戦闘表現を上手くできるか心配ですがそこは生暖かい目で見守ってください_(:3」z)_
戦闘表現含め「こうすれば伝わりやすい」的な言い回し等があれば遠慮なく教えてくだせぇ_(:3」z)_
太陽が真上から少し傾いた時間。
小さな子供も働き盛りの若者も仕事に明け暮れる大人もお昼の休憩を終えて動き出しているような時間に、暖かい太陽の光に誘われてふらふらと覚束ない足を動かして近くの公園を散歩していた黒の髪に白いリボンをした少女、小日向未来の目の前に一人の少女が立っていた。
ピッチリしたインナーの上に大きく弧を描いた肩の突起に沿うように紫の水晶がいくつも繋がった鞭のような物を担ぐ銀の鎧を着た少女がその手に銀色で紫色の水晶が所々に嵌められた長い奇怪な形の棒というより杖に近いシルエットをした物を持ち立っていた。その顔は上半分を銀色の仮面と薄い青色のバイザーにより隠れていた。
「お前が小日向未来か?」
「……?」
目の前に現れた変わった格好をした見知らぬ少女を前に小日向未来はその名前が自分の名前なのか、と問うように首を傾げる。そんな未来の姿に初めて会うはずの銀の鎧の少女は何か気味の悪いものを感じ眉を潜めた。
「ま、どーでもいい。黙ってついて来い。抵抗なんてめんどーなマネするなよ?」
「……」
ついて来るよう強めの口調で話す銀の鎧の少女。だが未来はそんな姿を見ても不思議そうに反対側に首を傾げるだけでその場から一歩も動こうとしなかった。その姿に銀の鎧を着た少女はイライラを隠せないでいた。
「おい聞いてんのか!?ついて来いっつってんだよ!」
「……?」
脅すつもりで更に口調を強める。それでも未来はその場からピクリとも動こうとしない。
イラついた銀の鎧の少女は肩に担いでいた紫の水晶が連なるそれを握り鞭のように振るう。すると本当に鞭のように動き、そしてその見た目から反するほどの威力で未来の近くにあった木を破壊した。
大きな音を立てた崩れ落ちる木。普通の人間が見ればそれだけでパニックを起こすだろうその光景を見ても未来はただじーっと倒れた木を見るだけでその場から動かなかった。
「……フィーネが言ってた通り頭がおかしいみたいだな。まぁ好都合だ、このまま連れて行けばなんの問題も──」
ない、そう口にする前に銀の鎧の少女は後方に飛ぶ。その直後今立っていた場所の地面に大槍が深く突き刺さった。
少し離れた場所に着地した銀の鎧の少女は地面に刺さった大槍を
「ちっ。何しにきたんだ欠陥品!」
「そんな言い方つれないじゃないのさ」
気の抜けた声の先には木々の間から橙色と黒のインナーに手足と背中に機械的な装甲を纏った天羽奏がゆっくりとした足取りで現れるところだった。その手にはLiNKERが入っていた拳銃型の注射器がありそれを近くの茂みに投げ捨てた。
奏は銀の鎧の少女から目を離さず地面に刺さった大槍の隣まで歩き引き抜く。
「はっ!自分のギアも満足に扱えねぇ欠陥品を欠陥品つって何が悪い!?自分は特別だとでも思ってんのかよ、人気者が!」
「そう言われると言い返せないんだけどさ。でもそんな事はどうでもいい」
苦笑いを浮かべながら奏は引き抜いた大槍を片手で持ち上げると銀の鎧の少女に向かってその矛先を向ける。その目は気の抜けた声とは裏腹に怒りを押し込めた炎がゆらゆらと揺らめいているように見えた。
「その鎧、ネフシュタンの鎧を何処で手に入れたか話してもらおうか」
「……へぇ。って事はアンタ、この鎧の出自を知ってんだ?」
「そりゃそうさ。二年前のライブ会場、あたしのせいで奪われたもんを忘れるわけないだろ?それに」
片手で持っていた大槍を両手で掴み、自身の目元の高さまで持ち上げ身体を横にし顔の横まで引き絞り、大槍の先端を銀の鎧、ネフシュタンの少女に向けて構えた。
「あたしのせいで守れなかった奴を忘れるわけないだろ!」
