戦姫絶唱シンフォギアIF 〜陰る陽だまり〜   作:ボーイS

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今回は少々説明文的なのが多めです。シンフォギアを知っている人からしたらしつこいくらい何度も見た説明ですがやはり無いと……ね!

ハイブリッドさん、誤字報告有り難うございました。装者は完全に勘違いでした。ずっと奏者と思っていましたが違ってたんですね(汗)
その他の指摘は私のミスです_(:3」z)_用心せねば……


二話

 深夜のノイズの来襲から既に一週間。その間世間はなんの影響もなく日常が流れていった。

 山に近い民家からは真夜中に響いた銃撃音からノイズの出現を危惧した者はいたが実際の被害はない事から気のせいという考えで噂が広がる事は無かった。

 

 だがこの一週間で一部の人間には大きな影響を与えているというのも事実だった。

 

「……んで、次の仕事までにはなんとかなんのか?」

「それは難しいですね。怪我や後遺症は無かったようですが……奏さん、相当無理していますよね?」

「あ〜……うん、さすが緒川さんだな」

「マネージャーですからね。貴方がベストを出せる状態か否か見極めるのも仕事の内ですよ」

「そりゃごもっともだな」

 

 包帯は解け病人服以外は健康そのものとなった天羽奏はマネージャーであり仲間でもある緒川慎次と共に気の抜けた会話が病室に木霊する。幸いにも左腕は骨にヒビが入っている程度で済んでいた。

 

 〝ツヴァイウィング〟

 

 二年前まで日本中で知らない者はいないと言われるほど大人気だったユニットだ。そして天羽奏はその内の片翼として活躍していた。

 だがある事件をきっかけにユニットは実質解散状態。世間では今でも復活を待ち望む声があるもののその復活は今のところ不可能。その理由とは。

 

「なぁ、翼。早く目覚めてくれよ」

「………」

 

 奏が手を伸ばした先には白いベットの上に沢山の管と人工呼吸器を付けられた一人の青い髪の少女が横たわっていた。

 

 〝風鳴翼〟

 

 ツヴァイウィングの片翼であり天羽奏の良きライバルであり友であり最高の相棒(パートナー)であった少女。

 二年前の事件により大きな怪我を負い今はアーティスト活動を停止している。それが世間での風鳴翼の現状だ。

 だが実際は二年前の事件から意識が回復せず沢山の管と人工呼吸器無しでは生きられない身体となっている。技術の発達により身体が痩せ細るような事は無く、健康な状態を維持する事が可能ではあるがそれも長く続かせられるものではない。

 そして天羽々斬の適合者であった少女だ。

 

「……奏さん。前から言っているように装者かアーティストかどちらか辞める事は出来ませんかね?」

 

 眠り続ける風鳴翼の手を握る天羽奏の姿に痛々しさを感じながらも緒川慎次は以前から相談していたアーティストを辞めてシンフォギアの装者として戦い続けるか、装者を辞めてアーティストとして活動するか、決めるよう遠回しに言ってくる。

 

 〝シンフォギア〟

 

 技術者の櫻井了子の提唱する「櫻井理論」に基づき、聖遺物と呼ばれる過去や歴史に〝神器〟とも呼ばれた物の破片から作られたFG式回天特機装束の名称。現在、認定特異災害ノイズに対抗しうる唯一の装備であるが、その存在は現行憲法に抵触しかねないため、完全秘匿状態となっている。

 身に纏う者の戦意に共振・共鳴し、旋律を奏でる機構が内蔵されているのが最大の特徴。その旋律に合わせて装者が歌唱することにより、シンフォギアはバトルポテンシャルを相乗発揮していく。それに加えて聖遺物には装者によってそれぞれ相性が有り、フォニックゲインと呼ばれる歌によって生み出されるエネルギーが高ければ高いほど聖遺物本来の力を出せるようになる。今は眠る風鳴翼は天羽々斬の適合者として高い数値を出していた存在だった。

 

 だがそこで一つ問題となるのが〝どうやって適合者を見つけ出すか〟だ。

 これに関しては適合する可能性のある一人一人に試させるしか無い。特異災害対策機動部二課と呼ばれる慎次や奏、弦十郎が所属する対ノイズのための政府機関が長い間観察と計測を繰り返して二課発足から十年が経ち、今までで見つけられた装者は三名のみ。その内一人は現在行方不明だ。

 

