当初の予定ではもう少しマイルドになるはずだったのに色んな意味で393壊れすぎてもはや無印の時点で着地点すら怪しくなって来ましたな(←自業自得)。F.I.S組……絡ませ方、どうしよ_(:3」z)_
それでは、どうぞ!
この日、雪音クリスは薬の匂いが鼻につく病院の中を歩いていた。
既に右腕のギプスは取れ、小さな傷は残っているが後遺症や目立つような怪我は完治している。監視はあるがある程度の自由も与えられている。
それでも毎日クリスは病院に通い続けていた。
初めて未来の現状を見て弦十郎の話を聞いたクリスは未来が狂ってしまった大元の原因の一つは自分にあると思った。
大人を嫌い、他人を近づけさせなかったクリスもやはり人の温もりを求めていた。そこをフィーネに付け入れられ上手く騙された結果、ノイズを使役するソロモンの杖を起動してしまったのだ。
ライブ事件の事もフィーネに聞かされていた。そしてそこで生まれる被害も。だが両親の願いでもあった世界平和のための尊い犠牲だと説得されてしまい、その作戦に加担してしまった。
クリスは平和のためにどんな痛みでも受け入れるつもりでいた。フィーネの拷問紛いの実験や非道な作戦にも参加したのはそれが理由だった。
痛みを受けるのは自分だけでいいと辛い思いをするのは自分で最後だと思っていたのだ。
あの日、病院で未来と出会うまで。
ある病室の前まで行くと一度掛けられたネームプレートには「小日向 未来」と書かれており、ここが目的の場所と確認すると深呼吸をして扉を軽く叩く。
「……入るぞ」
返事は無い。それでもクリスはゆっくりと病室の扉を開ける。中のベッドには横になって上半身だけ起こした小日向未来が手に持った小瓶に楽しそうに話しかけているところだった。
胸が苦しくなるのを必死に我慢し笑顔を見せて小瓶に話しかける未来に近づく。ベッドの前まで歩いてやっと未来はクリスの存在に気がついた。
鼓動が早くなる心臓を落ち着かせるクリスの顔を見上げる未来はニコリと笑みを浮かべて口を開く。
「
「ッ!」
誰もいない虚空を見つめてクリスに小瓶を見せる未来はまるで初対面のような反応を示す。その姿にクリスは涙が出そうになるのをグッと堪えた。
クリスが未来の病室に通うようになって既に
壊れた未来を見たクリスは恨まれてでも罪を償いたいと思った。愚かな自分が起こしてしまった悲惨な事件。未来はその被害者なのだから。
暴れる未来を見てその殺意を向けられたクリスは自分の正体を話すのは躊躇していた。それでも隠し事をしたく無いと弦十郎の話を聞いたクリスは少し話してから全て話して罰を受けようと思った。許されるとは思っていなかったが、それしか目の前で小瓶に話しかける未来への償いが思い浮かばなかった。
その日は未来は何度も小瓶に話してはいたが無理に笑顔を作るクリスとも会話をして予想以上に二人は仲良くなった。笑顔を見せて話す未来を見てこれが本来の彼女の姿だと思うと取り返しのつかない事をしてしまった自分を殴りたくなる。
未来から突然「友達になりましょう」と言われ時、クリスは戸惑いながらも長らく出来ていなかった友達という響きに思わず了承した。
後からあまり仲良くなりすぎると真実を話すのが怖くなると思い、なるべく早く話そうと決心したクリスだったがその決意はあまりにも甘かった。
次の日、今日は何を話そうかと両親が死んでから長い間忘れていた楽しい時間に気分は高揚していたのだ。
久しぶりに出来た友達に会いに意気揚々と未来の部屋に入る。そして中にいた未来に本心から見せた笑顔を向けるクリスを見て笑顔を作り。
『はじめまして。私は小日向未来です。貴女は?』
時間が凍りつくような感覚にクリスは自分の頭がおかしくなったのかと思った。
昨日まで楽しく話し合い、友達になったはずの未来がまるで昨日は何も無かったかのようにクリスに話しかけるのだから無理もない。
医者の話では一種の記憶障害らしく、その日の記憶が一定時間経つと消えてしまっているとの事だった。あまり見られる症状では無いが、それだけ未来の心が酷い有様なのだと見て取れてしまう。
クリスは最初その話を弦十郎から聞くと心臓の鼓動が早くなるのを感じ、頬が引きつってしまった。楽観視していた事と見た目以上に未来の心に深過ぎる傷を負わせていた事に戦慄を隠せなかった。
