戦姫絶唱シンフォギアIF 〜陰る陽だまり〜   作:ボーイS

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さあ、ここでどれだけ393のビッキーへの想いと絶望を表現出来るか作者の腕の見せ所です!

……自信ねぇ_(:3」z)_



八話

 ()──二年前、ライブ会場前にて

 

「遅いな〜」

 

 目が回るほどの人混みの中、その中で小日向未来は少し離れた場所で親友を待っていた。

 

 今日は超有名アーティストユニット〝ツヴァイウィング〟のライブの日。そして未来はツヴァイウィングのファンであった。

 

 未来が心から許せる親友はアーティストに興味が薄く、ツヴァイウイングも名前だけ知っているだけだったのでファンである未来は「勿体無い!」という理由で今日のライブを一緒に観る約束をしていた。

 当然親友は戸惑っていたが未来の頼みという事で今日一緒に観る事となった。しかし約束の時間は当に過ぎているというのにその親友はまだ現れない。

 

 目の前を通る人間をボーッと見ているが中々待ち人は来ない。時間的にもあまり余裕が無くなり、何か理由が出来て来れなくなったのかと思い始め連絡を取ろうと携帯端末を取り出そうとした。

 

「お〜い、未来ぅ!」

 

 離れて場所で聴き慣れた声が未来の耳に入る。顔を向ければつまずきながら走ってくる親友の姿があった。

 

「もう、遅いよ響!」

「ごめーん!来る途中道に迷ってた人がいて……」

「また人助け?もう……でも、間に合ったからいいよ」

「ありがとう!大好きだよ未来!」

 

 響と呼ばれた少女が未来に抱きつく。急に抱きつかれたせいで未来は顔を真っ赤にさせてあわてふためいたがそれを面白がるように響は離れようとしなかった。

 

「あう、も、もう!それより早く行かないとライブが始まっちゃうよ?」

「そそそ、そうだった!こんな所で喋ってる暇なんてないんだった!」

「ふふ。慌てないの」

 

 ころころと表情が変わる親友に未来は心が暖かくなる。

 よく響は未来に向かって「未来は私の陽だまりだよ」と言っているが、彼女自身は響の事を太陽だと思っている。みんなを明るく照らして不安な気持ちを暖かい光で穏やかにしてくれる。それに。

 

(陽だまりは、太陽が無いと出来ないんだよ?)

 

 そう楽しみで仕方ないという顔で落ち着かない親友に向けて心の中で呟く。きっとそれを言葉にしたら目の前の太陽は恥ずかしがりながらも笑って抱きついて嬉しい気持ちを爆発させるだろう。抱きつかれるのが恥ずかしい未来はそれが分かっているため口には出さない。いつか言いたいとは思ってはいるが。

 

「あ!ほら未来!列が進むよ!」

「分かったから引っ張らないで!」

 

 人がいなければ猛スピードでダッシュしているだろう親友に手を引かれ未来はライブ会場へ入っていった。

 

 ────────────────────

 

 ──ステージ裏にて

 

 ステージ機材の間に一人の青い髪の少女は膝を抱えて座っていた。

 これから始まる事への緊張と責任で気の小さい少女は不安でいっぱいだった。

 

「間がもたない、ていうかさ」

 

 そんな青い髪の少女に朱い髪の少女がゆっくりと歩いて近づいてくる。

 

「開演するまでのこの時間が苦手なんだよねぇ」

「……うん」

 

 朱い髪の少女の言葉に青い髪の少女頷く。だが不安を隠せない青い髪の少女とは違い、朱い髪の少女は興奮が抑え切れないというようにソワソワとしていた。

 

「こちとらさっさと大暴れしたいのに、そいつもままならねぇ!」

「……そうだね」

「うん?もしかして翼、緊張とかしちゃったり?」

「あ、当たり前でしょ!櫻井女史も今日は大事だって……」

 

