ゴブリンスレイヤー異聞:鬼滅の剣士(デーモンスレイヤー)   作:生死郎

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日刊ランキング8位になりました!ありがとうございます。

ゴブリンスレイヤーRTA小説に魅了されて本作を書き始めたからには、どこかにバケツ兄貴、盾騎士、竜祭司、獣人忍者、魔法剣士をちょっとでも登場させたいです!だけど本編(イヤーワン)では登場させるにはまだ早すぎた……イヤーワン終わっても続けられるように頑張ります。


黒丸助さん、☆10ありがとうございます。他にも評価を付けていただいた方々ありがとうございます!励みになります!


07

 不幸な出来事(アクシデント)もあったが、魔女は水柱の青年から外套を借りて、水柱の青年と魔女は依頼が出されていた村へ戻っていた。

 魔女の呪文を回復させるまでの間に、水柱の青年は村長から許可を得てゴブリンの犠牲者たちの遺骨を埋葬していた。

 そして夜になり、再び廃坑に入り横穴を通ればそこは洞窟だった。洞窟には予想通り、ゴブリンたちがいた。そこまでは簡単だった。今更。水柱の青年にとってゴブリンなど敵ではない。

 だが……、洞窟の奥から接近する音と臭い、

「下がれ!」

 水柱の青年は魔女を抱えて後退する。

「《グラキエス()……テンペスタス()……オリエンス(発生)》」

 しわがれた声で呪文を発せられる。

吹雪(ブリザード)……!」

 闇の奥から吹雪が吹きつけてくる。後退したものの、吹雪が水柱の青年たちにも及んでくる。魔女は抗魔の魔法が未だ習得できていなかったことを悔やんだ。

「ヒュゥゥゥゥ!」

 ──陸ノ型(ろくのかた) ねじれ渦(ねじれうず)

 上半身と下半身を強くねじった状態から、勢いを伴って斬撃を繰り出す。回転を伴う斬撃は、全周囲防御としても発揮され、剣圧によって吹雪が減衰される。

「っ!」

 減衰させたとはいえ、冷気によって痛痒(ダメージ)は避けれなかった。

「ごめ、ん……ね」

「気にしないでくれ。教えてくれ、あれは人間か!?」

 透き通る世界に映る人影の、その内部は人間と変わらない構造であるため、水柱の青年はそう思ったのだ。

「そ、ね。……あ、れ……は……妖術使い(ワーロック)!」

 身につけた魔術で悪しき事を成す魔術師である。

「そうか……。あいつが、小鬼たちを従えていたのだろうな」

 水柱の青年は苦虫を噛み潰したように顔を顰める。

「魔、法が……な……かった、ら。……勝て、る?」

「大丈夫だ。頼めるか?」

「任……せ……て」

 魔女の言葉を受けて、水柱の青年は走り出す。

「《ファルサ(偽り)……

 妖術師の言葉が唐突にとぎれる。魔女が沈黙の術をかけ、音を殺して力ある言葉を紡ぐことができなくなったのだ。

「!?」

 声もなく慌てる妖術師は無言劇の演者のようだった。魔法を使えない術者は鬼殺隊では柱を務めるほどの剣士である水柱の青年の敵ではない。彼の一薙ぎで首を刎ねた。

「──」

 彼は人を鬼から守るために武器を振るう鬼殺の剣士であるために、人を殺めることに水柱の青年も抵抗はある。しかし、かつていた世界では幕末の動乱を過ぎ明治に入ったと言っても、剣を振るわなければならない修羅場に遭遇して死線を潜ることもあった。そして、心ならずも人を殺める経験もあった。