それでも、と思いクリスは毎日諦めずに未来に会いに病室へと足を運んだ。いつか治るものだとこりもせずに楽観視して。
どれだけ仲良くなろうとも次の日には、酷い時にはほんの五分も経たないくらいの時間席を外しただけで記憶が無くなっていた。
一か八かと弦十郎に頼み一日未来の病室に泊まった事もあったが、朝起きればいつの間にか部屋にいたクリスに未来は恐怖し、混乱して暴れてしまったのだ。未来の笑顔を知っているクリスはその時の未来が恐怖で身体を震わせる姿が脳裏に張り付いて取れない。
頑張れば頑張るほど、自分と話し仲良くなった事を全て忘れてしまう未来に、クリスはどんどん精神を削られていっていた。
「──それでね、響はいっつも食べ過ぎちゃうの。もっとバランス良く食べなさいって言ってるのに!」
「……そうだな」
(知ってる……口癖が「ごはん&ごはん」なんだろ)
「このリボンも響が選んでくれたの」
「……そうなのか」
(知ってる……サプライズで渡すつもりがへまして事前にバレたんだろ)
楽しそうに笑顔で話す未来にクリスは力無く相槌を打つ。
楽しそうに話す未来の話の内容は全てこの一ヶ月で何度も聞いた話だった。それ故に、見た事もあった事もない〝立花響〟という少女の事にクリスは詳しくなってしまっていた。
何度も何度も何度も同じ話を聞いているクリスも未来と同じく心にヒビが入り始めていた。
幼い時に両親を亡くし、長い間捕虜として非道な扱いを受け、助けられたと思えば両親の夢を餌に大量殺人の片棒を担がされ、そして自分のやってしまった事で取り返しのつかない事になってしまった目の前の少女。
自分の手が真っ赤に染まっていると理解していたが、そこにかかる重圧のあまりの重さにまだ若いクリスの心も限界だった。
「それからね」
「……もう、いいだろ」
小瓶に話しかけていた未来にクリスは割り込む。未来は不思議そうにクリスの顔を見ようとするがその顔は髪で隠れてどんな表情をしているか分からない。
「もう、ヒビキって奴は、何処にもいねぇんだよ」
ただそれだけで病室に漂っていた何処か虚像めいた暖かさが霧散し、いるだけで身体が凍りつきそうな寒さがクリスの肌を貫いた。
「……冗談はやめてよ、クリス。響はちゃんとここに」
「冗談じゃねぇ。ヒビキはもういない。何処にもいない。お前の見ているのはただの幻だ」
「……それ以上は私でも怒るよ?」
「それでもあたしは言うぞ。お前はヒビキで自分を守ってるんじゃ無い。ヒビキを〝呪い〟に変えてんだ」
表情が抜け落ちた顔で未来はクリスを睨む。シンフォギアを纏っていないのに下手な事を言えば刀で切り裂かれそうなプレッシャーを放つがそれでもクリスは辞めない。一度流れ出た思いは止める事は出来ない。
「お前の話を聞いてたらあたしでも分かる。本当のそいつはお前がそんな状態なら絶対にほっとけはしない。何としてでも助ける、そんな優しい人間なんだろ?」
「…………やめて」
未来は怒気と殺気まで加えて話すのを辞めようとさせる。だがそれでもクリスはその殺意に真っ正面から受けても話し続ける。
「お前はそれを分かっていてもヒビキがいなくなった事に耐えられなくて、それを糧にするんじゃ無くて〝呪い〟として自分を縛ってんだ。ただの居心地の良い夢に流されるように!」
「ッやめて!」
耐えられないというように未来は自分の耳を塞ぎ、駄々っ子のように頭を左右に振る。見ていて痛々しいがクリスは止まりそうになる口を無理矢理開く。
「いい加減に目を覚ませよ!ヒビキは二年前にノイズに襲われて──」
「やめてええええぇぇぇぇ!!!」
クリスが言い切る前に未来はベッドからクリスに向かって飛びかかり地面に押し倒す。そして両手で力一杯その白く細い首を締め上げた。
「響は生きてる!響はここにいる!響は私の隣にずっといる!嘘を言うな、嘘を言うなあああああぁぁぁぁ!!!」
「ッぅあ」
クリスの首を締め上げる未来の手に力が入る。クリスと違い身体の中に聖遺物がある未来はシンフォギアを纏わなくても一般的な女性以上の身体能力と力がある。そんな力で生身の人間の首を締め上げれば結果は言うまでも無い。
馬乗りになったまま怒りと殺意で鬼のような形相になり、そして涙を流す未来を見たクリスは酸欠になりつつある頭で一ヶ月前に弦十郎が言っていた言葉を思い出す。
『キミは、あの時の未来君が狂ってると思うか?』
問われた時は殺意に塗れ周囲を破壊する化物と化していた未来の方が狂ってると思った。