 今日のライブは二課が担当するある完全聖遺物、サクリストN、別名〝ネフシュタン〟を起動する為の膨大なフォニックゲインを生み出す為の実験も兼ね備えていた。

 ライブを軍事目的に利用する事に青い髪の少女は忌避間はあったが、ネフシュタンが起動すれば人類の未来が決まるとなれば我慢しなくてはならない。その代わり失敗できないという緊張感が生まれそれに押しつぶされそうになっているのだ。

 

 朱い髪の少女、天羽奏は不安そうに顔をしかめる青い髪の少女、風鳴翼の額にデコピンを喰らわせる。驚いた翼とは対照的にニヤニヤとしている奏は大袈裟に腕を広げる。

 

「かぁ〜!真面目が過ぎるねぇ!……あんまりガチガチだと、その内ポッキリいきそうだ」

 

 ふざけていた雰囲気とは一転し翼の後ろに移動した奏は優しい声音で翼をその手で包み込む。それは気の小さい妹をなだめる姉のような暖かさがあった。

 

「あたしの相棒は翼だ。なのに翼が楽しめないとあたしも楽しめないよ」

「奏……」

 

 翼は自分を優しく包み込む奏の手に触れる。その優しさと暖かさが触れた先から伝わって先程まで感じていた不安や緊張が薄まっていき、何故そこまで縮こまっていたのか分からなくなるほど今は落ち着いていた。

 

「そうだね。私達が楽しまないとお客さんも楽しめないよね」

「わかってんじゃねぇか」

 

 もう緊張していない翼を見て微笑みを向ける奏に翼も同じく笑みを返した。奏の知る彼女に戻って安心のため息を吐く。

 もう本番まで時間はない。だが奏に釣られて翼も興奮が抑えられず、元気に立ち上がった。

 

「奏と一緒ならなんとかなりそうな気がする!行こう、奏!」

「ああ!私と翼、両翼揃ったツヴァイウイングなら何処まで飛んで行ける!」

「何処までも超えて行ける!」

 

 頷き合い、そして互いに手を繋いだ奏と翼はアーティストとしての戦場へと意気揚々と一歩を踏み出した。

 

 そしてライブが、運命の日の幕が開かれた。

 

 ────────────────────

 

 既に観客はほぼ満員。中には早く始まらないか落ち着かない者も多々いた。

 

「はい、響」

「えっと……これは?」

「ペンライトだよ。こうやって」

 

 そう言って未来は会場に入る前に買っておいたペンライトを響に渡す。

 両端を持って真ん中から折るように力を入れる。すると実際折れたかのような感触が手に伝わったと思うとペンライトは光だした。

 

「やっぱりライブはこれが無いとね♪」

「うわぁ、すっごい笑顔。私の知らない未来だぁ」

「ほら響!始まるよ!」

 

 そして始まるツヴァイウィングのライブ。

 

 天羽奏と風鳴翼が舞台に舞い降りた瞬間。歌が始まる前からすでに観客のテンションは高まっていた。

 

 ライブの始まりの歌は『逆光のフリューゲル』。この時点で観客のテンションは最高潮と言っても良いほどの盛り上がりがあった。

 二人の歌が会場に響き渡る。応援するように二人の歌に合わせる観客の声が一つになり、会場を揺らすほどの声量となるがそれでもツヴァイウイングの二人の歌はその声をかき分けて目立っていた。

 

「イェーイ!」

「い、イェーイ……」

 

 いつもと違う親友のテンションに響は戸惑う。いつもは物静かで落ち着いている未来がこんなにもはっちゃけている姿を見た事が無い為当たり前なのだが、それを差し引いても未来のテンションについていけなかった。

 

「響!もっと大声で!イェェイ!!」

「い、イェーイ!」

「もっと!」

「イェェェェイ!!!」

 

 未来に促されて大声を出す。普段であれば恥ずかしいのだが周りは響以上に声を張り上げている為そこまで気にならない。

 恥ずかしさが消え、何処か楽しくなってきた響は周りに釣られるように自身の興奮が抑え切れなくなっていく。

 

