戦姫絶唱シンフォギアIF 〜陰る陽だまり〜   作:ボーイS

16 / 50
原作でいう六話です。

まぁお察しの通り大まかには同じでも原作とは違います。なんせビッキーがいませんからね!

そろそろ過去編書けや!と思う方々。この輸送作戦の終わった後に過去編入りますのでもう少しお待ちを。

そして毎回誤字報告ありがとうございますm(_ _)m


五話

 誰も寄らぬ何処かの湖の辺に大きな古城が建っていた。

 周りは生茂る森に囲まれており、古城がある場所を知らない者からすれば地上からは見つけるのは困難であろう人気のない場所。

 その古城の中で一糸纏わぬ姿で髪と同じ金色の瞳をした豊満な身体の女が一人静かに椅子に座っていた。

 

「……フィーネ」

「……なぁに、クリス」

 

 フィーネと呼ばれた金髪の女に話しかけるのは女と共に古城で暮らす銀の髪にアメジストのような輝きを持つ背丈は劣るが女と同じくらい豊満な身体をしたクリスと言う名の少女だった。

 クリスは恐る恐る椅子に座るフィーネに近づく。それを見てフィーネは優しく()()()笑みを浮かべた。

 

「本当に、やるのか?」

「ええ、そうよ」

「でもそれじゃ街に被害がっ!」

「そうね。でも上手くいけば貴女の望む世界平和への道の第一歩となるわ。それに今被害が少なく済んで後から取り返しのつかない事になるのと、今被害を多くして後は零にするのと、どちらが賢い選択かしら?」

「それは……」

 

 被害が出る選択肢しかない時点でクリスの望む世界平和が訪れるのか疑問ではあるのだがそれにクリスは何も言い返せない。

 自分の両手の手の平を見る。綺麗な女性らしい手なのだがクリス自身にはその手が血で真っ赤になっているように見えた。

 泣きそうな顔になるクリスをフィーネは優しくその胸に引き寄せる。

 

「……大丈夫よ。貴女が成功させればこれ以上被害が出る事はないわ。貴女も私も、もう誰一人その手を汚す事が無くなる。だから今は頑張りなさい」

「……信じていいんだよな?」

「そうよ。私を、()()()()信じなさい」

「……分かった」

 

 そう言ってまだ不安が残るクリスだったがフィーネから離れて次の作戦の準備をする為踵を返した。

 とぼとぼと歩くクリスが部屋から出たのを確認すると造っていた笑みを外しため息を吐いた。

 

「もうあの娘は無理だな。一度の戦闘であそこまで使えなくなるとは……期待外れだ」

 

 自分を信頼してその手を汚して来た優秀な()であるはずのクリスが使い物にならなくなった事に少々イラつきを覚える。

 常軌を逸した戦闘能力を持つ天羽々斬のシンフォギア装者である小日向未来だとしても完全聖遺物であるネフシュタンであれば能力を十全に使えずとも多少苦戦を強いられようが簡単に捕らえる事が出来ると思っていたフィーネだったが、結果は惨敗。むしろネフシュタンが破壊される寸前まで追い込まれたのだ。

 

(まぁ、油断していたとはいえあの化物を相手にあそこまで戦い、そしてあと少しで葬るところまで行ったのだ。ネフシュタンを完全に使えないクリス程度ではあれに勝つ事は不可能だったか)

 

 フィーネの予想を大きく上回るほどの戦闘能力。更に予想外だったのが彼女自身本当に人間か疑う世界最強の漢、風鳴弦十郎を追い込んだ事であった。

 フィーネは自分の計画の最大の妨げになるのは弦十郎だと思っていたがそれとは別の脅威に頭が痛くなった。

 

「唯一の〝融合症例〟の娘がもしかすると最大の妨げになるかもしれぬとは……解剖して自分の物にしたかったがそう易々といかない、か」

 

 小日向未来を〝融合症例〟と呼び、()としか見ていなかったフィーネは自分の失態に眉を潜めた。

 