目蓋の裏に浮かぶのはいつも隣で共に歌い、競い合い、背中を任せてきた相棒の青い髪の少女の姿。
自分よりも年下で恥ずかしがり屋で肝心な時に尻込みしてしまうような、まるで妹のような存在。
そして自分が弱いせいで眠りについてしまった愛しき片翼。
(翼が傷ついて眠りについたあの事件の原因。そんで)
チラリと後ろに目を向ければいまだボーッと一触即発の現状を見続け逃げる気配ない小日向未来の姿があった。
(翼が残した天羽々斬のシンフォギア)
「……二年も経って今ごろあたしの前に揃うたぁな。でも、だからって簡単に負ける訳にはいかねぇよな!」
「だったら仲良くじゃれ合うかい!?」
ネフシュタンの少女は結晶の繋がった鎧の一部を再び鞭のように振るい奏に向かって薙ぎ払うように放った。
風を切る音と風圧で地面が僅かに吹き飛ばす水晶の鞭を真上に飛んで回避する。
「うらあ!」
『SAGITTARIUS∞ARROW』
上空で持っていた大槍を右腕で持ち引き絞り、ネフシュタンの鎧の少女に向かって投擲する。大槍は投擲された瞬間光り輝くと風を押し除けるように高速で回転しながら一直線に突き進む。
だがそれをネフシュタンの少女は再び水晶の鞭を構えタイミングよく横に振り抜く事で放たれた槍の軌道を変えてあらぬ方向にはじき返した。
鞭を引き戻し余裕を持った笑みを下降してくる奏に向ける。あからさまな挑発でありながらも目の前にいる忘れる事の出来ない事件を起こしたかもしれない人物の存在に奏は図らずとも怒りでその挑発に乗ってしまう。
「こんのぉ!」
着地後勢いを衰えさせずネフシュタンの少女に向かい新たに大槍を創り出し振るう。だが相手はそれを易々と回避し、水晶の繋がった鞭で難なく受け止める。
力一杯振るわれた槍を簡単に受け止められた奏は苛々を隠さず徐々に技の切れ味が落ちていき荒くなっていく。
「ぐうっ!?」
そしてその荒くなった槍捌きの合間を掻い潜り振るわれた水晶の鞭をギリギリで回避した瞬間、がら空きとなった奏の腹部にネフシュタンの少女の強烈な蹴りが刺さった。
(っこれが、完全聖遺物のポテンシャルかよっ!?)
口の中に血の味が広がる感覚と腹部の強烈な痛みに一瞬目の前が真っ暗になる。だが地面をえぐるほどの蹴りを受け後ろに吹き飛ばされながらもすぐ様唇を噛み意識を覚醒させた。
「ネフシュタンの力だなんて思わないでくれよな。あたしの
ネフシュタンの少女は空に飛び上がりながら今度は水晶の鞭を両方の手で一本ずつ掴み時間差で振るう。その鞭は地面をえぐり木を簡単に破壊する威力を秘めており一撃でももらえばいくらシンフォギアを纏っていようとも今の奏では直撃すれば怪我ではすまないだろう。
持ち前の運動神経と動体視力で振るわれる二本の水晶の鞭を紙一重で回避する。なんとか反撃しようと隙を探ろうとする奏だがネフシュタンの少女の猛攻から回避以外の手段が取れないでいた。
「ははは!ぴょんぴょん飛び回りやがって、遊んで欲しいなら他の公園にでも行ってな!」
「くっ、言わせておけば!」
ネフシュタンの少女の馬鹿にするような笑いに回避するしかない現状に苛々を隠せない奏は普段の彼女なら確実に気付くであろう罠に自ら飛び込んでしまう。
「バーカ」
「なっ!?」
奏が回避した先には先ほどネフシュタンの少女が水晶の鞭を振るい破壊した木が壁のように道を塞いでいた。それに気づいた時にはすでに遅い。
『NIRVANA GEDON』
水晶の鞭の最先端の突起から黒い電撃を包み込むように白いエネルギー球を生成し、奏に向かって投げつける。鞭での攻撃より少し移動速度は遅いが空中で自由が利かない奏には致命的だった。
「くっ、うわあああぁぁぁ!?」
少しでもダメージを減らそうと腕をクロスさせて防ごうとする。だがそんなちっぽけな希望を嘲笑うかのように両腕の機械的な装甲は弾け飛び、大槍も半壊され背中にあった木を破壊しながら後方に吹っ飛ばされる。今度は受け身も取れず地面に何度も身体を打ちつけて二十メートル程先まで引きづられた。