 会場の天井が割れ外の夕日に照らす。それにより更に神々しさが増したツヴァイウイングの二人の歌と観客が一つになった。そう感じられるほど観客達の心は二人の歌に魅了されていた。

 

「まだまだ行くぞおおお!!!」

 

 そして一曲目が終わり未来も響もそして観客も手を叩いて拍手喝采。それに囲まれながらも同じくテンションを上げている奏と翼は二曲目を歌おうとした。その時だった。

 

 会場の中心が大きく爆発したのだ。

 

 突然の爆発に近くにいた観客は戸惑う。中には爆発に巻き込まれて怪我をした者もいた。

 

「いったい何が!?」

「……うん?」

 

 予想だにしていない出来事に戸惑う翼だったが奏は目の前の光景に違和感を覚える。そして知っていた。それが奏の両親を殺した奴等の仕業だと。

 爆発で舞い上がったのは砂煙のはずなのにそれに混じる〝灰〟に気がついた瞬間、砂煙が晴れて見えてきた目の前に現れた〝地獄〟に、その場にいた観客全員が凍りついた。

 

「ノイズだああああぁぁぁ!!!」

 

 観客の誰かが大声で叫ぶ。それを合図に砂煙の中からその場を包んだ恐怖とは似合わないカラフルは生物が、世界で最も恐れられる存在が姿を現し、観客に向けて走り出した。

 一人、また一人と老若男女関係なくノイズに飛びかかられノイズと共にその身を灰と化していく。それは誰が見ても分かる〝死〟だった。

 

 

「逃げるんだ!」「おい、早く行け!」「せ、せめて子供だけでもっ!」「くそ、邪魔だ!退け!」「死にたくない、死にたくない!」

「助けてくれえぇ!!!」「も、もうそこまで来てるぞ!?」「た、助け、あああ!?」

 

 さっきまで一つになっていた観客が今バラバラに自分勝手に動き、怒号が飛び交う。中には前の人を押し倒して我先に出入り口のゲートへ行こうとするものまでいる。

 ゲートが詰まり、身動き出来なくなった観客にノイズは次々と襲い掛かりその身と共に炭素化していく。まさに地獄だった。

 

「くそ!行くぞ、翼!」

「でもまだ許可が」

「そんなの待ってたらみんな死んじまうよ!」

 

 壇上から奏はノイズに向かって飛ぶ。一瞬迷って奏を追うように翼も同じようにノイズに向かって飛び、二人は胸元に垂らしていた赤いペンダントを握る。そして頭の中に浮かんだ〝歌〟を口ずさんだ。

 

 

 ──Croitzal ronzell gungnir zizzl──

 

 ── Imyuteus amenohabakiri tron──

 

 

 二人を眩しい光が包み込む。それに触れた眼下のノイズ達はその身を灰に変える。そして光の中からオレンジと黒のインナーに機械的な装甲を纏い、その手に大槍を持った奏と青と黒のインナーに同じく機械的な装甲を纏い青いラインの入った白い刀を持った翼が颯爽と現れた。

 

「いけえええぇぇぇ!!!」

「はあああぁぁぁ!!!」

 

STARDUST∞FOTON

千ノ落涙

 

 広範囲に渡り無数の槍と刀がノイズ目掛けて飛来する。歌う事で高められるシンフォギアの能力も合わさり小型のノイズであればひとたまりもない。

 次々と現れるノイズに奏は槍を、翼は刀を持ち屠っていく。人間を灰にするという恐ろしい能力はあるものの戦闘能力自体は高くないノイズでは二人を止められる事が出来ない。数が少なければ。

 

「くっ、数が多い!」

 

 二人にとって有象無象のノイズも数を揃えられたら対処する事が出来なくなる。しかも観客を気にしながらとなるとどうしても隙が出来てしまう。

 シンフォギアを纏った瞬間はその圧倒的な力によりノイズをいともたやすく屠っていたが徐々に疲れが見え始める。それでも二人はその手に持った武器でノイズを倒し続けていた。

