時間軸的にフィーネ撃破〜G編開始前です。原作で考えたらビッキーリディアン入学が三.四月だとしてそこから色々あったから多分フィーネとの最終決戦が六月くらいと思う(穴だらけの考え)。そこから戦後のゴタゴタを考えたら丁度いいかな?と思いましてのでそんな時間軸です。
まだメインメンバーが足りずちょっと寂しいメンツですがそれでも派手目に祝いましょう!
続いている限り記念日系はやっていこうかと。まあ、たぶんマリアさんの誕生日回は今回と同じになりそうですがね。てかビッキーの誕生日回がどう考えても暗いものになってしまう件について……
誕生日回 天羽奏&風鳴翼
──ニ課仮本部の休憩所にて
周りに人はおらず、設置された机と椅子にまるで事情聴取しているかのように真面目で厳格な顔つきになった風鳴翼と、その対面に大分顔の色付きが良くなってきた小日向未来が座っている。
何も知らない者が見れば何かしらの修羅場であると思ってしまうほど翼の顔は真剣で鬼気迫る顔つきだった。そのせいで自分が何をしたか分らない未来は緊張して身体を固くさせていた。
「……小日向」
「は、はい!」
突然呼び出されて何か悪い事でもしたのだろうか、と身に覚えのない緊張で変な汗が垂れてくるのを我慢していると翼が口を開く。
「──奏に何をプレゼントすれば良いか一緒に考えてくれないか?」
フィーネとの激戦を乗り越え、月の破片も破壊し、世界に平和が訪れた。
弦十郎率いる二課の実動隊の者はリディアン並びに崩壊した二課本部跡地、そしてカ・ディンギルの調査と平和が訪れてもまだまだ休む事が出来ない者は多々いる。
その中でも天羽奏は一際頑張りを見せていた。
装者を止めた事で戦う事への責任感や重圧から解放され、まだリハビリの途中ではあるものの相棒である風鳴翼も徐々に体力を回復しており、そう長い時間を待たずにアーティストに復帰して戦いの事を気にせずに相棒と歌える事に奏自身が自分で思っている以上に楽しみにしていた。
そんな奏の誕生日が間近に迫ってきているのだ。
「……えっと?」
「私だって考えたのだ。だが二年も眠っていたせいで世間の荒波に取り残されてしまった私では今の流行りをリサーチする事は困難だったのだ!緒川さんに聞こうにも奏の耳に入るかもしれない、雪音も最近までフィーネに騙されて世間から離れた場所にいたのだろう?そう考えたら同年代の女性で頼りになるのは小日向だけなのだ!」
未来が質問する前に翼はまくし立てる。
実際時期が悪かったのか、二年で翼が知っていた事よりも変わった事が多々あり、ファッションや流行りというものは早いものはすぐに変わってしまうため、目覚めたばかりのような翼ではリサーチする時間が少な過ぎた。慎次に頼ろうにも本人が言った通りツヴァイウィングのマネージャーという立ち位置からいつ奏の耳に入るか分からない現状、同年代で頼りはなる女性は未来だけとなった。ここであおいや了子という選択肢が無いのはどうかと思うが。
翼の言いたい事がなんとなく分かった未来であったが申し訳なさそうに頭を下げた。
「その……すみません、なんと言いますか、私も最近まではまともではなかったもので……」
「ハッ(゚Д゚)!」
未来も最近まで情緒不安定でまともな状況ではなかった。もっと言うなら翼と同じく、二年前のライブ事件から世間の事に興味を失い、天羽々斬のシンフォギアを手に入れてからはノイズの殲滅しか頭になかった。
そのため、現在の世間の流行りといった情報は翼とほぼ同レベルであった。
「だ、だがそれでも共に考えてはくれないだろうか……?」
「んー……と言いましても、翼さんからなら奏さんはなんでも喜ぶとは思いますけど」
「だが私が眠っていたせいで二年も祝う事が出来なかった。その分もまとめて祝いたいのだ」
「でしたら余計に気持ちがこもっていればどんなものでも嬉しいと思いますよ。一番プレゼントを貰いたい人からのプレゼントはどんなものでも嬉しいですから」
そう言って未来はそっと髪に括り付けられた白いリボンを触る。