 天羽奏は本来〝ガングニール〟と呼ばれるシンフォギアの装者になるには決定的に適合係数が足りず、装者になる事は不可能な存在であった。そんな彼女を装者として成したのが〝LiNKER〟と呼ばれる適合係数を無理矢理上げる薬の存在だった。

 

 彼女の両親はノイズに殺されている。その怒りと復讐心からLiNKERによる服用を試し激痛と幾度もの検査の結果ガングニールの装者として彼女は力を手に入れたのだ。

 しかし、そんな無茶なやり方で得た力に代償が無いわけない。

 

「貴方は十分に戦いました。ですがこれ以上は命に関わります。戦える時間も短くなって来ているようですし。装者がいなくなるのは二課としても痛手ではありますがそれでも貴方は生きています。アーティストとして生きるか装者として戦うか、もう決めても良い頃かと」

 

 幾度ものLiNKERの投与により見た目に反して彼女の身体はボロボロになっていた。相棒である風鳴翼が意識不明な事も加わり精神状態も不安定。それによりLiNKERを投与してもシンフォギアを纏って活動出来る時間が次第に短くなって来ている。それが先日の小日向未来との戦いに影響が出ていた。

 

「……確かに緒川さんの言う事は全く持って正論だ。戦える時間が少ないのもこうやって怪我して仕事が出来ないのもあたしが全部中途半端だからだ。でもな」

 

 もう一度眠る風鳴翼の手を握る。握り返しはして来ないもののその手は温かく今にでも目覚めて笑みを向けてくれるかもしれないと淡い期待を抱いてしまう。

 

「あたしは、あたし達は二人でツヴァイウィングなんだ。片翼じゃその名前は名乗れない。片翼じゃ空を飛べない。翼の目が覚めた時、あたしはアーティストとしても装者としてもいつものように翼の隣にいてやりたい。その上で翼に託したいんだ。あたしの夢も想いも全部。それまではアーティストも装者も辞めないし死なない」

 

 それが傷つき血を流してボロボロになろうともアーティストと装者を辞めない天羽奏の願いだった。

 

「あたしを置いて勝手にこんなにも長く寝てるんだ。翼が起きて文句の一つでも言ってからあたしはどっちも引退するつもり。別のやり方で翼を支えるんだ。そんでもって翼にこれまであたしの背負って来たものを全部押し付けてやる。だからそれまであたしが翼の分も全部背負う。それがあたし達の二人で一つの翼(ツヴァイウィング)なんだ」

「奏さん……」

 

 あまり時間の無いはずなのになんとしてでも生きるという覚悟を決めているその赤い瞳に止めるべきであるはずの慎次の方が先に折れた。

 

「……ふぅ。分かりました。これ以上は何も言いません。ですが無理はしないでくださいね。それで何かあれば僕も司令も二課の皆さんも、そして翼さんも悲しむので」

「ありがと、緒川さん」

 

 笑みを浮かべる奏に慎次は手のかかる妹の我儘であり真剣な願いを聞いた兄のような心境で彼女の目を見返す。まだ疲労は完全に抜けていないものの幾分かリラックス出来ているように見えて心配は消えないがそれでも一安心した。

 

「……でさ、()()()()()の調子はどうなんだ?」

「あの娘……小日向未来さんの事ですか」

 

 その名前を聞いて慎次の苦い顔に奏は「やっぱり」と呟く。

 

 一ヶ月程前にノイズが市内に出現する事態が発生。だが突如市内にアウフヴァッヘン波形という聖遺物で造られたシンフォギアが起動する際に発生する特殊な波形から現在眠りについている風鳴翼しか所持していないはずの天羽々斬の反応が検知された。

 そこからの約一ヶ月、ノイズの反応があるたびに天羽々斬の反応が検知され、そしてとうとう黒い刀を振るいノイズを蹂躙する小日向未来が発見されたのだ。

 

 脳裏に蘇るのは小日向未来が目覚めたという報告を聞いて一週間前の御礼に一発殴ろうと彼女の病室に突撃した時に見たその姿だった。

 

「翼の天羽々斬をあんな風に使ったやつだったのに……()()()姿()を見たら何も言えるわけがねぇよ……」

「そう、ですね。櫻井女史も天羽々斬のせいなのか調べていましたがその可能性は皆無のようでした。残るは彼女自身の問題かと」

「あの娘に何かあったか分かったのか?」

「いえ、家族もご存命ですし過去に少々問題があるようですが今の彼女はその問題の延長線上のような状態のようです。詳しい事はまだ分かっていない、と言うのが現段階ですかね」