「よえぇなあ!そんな程度な力であたしの前に出てくるんじゃねぇよ。さて」
力なく倒れる奏に興味を失い今まで激しい戦闘を目の前でやっていたというのにいまだボーッと眺める小日向未来に身体を向けた。
(……びびったのか?だけどあそこから微動だにしてねぇ……気味が悪いな)
逃げるのでも泣き喚くでもない。ただそこに立ち続ける未来の姿に得体の知れないものを見ているような妙な感覚に襲われる。
「……関係ねぇ。あたしはフィーネの言う通りにしておけばいい。それだけで……」
自分に言い聞かせるように頭を左右に振り迷いを消す。そして今度こそはと未来を捕獲する為に歩もうとした時、その足元にボロボロになり原型がほぼ無くなっている槍が突き刺さった。
「はぁ……はぁ……まだ、終わってねぇぞ……っ!」
口から血を滴り落ち、纏っていた機械的な装甲はほぼ砕けオレンジと黒のインナーで守られていたその下の肌からも血が流れている。立つのさえやっとのはずの奏はそれでもそのまま倒れ伏すまいと立ち上がっていた。
「……はあ。いい加減しろよな。もう勝負ついてる。これ以上は時間の無駄だし弱い者いじめをする趣味は無いんだからよ」
後頭部を掻きながらボロボロになった奏を見やるネフシュタンの少女。自分の勝利は確定しているというのに諦めず立ち上がりまだ戦う意思が失っていないその赤い瞳と姿に苛々を積もらせていた。
「……もういい。そんなに遊びたいならお前はこいつらの相手でもしてな」
そう言ってネフシュタンの少女は背中の突起に引っ掛けていた銀色で紫の水晶が嵌められた長い奇怪な形の杖らしき物を取り出す。その杖を僅かに持ち上げると紫の水晶から緑色の光線がいくつも放たれた。
いったい何をしているか分からない奏は血を失いすぎてふらふらする身体に鞭を打ち警戒する。しかし次の瞬間に起こった事に驚きを隠すことは出来なかった。
「ノイズ!?」
光線が地面に着弾した瞬間、そこにはここにいないはずの何体ものカラフルで世界で最も恐ろしい存在、ノイズがいた。
「こいつはソロモンの杖ってやつでな。こいつがあればノイズを自由に召喚し使役する事が出来るんだよ」
「ネフシュタンの鎧以外にもそんな物が……!」
自信満々に口を開くネフシュタンの少女の言葉に奏は驚愕した。
この一ヶ月でノイズが出現する事態が二課の本部周辺で多発していた。もしネフシュタンの少女の言う言葉を信じるならネフシュタンの鎧の消失と最近のノイズ事件は関連しており、何かとても脅威的な事をしている可能性を示唆するものであった。
「さあ、良い子は地獄でねんねしてな」
「くっ!」
杖のような物を奏に向けるネフシュタンの少女。それに呼応する様にノイズ達が奏に向かい走り出す。
目の前に広がる地獄に奏はシンフォギアの最終奥義でもあり、風鳴翼が意識不明となり、下手をすれば適合係数の低い奏では命を失う可能性のある〝絶唱〟を使用するか迷った。その瞬間だった。
「「!!??」」
まるで絶対に相対してはいけない地獄の使者である死神が真後ろに立ち、その鋭利な鎌の刃で今にでもその魂を切り裂こうとする感覚が奏とネフシュタンの少女の全身に駆け巡った。
身体が震え動悸が早くなり息が出来なくなる程の恐怖に今まで燃え上がっていたはずの怒り炎があっさりと小さくなっていくのがはっきり分かる。そして奏にとってこれと似た感覚は
震えて歯がガチガチと音を鳴らし脳が全力で拒否するがそれでもこの場を一瞬で支配した圧倒的な
「……二年前……ライブ会場……奪われた鎧……ノイズを操る杖……」
ぶつぶつと呟き二人の会話から出たかワードを自分の頭の中で組み立てていく。その結果導き出された答えに頭の中でプツリと何か切れる感覚を未来は感じた。