いつの時か忘れてしまったが、未来の親友であった今は亡き立花響がプレゼントにくれた思い出の詰まった白いリボン。今使っているのはそれとは別ではあるが、やはり自分で買う物と貰いたい人から貰う物ではその思い入れの違いは大きい。
翼と奏は互いに生きている。これからもその思いの分け合いは出来る。だが、未来にはもうそれが出来ない。
「……すまん」
「あ、謝らないでください!私もちょっと意地悪でした。すみません……」
「……ふふ」
互いに申し訳なさそうに頭を下げる。それが可笑しくて翼が笑みを漏らし、それに釣られて未来も笑みを見せた事により沈鬱になりかけた空気が霧散し、空気が軽くなった。
「さて。話は戻すのだが、やはり形になる物を贈りたいのだ」
「だとしたらやはり身につけてられるような物が良いのではないでしょうか?例えばペンダントとか」
「ペンダント……」
未来の言葉に考え込む翼。そして何かを思い付いたかのように顔を上げた。
「そうだな。うん、そうしよう。ありがとう小日向。世話になった!」
「いえいえ。これくらいであればいつでも」
「私はこれから寄る所が出来た。すまんが先に失礼させてもらう。それじゃ」
そう言い残して何かを思い付いた翼は急ぎ足でその場から立ち去っていた。そして取り残される未来。
「……私もクリスの誕生日、何をするか考えておこうかなぁ……うん?」
まだ半年近く先ではあるが、クリスの誕生日に向けて何が出来るか早々と考え出した未来だったが、持っていた携帯端末にメールが届いた知らせが来る。連絡を取り合う相手がいたか思い出していた所、メール相手の名前を見て首を傾げた。
「奏さんから?」
──────────────────
──七月二十八日
「「「「誕生日おめでとう!!!」」」」
「いや〜、みんな、ありがとう!」
クラッカーの破裂する音がニ課仮本番の食堂に響き、中身のテープが舞う。そしてテーブルには沢山の料理と大きめなケーキが置かれており、ケーキには奏の名前が書かれていた。
みんなに祝られて奏も笑顔を見せる。
ライブ事件から笑う事が少なかった奏もフィーネの戦いで翼が目覚めてから徐々に昔のような笑顔を見せていた。その中でも今日はとびっきりの笑顔であった。
「奏!」
「おお、翼!」
弦十郎や未来たちからプレゼントを貰った後、最後に翼が綺麗なリボンが括られた小さな赤いケースを持って奏の前に立つ。
「これ、私からのプレゼント」
「サンキュー翼!開けてもいいか?」
「う、うん」
恥ずかしそうにする顔を赤らめる翼に奏は楽しそうに笑みを浮かべ、ケースのリボンをそっと解いて中にあるものを見る。その中にあったのは右の片羽をイメージした青い翼の形をしたペンダントだった。
「えっと、それを見て私の事を思い出して欲しいなー、って思って……」
「……」
翼が眠っていた二年もの間、奏が傷つきながらも一人で戦っていたのを叔父である弦十郎から、慎次から翼がいる時とは違い笑顔に陰りがあったと聞いていた。
そして未来との相談の時に奏に自分の髪と同じ色の青色の片翼の形のペンダントをプレゼントを贈る事で、「いつでも一緒にいる」という事を忘れないで欲しいと思ったのだった。
ペンダントを見た奏はジッと見つめたまま固まる。その表情は髪で隠れて見えない。
「く、くくく、あはははは!」
「か、奏?」
突然ケースを持ったまま女性らしからぬ大声で笑う奏に翼はオロオロとし始める。笑っている事から気に入らなかったわけではないなさそうだが笑っている理由がいまいち理解出来ず困惑していた。
「ははは!あ〜あ。くそう、小日向のやつ、分かっていやがったな?」
「え?」
涙を流すほど笑ったのにまだ可笑しいのか笑みを見せながら遠くのテーブルで口の周りをクリームだらけにしたクリスの口元を拭いていた未来の方に目を向ける。奏と翼の反応を見ていた未来は微笑みを向けていた。
「んじゃ、今度はあたしからだな。緒川さん!」
「準備は出来ていますよ」
「え?え?」