「こ、れ……邪教……の……御、印……。祈、らぬ……者。ここで……倒さ……な、け……れば……犠牲に……なる……人が……出て、いた」

 魔女が水柱の青年に遺体が持っていた装身具を見せてそう言った。どうやら、気を使われたらしい。

 水柱の青年は微苦笑して顔を撫でる。

「ありがとう。そんなに不景気な顔をしていたのかい?」

「ふ、ふ……」

 二人はそう話し合いながら洞窟の奥を進めば、それと遭遇した。

 異形の怪物。目を炯々と光らせた鶏の頭、蝙蝠の翼、蜥蜴の尾。尋常な生き物ではない。

「これは……?」

「コカ……ト、リ……ス、ね」

 水柱の青年は怪訝な表情になり、魔女は物憂げに眉をひそめる。

 妖術師が番犬代わりにコカトリスを飼育していたというのは、慮外の事態であった。

「コカトリス……初めて会う怪物だな」

 水柱の青年にとって未知である魔法や奇跡、怪物の類は脅威であると見ている。初見の怪物であるコカトリスには、この依頼を受けてより一層、警戒のレベルを上げた。

「っ!!」

 水柱の青年が飛燕のような身のこなしで、迫りくる嘴から逃れる。啄まれた洞窟の地面が、乾いた音を立てて石へと転じていた。

「これは……石になっている?」

「石化……。嘴……や、牙……で、噛ま……れ……たら……石……へ……転、じる……」

「近づくには注意が必要なわけだな。……異形の鬼を相手にしているようなものか」

 蹴爪でひっかき威嚇するコカトリスを、水柱の青年は日輪刀を青眼の構えで対峙する。

 コカトリスの威圧は先程までのゴブリンや妖術師以上のものであった。

「……術、あと……一回、ね」

 水柱の青年の背後に控える魔女が、やや声のトーンを落として囁く。呪文の消費を考慮して休息を挟んでいたが、この遭遇は想定外であった。

 水柱の青年は透き通る世界を介して、コカトリスを見る。筋肉の伸縮、骨格の稼働、血流を見透かす。

「大丈夫だ。なんとかして見せよう」

 魔女が「やってみる」とか細く言った。魔女のその言葉を水柱の青年は信じた。

 コカトリスが奇怪な声をあげて喚き散らす。威嚇行為なのか翼を拡げてバサバサと羽ばたかせている。

「《アラーネア(蜘蛛)……ファキオ(生成)……リガートゥル(束縛)》」

 水柱の青年が一足飛びで距離を縮める。コカトリスが地面を蹴爪で蹴り飛ぼうとする。しかし、その蹴爪が粘ついた。

 水柱の青年は静止しているかのように緩やかに飛来する白く濁って粘ついたモノが、コカトリスの足下に絡みつくのが見えた。

 その鶏の首を刎ねようとするが、視界の端から迫るものを見つける。

「っ!」

 水柱の青年が上体を反らして、避けてみればそれはコカトリスの尻尾。蛇の頭である。蛇の牙にも石化の力がある。

 鞭のごとくしなる蛇頭の尾を掻い潜り、水の呼吸の技へとつなげる。

 ──弐ノ型(にのかた) 横水車(よこみずぐるま)

 水平方向に身体ごと一回転しながら斬りつけて胴から真っ二つにする。本来は垂直方向に回転しながら斬る水車の応用編である。

「ふぅ……、呪文、ありがとう」

 水柱の青年は嘆息をついて、日輪刀を納刀する。

「それでは……こういうときは、宝物を探しにいくのかな?」

「そ、ね……」

 魔女がいつも通りの気だるげに頷くが、その瞳は好奇心に煌めいていた。

 武具を手に穴蔵に潜り込み、血と泥にまみれながら、怪物を殺して財宝を奪う(ハック・アンド・スラッシュ)。冒険の醍醐味と言えばこれである。

 妖術師の工房とあれば、それ相応の収穫は期待できるだろう。

「思えば、これが俺にとって初めての冒険者らしい仕事、になるのかな?」

「そ、ね……。あなた、は……冒険者……では、ない、から」

 えっ、虚を突かれた水柱の青年は軽く瞠目する。魔女はそのまま工房を探し始める。

 胡乱げに魔女を見るが、水柱の青年も工房を探し始める。ほどなくすれば宝箱を見つける。

 宝箱の周囲を確認するが仕掛けがあるようには見えない。しかし、内部にからくりが仕込まれていたり、この世界特有の技術──魔法や奇跡の類──が施されていたりすれば、水柱の青年ではわからない。

 魔女とて、それらに関しては知識があるわけではないという。斥候(スカウト)や盗賊でなければこれ以上の判別は無理そうだった。

「……よし、開けるよ」

「……ん」

 こくりと魔女が頷いたのを確かめ、水柱の青年は万が一のために彼女を宝箱から遠ざける。そして彼は開封。

 箱の中に入っていたのは、木材か何かで作られたと思わしき、細長い棒状のもの。先端には装飾の施された金属部品がはめ込まれ、そこが不思議と輝いていた。輝く理由が水柱の青年にはわからなかった。

「これは何だ?」

 横合いから覗き込んだ魔女が言う。

「……こ、れ。……杖、よ」

「杖? これ、君は使えるのか?」

 ええ。魔女は頷き、金具をそっと撫でて、彼女はその杖を手に取った。

「そうか。ならば、これは君が使ってくれ」

「……?」

 魔女は不思議そうな顔をした。

「どうした?」

「報、酬……分配、で……しょ」

「いやいや、一党の戦力強化のほうが優先すべきだろう。君に使って欲しい」

 水柱の青年が空箱の蓋を閉じる。

「要らないならば売ればいいけどさ。どうだい?」

 魔女は両手で杖を握って胸元に抱えたまま、何ともいえない様子で立ち尽くす。

 好きなものを買ってもらった子供のような佇まいだった。いつもは大人びた彼女のそのあどけない表情を見て、水柱の青年は今回の冒険は請け負ってよかったと思えた。

「……そ、ね」

 やがて彼女はそう言って、杖を片手に持ち、ぐいっと鍔広の帽子を深く被り直した。

「……あり、がとう……」

 魔女はゆっくりと微笑んだ。花のつぼみがほころぶような笑みだった。




今回は魔女の戦力強化の必要もありましたので、イヤーワン本編にあったイベントを元に作りました。ところで沈黙はTRPGだと奇跡の扱いなんですよね。

さて、アンケートは先日締め切らせていただきましたが、多くの投票をしていただきましてありがとうございます。投票の結果、剣の乙女のヒロイン化が決まりました。登場はまだ先になるかと思いますが剣の乙女をヒロインとして物語に参加させていただきます。
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