だが虚空を見つめて小瓶に向かって楽しそうに笑顔で話しかけ、その日あった事を全て忘れてしまい何事もなかったかのように次の日には元に戻ってしまっている未来と過剰すぎるが人間らしい怒りと殺意と悲しみを見せている未来。
どちらも狂っていると言えるが、この二人の未来を見たクリスはどちらがより狂っているか、そしてまともなのか一目瞭然だった。
(このまま……こいつに殺されるのがいいのかもしれねぇな)
万力のような力で締め上げられるクリスはこのままでは窒息死ではなく首の骨を折られて死ぬだろう。だが自分のやった過ちがこの形になって自分に返ってきた。そう思えば当たり前の罰なのかもしれないと思った。
苦しくて苦しくて涙が出てくるクリスだったが決して抵抗せず、このまま自分に暖かさをくれた陽だまりの手で死のうと思った。だが、それでも救いの手はやってくる。
「何をやっている!」
偶然未来の様子を見に来た弦十郎がクリスの上に馬乗りになり首を絞めている未来の姿を見て待っていた果物の入っていたバスケットが地面に落ちるのに目もくれず、超人的な身体能力を持って未来を羽交い締めにしてクリスの上から引き剥がす。騒ぎを聞いて外にいた慎次も部屋に急いで入って来た。
「離せ!離せえええぇぇぇ!!!」
「くっ、慎次!早くクリス君を!」
「分かりました!さぁ、早く!」
暴れる未来を弦十郎は何とかして取り押さえている中、慎次はクリスに肩を貸して急ぎ扉に向かう。クリスは酸欠により
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未来が暴れ出して十分程経った頃、弦十郎が病室から出てくる。騒ぎを聞いて来た医者たちにより既に未来は鎮静剤を打たれ今は落ち着いていたが、それでも精神の不安定さから予断を許さない状況は変わらない。
病室の前の廊下には壁を背にしてもたれかかるクリスと、クリスを心配する慎次の姿があった。
「……あいつは大丈夫なのか?」
「今は鎮静剤が効いて落ち着いている。もう少しすれば……
クリスの問いに弦十郎は最後間を開けてそう言った。すぐさま落ち着かせなければいけないだけで時間が経てば未来は自然と忘れてしまう。弦十郎はその光景を何度も見ていた。それでも気分が良いものでは無いだろう。
「何があったんだ?」
「……あいつに、ヒビキはもういないって言ったんだ」
眉を潜める弦十郎を他所にクリスは力無く天井を見上げる。その姿はとても儚く、直ぐにでも砕けてしまいそうなほど脆いように見えた。
「前に言ったはずだ。今の彼女にその事を言った者はキミと同じく殺されかけたと」
「分かってんだよ!!!」
弦十郎の言葉を聞いてクリスは近くの壁を強く殴る。壁は頑丈に作られているため殴ったクリスの方が手を痛めるが、その痛みすらクリスはどうでもいい事だった。
「分かってんだよ……あいつにとってヒビキって奴がどれだけ大切なのか、どれだけあいつの中に根付いてんのか!でもよ!」
未来の見せた笑顔が脳裏によぎる。
とても楽しそうで、嬉しそうで、見ている方も心が暖かくようなそんな笑顔。太陽のような眩しい笑顔ではなく、心地よい気分にさせる優しい陽だまりのような笑顔。
それが本当の未来の姿であり、普通に生きていれば争い事に巻き込まれる事なく、その笑顔を絶やすことが無かったはずの笑顔。
だが今その笑顔を向けているのはこの世にいない親友に向ける虚しい笑顔。そしてその裏にある異常すぎる怒りと怨嗟と殺意を知っている。
「全部あたしが悪いんだ!ソロモンの杖を起動しちまったあたしが、フィーネの事を何も疑わずに信じたあたしが!あの子の笑顔を奪った!」
ソロモンの杖を起動させなければ。フィーネの命令に疑いを持ち、反対の意見を貫けばもしかしたら未来は狂わなかったかもしれない。
今となっては手遅れな事ではあるが、それでもクリスは考えを止めることが出来なかった。
「教えてくれ……あたしは何をやったら許される?何をやったらあの子は正気に戻る?あたしの想いは……パパとママの願いは……叶えようとしちゃダメな事だったのか?」
「それは……」
涙を流し懇願するクリスに弦十郎は何も言えなかった。どんな慰めの言葉も今のクリスには意味のないような事に感じられた。