 

「……なに……これ?」

 

 アーティストであるツヴァイウイングの二人が武器を持って戦う様子を観客席から呆然と見ていた響は呟く。

 予想にしていない展開に一般人である彼女の頭はその処理能力を超えていたためまるで夢を見ているような気分だった。

 

 

 そして、ここで運命が分かれた。

 

 

「何やってるの響!?」

「み、未来?」

 

 喧騒の中でただ呆然と会場の中心で闘うツヴァイウイングの二人を眺めていた響の腕を未来は力強く掴む。それにより響は現実に戻された。

 

「ここは危ないから早く逃げないと!」

「う、うん」

 

 まだ呆然としている響を引っ張り未来は出入り口の方へ走り出した瞬間、今まで二人がいた場所の足元がノイズがまだ沢山いる一階席へ崩落した。もう少し遅ければ近くで戦っていた()()()()()()()()()()()()()()()だろう。

 

「あ、危なかった……」

「それより早く!」

 

 ホッとする響とは裏腹に焦る未来に引っ張られて響は近くの出入り口に向かうがそこはまだ逃げ遅れた人で混雑している。しかも気づいていないのかそれとも動けないのか、その集団にノイズが近づいていた。もうじきそこも地獄と化すだろう。

 

「そんな……」

「もう何処も人かノイズで……っ!?未来!!!」

 

 不安になる二人を嘲笑うかのように今いる足場が崩れ二人一緒に地面に落ちる。幸い小さく崩れただけでだったため瓦礫に挟まれるような事にはならなかった。

 

「いたたた……」

「大丈夫?未来、っ!」

「響!」

 

 未来は辛うじて少し身体を打った程度だったが響は足が瓦礫にかすったのか痛々しい怪我を負い血が流れていた。医療の知識が無い未来でも一人で歩くのは不可能だと分かるくらい深く怪我をしている。

 

「うう……み、未来だけでも早くっ!」

「嫌だよ!響を置いて行くなんて!」

 

 響を置いて行くという選択肢のない未来は肩を貸そうと手を伸ばしたその時だった。

 

「ッ未来ううぅぅ!!!」

 

 伸ばされた手を取ろうとした響が大声を上げると共に未来の伸ばされた手を拒否するかのように力いっぱい未来の身体を押して遠ざける。

 突然の事にバランスを崩した未来はそのまましりもちをつく。そしてその直後、真横にあった瓦礫に何かがぶつかり、爆発したかのような風圧が未来の身体を襲った。

 

「うう、いったい何……が……」

 

 風が収まり目を開ける。目の前にあった瓦礫は不自然に崩れているが、未来の目にはそれは些細な事だった。

 

 目の前にいたはずの親友の姿が、そこには無いのだ。

 

「ぇ……響?何処に……え?」

 

 未来は今まですぐそこにいた親友を身体が痛むのを我慢して探す。

 今の風圧で何処かに飛ばされたのかもしれない。足の怪我から下手をすればもっと出血しているかもしれない。

 そんな不安を感じながら辺りにいない事が分かると立ち上がって探そうと手をつくとそこにあった()()()の中に手を突っ込んでしまった。

 

 それを見た瞬間、未来は顔を青ざめさせて激しい動悸が身体を襲った。

 そんなはずは無いと自分に言い聞かせながらゆっくりと灰の塊から手を抜こうと動かすと何かが手に当たる。恐る恐るそれを掴んで灰の塊から手を出すと、それは見た事がある物だった。

 

 見間違える筈がない。それは未来が響の誕生日に送った赤い雷のような形をしたヘアピンだった。

 

「うそ……やだ、何処なの響っ!?」

 

 信じない、信じたくない。認めたくない。

 目の前の灰が何なのか頭で分かっていても心がその答えを全力で否定する。そうせねば修復出来ないくらい木っ端微塵に自分の中の何かが砕けてしまう予感がしたからだ。

 