()()あの娘ならば容易に殺せる。だが今殺せば風鳴弦十郎に我の正体がバレる可能性がある。最後のピースさえ手に入れれば壊れた小娘なぞ不要。ならば無理に我が動く事もない、か」

 

 大幅な作戦の修正を考えながらフィーネは時計を見ると立ち上がりクローゼットの中にある服を取り出す。そろそろ行かねば怪しまれる時間であった。

 面倒がりながら服を着終わり、最後に白い白衣を上から着る。そして指をパチンッと鳴らすとその金色の髪と瞳の色が変わり茶色い髪と紫色の瞳に変わる。その瞬間を見ていなければ同一人物とは思えないだろう。

 

「奴等も動き出す時間だろう。アリバイを作る為に────さぁ〜て!お仕事お仕事♪」

 

 一瞬で別人格にでもなったかのように先程までの怪しい雰囲気から陽気にステップを踏みながらフィーネは意気揚々と古城を後にした。

 

 ──────────────────────

 

 二年前に消えたネフシュタンの鎧が現れた事。

 ネフシュタンの鎧を着た少女とまだ傷が癒えていない二課唯一のシンフォギア装者である天羽奏が戦闘し、奏が大怪我した事。

 そして完成聖遺物として並みのシンフォギアでは敵う相手ではないはずのネフシュタンの鎧を欠片である天羽々斬のシンフォギアが同格以上の戦闘をし、ネフシュタンは大破したものの取り逃した事。

 そして暴走した小日向未来が人類最強と言われた漢に手傷を与えた上にその命を後一歩、というところまで追い込んだ事。

 

 一般人であれば想像出来ず、これらの出て来た単語が何かを理解している者が聞けば恐怖を覚えるような悪夢の一日が過ぎ、早くも一週間。

 天羽奏が再び負った怪我の治療をしながら(治療の間緒川慎次の説教が毎日病院内で聞こえたそうだ)リハビリをしている間、事は大きく動いていた。

 

 二課の行いや思想を理解し裏で支援していた広木防衛大臣が何者かに殺害されたのだ。

 

 それが二課の最奥保管されているというサクリストD、名称血塗られた魔剣「ダインスレイフ」の強奪であると政府は結論付けた。

 ダインスレイフが奪われる事を忌避した政府はすぐさま二課に移送を要請。二課より安全な場所は無いと弦十郎を含む二課所属の者たちは思ったが上から命令は絶対。無理して拒否をした場合二課は解体される可能性がある。解体された後今のようにノイズ対策を主にした組織が造られるか怪しい現状、その命令を飲むしかなかった。

 

 とはいうものの、現在の二課での最も大きい戦力はシンフォギアの装者である奏一人。弦十郎は司令であるため前線に出る事は出来ない。そして慎次は病院にいる未来の見張りとして今回の作戦には参加していない。

 他にも銃や格闘術に覚えがある者は多々いるがいざとなった場合頼りになるのは奏だけだった。だがその奏もLiNKERの制限時間がある以上戦力として期待するのは難しい。計算された戦闘可能時間も十分前後という結果だった。

 不安が残るものの考えられた作戦が。

 

「名付けて!天下の往来独り占め作戦!」

 

 声高にそう告げた二課の研究員であり、弦十郎が心から気を許せる友人であり、シンフォギアの基礎となった〝櫻井理論〟を提唱し開発した天才〝櫻井了子〟が語った作戦は至極単純。輸送先までの全通路を封鎖しそこを堂々と通過するという作戦だ。

 一見何を考えているのか頭が痛くなるように見えるが、実際何処から襲われるのか分からないのなら周りの障害を排除していつでも迎え撃てるようにした陣形でもあった。

 

「……本当に大丈夫なのかねぇ。了子さん?」

「だぁいじょうぶよ!私のドラテク、舐めないでちょうだい!」

「いや、そこじゃなくて」

 

 心配そうに車の窓を外を見ていた奏にぐっと親指を立てて自信満々にそう言う了子に奏は苦笑いを浮かべた。

 