顔を下に向けて前髪で目元が見えなくなった小日向未来はゆらりと一歩だけ前に出る。ただそれだけで後ろにいる死神の鎌の刃が身体に食い込むような幻をネフシュタンの少女は視た。
「……
未来は少しずつ顔を上げる。髪の間から覗かれた瞳のその視線がネフシュタンの少女を捕まえた瞬間、ノイズが生易しく感じるほどの地獄の蓋が開いた。
「お前があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
叫ぶと同時に未来を中心に竜巻が起きたかのような衝撃波が辺りの木々を薙ぎ払う。そして不思議な事にその衝撃波は
深い青の光が輝くと未来を包込み、そしてその光を引き裂くようにピッチリとした深い青色のインナーに手足には黒を基調としその黒と混ざるようにした深い青色の機械的な装甲を纏った未来が現れた。
「聖詠無しでシンフォギアを展開しただと!?それになんだ、この威圧感、いや殺気は!?」」
本来シンフォギア起動の為に必要なはずの聖詠無しでシンフォギアを展開した事による驚愕と心の奥底から感じる全身が「逃げろ」と警告をするほどの恐怖にネフシュタンの少女の足は無意識に後ろに下がった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
シンフォギアを纏った未来は殺意を込めた理性を失った獣のような雄叫びを上げながら黒い刀を手に持つと目にも止まらない速さで駆け出す。狙う先はネフシュタンの少女の首だ。
「なっ!?くそっ!!」
辛うじて未来の軌道を視認したネフシュタンの少女は水晶の鞭を縦に固定し剣のように持つ。
固定した鞭と未来の技も何も無い力任せの一撃がぶつかり合い、強い衝撃が周りの木々を大きく揺らした。
普通であれば完全聖遺物のネフシュタンの鎧と天羽々斬の破片から作られたギアの性能差では装者の実力を加味しても埋められない圧倒的な差がある。はずだった。
「ネフシュタンがパワー負けしてるだと!?」
駆け出した時の速度のまま減速せず、鍔迫り合いをしたまま踏ん張るネフシュタンの少女ごと地面をえぐり木々を薙ぎ倒しながら未来は突き進む。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「ッ!耳元で叫ぶなぁ!」
森林を抜け開けた広場まで出てくるとネフシュタンの少女は身体を捻らせて無理矢理刀の軌道を変える。力を加えていた部分が変わり僅かに刀の軌道線上がずれたのを見計らって固定化した鞭を再び鞭状にして未来の脇腹目掛けて振り抜いた。
未来の脇腹にはシンフォギアの装甲しか遮る物はなく、防御もせずに振り抜かれた鞭が直撃し二人の距離は強制的に離れる。
完全聖遺物の一撃。普通であれば昏倒するほどの一撃を未来は何事も無かったかのように空中で体勢を整えて地面に身体をかがめながら着地した。
「んだよ……なんだよなんなんだよ!こっちは完全聖遺物なんだぞ!?シンフォギア程度じゃ比較にならねぇくらい差があるんだぞ!?なのに……なのに!」
ネフシュタンの少女も鎧の性能を完全に理解している訳ではない。だがその鎧を初めて纏った時、内から溢れるほど力に鎧の異常性を感じたのも事実。そしてそれを知った上で聖遺物の欠片から造られた並みのシンフォギアでは太刀打ち出来るはずが無いとも思っていた。
だが現実は違った。今少女の前には欠片から造られたはずのシンフォギアで完全聖遺物であるネフシュタンの鎧を完璧に圧倒する存在が自分に殺意を向けて放ちながらそこにいた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「なんなんだよお前はあああぁぁぁ!!!」
未来とネフシュタンの少女は同時に大地を蹴り、互いに持った得物を力一杯にぶつけ合う。
刀と鞭がぶつかり合うたびに激しい衝撃波が生まれ地面をえぐり、離れた場所にある木々を大きく揺らす。
