ゴブリンスレイヤー異聞:鬼滅の剣士(デーモンスレイヤー)   作:生死郎

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ゴブリンスレイヤーが「オルクボルグ」「かみきり丸」になるのであれば、流水剣はエルフ語とかではどう訳せるのでしょうね?


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 轟音と熱風が吹き抜けた後に残るのは、ぷすぷすと煙をあげる床の石材は割られ、黒く焦げていた。

 水の都の地下水道は古代の遺跡ともつながっている。通路の横にある玄室の、古びた床は割られた石材だけでなく、黒く焦げて生まれた汚れがいくつかある。

 その汚れをかつりと優美な足音で踏むしめて、魔女はその美貌に嫋やかな微笑みを浮かべた。

 彼女の手には金属ともつかぬ木の短杖があり、施された彫金が魔力の輝きを宿している。水の都へ行く前の冒険で得た報酬で魔女が購入した品である。

「やっぱ、り……一本、ある、と……便利、よ……ね?」

「一日で使える回数に限りはあるが魔力資源(リソース)の節約ができるのはありがたいな」

 火球の杖(ファイアーボール・ワンド)をゆるやかにしまう彼女の横で、流水剣は言う。

 得体の知れぬ怪物どもが蠢く空間へ踏み込むに当たって、先手(イニシアチブ)を取れればやることは一つ。何はなくとも《火球(ファイアーボール)》というのが高位の冒険者がやる手法の一つであるらしい。

 無限の体力があるわけでもなし。襲撃と略奪(ハック・アンド・スラッシュ)にだって節約は重要だ。

 火の玉を放り込んだ後、雪崩を打って飛び込んでから蹂躙すれば良い。もっとも呪文の数にも限りがあるから──せめても、魔法の品の類があってこそ、だが。

 魔女を庇って玄室に入り、注意深く周辺を警戒しながらも、やっぱり魔法は派手で格好いいな、と流水剣はふとそんな事を思う。

 瑠璃のように澄んだ声で呪文を紡ぎ、魔法を放つ魔女の姿は何度見ても美しく格好いい。

 流水剣はそう思いながら、問題なしの合図を入口で待つ魔女と女戦士に送って、手招きをした。

 魔女は全幅の信頼を置いているかのように、疑いもなく歩み進めてくる。

 肉感的な肢体をくねらせての歩き方は、淑女が舞踏会を行くが如く。自分の実力を信頼していなければできないそれは、流水剣としては心が躍るものだ。

 斥候(スカウト)野伏(レンジャー)の技術がない流水剣としては、有り余る身体能力と感覚と観察力で探索するべきだろう。ないものねだりしても仕方ないことだ。分かっているが……、魔女や女戦士の前を歩きながら流水剣はふと呟いてみた。

「たしか小鬼だか土の傀儡を作って操る魔法があったよな。あれを先行させて罠とかを潰させるのは便利そうだよね」

 落とし穴や吊り天井、古の呪詛。そういった罠のあれこれを真っ先に当てさせた後に自分たちが乗り込めばいい。

「便利。……かも、だけ……ど」

 魔女の言葉は、珍しく歯切れが悪かった。

 呪文使いらしく曖昧模糊とした言い回しを好む彼女だが、言い淀むという事は少ない。

 流水剣は、ひょいと肩越しに相棒の様子を見やった。

「覚えてなかったんだっけ?」

 ふわりと鍔広帽子が上下に揺れた。

「あま、り……好きじゃ……ない、のよ、ね。それに……」

「それに?」

 魔女は言葉を虚空に探し求めるように瞳を揺らし、ぼそぼそと言った。

「火の玉。……好き、だ……か、ら。そっち、を……使い、た……い、の」

 魔女は小さく囁くような声でそう言って、そっと鍔広帽子の鍔を押し下げて顔を隠した。

 流水剣の口元に笑みが浮かんだ。

「そうか。だったら今後も火の玉を使っていこう」

 魔女の子供じみた言葉、彼女が教えてくれた好きなこと。それをあどけない少女のような表情を見せてくれたことに、流水剣は心が浮き立つ思いだ。

「あ、り……が……とう」

 魔法使い。呪文使い(スペルリンガー)とは、呪文を使いこなすからこその呼び名だ。

 ただ呪文を唱えるだけでは良いというのでは、呪文に使われているようなものだ。

 次の玄室へ続く通路を一党が踏み入れば、人形たちが殺到してきた。隊伍した行動はとれないが人形たちだ。先程までの人形と異なるのは剣や槍を持っていることだ。

「武装してきたぞ。油断せずにいこう」

 流水剣はそう言って抜刀する。ヒュゥゥゥゥと呼吸音が通路に響く。肩の力を抜き、流麗な足捌きで日輪刀を振るう。

 ──肆ノ型(しのかた) 打ち潮(うちしお)