自分で考えろ。と言葉で言うのは容易い。不安を振り払わせるように強く抱きしめる事も出来る。だが目の前の少女の心の傷を癒す事は出来ない。良くてその場凌ぎに落ち着かせるだけ。下手をすれば壁一枚挟んだ向こう側の病室にいる未来のように心が壊れてしまうかもしれない。それほど今のクリスの心はボロボロになっていた。
それこそ、未来に殺してもらう事でこの痛みから解放されたいと思うほどに。
「もう、嫌だ……誰か助けてくれよ……パパ、ママァ……」
泣き崩れるクリスに弦十郎は手を伸ばすがその手がクリスに届く事はなかった。
何を言えば目の前の少女を苦しみから解放出来るのか、何をすれば救われるのか。〝大人〟として生きている弦十郎や慎次でも、その答えは何も分からず、ただその痛ましい姿を見ることしかできなかった。
病院に聞いてるだけで辛くて痛々しい泣き声が、心臓が締め付けられるほど悲しい泣き声が木霊する。だが少女の流す涙を拭う者は誰もいない。そう思われた。
ガラガラと弦十郎の後ろの病室の扉が開かれる。突然の事に反応が遅れた弦十郎だったが振り返ると、そこには泣き崩れているクリスをジッと見つめる未来の姿があった。
「ま、待て!未来君!」
驚く弦十郎と慎次を押し除けてクリスに近づく未来。鎮静剤が効いているとはいえ聖遺物を身体に秘めた身、もしかしたら鎮静剤の効果は薄くクリスの声を聞いて再び殺そうとしているのかもしれない、そう思い弦十郎は未来を静止させるため手を伸ばすが少し遠かった。
未来は座り込むクリスの目の前に立ち見下ろしながらジッとクリスを見つめる。泣き崩れているクリスも未来が殺しに来たと思い、一瞬後に来るであろう
そんなクリスを見て未来はゆっくりとしゃがみ、クリスの頭を自分の胸元に近づけて抱きしめた。
「大丈夫。大丈夫だから悲しまないで」
「ッ!」
まるで泣きじゃくる子供をあやす母親のように暖かい声で、荒れた心を落ち着かせる声を聞かせながらクリスの背中を優しく叩き、もう片方の手で頭を撫でる。
未来の予想外の行動にクリスは一瞬身体が固まるがその暖かさにすぐに身体を委ねそうになる。すぐに押し除けないといけないと思いながらもその優しい抱擁と心地の良い心臓のリズムにクリスの身体は意識を無視して離れない。
「ッやめてくれ!あたしは、あたしはお前に優しくされる資格はない!だから!」
「そうだね。そうかもしれないね。でも私がしたいからやってるんだよ」
駄々っ子のように涙を流すクリスを服が涙で濡れるのを気にせず未来は抱きしめ頭を撫で続ける。
許される資格はない。許されるわけがない。そう理解しながらもクリスは一番許しが欲しい相手の言葉に安堵してしまう。
何か言わなければと思いつつもその暖かさがクリスの荒んだ心を落ち着かせていく。
「今は沢山泣いていいから、沢山甘えていいからね。もう……我慢しなくていいんだよ」
「〜〜〜〜くうっ、くっ、ううっ」
「よしよし」
未来の言葉にクリスはまた涙を流す。悲しい事を、嫌な事を全て洗い流すようなその涙を。そして未来はそれを優しく抱きしめていた。
院内に、悲しい泣き声と優しくあやす声が響き渡った。
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小日向未来は病室のベッドに上半身だけ起き上がらせて横になり、外を眺めている。
あれからクリスは未来に抱きしめられながら泣き続けた。そして泣き疲れたクリスは未来の膝に頭を横にさせて規則正しい寝息を立て始めたため弦十郎はクリスを起こさないように抱き上げて休める場所に連れていったのがおよそ十分ほど前のこと。
ガラガラっと病室の扉が開かれる。ニ課司令の権限で空いていたベッドにクリスを寝かせて戻って来た弦十郎だった。
「クリスはどうでしたか?」
「ああ。最近あまり眠れていなかったからか今はぐっすりと眠っているよ」
「そうですか。ありがとうございます。風鳴さん」
未来が弦十郎の姓名を口にした事により驚きを隠さず目を大きく見開いた。今までの未来なら弦十郎を知らない人として見るはずなのに前から知っているようだった。それに今日はまだ自己紹介をしていない。
「まさか、記憶が?」
「はい。ちゃんと覚えてますよ。私がやってきた事も、全部」
自分の手の平を見て苦笑いを浮かべる。今までやってきた獣のような破壊衝動に身を任せた行動を未来はハッキリと覚えていた。
「参考まで何故か聞いても?」