幾度ものぶつかり合いに自身の守りを捨てている未来は身体のあちこちにかすり傷やそれでは済まないほどの怪我を負う。だがそれでも止まらない。抜けた血の分更に力強く、そして動きが早くなっていく。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!」
「いちいちうるせぇんだよ!」
右手に持って振り下ろされた刀をネフシュタンの少女は左手で掴んでいた水晶の鞭を下から上へ振るい弾く。刀をカチ上げられガラ空きになった未来の腹部にネフシュタンの鎧の全力の右ストレートを放つ。パワーで圧倒されている今近距離戦は不利と推測し距離を取るための一撃だ。
これで距離が稼げるだろう。そう思ったがまたしてもその予想は外れた。
僅かに吹き飛ばされるも未来はすぐさまはじき飛ばされた刀を持つ右腕を無理矢理動かして自分の背後の地面に刀を突き刺す。そして突き刺した刀の峰に壁に張り付くように両足を揃えると壁蹴りの要領でネフシュタンの少女に向かって全力の跳躍と共に地面に刺した刀を引き抜き身体を捻らせて遠心力も加えた刀を再び振り下ろした。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!
「なんつー身体能力してんだよ!?」
ただ力だけで刀を振るっていた時よりも遠心力と全力の跳躍から生まれた速度の乗った一撃が距離を開ける事に成功したと油断していたネフシュタンの少女に襲いかかる。
「ッがあああぁぁぁ!?」
左手に持っていた水晶の鞭で刀を受け止めようとしたが未来の重い一撃一撃にネフシュタンの鎧の能力である再生能力が追いついておらず、辛うじて身体を両断される事は防げたが受け止められず鎧に大きなヒビを走らせて大きく吹き飛ばされた。
地面に身体を打ち付けながら数メートル離れた所で止まる。受け身を取りながらだったため思いの外ダメージは少ないが、それだけで済んだのはネフシュタンの力と少女自身の才能によるものだった。
ネフシュタンの少女は少々ふらつきながら立ち上がろうとすると脇腹辺りに妙な痛みが走った。
(ちっ、思ったより浸食がはえぇっ!)
もぞもぞと一部砕けた鎧が少女の身体に張り付くようにして自己修復していく。その際の激痛に思わず顔をしかめてしまった。
「くそっ!さっさと終わらせるぞ獣女!」
『NIRVANA GEDON』
理性のない獣のように暴れ狂う未来にそう言い放ち、奏に向けて放った黒い電撃を包み込むように白いエネルギー球を放つ。だがそれで終わりではない。
「持ってけダブルだ!」
一発目のエネルギー球を追うように二発目のエネルギー球を未来に向かって投げつけた。
一発で致命傷、直撃すれば死んでもおかしくないネフシュタンの技。それを二発立て続けに放つのだ。戦闘中の未来を見ていたネフシュタンの少女は未来が回避せずに我武者羅に突撃することから此の技も回避しないだろうと踏んだ攻撃だ。
この時すでにネフシュタンの少女は主人である〝フィーネ〟と名乗る者が小日向未来を生きて連れてくるように命令していたのだが少女は未来から発せられる殺意に自分が〝生きて帰る〟事しか考えられない程追い詰められていた。
自分の使命すら忘れて未来を殺す気の技。殺せなくとも致命傷、あるいは手傷を合わせる事が出来れば自分が逃走する時間を稼げると思っていた。
しかし、その期待は三度外れる事となる。
未来はネフシュタンの少女が放った技を見て、右足を大きく後ろに下げ両手に持った黒い刀を肩に担ぐ格好をとる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
『蒼ノ断頭』
全力で黒い刀を地面を
地面をえぐりながら進む衝撃波により一つ目のエネルギー球は両断され爆散。二つ目は一つ目のエネルギー球により威力が減衰した衝撃波とぶつかると一つ目とは比較にならない大きな爆発を起こした。