 淀みない連撃で人形たちは破壊される。剣戟を避け、槍撃をいなして人形を裁断する。見事に人形たちを破壊するが、刃の結界をすり抜けるように流水剣へ人形たちの剣や迫る。

 分かっていた、流水剣は予知していた。隙があれば人形たちが迫ってくることを。

いかなる達人であろうが一切の隙がない万全とはいかないものものである。だからこそ、流水剣という大剣士のわずかな付け入る隙を狙って彼を攻撃するか、それとも後衛に迫るか。どちらもあり得ることを流水剣は知っている。

 すべてを捌ききることはできない。避けたら後衛への侵攻を許してしまう。だから……。

 いろよ!流水剣は信じて託す。

 自分の意志を汲んで位置取りをする女戦士を!

「っ!」

 無呼吸無拍子の十連撃で女戦士は、間隙を縫って流水剣を越えて迫ろうとした人形たちを破壊する。

「ああ~もうっ。今までだって分かってたつもりだけど、……君って本当に、戦い方うまいんだな!」

 流水剣が女戦士との連携を前提とした迎撃体勢を作ってみせたことに、彼女は舌を巻いた。

 ──自信なくしちゃうなぁ、女戦士は内心ぼやいた。戦闘の指揮、戦闘技術ともに金等級である自分に比肩あるいは凌ぐ新人とは。

 模擬戦闘だったが実戦ならば脚を刎ねられたと思わされる一撃。槍を持って刀と対峙して引き分けるなど、槍を持った自分の敗北であると女戦士は思う。

 流水剣は冒険者としては新人であっても、戦士としては歴戦の勇士であることは認めざる得ない。

 通路を越え玄室を出た先は地下水路に戻って来た。すると人形たちがいなくなったことで安心したのか、小鬼たちが現れ流水剣たちを挟撃した。当意即妙。流水剣と女戦士は言葉を交わすこともなく互いに前方後方に対応する。

「ほんと、ムカつくわ~」

「呪文、使う?」

「使わずに温存! この数だ。数匹仕留めるだけ効き目は薄いだろう」

 粗雑な武器を振りかざす小鬼の首を、日輪刀で刎ね。攻撃を避けながら流水剣が次々と斬り殺していく。

 小鬼の血で地下水路の壁を塗装していく。

「人形がいなくなった途端に来たな。こいつらに協同できるとは思えない。人形を避けて行動しているんだろう」

「あ~小鬼たちはさっきの闇人が言っていた仲間たちが呼んだのかも……ね!」

 女戦士が槍を振るいホブゴブリンにぶつけて、水路反対側の壁面に叩きつけて潰れたトマトのようにする。

「小鬼を……呼ん、だ……け、れど……、召喚、者が……死亡し、て……統制、され……なく……なった、と……いう……こと?」

「そうそう、そんな感じ」

「なんと迷惑な」

 人形たちが来た痕跡を辿りたいところではるが、小鬼たちが行く手を阻む。

 鬱陶しい、苦虫を噛み潰したような顔の流水剣だったが、唐突に状況が変化した。

 汚物が揺れ、波紋が生まれ、濁った汚水の河を掻き分けて、巨大な顎が飛び出したのだ。

「AAARRIGGGG!!!」

 下水路から現れたのは巨大な白い顎。細長く、巨大で、鋭い歯がびっしりと生えそろっている。それは小鬼の群れを一噛みで半壊させてみせた。

 沼竜(アリゲイタ)。そう呼ばれる怪物である。竜とは名ばかりの動物だ。体長と顎こそ長いものの、平べったく這い回る生き物。長い尻尾は強靭な筋肉で作られた凶器であり、一薙ぎで小鬼を悉く殴殺する。

 またも流水剣と女戦士が言葉を交わすことなく行動をする。流水剣は魔女を抱え、小鬼の屍を飛び越えて走りだす。

「きゃっ!?」

 突然の行為に驚き、声を漏らす。

「だ、大丈夫だ、か……ら。自分、で……走れる……から──……」

「ごめん、俺達で走ったほうが速いんだ。我慢してくれ」

「もう……」

 羞恥と流水剣の負担になる事を厭い、魔女はやめるように頼むがややあって顔を赤らめた。

 

