ゴブリンスレイヤー異聞:鬼滅の剣士(デーモンスレイヤー)   作:生死郎

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評価、意見、感想でモチベーションを上げて頑張っています!


真実「鬼を呼び寄せたいと思う」
?「時を操る吸血鬼を──」
真実「駄目」
?「吸血鬼を狩る不死者を──」
真実「駄目」
?「じゃあ、ドーナツ好きな──」
真実「駄目」
?「仕方ない、それじゃあ──」

結果、ヴァルコラキが呼ばれました。


17

 創造されたばかりの人形が数体、魔女、女戦士に迫ってくる。流水剣はその前に立ちふさがって、日輪刀を構えた。

 人形が流水剣に腕を伸ばしてくる。人間離れした膂力を持つ腕に捕まれば、それまでだ(ジ・エンド)。流水剣は人形の腕を避けつつ、ゆらゆらと不安定に揺れる首に日輪刀の斬撃を叩き込んだ。

 人形の動きが止まりガシャンと倒れる。そして動くことはなかった。

「忌々しい!」

 床面の血が海のように波打ったかと思うと、無数の液体の管となり、蛸か烏賊の触手のようにうねり、しなって流水剣たちを襲った。

 ──参ノ型(さんのかた)流流舞い(りゅうりゅうまい)

 流水剣は水流のごとく流れるような足運びで、正面から来る血の管を片っ端から切り伏せた。一度日輪刀の一撃を受けた管は力を無くして床に落ち、ただの液体に戻りそのまま焦げ付いた汚れとなる。血が焦げたような得体の知れない臭いが生じる。

 女戦士は左右からまわり込もうとしてきた血の管をすべて槍で突き、払い、薙いでみたが、血の管はまったく意に介さずこちらに迫って来た。それを流水剣が日輪刀で切り伏せる。

 地上のような開けた空間でもない場所で、鬼と人形を同時に相手にするのは難しい。人形の群れに囲まれてしまえば、逃げる余地もなくなってしまう。

 魔女は魔法を使う。火球で人形たちを薙ぎはらう。立ち上がる黒煙の中から、何かが勢いよく飛び出してくる。ヴァルコラキだ。その双眸が、流水剣たちを睨んだ。

「こしゃくな人間どもめ! 儂を煩わせよって!」

 逃げるつもりだな、流水剣は予知した。自分を守る人形たちを大量に失って形勢不利と見たのだろう。

 状況判断としては正しい。厄介な敵だ。しかも、流水剣たちを明確に仇と認識している。ここで逃がすのは厄介だ。

 彼の推量は正しく、ヴァルコラキは獣のように四つ足で駆けだす。地下墓地の空間だからこそまだ速度は出ていない。それでも彼我の距離は三〇〇メートルほど空いてしまった。

 女戦士は槍を投げつけために片手に持ち、投擲の構えを取る。しかし、あれほど俊敏に移動する怪物では、女戦士の技量をもってしても容易ではない相手だ。

しかし、やらねばならない。穂先が白い輝きを放つ。神々と、我が武錬をご照覧あれ。

 投擲する。

 槍は放物線を描いて疾走する四つ足の怪物に突き刺さった。ヴァルコラキが槍を受ける寸前、身体をひねって右腕で顔をかばった様子を流水剣は目撃した。

 致命傷ではない、だが、これでいい。流水剣と女戦士は走り出す。獲物を捕らえるために走る猟犬のように。遅れて魔女はついていく。

 ヴァルコラキが地を転がる。身体中からどす黒い血を流し、右腕を失っていた。懸命に逃げようとするも、その身はよろめき、速度は上がらない。流水剣と女戦士との距離が急激に縮まる。

 流水剣は一足飛びで一五メートル以上も距離を縮め、体勢を崩したヴァルコラキに飛び掛かった。

 ヴァルコラキは不意の一撃に反応し、振り向きざま左手で指弾を飛ばす。流水剣はひねって空中で小石を回避した。

 大型捕食動物に狙われた非捕食者のように、ヴァルコラキは怯えた声をあげた。

 透き通る世界を見るヴァルコラキは左右の胸に心臓が一つずつあった。流水剣の放った斬撃が、ヴァルコラキの左肩口を大きく抉る。分厚い肉と皮膚を裂き、肋骨を断ち、心臓を斬った。黒い血が噴き出す。