「ちいっ!これでもダメなのかよ!っ!?」
爆発による砂煙が舞う中、その砂煙から未来は傷だらけになりながらもネフシュタンの少女に向かって駆け抜けていた。
予想外の連続とまともに自分に向けた怒りと怨嗟と殺意の瞳を見てしまい、恐怖から一瞬身体が硬直してしまった。その隙を見逃す程今の未来は甘くはない。
『天ノ堕トシ』
ネフシュタンの少女から三メートル程離れた場所で一瞬止まり、未来を中心に全方位に向かって無数の黒々とした刀が周囲の被害を全く考えてない、殺意がこもって飛散する。
「っなめるなぁ!」
至近距離で突然放たれ無数の刀をネフシュタンの少女は再生した結晶が連なった鞭を片手ずつ短く持ち自分に当たる刀だけ狙って弾く。だが距離が近すぎる上にまばたきをすればその瞬間視界に広がる無数の飛来する刀に少しずつ防ぎ切れなくなっていく。
徐々にネフシュタンの鎧の回復速度を上回る速度で鎧が傷つき、それを追うように損傷を修復しようとする際の激痛で少女の負担もどんどん増えていきはじき返せなくなる。
「まだだ、まだあたしは、あたしはあああぁぁぁ!!!」
それでもネフシュタンの少女は鞭を振るい続ける。ここで諦めたら荒れ狂う刀の嵐に飲み込まれ確実な
まだ少女の夢は叶えられていない。今こうやって自身が傷ついてでも叶えたい願いが、
故にここで死ぬまいと今持てる力全て使って目の前の刀の嵐を耐える。
不意に殺意を撒き散らしていた刀の嵐がピタリと止む。目の前に広がっていた筈の圧倒的な殺意が急に消え去り未来の放った技がやっと終わったかと思い、嵐を抜けた事で一瞬気が抜けたがすぐさま焦りを顔に出した。
「どこに行きやがった!?」
目の前まで接近していたはずの未来の姿が視界から消えていた。
急いで周囲を見渡すが辺りには先程未来が放った技によって巻き散らされた刀が所狭しと地面に刺さっている以外人が隠れる事ができる場所はない。となれば必然的に隠れられる場所は一つ。
それに気づいた瞬間、頭上から身体を押しつぶすような強い
「上か!?」
確信を持って自分の頭上を見る。そこには予想した通り未来が飛び上がっていた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
『空ノ崩落』
黒々した刀を両手に持ち天を貫く勢いで高く振り上げた瞬間、刀の刃が巨大化する。その長さ未来自身の身長を超え最終的にはおよそ六メートル程の巨大な刀になった。
未来は巨大化した刀をネフシュタンの鎧の少女に向けて全力の力を持って振り下ろす。その瞬間、刀の峰と纏っているシンフォギアの手足の装甲が僅かに開き、そこから未来の殺意がにじみ出るような禍々しい黒い炎のブースターが点火され加速した。
重力と巨大化した刀の重量と黒い炎のブースターによる加速、それに加えて全力で振り下ろされた勢いによりまさに破壊出来ない物はないと体現するような全てを破壊する一撃が襲いかかる。
「っ!こんな所でえええぇぇぇ!!!」
それをネフシュタンの少女は持っていた結晶が連なった鞭を横に構えて振り下ろされた巨大化な刀を受け止めた瞬間地面が大きく陥没した。
巨大な刀と鞭がぶつかった瞬間、この戦いが始まって何回目だろうか、大きな衝撃波が発生し今度は近くの木々を根本から吹き飛ばした。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
だが無敵のはずの完全聖遺物のネフシュタンの鎧は想定を遥かに超える激戦と蓄積されたダメージにより少女が引き出せられる最大までの能力を発動しても目の前で振り下ろされた天羽々斬に押し負けていた。
衝撃によりネフシュタンの鎧に大きなヒビが入る。それを皮切りに少しずつヒビが広がっていき少女の顔を隠していた薄い青色のバイザーの半分が砕け散りアメジストのような瞳があらわになった。