 ◇◆◇

 

 通路を進んだ先。今までにあった玄室とは異なる趣の場所を流水剣たちは見つけた。

 地下墓地(カタコンベ)と呼ばれる場所である。扉を前にして流水剣は酷い悪臭を感じた。扉を蹴破るが灯りがなく中は闇であるが、吐き気がこみ上げる悪臭はより強くなった。魔女が再び魔杖を使う。地下墓地に灯りが灯る。

 墓地内部の様子がはっきりと見えた。魔女が思わず呻き声をあげる。流水剣も女戦士も唇をきつく噛んで悲鳴を押し殺した。

 広い玄室の中は血の海だった。肉片が床に転がっている。腐臭が充満している空間だ。

 人間の頭の欠片があった。腕の欠片があった。脚の欠片があった。胴の欠片があった。臓物の欠片があった。飛び出た眼球が無造作に転がっており、白骨の山が玄室のそこかしこに積まれていた。

 無数の死体だった。人であったものの、成れの果て。おそらくは、攫われた水の都の人々だ。都の外の村人や行商人や旅の者も含まれているのだろう。

 喰われたのだ。人を喰う鬼。ヴァルコラキに。

「何の罪もない人達をこんなにも殺したのか……許せない……許せない!」

 流水剣は歯ぎしりをする。黒い双眸が剣呑に光る。急に彼の目の前がまっ赤になった。魔法光のせいなどではなく……。

「ヴァルコラキ……。例え便所に隠れていようとも、見つけ出して息の根を止めてやる」

 流水剣の体中が心臓になったみたいに脈打ち痛くてちぎれそうだった。今すぐにでもヴァルコラキを探し出して八つ裂きにしてやりたいと思った。

畜生め(ガイギャックス)!」

「……」

 女戦士は口汚く罵り、魔女は惨状に対して顔色を失い絶句する。

 おぞましい、陰惨な雰囲気の中、微かに混じる殺気を流水剣は察知して動く。

 その直後、天井が割れて、無数の瓦礫が落下した。流水剣は魔女を抱えて退避する。女戦士も猫のような敏捷さで避けた。

 回避が間に合わなければ、瓦礫に混じって落下するや否や鋭利な爪の生えた手による貫手を放っていたヴァルコラキに魔女は仕留められていただろう。

 ヴァルコラキが血だまりの床に着地する。血の海が跳ねて、人食い鬼の身体を濡らす。青い身体に焦げ茶色の体毛を生やした、大きな口と乱杭歯が特徴的な鬼だった。

「小癪な。卑しき人間ども。よくも儂の領地を荒らしてくれたな」

「知ったことか! お前は腐った油のような匂いがする……酷い悪臭だ。一体どれだけの人を殺した!?」

 流水剣は鋭敏な五感で感知した、ヴァルコラキがかなりの数の人を捕食していることを悟った。鬼舞辻無惨の鬼は喰った人の数だけ強くなる。ヴァルコラキが無惨の眷属であるか流水剣はわからないが、ヴァルコラキを相手に油断することは決してない。

「黙れ! 卑しき人間ども、儂の糧になるくらいしか価値もない卑賤な命など数えるものか! 儂を月が二つある、このような怪しき世界へ引きずり込んだ愚挙の代償を、貴様らの流血を持って贖わせてやるわ」

「月が……?」

 流水剣は胸中に引っかかるものを感じた。月が二つあることを異常と感じたらしい鬼。もしや──……

「お前、鬼舞辻無惨の鬼か?」

「なんだ、それは? 知らんな。そしてもうお前らにはどうでもよかろう。お前らはここで死ぬのだからな!」

 ヴァルコラキが両腕を高く掲げた。部屋の隅に積み重なった白骨の山が蠢いた。原形を失い白い泥のようなものになる。それは粘土をこねくりまわしたように、ひとつ、またひとつと人型の塊となってふらつきながら歩き出す。

「人形!」

 魔女が唸った。遺骨を邪悪にこねくりまわすことで、人形が生み出されたその様子を、流水剣たちは今まさに目撃したのである。




ヴァルコラキの見た目のイメージは遊戯王の『バロックス』です。闇のプレイヤーキラーとか知っているんだろう。


魔女、剣の乙女をヒロインとしている水の都編だけれど女戦士もなんかヒロインになっているような……?
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