 今奏は了子が運転するピンクの車に乗っている。それというのもその車の中にダインスレイフがあるからだった。弦十郎を除いた二課の最大戦力である奏を近くに置くのは当たり前である。

 異彩を放つピンクの車を陰ながら護衛するように何台かの黒塗りの車が走っている。

 

「こんだけ仰々しい中でピンクの車ってどうなのさ。これじゃあ狙ってくださいって言ってるもんじゃないの?」

「でぇも、私この子じゃないと上手く運転する自信無いわよ?」

「いや、だから別に了子さんじゃなくても……もういっか」

 

 軽く談笑しながら作戦は順調に進む。特に何か大きな事はなく、このままいけばなんの苦もなく作戦は終了するだろう。そう思われていた。

 

 途中あった橋の真ん中を過ぎた頃、車列前方のアスファルトにヒビが入り地面が割れて、橋の一部が崩落したのだ。

 

「了子さん!」

「っ!」

 

 奏の声に了子は慌ててハンドルを切る。前方を走っていた車はそのまま落下。了子と奏が乗るピンクの車はギリギリで崩落した部分を避ける事に成功した。だがそこで終わりじゃなかった。

 

『敵襲だ!まだ目視で確認出来ていないがノイズだ!!!』

「この展開、想定してたより早いかも!」

 

 通信機から上空のヘリから周囲の様子を見ていた弦十郎の声に了子は思わず舌打ちをしてしまう。だが横にいる奏はそれを気にする余裕は無かった。

 了子と奏が乗る車が道の真ん中にあったマンホールを通過した瞬間、そのマンホールが大きく飛び跳ね後ろにいた護衛車をしたから吹き飛ばしたのだ。

 

『下水道だ!ノイズは下水道を使って攻撃を仕掛けてきている!!

「ちっ、お出ましかよ!」

 

 再びマンホールが飛び跳ね今度は前方の護衛車を吹き飛ばす。二人の乗る車目掛けて落下してきた車を了子は荒々しいドライビングテクニックで華麗に避けた。

 

「弦十郎君。ちょっとヤバイんじゃなぁい?この先の薬品工場で爆発でも起きたらいくら完全聖遺物のダインスレイフでも!」

『分かっている!さっきから護衛車を的確に狙っているのはノイズがダインスレイフを損壊させないように制御されているように見える!!』

 

 弦十郎の言葉に奏は舌打ちをする。

 確かに狙い撃つだけなら既に了子と奏の乗る車は破壊されているだろう。だがそうせずに周りの護衛車を先に排除しているのは二人の乗る車に置いてあるダインスレイフが目的だからだ。そしてノイズをそこまで的確に操れる方法を奏は知っていた。

 

『狙いがダインスレイフの確保ならあえて危険な地域に滑り込み攻め手を封じる!』

「勝算はあんのかよ!」

『思いつきを数字で測れるかよ!!!』

 

 奏の言葉に弦十郎はそう言い返した。

 

 二人の乗る車は薬品工場のある区域に進入。その直後最後の護衛車が何処からともなく現れたノイズに組み付かれ制御を失い、近くにあったタンクに正面衝突し車は爆発してしまう。幸い運転手は脱出出来たようだったがその音を聞いたかのように周りからどんどんノイズが現れ始める。

 

「ここいらが限界か。了子さん。止めてくれ」

「こんな所で!?」

 

 車に乗っていた奏が了子にそう告げる。勿論了子はその言葉に驚きを隠せなかったが既に完全包囲されている以上このまま走った方が危ない。

 

「いっそのこと渡しちゃう?」

「それはダメだろ……」

「そりゃそうよね」

 

 了子のふざけた言葉に苦笑して奏は車から降りる。

 周りには見渡す限りの目の痛くなるようなカラフルな存在が所狭しと奏の方に向かって歩き、中には身体をドリル状に変形させて飛びかかる個体もいた。

 目の前から迫る悪夢を前に奏は不敵な笑み浮かべ自身の首筋にLiNKERの入った拳銃型の注射器を押し当て引き金を引いた。

 身体の中で熱く燃え上がるような感覚と何か崩れていくような感覚に全身が悲鳴を上げるがそれでも奏は笑い、頭の中に浮かんだ歌を口ずさむ。

 

