そして知らない間にお気に入り数が二百を突破!拙い作者の文章力で皆様に気に入られてほんと驚きました( 'ω')
今回は原作で言うと十一話に当たります。原作と比べて(ビ(略))最終対決に挑むメンバーが二人も違うし、一人は照らす太陽ではなく陰った陽だまり。はてさてどうなるのか!私の想像力が通じるのか!?
それでは、どうぞ!
走って行こうとしたクリスを説得してヘリに乗せ、奏と共にリディアンに到着するとそこはまさに地獄だった。
校舎は半壊、残った生徒も逃げ惑う。そしてそれを嘲笑うかのようにコミカルな見た目の地獄の使者、ノイズは現代兵器で応戦する一課の隊員や逃げ遅れた生徒や一般市民を問答無用で組付、共に炭化する。そして残るは無情にも風が吹けば飛ばされてしまう灰のみ。
「くそ!遅かったか!」
奏はかつての自分も通った学舎が無惨にも破壊され、後輩に当たる学生達が逃げ惑う姿を見て歯が欠けるほど強く噛み締める。すぐにでも殲滅に移ろうとするが隣にいるクリスは可哀想になるほど必死に辺りを見回していた。
「あいつは、未来はどこだ!?」
もし未来がノイズに襲われていたら。そう考えると心臓の鼓動が早くなり涙が出そうになる。
まだ何も罪滅ぼしをしていない。まだ話したい事は山ほどある。やっと心の許せる存在が出来たのに、もう一人になりたくない。
そんな焦りにも似た感情がクリスを支配しようとしたところを、奏はクリスの両肩を強く握り痛みで無理矢理正気に戻させた。
「しっかりしろ!あの子には緒川さんがついてるから大丈夫だ!今は自分の出来る事をしろ!」
「でも……でもよ!」
ネフシュタンを纏って戦った時の強気のクリスとは違い、今はもし未来を失ったらと考えると身体が震えだしてしまいそうになるほど弱気になっていた。
「ッ焦ってんのはお前だけじゃないんだぞ!」
駄々をこねるクリスに奏は苛つきを隠せないでいた。
それも仕方ない事だ。何せ未来がいる病院には奏の大切な相棒である風鳴翼も眠っているのだ。未来が危ないという事はその近くの病室にいる翼も危険という事に他ならない。
だが先の市街地戦よりも数は少ないとはいえ一般人がいる中をノイズを倒さずに未来や翼を探すのは不可能だ。
奏の事をあまり知らないクリスだが、その焦りようから大切な人が病院の中にいると察し、悔しそうに唇を噛む。
「今はさっさとこいつらをぶっ飛ばす事だけ考えろ。あの子を探すのはその後だ」
「くっ、分かったよ!やればいいんだろ!」
やけくそになりながら吠えるクリスと翼の事を案じる奏は首に下げたギアペンダントを握る。そして頭に浮かぶのはシンフォギアに選ばれた者にしか分からない二つの聖なる
──Croitzal ronzell gungnir zizzl──
──Killter Ichaival tron──
二人は再びシンフォギアを纏い、目の前のノイズの殲滅に移った。
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轟音と銃音、壁や床が破壊され崩落する音。そして人々の阿鼻叫喚の嵐。
ほんの数分前までいつもの日常を謳歌していた人々は突然の地獄に思考が追いつかず、ただ助けを求める声を上げて逃げ惑うのみ。板場弓美たち仲良し三人組も同じだった。
「なんで、なんでノイズが出てくるのよ!」
「私に言われても分かりません!」
「二人とも喋らずに走るんだ!」
窓が割れ、校舎の壁も崩れて外がよく見える。そして眼下には地を這うようにウヨウヨとノイズが
何処から出てきたか分からない武装した男達が必死に応戦しているが、ノイズ相手に現代兵器は無意味。足止めも出来ず次々と組みつかれて灰化していく。
辛うじてノイズはまだ一階付近に溜まっているので二階にいた三人は事なきを得ていた。だがそれも時間の問題だ。
「ここからシェルターってどうやって行くのよ!」