 ヴァルコラキが悲鳴をあげて地下通路を転がる。流水剣は床に降り立つと、勢いを殺さずヴァルコラキのもとへ跳躍する。壱ノ型へ繋げようとするが……。

「愚かな剣士め!」

 ヴァルコラキの両肩から噴き出た赤黒い血が、まるで生き物のようにうねって流水剣を襲った。枝分かれして大きく広がり、瞬く間に網のようになる。しかし、流水剣は日輪刀を振るい、格子を形成する赤黒い血が煙をあげてバラバラに切断される。

 女戦士の目には、この異なる世界から召喚された悪鬼が驚愕する様を目撃した。

 次の瞬間、流水剣の日輪刀が、ヴァルコラキの首を刎ねようと振るわれる。だが──……。

「■■■■■■■■■■■■■■────ッ!!」

 ヴァルコラキの口から高い指向性を持った強力な音波が放たれた。地震でも起きているような振動を感じるほどの音は、直撃した女戦士たちの視界がぶれ、平衡感覚が失われて、身体を吹き飛ばされるほどの威力だった。身体が麻痺して、意識も曖昧となっている。

 マッコウクジラは獲物に対して高い指向性を持った強力な音波を放つことでその音圧で麻痺させるという。そしてヴァルコラキは肉体の限界を超えた発声で音波を放ち、鯨のごとく音による攻撃を行ったのである。

 流水剣は身体を吹き飛ばされる(ノックアウト)こともなく、立っているもののそれは無意識下の抵抗であり、意識は失神となっている。

「貴様を喰らい、骸を傀儡にしてくれる!」

 ヴァルコラキが左腕の貫手で流水剣の胸部を貫こうとする。鬼は激情をぶつけたいという衝動のままに動かされる。

「っ!」

 流水剣は貫手をかわして、日輪刀でヴァルコラキの胴を貫く。水の呼吸の型とは異なる。遮二無二な刺突。身体に染み付いた戦闘技術による無意識な迎撃である。

「ぎゃあああああああっ!?」

 想像を超える痛みを感じ、ヴァルコラキは悲鳴を上げる。心臓を斬られたり、腕を吹き飛ばされたりしたとき以上の痛みと衝撃であった。

 いったい何があった。ヴァルコラキが忌々しい剣士の剣を見てみれば、それは赫く輝いていた。

 なんだ、これは? 傷が灼けるようだ! ヴァルコラキは呻く。全身の体液が沸騰するようだ。うまく身体が動かない、異能を使えない。

 流水剣は日輪刀を(あか)くするのは意識して使っているわけではなかった。命の危機に瀕した生き物は爆発的な力を発揮する。流水剣は強く刀を握り締めただけだ。かつての彼の兄弟子が重傷を負いながらも同じように刀を(あか)くしたように。

 そして日輪刀という特殊な材料で作られた刀は、強い衝撃を受け刀の温度が上昇したのである。刃を(あか)く染めるのは死の淵に己を追い詰めてこそ発揮される死力を尽くした握力こそが肝要である。

 意識が覚醒したあとも流水剣は(あか)い日輪刀でヴァルコラキを串刺しにする。

「あああぁあぁぁぁぁっ!」

 ヴァルコラキは悶絶しながらも暴れて何とか日輪刀を抜き逃げ出す、激痛が身体を苛みながらも逃げるために全霊を傾ける。

「忌まわしい剣士め、貴様の顔、覚えたぞ!」

 足に力が入らず転倒して地下水路に落ちてしまうがそのまま潜水して逃亡してしまった。

 (あか)い刀身を持って追撃しようとして、流水剣は自分の異変に気づいた。視界の四方が白くなり、そのまま倒れてしまう。

「ちょっと、しっかり!?」

 回復した女戦士が慌てて倒れる流水剣を、その身で受け止める。彼の顔が女戦士の形の良い胸に埋まることになるが、状況が状況である咎めるつもりはないし、そんな余裕は彼女になかった。

(なんだ……?)

 流水剣は自分の異変に気づけなかった。全身全霊で刀を握ったために、酸欠で失神しかけていたのである。




赫刀登場!あれをノーリスクで自然に使えるのは縁壱くらいですから、流水剣も簡単には使いこなせません。
ヴァルコラキのキャラが小者っぽいのは設定通りです。
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