿だ。

 大人っぽい服装に身を包むと、彼女が同い年の女の子であることを忘れてしまいそうになる。

 

 きっと、女子大生と偽っても誰も疑わないだろう。

 それほどに大人びた美しさと、色っぽさがある。

 

 落ち着いた雰囲気がそう思わせるのだろうが……やはり私服を押し上げるほどに大きい、胸のせいでもあるだろう。

 

 東郷さんはコルセットのような、ウエストを抑える服装を好む。

 おかげで、ただでさえ細いくびれがより強調される上に、大きい胸の膨らみもさらに存在感を増すのだ。

 

 その美貌と抜群のスタイルは、とうぜん街中の男たちの視線を独り占めにし、一緒に歩いている俺はよく羨望と嫉妬の対象として睨まれる。

 

 こんな綺麗な女の子が俺の許嫁だなんて、いまだに信じられないな……。

 

 過剰な嫉妬深さも、こうして甲斐甲斐しく世話をしてくれる姿を見ると、なんてことのない障害とさえ思えてくる。

 

 そう考えてしまうあたり、やっぱり俺は二年前からずっと、彼女のことが……

 

「……そんなに見つめられたら、恥ずかしいわ」

 

「え? あ、ああ、ごめん」

 

 つい、まじまじと東郷さんを見てしまっていたらしい。

 東郷さんの白い頬が桃色に染まるのを見ると、こちらの顔も熱くなった。

 

「あの……似合ってるよ、その服」

 

 恥ずかしさを誤魔化すため話題転換をしたが、余計に体温が上がるようなことを言ってしまった。

 東郷さんも照れくさそうに、もじもじとしている。

 

「あ、ありがとう。お出かけのために少し気合いを入れてみたのだけど、変じゃないかしら? ほんとうに似合ってる?」

 

「も、もちろん。こんな綺麗な人が許嫁だなんて、俺って幸せ者だなと思ったくらいさ」

 

 いったい俺は何を口走っているのだろう。

 東郷さんの私服姿を見て、頭に血が昇ってしまっているのかもしれない。

 穴があったら入りたい気持ちになってきた。

 しかし、東郷さんは嬉しそうに微笑んで、熱い眼差しを向けてきた。

 

「もう、ナガトくんたら……。ほんとうに、そう思ってくれてるの?」

 

「あ、当たり前さ。東郷さんのこと、この世で一番きれいな人だと思ってる」

 

 茹で上がった頭では、もうクサい台詞しか口にすることができないようだ。

 

 ええい。

 もうこうなったら、ヤケクソだ。

 いくらでも惚気てやる。

 

「そう。……そう言ってくれるのね、ナガトくん」

 

「と、東郷さん?」

 

「うふふ」

 

 ギシッ、とベッドの上に乗り出したかと思うと、東郷さんはその美顔をぐいと近づけてきた。

 唇と唇が触れそうなほどに近く。

 

「そんなこと言われたら、我慢が効かなくなってしまうわ」

 

 ゴクリ、と思わず唾を飲み込んだ。

 

「が、我慢っていったい何を?」

 

「もう~。言わなくてもわかるでしょ?」

 

 まるでほんとうに女子大生のお姉さんのように、東郷さんはクスクスと艶やかな笑みを浮かべる。

 

 寝起きの朝。

 二人きりの空間。

 私服姿の美しい許嫁。

 ベッドの上。

 

 頭の中が()()()()想像でいっぱいになるのは、健全な14歳としては、しょうがないことだと思う。

 ま、まさか東郷さん。こんな朝っぱらから……

 

「と、東郷さん。いくら許嫁でも、さすがにそういうことはまだ早いかと……」

 

 そう言って「待った」をかけた瞬間……

 

 視界が、女性の胸の谷間でいっぱいになった。

 

 

 

 

 

 ――()()()()()()()()が。

 

「ねえ、ナガトくん。ほんとうに私のことを一番だと思っているなら……」

 

 ()()()()と、谷間が揺れる。

 

「どうして未だに、こんな破廉恥な雑誌を読んでいるのかしら~?」

 

 雑誌のグラビア写真が視界から除けられると、目から光彩を消した許嫁の笑顔とご対面する。

 