 動悸が止まらず息も上手く出来ず苦しくなるがそれでも未来は赤い雷の形をした二つのヘアピンを離すものかと胸元で強く抱きしめる。そのため手についていた灰が風に乗ってふわりと流れて行った。

 

「ッ!ダメ、ダメ!」

 

 混乱している未来は必死になってかつて親友だった灰を手でかき集め持っていた鞄に入れる。何の意味も無い、すでに手遅れな行動なのだが未来にはそれすら分からないほどパニックに陥っていた。

 

 

 無我夢中で親友だった灰を鞄の中はかき集める未来の後ろでは奏と離れてしまった翼がノイズの大群相手に孤軍奮闘としていた。

 

「つうっ!まだまだ、ッ!?」

 

 ボロボロになりながらも刀を振り続けていた翼は自分の後ろにいる未来の姿が視界に入る。未来も落下の衝撃や風圧により服も所々破れていたが動いている事から何も知らない翼は〝生きている〟という認識だけあった。

 

「そこの貴方!逃げなさいッ!早くッ!!!」

 

 自分を守るだけで精一杯の翼も既に限界が近いその中で人一人守って戦うのは不可能と自身が分かっていた。そのため早く逃げるよう未来に声を掛けるが今の未来にそんな余裕はあるはずも無い。

 

「いったい何を」

 

 未来が動かない事が疑問に思い一瞬、時間にすれば一秒も無いくらいの思考の停滞。それが命取りになった。

 

「目を離すな翼ッ!!!」

「ッ!?」

 

 遠くでノイズをは屠っていた奏の声ですぐに前を向くが時は既に遅し。

 小型のノイズに目を引かれていた間に身体をドリル状に変形させた小型のノイズが突進してくるのと、大型のノイズ数体が翼に向けて口のような射出口から溶解液のような液体を放ったのだ。

 

「もういい!助けるのは諦めろ!逃げるんだッ!」

 

 既にLiNKERが切れて余裕が無くなっている奏の声が翼の耳に入るが市民を見捨てて自分が助かるという考えがない翼は対抗しようとするが突然の事に思考が追いつかず、ドリル状になったノイズは刀で切り払う事は出来ても溶解液のような液体は防ぐ事が出来ず直撃してしまう。

 幸いシンフォギアのおかげで身体が溶かされるような事は無く、身体に当たった瞬間に溶解液は変質して灰になったがそれでも巨体から繰り出されるその量に翼は踏ん張る事が出来ず、吹き飛ばされてしまう。

 

「ぐ、あああぁぁ!?」

 

 あまりの勢いに地面に強く叩きつけられシンフォギアは大きくヒビが入り、脆い部分は大きく破損する。そして持っていた刀の半端から折れ砕けてしまう。

 

 

 そして折れた刀の先端は親友だった灰を集めていた未来の心臓を貫いた。

 

 

「ああ……」

 

 地に伏した翼は自分の刀が心臓を貫き、血を吐きながら血溜まりに沈み、誰かの名前をかすれた声で呼ぶ未来を見て自分の愚かな選択と未熟さ、そして悔しさに心が折れそうになる。

 

「私には、誰かを守ることも、出来ないのか……」

 

 まだ未来は辛うじて息はあるがそれも間も無くして潰えてしまうのは予測出来る。もう手当てでなんとかなるレベルは当に過ぎていた。

 残った力を使いここで逃げても誰も文句は言わない。むしろ最後まで戦った事を褒める者もいるだろう。それにここで死ねばこれから先に現れるノイズから人々を守る守護者が一人いなくなる事になる。それだけでどれだけ被害が拡大するか。

 

「でも……ここで逃げれば、私は二度と歌えなくなる……奏と一緒に飛べなくなる……」

 

 誰かが許しても自分が許さない。弱い自分に逃げては最大にして最高の相棒(パートナー)の隣で羽ばたく資格は無い。

 だから歌う。正真正銘全力をもって文字通り命を賭した破滅の歌を。身を滅ぼす絶唱を。

 

 