「そっか……」

 

 相対した時に感じたあの圧だけで人を殺せそうなほどの圧倒的な怒りと殺意。そんなものを持った少女が普通の人間では無いとは彼女を知る全ての人間が思っていたことだった。そしてその予想は当たっていたとも取れる。当たったと言っても誰も思いもしなかった方向にだが。

 怒り向ける矛先が無くなり、いたたまれ無くなって気分を変えようとそっと奏は窓の方に目をやり外の景色を見た。その先には今話していた人物が近くの森林の多い公園を一人歩く姿が目に入った。

 

「あの娘、外を歩かせてもいいのか?」

「ええ、むしろ変に刺激してはいつ暴れるか分かりませんので基本自由にしているみたいです。幸いながら自分が怪我人だという自覚は残っていたようですね」

「それが普通、なんだけどな」

 

 もう一度外をふらふらと歩く小日向未来に目を向ける。まるで後頭部の白いリボンが彼女の残された最後の理性だというように歩く度にひらひらと揺れていた。

 忘れようにも忘れられない。ベットで上半身だけ起き上がらせていた小日向未来が病室に入って来た奏を見た瞬間のその瞳。

 

(ノイズに家族を殺されたあたしでもあんな風にはならなかった。それがまるであたしの家族への想いが「()()()()」と言われたみたいだった)

 

 自分の行いが、想いが正しいものでは無いと奏は分かっていたがそれでも間違っているとも思っていなかった。家族を殺された怒りと憎しみが間違いであるはずが無いと誰に否定されてもそれだけは譲る気はなかった。今までは。

 自分の想いを肯定されながらもまるでレベルの違う想いの強さにただ見ただけで吐き気を催してしまったほどだ。

 それほど今の小日向未来は見るに耐えない、そして忘れられない姿であった。

 

「……ん?誰かあの娘に近づいて……なっ!?」

「あ、あれはまさか!?」

 

 ふらふらと歩く小日向未来を目で追っていた二人の目に映ったの銀の鎧のコスプレをしたような人物が彼女に近づいていく姿だった。

 それがただのコスプレなら誰も何も言わなかっただろう。少々子供には目に毒で身体のシルエットから女性と分かるほどのピッタリとしたインナーと肩には紫色の突起のような結晶がいくつも繋がった鞭のような物を担ぐその姿は悪くても公園で一人何をしているのか職務質問を受ける程度だ。

 だが問題はその銀の鎧が二人の知るある物に酷似していた事だった。

 

「あれは、まさか……ネフシュタンの鎧!?」

「くそっ!」

「奏さん何処へ!?」

 

 奏は慎次の言葉を無視して病院内の廊下を無我夢中に走り銀の鎧を着た人物の元へ向かう。

 

 忘れるはずがないだろう。二人の見た銀の鎧、ネフシュタンの鎧は風鳴翼が奏を守ろうとした結果眠りについてしまった二年前の事件の際に何者かに盗まれた完全聖遺物という世界に数えるほどしかない完璧な形を保った聖遺物だ。

 それを纏った者が現れた。それが意味する事、それは二年前の事件の関係者だという至極簡単なものだった。

 

「洗いざらい吐かせてやる……っ!」

 

 天羽奏は再燃した怒りと憎しみに逆らわず顔を歪ませながら走る速度を上げた。




早速現れましたネフシュタンを纏った謎の少女!
登場が早すぎる?それは早めに登場させないと遅らせて393を知った後のキネクリさんじゃ精神崩壊起こしかねないので早めに邂逅させようと思いましてね。(優しいクリスちゃんじゃ今でも耐えられないと思いますが)

防人さんが眠っている理由は原作で絶唱を使った時はライブから二年経っていますがここの防人さんはライブの事件の日に使用。つまり二年間の鍛錬が無い分身体的にも絶唱に耐えられる身体ではなかったためです。
原作の奏さんのように灰にならなかったのは奏さんと違い天羽々斬との適合率が高いため死ぬには至らなかったけど精神的には多大なダメージを受けた、という状態です。

プロローグ含めまだ二話なのに何故主人公の未来さんがまともに出て来ないのか。何故肝心な原作一話を詳しく話さないのか。その真相は後もう二話ほどお待ち下さい。

次回!393暴れる!

フィーネが仲間になりたそうにこちらを見ている。

  • 仲間にするんだよダホが!
  • 無理に仲間にしなくてもいいんじゃない?
  • す き に し ろ
  • むしろ生かしておくな!!!
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