 ……ああ、どうやら、まだ悪夢は続いているらしい。

 

 

 

 

 健全な男子中学生ならば、いかがわしい本の一冊や二冊は持っているというもの。

 

 しかし、情操教育がかつての西暦よりも厳しいこの神世紀では、そういったアイテムを手にするには、うんと年上の兄弟がいない限りは難しい。

 

 なので、ひとりっ子である俺が所有しているお宝など、せいぜい青年向けのコミック誌に掲載された、グラビアアイドルのピンナップぐらいである。

 

 際どい写真には違いないが……それでも中学生が見るぶんには問題のない、規制の対象とまではならない代物のはずである。

 

 のはずだが……許嫁にとっては、そんなことは関係ない。

 

 自分以外の女の、いかがわしい写真を見ている時点で……

 

 充分な制裁理由となる。

 

 

「ナガトく~ん? 私、この前に言ったわよね? 私がいる以上、こんな破廉恥な読み物はもう必要ないわよねって。次に来るときまでには処分しておいてねって……約束したわよね~?」

 

 なんとも素敵な笑顔で問い詰めてくる東郷さん。

 相変わらず怖い。

 だが、今回ばかりは俺も譲れない。

 

「ままま、待ってくれ東郷さん! 俺はただ純粋に掲載されている漫画が読みたいだけなんだ! いまだって凄く気になるところで終わってるんだ。だからせめて購読くらいは許して欲しい!」

 

「なら単行本が出るまで我慢しましょうね♪」

 

 鬼か東郷さん!?

 雑誌派の人間にとって、単行本の発売日まで待つのはキツいものがあるというのに!

 

「そもそもナガトくん。読んでいるのが漫画だけなら、そこを切り取るなりすれば、後のページは無用のものよね? こうして大事に取って置いているのは……頻繁に見ているからではないの?」

 

「……」

 

 図星である。

 

「……まあ、私だって、年頃の男の子がそういうことに興味を示すのは仕方ないことだと理解しているわ」

 

「え?」

 

 意外だ。

 真面目な東郷さんのことだから、破廉恥なこと自体許さないと思っていた。

 

「でも、やっぱり複雑なの。許嫁が私以外の女性の身体に関心を示すのは」

 

「それは……」

 

 逆の立場になったら、俺だってそう思うだろうな。

 そう考えると、東郷さんの気持ちに応えてあげたくなるが……いや、しかしやはりお宝を手放すのは……

 

「というわけで、最終手段を使うことにします」

 

「はい?」

 

 最終手段?

 いったい何をする気だ……って!?

 

「と、東郷さん!? なんで服を脱ぐの!?」

 

 東郷さんがとつぜん目の前で服のボタンを外し始めた!

 慌てて目を逸らす。

 

「ダメよナガトくん。目を逸らさないで、しっかり見て」

 

「見れないよ! いいから服を着て……」

 

 と言いつつ、チラっと指の隙間から見てしまう悲しき男のサガ。

 視線の向こうには……

 

 

「み、水着?」

 

 一瞬、派手な柄の下着かと思ったが……どう見てもそれは海水浴用のビキニであった。

 

「うぅ、恥ずかしいわ」

 

「恥ずかしいなら、なぜこんなことを!?」

 

「だって、ナガトくんがちっとも私のお願いを聞いてくれないんだもの。こんなこともあろうかと、服の下に着込んできて正解だったわ」

 

「どういう状況想定したらそうなるの!?」

 

「すべてはナガトくんを私の身体でしか満足できないようにするためよ!」

 

「ちょっ!?」

 

 そ、それって……言葉どおりの意味なのか?