 ──Gatrandis babel ziggurat edenal──

(今日、折れて死んでも、明日に人として歌うために)

 

 

 辺りを異様な空間が包み込む。心がないはずのノイズは何かを感じ取ったかのように翼から離れて逃げようとし始めた。

 

 

 ──Emustolronzen fine el baral zizzl──

(奏だってきっとそうする筈だから)

 

 

「やめろ!それを歌うな、翼ッ!!!」

 

 空間の色彩が変わるような異様な波動。それを感じた奏は翼がやろうしたある事を察すると顔を青ざめさせて叫ぶ。

 奏はこの歌を知っている。シンフォギアの最大の武器でありその命と引き換えに莫大なフォニックゲインを爆発させる禁忌の技。

 

 

 ──Gatrandis babel ziggurat edenal──

(どうか……奏が、奏の道を間違えませんように)

 

 

「ダメだ……ダメだダメだダメだ!!!やめるんだ翼ッ!生きるのを諦めるなあああぁぁぁ!!!

 

 瞳に涙を溜め、大槍を投げ捨ててでも止めようと必至に翼の元へ走り出しその手を伸ばす。それを見て翼は悲しそうに、そして奏を安心させるように笑顔を浮かべる。

 

 

 ──Emustolronzen fine el zizzl──

(どうか……生きて……かな、で……────

 

 

「翼ああああぁぁぁぁ!!!」

 

 そして世界は青い光に包まれる。

 突然吹き荒れる大きな衝撃にノイズを跡形もなく消し炭にし、大きさ関係なく存在そのものを消滅させる。奏もダメージ自体は無くともその大きな衝撃に身体が耐えられず吹き飛ばされる。

 

 だがそんな中で一つの小さな奇跡が起きる。

 ノイズにとっては畏怖するであろう青い光は心臓を貫かれ命の灯火が消えかけの未来をそっと優しく包み込み、そして未来の身体を貫いていた青いラインの入った白い刀が少しずつ粒子化していき未来の身体に入り込む。刀が完全に消滅する頃には血溜まりの中で()()()未来が横たわっている光景に変わった。

 

 そして破滅の歌を歌いきった一人の青い髪の歌女は力無く膝をつき倒れた。

 

「翼ッ!」

 

 奏は足を引きずってあちこち砕け、自分の流した血で血だらけになったシンフォギアを纏ったまま倒れた翼の元に向かう。

 

「嘘だろ?お願いだ、目を開けろよ……開けてくれよ!」

 

 絶唱を歌ったバックファイアにより目や耳からも血を流しながら、そして何処か安らかな笑みを浮かべたままぴくりとも反応しない翼に奏は涙を流して名前呼び続ける。

 

「あたし達は二人でツヴァイウィングなんだろ?だからあたしを一人にするなよ……あたし一人じゃ飛べないんだよ!!!だから起きてくれよ、翼ッ!!!」

「……………………」

「〜〜〜〜〜!」

 

 しかし必死に翼の名前を呼んでも反応はしない。その姿に奏は涙を流し声にならない叫びを上げる。形容し難いその泣き声は誰もいない荒れ果てたライブ会場に響いたのだった────




クリスちゃんの精神がヤバイ?この未来さんと奏さんを見て同じ事が言えるか!(白目)

ここの響は既にある程度の正義感と明るさを持っています。多分原作でライブ後〜シンフォギアを纏う前くらいに。そのため未来さんの目を離せないという思いが早い段階で溜まっているので好感度も高いです。だから失った時の悲しみは……

勝手な設定で響のヘアピンは未来さんが送った物にしましたが、書いた後に「これ、予想以上に未来さんに酷い事してるよね?」と顔が引きつりました(汗)

原作含めもしライブ事件がなければきっと未来さんはもっと明るくて、そして美しい百合の花が咲いてたと思うんですよ。ちゃんと互いに分かり合った純粋な百合の話が、ね!

次回 陰る陽だまりと黒く染まりし神剣

まだ過去編は続く……
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