「そうですね……多分、クリスが泣いていたからだと思います」
「クリス君が……?」
クリスが泣く事によって何故記憶を忘れずにいたのか何も結びつかない弦十郎は思わず頭を傾げる。理由は未来しか分からないため弦十郎が考えても答えは絶対に出ては来ないだろう。
「あの子も、響もよく泣く子だったんですよ。嬉しい事でも、悲しい事でも。その度にああやって頭を撫でてあげてたんです」
目を閉じれば昨日の事のように思い出す。
思い出の響が嬉しくて笑い泣きした時も辛くて悲しい涙を流した時も、未来はクリスにやったように抱きしめて子供をあやすように背中を優しく叩きながら頭を撫でていた。その度に響は嬉しそうに言うのだ。「未来は私の陽だまりだよ!」と。
「私にとって響はとても大切な、もしかしたら家族よりも大切な人でした。ずっと隣に居たいって思うくらい私は響の事が大好きでした」
未来の言う好きが「Like」なのか「Love」なのか弦十郎には分からない。だが響の話をする未来が笑顔を見せている事からどちらの意味でも大切な人だった事は明らかだった。
「響が悲しいなら私も悲しい、響が嬉しいなら私も嬉しい。幼馴染で親友の響が悩むなら私も一緒に悩んであげたい。ずっとそう思っていました。思っていたんです」
それなのに自分のやって来た事はなんだ。
ただただ親友を殺したノイズを殺す為に周りの被害を気にせず力の限り暴れた。その結果少なからず悲しみが広がってしまった。
そしてそれよりも未来には重要な事があった。
響なら今の未来を見たらどう思うだろうか。今の自分が響の好きな小日向未来なのか。
そんな単純な事に未来は今まで気づかなかったのだ。
「……私はこれからもきっとノイズが現れたら一匹残らず殲滅しようと考えると思います。でも、それだけじゃきっと響は笑ってくれません。ただ倒すだけじゃ喜んでくれません。ですからノイズを倒すためじゃなく、ノイズに襲われる人を救っていきたいんです。危ないですけど響が笑ってくれるように生きたい、そう思ったんです」
その言葉に弦十郎は未来がまだ立花響という少女に縛られている事を理解する。だがそれと同時にその鎖が未来を正気に戻している事も分かる。
立花響をよく知るからこそ、亡くなって狂うほど強く想っていたからこそ、響が抱くであろう想いが未来には分かる。死人に引きずられているようであまり良いものではないのかもしれないが、それでも未来は前に進もうとしていた。
「……キミが立花響君を大切に想っている事は分かった。我々が安易に割り込んでよいものでない事もな」
未来の言葉を一つ一つ思い出しながら弦十郎は呟くように口を開く。
とても強い想いが込められていた言葉は今までシンフォギアを纏っていた時の怒りと殺意、そして悲しみを宿した叫びよりも深く弦十郎に刺さる。
「……本来ならノイズの相手は我々二課が受け持つ事だ。偶然聖遺物を手に入れたキミが戦場に出る事は決して許されることではない。だがそう言ってもキミは来るのだろう?」
「はい。ノイズが現れたら私は動きます。ノイズを倒すだけじゃなく、ノイズからみんなを守る為に」
キッパリと真剣な目で弦十郎を見返す。その目を見た弦十郎はまだ強迫観念のようなものを見るが、それでも未来の言葉は虚勢や使命感というものではなく、亡き親友の想いを継ぐ覚悟もある事に気づく。
「なら我々と共に戦おう」
男らしくただ一言言われただけの言葉。そこに親友の影が重なる。
一直線で、真剣で、時に熱いほど熱血で、いじっぱりで、でも知らない他人の為に助け合おうとした今は亡き大切な親友の姿。
(きっと響なら「私に出来るなら」って躊躇う事なく傷を負ってでも戦うんだろうなぁ)
響の事を思い出しキュッと胸が締め付けられる。理解していたからこそ戦う響の姿が頭に浮かぶ。自分が傷ついてもハッピーエンドを掴み取ってくれる太陽のような親友の姿が。
「……はい」
未来の返事に弦十郎はニカッと笑みを見せたのだった
百合百合しいクリみくと思ったか?残念だったな!(死んだ魚のような目)
互いに歪に依存し合うのもある意味それらしいと言えばそれらしいと思うのですよ。互いに病みそうですが。
時間の進みがおかしいように感じると思いますが、そこは表現です。気にするな(゚∀゚)
一見正気に戻ったいるような393ですが人間そう簡単に強く根付いた想いを取り除く事は出来ないんですよ。
次回 背を託す槍と弓