「板場さん!大声を出したらノイズに見つかってしまいます!」
「二人とも落ち着いて!」
混乱する弓美と詩織を落ち着かせようとする創世も声が大きくなる。目の前の死にまともに対応出来る人間は少ないため仕方ないだろう。
徐々に銃撃音が少なくなる。それにともない助けを求める声も聞こえなくなってくる。それが意味する事が分からない三人ではない。
三ヶ月ほど前、軍に見捨てられた時の光景がフラッシュバックされる。あの時と違い見捨てられる状況ではないにしろ、ノイズという死の恐怖を前に冷静にいられるはずがなかった。
「貴女たち!ここで何をやっているんですか!」
冷静を欠いていた三人の前方から背中に誰か人を背負った一人のスーツを着た細身の男が地面に散乱した瓦礫を華麗に避けながら駆け寄って来る。
「しぇ、シェルターに向かおうとしたんですが」
「一階はノイズだらけで外に出られなかったんだ!」
おどおどする詩織と人に会えた事で若干落ち着きを取り戻した創世が目の前の男、緒川慎次に言う。二人の後ろでは弓美が恐怖でガタガタと身体を震わせて周囲を見回していた。
「……仕方ないですね。僕についてきてください」」
一瞬考えた緒川は三人について来るよう言い、スピードを落として目的の場所に走り出す。その後ろを三人はついていく。
「あの、何処に向かっているのですか?」
「シェルターとは違いますが今は緊急事態なので別の避難出来る所に向かってるんですよ」
詩織の問いに答える慎次が向かうのは勿論リディアンの地下にある二課の本部の事だ。本来なら一般人は立ち入る事はできない場所だが、今はそんな事を言っている場合ではないし、見捨てられるほど慎次は非情ではない。
走るだけで自分たちは息が乱れるというのに、背中に人を背負って走っているというのに息乱さずに喋る慎次に不思議がりながらも背中に背負う人間が誰なのか三人は気になって来る。こんな異常事態になっても起きない存在が気にならないはずがない。
「後ろの人ずっと眠って……え」
弓美と詩織とは違い、まだ体力の余裕がある創世が慎次の背中に背負われた人物が誰か覗こうとその横顔を確認した瞬間、あまりの意外さに絶句した。
「うそ、もしかして風鳴翼!?」
「「ええ!?」」
予想だにしていない事に三人はノイズが近くにいる事を忘れ声を出してしまう。
一般的に知られているツヴァイウィングの片翼である風鳴翼は二年前のノイズ事件で療養中となっている。それが目の前にいる事と騒がしい現状でも起きない事に三人は動揺を隠せない。
「質問には後で答えますので、今はついてきてくださいね?」
「「「は、はい」」」
慎次の笑顔だが有無を言わせない雰囲気に三人は黙って頷く。こんな事をしている間にもノイズは迫って来るかもしれないため、余裕の顔を見せている慎次も少し焦っていた。
(早くこの方達をニ課に連れて行って小日向さんを探さないと)
ノイズが現れる直前、未来は散歩だと言って病室を出ていた。
精神が安定した未来なら大丈夫だろうと判断した慎次は影ながら見張っていたが、そこで隣接するリディアンにノイズが現れたのだ。
未来の事は気がかりだったが、それでも急ぎ優先して翼の眠る病室に戻り、ベットで眠る翼を背中に背負って急ぎ地下のニ課に行こうとした時に弓美たち三人に出会ったのだ。
だが後になって、未来がシンフォギアを纏えると考えて声をかけずに一人で来たのだが、精神が安定したとはいえまだ不安が残る未来を置いてきた事に慎次は後悔していた。
そしてもう一つ、慎次は裏で調査して得られた結果からある人物を警戒していたが、この騒ぎのせいで慎次の能力では現状現在位置を特定出来ないでいた。
(通信機も使えない……やはりあの方が)
嫌な予感を感じつつ、今は人命救助を優先しようと頭を切り替えて慎次は三人を連れてニ課へ向かった。