 

 ま、まさかいきなり水着でだなんて、マニアック過ぎじゃ……

 

「そういうわけでナガトくん! 存分に私の水着姿を撮影するといいわ! 破廉恥な写真集なんてもう見る気がなくなるほど存分に!」

 

「あ。そういうこと……。いや、それもそれでどうかと思うけど」

 

 と言いつつ……

 

「こ、こうでいいかしら?」

 

「うん。そのままジッとしてて」

 

 俺の手はスマホを手にし、水着姿の東郷さんを撮影していた。

 男って本能に抗えない悲しい生き物なんだ。

 

 だって仕方ない。

 なんたって東郷さんの水着姿だ。

 あの東郷さんが、部屋の中で水着姿で、撮影をさせてくれるのだ。

 抗うほうが無理だ。

 

 

 生地の少ない、フリル付きのビキニ。

 中学生が身につけるには、やや背伸びした小生意気なデザイン。

 だが……東郷さんが身につけると、それは究極の悩殺兵器と化す。

 

 ポーズを変えるたびに揺れる白い巨峰。

 くびれたウエストは同じ内臓が入っているのか心配になるほど細いくせに、腰から先はなんとも色っぽい丸みが広がり、たわわなヒップが波打つ。

 ボトムから伸びるすらっとした生足は、適度に肉付いていて『むちむち』という効果音がいまにも聞こえてきそうだった。

 

 改めて痛感する。

 東郷さん、そのボディで中学生は無理でしょ?

 

 シャッターの音が鳴り止まない。

 いくら許嫁相手だからって、こんなことをしていいのか?

 そんな葛藤が何度も湧いたが、シャッターを押す指が止まることはない。

 

「ナガトくん……そんなに夢中に……はう、あなたの目線がとても熱いわ……」

 

 熱視線から逃れるように、東郷さんは恥ずかしげに身をくねらせる。

 

 揺れる乳房。

 内股になってムチッと重なる太もも。

 艶っぽく吐息をつく、東郷さんの真っ赤になった表情。

 

 ますますオスを煽る反応を見せる水着姿の許嫁を、カメラに収めていく。

 

 いったい自分はどうしてしまったのだろう。

 自分が自分でないようだ。

 

 燃える。

 シャッターを押すたびに心が燃え上がっていく。

 写真は愛だ。

 そう、これはきっと愛の撮影会なんだ。

 許嫁のみに許されし時間。

 その瞬間を一分一秒逃すこと無く、カメラに納める情熱の時間なのだ。

 

 止まるな指。

 刻めカメラ。

 千年に一度と断言していい、奇跡の美貌とボディを持って生まれた究極の美少女を。

 その水着姿を。

 余すこと無く記録するのだ!

 

「くちゅん」

 

「……」

 

 ちなみに、世間はすでに秋も終わる季節である。

 

「えーと……そろそろ服着よっか?」

 

「そうさせてもらうわ……」

 

 お互い我に返ると、しばらく顔を合わせることができなかった。

 

 

 

 

 部屋の暖房を効かせて、いそいそと着替える東郷さん。

 待っている間に、俺はひとつの作業を始める。

 

「何をしているのナガトくん?」

 

「漫画の切り抜き」

 

「え?」

 

 連載を追っている漫画のページだけを切り、残りは資源ゴミとしてまとめ、ビニール紐で結ぶ。

 

「……自分から言った手前でなんだけど、いいの?」

 

「東郷さんが嫌がることはしたくないしね」

 

「……ごめんなさい。ワガママな許嫁で」

 

「今更気にしないさ。二年前から、とっくに慣れてるし」

 

 そう言うと、東郷さんは照れくさそうに赤くなった。

 

「私、どうしても不安になってしまうの。ナガトくんが、他の女の人を好きになったらどうしようって……。ただでさえ、ナガトくんって女の子に人気だし」

 

「え? いやいや、そんなわけないだろ。俺、女子にモテたことなんて一度もないぜ?」

 

「ナガトくんが知らないだけよ。弓道部を見に来てる女の子たち、ナガトくんが目当てな子が多いのよ?」

 

 そ、そうなのか?