 

 ──Croitzal ronzell gungnir zizzl──

 

 

 歌と共に奏は橙色の光に包まれる。その光は一種のバリアーのような効果があったのだろう。飛びかかって来たノイズがその光に触れた瞬間、ノイズは灰となって消えた。

 そして光が収まり、中から現れたのは橙色と黒のインナーに手足に機械的な装甲を纏い、大槍を携えた奏であった。

 

「さぁ、始めようか!」

 

 戦場に一人の少女の歌が響く。

 その歌は少女の怒りであり、悲しみであり、そして今は眠るもう一人の片翼に向けた歌だった。

 奏が大槍を振るえば目の前のノイズはあっさりとその姿を灰に変えて消滅する。シンフォギアを纏った奏の前ではノイズ一体一体の戦闘能力では有象無象のような存在であった。だがいかんせん、数は多い。

 

「いけぇ!」

 

STARDUST∞FOTON

 

 空中で投げた槍が瞬時に分裂し、槍の雨が広範囲に降り注ぐ。その中にいたノイズは雨を避ける人間がいないように避ける事はできずその身体を灰に変えた。

 

 目の前から他のノイズとは明らかに大きさの違う巨大な四足歩行のノイズが現れる。下手に刺激すれば周りのタンクに当たり連鎖的に爆発を起こす可能性があるだろう。

 

「だったらっ!」

 

LAST∞METEOR

 

 大槍の穂先が回転し、そこから大きな竜巻が巻き起こる。その竜巻は巨大なノイズの腹元に潜り込み下から突き上げるようにしてその巨体を空中にまで持ち上げ、そのまま貫いた。

 

 その後も奏は順調にノイズを屠る。目の前に広がる地獄を前に一人戦う戦少女(ヴァルキリー)の如く、その大槍を手に嵐のように暴れまわっていた。

 

(二年前とは違う!これくらい、あたし一人でなんとか出来る!だから)

「さっさと出てこい!こんな雑魚を出すなんて、あたしが怖いのか!?」

 

 誰もいないはずの虚空に向かって奏は叫ぶ。ノイズに囲まれている状況でそんな事をするのは自殺行為に近いだろう。それに今この場には奏と少し離れた位置で隠れている了子以外人はいないはずだった。だが。

 

「へぇ。この前あたしにボコボコにされてのにまだそんな事言えんだ」

「っそこか!」

 

 奏は声の聞こえた方に向かって大槍を投擲する。投げた先の鉄塔の上に銀色の鎧、ネフシュタンの鎧を纏った件の少女が奏を見下ろすように立っていた。

 少女は飛来して来た大槍をその場でジャンプして容易く回避し、そのまま奏の近くの地面に着地した。

 

「いきなりたぁ随分な挨拶じゃねぇか」

「けっ!どうせ隙を見てダインスレイフを盗む気だったくせに!」

「欠陥品相手に時間かけるより、そっちの方がよっぽど楽だからなぁ」

 

 大槍を構える奏に対してネフシュタンの少女は余裕の笑みを浮かべる。だが奏はそんな相手に憤慨する事なく、静かに息を整えた。

 

(焦るな。落ち着け。相手の挙動を見ろ。周りに目を向けろ。油断するな。深追いするな。思い込むな。そして)

「無理をしろってね!」

 

 自己暗示の如く頭の中で繰り返した言葉に目の前の憎き敵を前に心を落ち着かせた奏は発せられる言葉とは裏腹に落ち着きと余裕を持って大槍の穂先をネフシュタンの少女に向けて突撃した。

 

「うおりゃあああぁぁぁ!!!」

「ちっ!」

 