奏の合図を待っていたかのように食堂のキッチンの方から慎次が大きな蓋付きの皿の乗ったワゴンを押しながら現れる。それと共に先程まで奏を祝っていた二課のメンバーたちがいつの間にか用意していたクラッカーを翼に向けて構えた。
「「「「誕生日おめでとう!!!」」」」
再びクラッカーの破裂音と共に飛び出したテープが宙を舞い翼の頭に降り注ぐ。そして慎次が押して来たワゴンの上の皿の蓋を取る。そこには翼の名前が刻まれていた。
「え、でも今日は」
「確かに今日は翼の誕生日じゃない。でも二年も祝えてないんだ。だから今日一緒に祝おうっていうわけ。来年まで待ってられないしね」
ウィンクしながら奏は隠し持っていた綺麗なリボンが括られた青色のケースを渡す。それを受け取った翼は目をパチクリしてそっとリボンを外す。中には翼が贈ったネックレスと似た赤色の左の片羽をイメージした翼の形をしたネックレスが入っていた。
「あたしも小日向に相談したんだよ。翼の誕生日に何を贈ればいいかってね。そしたら小日向が「ネックレスなんてどうですか?」なんて言うからそれに乗っちまったのさ。でも考える事まで同じとは思わなかったけどな!」
「奏……ふふ」
恥ずかしそうに顔を背けながら奏は笑う。それに釣られて翼も顔が緩んだ。
装者を辞めた奏はこれから隣で歌う事は出来ても戦う事は出来ない。それでも一緒にいる事を忘れないようにという願いを込めて自身と同じ赤い色の片翼のペンダントを贈ろうとしていたのだ。それがまさか互いに同じ気持ちで同じ物を贈ろうとした事に二人とも笑いが止まらないでいた。
「あの二人、仲良いな」
「うん。そうだね」
再び口の周りをクリームだらけにしたクリスの口を拭きながら未来は楽しそうに笑い合う奏と翼をジッと見つめる。そしてその二人の姿が自分と親友の幸せだった日の光景と重なって見えた。
奏と翼の境遇を考えれば今の二人の祝う気持ちは確かに未来の心の中にある。それは紛れもない事実であり、嘘ではない。だがそうと分かっていても二度と自分には訪れない幸福な時間の中にいる二人に嫉妬を感じているのもまた事実だった。
「大丈夫か?」
「えっ」
「なんかこう、辛そうな顔してっから……し、心配になってよ」
「クリス……」
ぶっきらぼうでありながらもチラチラと未来の様子を横目で見るクリス。未来の受けた心の傷を一番よく知っているからこそ未来の心情の変化を敏感に感じていた。
少し不安そうにするクリスの顔を見て未来も自分の心を落ち着けて、新しい「大切な人」を安心させるように笑みを見せる。
「ありがとう、クリス」
「う、礼なんて!いらねぇぞ?」
「ふふふ」
「わ、笑うな!」
顔を赤くして声を上ずり顔を背ける。それが可笑しくて未来も笑い、それに釣られてクリスも怒りながらも笑みを見せた。
親友が居なくなってから冷え切っていた心がクリスのおかげで再び暖かくなる。それがとてつもなく幸せであり、そして死んでしまった親友を裏切っているような罪悪感を感じていた。
だがそれも、「辛くて痛くて悲しい思いをして、笑って楽しんで幸せに生きる」と言う親友の残した優しい罰の一つとして、未来はその罪悪感を受け入れてもおり、その罪悪感を持ったまま今の幸せを守っていこうと必死だったが、今日はそんな思いも奥底に閉まって楽しもうとしていた。それが亡き親友への願いだと信じて。
「おーい!小日向と雪音もこっちへ来たらどうだー!」
「あたしらの祝いだからって遠慮しなくていいぞー!」
「ちっ、うるせーなぁ」
「そんな事言ったらダメだよ?ほら、行こ!」
「あ、おい!」
今回のパーティーの主役である翼と奏に呼ばれて未来は仏頂面のクリスの手を引いて早歩きで二人の元に行く。心の奥底でチクチクと針で刺されるような痛みを感じながら。
こうして奏と翼の誕生日会は大変盛り上がり、夜が更けていくのだった。
奏「実は翼用に三段ケーキと長い包丁もあるんだけど」
翼「それウェディングケーキ!?」
慎次「用意は出来てますよ」
翼「本当に用意してた!?」
奏&慎次「「嘘だよ(ですよ)」」
弦十郎「む、あるぞ?奏くん用と二つ」
翼&奏&慎次「「「え」」」