 弓道が物珍しいから、ちょくちょく見に来てるだけだと思っていたが……

 

「私、ただでさえ思い込みが激しいし、周りが見えなくなるし、それで一度とんでもないことをしてしまって……」

 

「……」

 

「だから、いつかナガトくんに失望されてしまうんじゃないかって、不安で……」

 

「俺が好きなのは、東郷さんだけだよ」

 

「……ふえ!?」

 

 言いたかったこと。

 言えなかったこと。

 

 二年前に伝えられなかったことを、いまこそ伝える。

 

「許嫁だからとか、そんなのは関係なしに、俺は東郷さんが好きだよ。この世の誰よりも幸せになってほしいと本気で思ってる」

 

「ナ、ナガトくん」

 

「その幸せに俺が貢献できるって言うなら、こんなに誇らしいことはないよ」

 

「そんな……わ、私だってっ……私だって、ナガトくんのこと、幸せにしたいわ!」

 

「そっか。嬉しいな。お似合いだね、俺たち」

 

「はう……」

 

 直球な言葉に身もだえる東郷さん。

 かわいい。

 とても愛しい。

 そんな許嫁の手を握る。

 

「あの頃の俺は、本当に何もしてあげられなかった。だから今度こそ、東郷さんのために力になりたいんだ」

 

「ナガトくん……」

 

「不安になることがあるなら、ぜんぶ聞く。耐えられないくらい辛いことがあったら、ぜんぶ受け止める。俺にできることなら、なんだってする。ひとりで抱え込まないでくれ」

 

 あの頃にはできなかったことを成し遂げてみせる。

 だから……

 

「俺を信じて、頼ってくれないか? ――美森」

 

 初めて、彼女の名を呼ぶ。

 心の距離が縮まることを信じて。

 

「……はい、旦那様っ」

 

 笑顔を浮かべる許嫁。

 この笑顔を今度こそ守りたい。

 不安になることなんて無くなるくらいに、彼女を幸せにしてみせる。

 そんな男に……彼女に相応しい夫に、なってみせよう。

 そう、誓った日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに。

 この一件で、グラビア雑誌の類いを買う必要性は一切無くなったことを、明記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 楽しく休日を過ごした翌日、学校の玄関で、結城さんと美森と会った。

 

「あ、西条くんおはよう!」

 

「おはようございます、西条くん」

 

「おはよう、結城さん。み……東郷さん」

 

 変に注目の的になることを避けるため、俺たちが許嫁同士ということは学校では秘密にしている。

 美森の親友である結城さんも知らないので、二人きりのとき以外は、基本的に名字呼びだ。

 

 学校では、あくまでクラスメイトとして振る舞う。

 お互いそう決めたが……ついつい名前で呼びそうになってしまうな。

 気をつけねば。

 

「……ふふ♪」

 

 そんな俺の慌てぶりを微笑ましく見るように、美森は意味ありげな目線を寄こした。

 

 ……なんか、こういう秘密の関係って、背徳的でドキドキするな。

 昨日、美森の水着姿をカメラに撮ったことなんて、誰も知らないわけである。

 そのことに、妙な優越感が湧いてくる。

 

 ……っと、いかんいかん。

 授業中などに、あの強烈な水着姿を思い出したりしたら大変だ。

 煩悩退散、煩悩退散と頭の中で唱えつつ下駄箱を開けると……

 

「ん?」

 

 下駄箱の中からヒラリと落ちる一枚の紙きれ。

 

「あ、西条くん。何か落ちたよ」

 

 結城さんが親切に拾ってくれたソレは……

 え? ま、まさか、それって……

 

「わわわ!? さ、西条くん! これって、もしかしてラブレターじゃない!?」

 

 結城さんが差し出したもの。

 確かに、それはラブレターを連想させるピンク色の便箋だった。

 

「げ、下駄箱に入ってたからってラブレターとは限らないんじゃ……」

 

「だってハートマークのシールが付いてるよ!? 絶対ラブレターだよ! ふわわ、すごい!」

 

 結城さんはまるで当事者のように「あわわ」と頬を赤くしてはしゃぐ。

 

「東郷さん! ラブレターだよ! 西条くんってモテるんだね~!」

 

「エエ、ソノヨウネ。西条クン、モテモテミタイネ」

 

「ひっ!?」

 

 目をバッテンみたいな形にして興奮する結城さんの横で、美森は氷の微笑みを浮かべていた。

 

 

 ――信じているからね? あ・な・た?

 

 

 エメラルドのような瞳が、そう語っていた。

 

 

 手紙の送り主には申し訳ないが……誠心誠意を持って、全力で断ろう。

 あの悪夢が正夢にならないことを願う。

 

 

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