「こんな……こんな……!」
少女がどれだけ踏ん張ろうとネフシュタンの鎧のヒビは広がり巨大化した刀を受け止めている水晶が連なった鞭までも同じくヒビが入り始めた。
逃れられない死神の鎌が自分の心臓目掛けて振り下ろされるを幻視しその瞳から恐怖の涙が流れた。その瞬間だった。
『LAST∞METEOR』
「っ!?」
突如発生した横向きの竜巻が
さすがに直撃を嫌ったのか未来は巨大化した刀を足場にして空中に跳躍する事によって回避し、未来が離したことにより巨大化した刀は竜巻に押されて遠くに吹き飛ばされた。
「はぁ……はぁ……そいつにはまだ聞きたい事がある!だから殺すな!」
そこには左腕をだらりと力無く振り下ろし右腕だけで持ったボロボロの大槍を構えた奏が血を流しながら立っていた。今の竜巻は奏の仕業であったのだ。
跳躍した未来は着地後、首が折れそうな勢いで奏の方に目をやる。この場には自分と憎き敵であるネフシュタンの少女と奏しかいない事に気づくと消去法で今の竜巻は奏が作り出したものだと理解すると新たな刀を作り出した。
「邪魔をするなあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!」
怒りで顔を歪めた未来が今度は奏に向かって襲いかかる。未来自身も戦闘で多少ダメージを受けているはずだというのにその勢いは減っておらず、むしろ増していた。
「ぐあっ!?」
奏は身を守ろうとボロボロの槍で刀を防ごうとするが未来の振り下ろした刀が地面に当たると同時に発生した衝撃に吹き飛ばされた。
LiNKERは既に切れている。更にネフシュタンの少女から受けたダメージから身を守るはずのシンフォギアも大槍と同様にボロボロ。普段の服装とあまり変わらない程度の防御力しか残っていなかった。
それでも死なずに済んだのは限界の来ていた身体が偶然横にずれた為に奏を頭から真っ二つにするつもりで放たれた斬撃が当たらずに地面に当たったためだった。
「く、そ……」
まともに目も見えなくなってくる程の消耗に耐え身体を起き上がらせる。そしてそこで見たのは一周間前と同じ、右足を大きく後ろに下げて両手に持った黒々とした刀を肩に担ぐ未来の姿だった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
『蒼ノ断頭」
全力で振り下ろされる刀が地面にぶつかった瞬間、地面をえぐるような衝撃波が奏に向かって放たれる。
砂煙を巻き起こしながら衝撃波は真っ直ぐに倒れる奏に向かって突き進み、奏を飲み込んだ。
393をアホみたいに強くしすぎました。だが反省はしない。
現在の393は暴走状態の破壊衝動をノイズに対する怒りと殺意で無理矢理全てノイズに向かうよう無意識に操作しているような状態です。GXのイグナイトによる暴走状態の制御に近いですが一つの感情に左右されるため今の未来さんではイグナイトのような制御は到底無理です。そして通常状態よりは遥かに強いがイグナイトの暴走を制御した状態よりも弱い、的なのが未来さんの現状態です。完全に暴走を制御したら抜剣状態より強いでしょうが完全制御する暴走は暴走なのか……
……あれ、393イグナイトモジュール使う意味が薄い……?
あと作者に腹パン属性も地面に叩きつける属性も女の子が吹っ飛ぶ事に興奮する事も無い……無いですからね!?
そして393……あなたプロローグ含めここまでの台詞の九割くらい「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」としか叫んで、うわやめてその刀をしまってry
じ、次回!OTONAとバトル!
フィーネが仲間になりたそうにこちらを見ている。
-
仲間にするんだよダホが!
-
無理に仲間にしなくてもいいんじゃない?
-
す き に し ろ
-
むしろ生かしておくな!!!