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クリスと奏が東京タワーに現れたノイズを倒した後、今度は近くにノイズが現れる気配を感じ、未来は慎次に散歩だと嘘をついて外に出ていた。だがノイズが現れるのを待ち構えていると、何かが自分を呼ぶ気配を感じた。
「誰?」
未来はその気配が気になり、ノイズの事を気にかけながらもその気配が何かを探るため自分の直感に任せて歩いていた。
すでに地上はノイズで溢れかえっていたが、今の未来はいつも感じていたノイズの気配よりも、今感じている謎の気配の方が気になった。
「いったい……なにが?」
とても嫌な予感ではあるが、歪でも修復されていた心がそれを求めるように吸い寄せられる。それを拒む事が出来なかった。
ふらふらと危ない足取りで、だが真っ直ぐにその謎の気配の方角に歩く。
ここにクリスがいれば未来の様子を見て危ないと気づいただろう。何せ、その瞳がクリスと出会う前の、響の幻想を見ていた時と同じだったのだから。
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誰もいない掃除された通路をいつものお団子ヘアーに眼鏡と白い白衣を着た櫻井了子が歩いていた。
カツンカツンとヒールが硬い床を叩く音と地上での戦闘による爆発の音が通路に響く。酷い時は大きな爆発により少し揺れるほどだ。
何も無い通路をひたすら真っ直ぐ進むと突き当たりに厳重にロックされた扉があり、そしてその前には赤い髪の大柄の男が立っていた。
「あ〜ら弦十郎君!こんな所でどうしたの?」
表情の険しい大柄の男、風鳴弦十郎に気がついた了子は一瞬目を鋭くしたがすぐさまいつもの明るい雰囲気に変わる。だが弦十郎はそんな了子を見てもその表情が明るくはならなかった。
「……了子君こそ、何故ここに?」
「私?私はダインスレイフが心配になったからよ。上の騒ぎもきっとダインスレイフを狙った何者かの策略。早めに対処しないと危ないからね」
「ここほど厳重な場所がないほどなのにか?」
弦十郎の後ろの扉を指さした了子はにこやかに言い、その言葉に弦十郎は表情を変えずに答える。
扉の先にはこの前の輸送作戦で輸送に失敗したサクリストD、魔剣ダインスレイフがその危険すぎる特性から厳重に保管されている。そして外からの侵入者対策のセキュリティも高いものとなっているため、弦十郎のような規格外の人間でない限り強行突破は不可能。付近にもここ以上に厳重さがある場所はない。
「外にノイズがいなければ別の場所に移動させるというのも有りだ。だが残念な事に地上はノイズだらけ。ノイズの力を使えば時間はかかるだろうが扉の破壊は出来るだろう。それでもこの場所から移すよりマシだ。それにセキュリティ強化はここから直接しなくてもいいだろう?」
普段仲の良い弦十郎と了子の間にある空気が重くなる。
了子は作った笑みやめて目を細め、弦十郎は真っ直ぐ了子の目を見ていた。
「今回の事や輸送作戦の時、敵はこちらの動きをあまりにも知りすぎている。そのため裏切り者がいる可能性が大きかった」
「……私がその裏切り者とでも?」
「信じたくはないがな」
弦十郎も長年共にいた了子が裏切り者という予想が外れていたらと思っている。だが状況的な証拠や慎次が影で集めた情報から了子の動きがあまりにも怪しすぎていた。
肝心な作戦の時にいないと思えば後から現れ、端末が壊れたと言えば、誰にも何処へ行くか知らせずに姿を消した事もある。ダインスレイフの輸送作戦もダインスレイフに何かあれば了子なら対応出来たであろうが、決して了子でなければならない理由もなかった。だがそれに了子は自分から参戦していた。
他にも小さな違和感を感じるような出来事もあったがそれらを一ヶ所に集めれば、一番怪しいのは了子になってしまっていた。
「それに、塔なんて目立つもの誰にも気付かれぬよう建設するなど不可能。地下に伸ばす以外は、な」