 前回とは明らかに違う奏の突きにネフシュタンの少女は一瞬を舌打ちをして大きく退く。それを追うように奏もノイズを巻き込みながらまた大槍を振り回した。

 

「調子に乗るなよ!」

 

 ネフシュタンの少女は必殺の一撃とも言える紫色の水晶が連なった鞭を奏に向かって振り下ろす。

 遠距離の技があろうとも奏のベストレンジは近距離。中距離の鞭の攻撃ではいささか相性が悪い。それを理解してネフシュタンの少女は近距離戦闘せずに距離を置いたのだ。だがそれは奏も理解している事だ。

 

 何度も振り下ろされる鞭を奏はギリギリで躱す。前回のように鞭に振り回されるのではなく、ギリギリのようで余裕を持ちながら安全に、そして周りに何も無いのを確認しながら確実に鞭を回避していた。

 

「はっ!少しは戦えるようになったじゃねぇか!」

「そりゃどう、も!」

 

 挑発してくるネフシュタンの少女を無視して奏は回避し続ける。中々鞭が当たらない為その攻撃も荒々しいものになっていく。それが奏の狙いでもあった。

 

 奏を狙って振り抜かれた一撃。それを回避して地面をえぐった鞭を奏は空いていた左手で掴んだのだ。

 

「なにっ!?」

「振りまわせないんじゃ鞭は使えないだろ?ふん!」

 

 完全に衝撃が抜けていない鞭を掴んだ為左腕に痛みが走るがそれを無視して鞭を思い切り引っ張ると同時に自身もネフシュタンの少女に向かって走り出した。

 ネフシュタンの少女は視界には走ってくる奏が見えたが振るった鞭を引っ張られた為一瞬バランスを崩した。それから復帰する間に近づく事は今の奏でも容易であった。

 

「いけえええぇぇぇ!!!」

 

 奏の容赦無い一突きがネフシュタンの少女を襲う。奏自身これで倒せるとは欠片も思っていないが、それでもダメージを与えられるはずと計算した一突きだった。

 

「なっ!?」

 

 だがその思惑は外れ、奏の渾身の一突きをネフシュタンの少女は両手で大槍の穂先を掴む事で防いでいた。

 

「……いい線行ってたが、シンフォギアじゃパワー不足だったなあ!」

「ぐっ」

 

 そのまま押し込めようと力を入れる奏だったが大槍はピクリともしない。文字通り完全聖遺物のネフシュタンの鎧と奏のガングニールのシンフォギアではパワーの差が大きいのだ。

 焦りが顔に出た奏をネフシュタンの少女はニヤリと笑みを浮かべて大槍を持った奏ごと持ち上げて自分の後方に放り投げる。

 

「お返しだ!」

 

 空中に放り出されたら無防備の奏にネフシュタンの少女は両手に持った二つの鞭で狙い撃つ。アスファルトをえぐりながら接近する鞭はまさに必殺の一撃に相応しかった。

 奏はなんとか空中で体勢を整えるが既に時は遅く、一つは持っていた大槍で防ぐ事が出来たがもう一つは無防備になった身体に直撃してしまった。

 シンフォギアの装甲が砕け散りながら地面に何度も身体を打ち付ける。それに紛れて血も混じっていた。

 

「うっ、かはっ!」

 

 吐血しながら奏はふらふらと覚束ない足で急所は避ける事が出来たのか立てる事は出来る。だがそれでも骨にヒビ、最悪折れている可能性はある。それに肺もやられてのか息をするだけで苦しくもなる。

 口の中に鉄の味が広がり、目眩もして来たがそれでも立ち上がった奏は諦めず大槍を構えようとした瞬間、シンフォギアが僅かに色が薄れ身体から力が抜けた。

 

「なっ!?まだ五分も経ってねぇのに!」

 

 奏は知る由もないだろう。一週間前のネフシュタンの少女での戦闘の無理が彼女の身体に大きく負担をかけていたのと周囲の予想を超えて装者は自分しかいないという圧迫感と風鳴翼が眠りについたのは自分のせいという罪悪感で精神的に大きなダメージを負っており、それがシンフォギアとフォニックゲインに重大な不和を呼んでいたためLiNKERを持ってしても十全にその能力を発揮出来ていない事に。

 そして、それがガングニールの活動限界を大幅に縮めていた事に。

 

「おいおい。もうお終いか?やっと身体があったまって来たところなのによぉ!」

「く、そが!」

 

 ふらつく身体に鞭打ってネフシュタンの少女に向かって走り出す奏。だが先ほどよりも身体が重く、思ったように身体も動かせない。

 

「眠てぇ動きすんなよな!」

「がっ!?」

 

 なんとか突き出せた大槍の一撃をネフシュタンの少女は軽々と避けてガラ空きになった奏の腹部に強烈な蹴りが入る。先のダメージと合わさり踏ん張る事も出来なくなった奏は再び吹き飛ばされ近くのタンクに背中を強く打ち付けた。

 今度こそ限界に来たのか、シンフォギアが音を立てて砕け、装甲が消失して元の服装に変わる。度重なるダメージの蓄積により奏は意識を既に失っていた。

 

「……まぁ、あんたは頑張ったよ。ただ相手が悪かった。それだけさ」

 

 そう言ってネフシュタンの少女は身体の向きを変えてダインスレイフの入ったスーツケースを重そうに持つ、隠れていた櫻井了子の元に静かに歩く。

 

「……近寄らないでくれるかしら?」

「はいそうですか。ってなると思うのかよ」

「でしょうね……」

 

 静かに歩いてくるネフシュタンの少女に了子はそう言い返すも()()()()()()()()()()()()おり、焦りもしていなかった。

 

「さぁ、死にたくなきゃさっさとそれを渡せ」

「……仕方ないわよね」

 

 了子がその場にスーツケースを置き、その場から退く。それを確認したネフシュタンの少女はスーツケースを取ろうと近づいた。その時だった。

 再び身の毛がよだつような恐怖が全身を駆け巡った。

 

「うっ!?」

 

 認識するよりも先に身体が勝手にスーツケースから離れて後ろに大きく飛び退く。その直後ネフシュタンの少女が立っていた場所に地面を陥没させるような勢いで一本の黒々とした刀が突き刺さった。

 

「くそ!あいつが来る前に終わらせたかったのに!」

 

 刀が飛来して来た方角に震えながら忌々しく顔を向ける。その先にあった一つの建物の屋上には予想した通り、深い青と黒のインナーに前よりも黒い部分が多くなった青と黒の機械的な装甲を纏った黒髪の少女、小日向未来がネフシュタンの少女を見下ろすように立っていた。

 

「……見つけたぞ」

 

 その怒りと殺意を込めた声に、眠っている魔剣が反応した事は誰も気付いていなかった。




了子さんの扱いが雑?よくあるじゃないですか、「ちょっとメインメンバーと仲が良かったちょいキャラが実はラスボスだった」ってパターン。あれです。
決して出すタイミングミスったから雑になったわけではありません。決してありません(目そらし)

原作にそこまで合わせず省いてもいいシーンはわんさかあると思いますが、個人的には原作とIFを見比べて(ビッキーがいない時点で比べるも何も無い)見てほしいなーと思いまして。

何故ここでデュランダルではなくダインスレフ?と思いでしょうがそこは一応作者の考えがある所なので心配なさらずに!(上手く出来るかは置いといて)
……まぁデュランダルも出す気なのですが作者のシナリオだと当分先なのですがね!

そして奏ファンの皆様。奏さんをボロボロにしすぎてごめんなさい。ですが奏さんの現状の身体を考えるとやはり原作翼さんと戦闘能力の差はあると思うんですよ。時間制限もつけてしまいましたし(←自業自得)。なのでネフシュタンの鎧のヤバさとそれと同格の393を表現するには奏さんにちょっと痛い目に……おや、今度は槍の雨ですか(白目)

次回!ダインスレイフVS天羽々斬!

……この次回予告、タイトルにすればよくね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。