リディアンと地下の二課本部、そしてダインスレイフを保管する施設を繋ぐエレベーターシャフト。それはかなりの深さがあり、もしそれが地上に出れば高い塔と言っても過言ではない代物となる。
カ・ディンギルが仮にエレベーターシャフトを利用した物だとすればそれを可能と出来るのはただ一人。
僅かでも了子が裏切り者ではない、という希望めいた願望を持ちつつ弦十郎は何も言わない了子を見つめ続ける。
本当に了子は裏切り者じゃなくてダインスレイフを心配して駆けつけた、そうであれば自分の早とちりだと笑い話で済ませられると弦十郎は思っていた。
だが、現実は非情である。
「ふふふ。漏洩した情報を逆手に上手くいなせたと思ったが、まさか小さなミスからここまで辿り着くか」
了子が不気味に笑うと指をパチンッと鳴らす。すると茶色の髪が金色に変わり、目の色も髪と同じ金色になる。そして周囲の存在を威圧するような強い
「了子君!」
「まだその名前で私を呼ぶか!」
了子が、フィーネが叫ぶと同時にその身体が光輝き、光が治る頃にはその身に金色の鎧を纏う。その形状は弦十郎が知っていた物と全く同じだった。
「ネフシュタンの鎧!やはりキミが持っていたか!」
クリスの時は銀色だったネフシュタンの鎧をフィーネは纏う。だがネフシュタンから感じられる圧倒的な力はクリスが纏っていた時とは段違いだった。
目的の達成を目の前にし、それを邪魔しようとする弦十郎にフィーネはありったけの殺意をぶつける。
「ただの人間の力で、私を止められると!」
ネフシュタンの鎧の武器である紫の結晶が連なった鞭を振るう。遠距離が得意のイチイバルの装者であったクリスと違い、フィーネは鞭を自由自在に操り確実に弦十郎の心臓を狙った鞭の一撃が風を切り裂く音と共に飛来する。
「おうともさ!」
弦十郎は素早い動きで鞭を回避し、身体のバネを利用した高速移動で一気にフィーネに接近し、拳を振り上げた。
「ちいっ!」
間一髪弦十郎の廊下の床を大きく破壊するような一撃を回避する。その拳圧がかすっただけでネフシュタンの鎧に大きなヒビが入った。
あり得ないと思いながらも目の前の規格外の男が計画の一番の障害だった事を遅まきながらも思い出し、怒りで顔を歪めながらも距離を取る。
「女を殴る趣味は無いが今回は許せ。そして話は全て終わってから聞かせてもらう!」
「くっ」
女を殴る趣味は無いと言いながらも弦十郎はフィーネに容赦無く拳を振り上げる。完全聖遺物を纏っていても弦十郎の高すぎる戦闘能力に金色に輝くネフシュタンがボロボロなる。しまいには反撃に振るったシンフォギアを纏っていたとしても油断出来ない鞭の一撃すら弦十郎は素手で掴む始末。
「くそ!だが人間であるならば!」
「させん!」
圧倒的な戦闘能力の差に、徐々に押されていったフィーネは隠し持っていたソロモンの杖でノイズを呼ぼうとしたが、それよりも早く弦十郎は足で地面を力強く踏みつける。そして砕けた床の破片が宙に浮かび、その破片をフィーネが持つソロモンの杖に当てるという、人間離れした技を見せた。
ソロモンの杖が宙を舞い、天井に突き刺さる。ネフシュタンの力を使えば簡単に取れる場所ではあるが、弦十郎はそれを許さない。
「はぁあ!」
僅かに出来たフィーネの隙を突き弦十郎が例え素早い動きが得意な慎次でも回避する事は不可能なほど速く接近し、フィーネを捉えた。後は拳を振り下ろすだけ。
「──弦十郎君!」
「ッ!」
弦十郎は雰囲気がフィーネから了子に変わったため僅かに思考が乱れる。長年共にいた仲間のその声と表情に決して油断してはいけない場面で油断してしまった。
ニヤリと口元を歪めたフィーネは持っていた鞭を剣のように固定し、弦十郎の腹部を狙って突き出した。
「ぐっは!?」
弦十郎の口から鮮血が舞い散る。そして床に転げ落ちた弦十郎の腹からは大量の血が流れて始めた。
「はぁ、はぁ……やはり甘いな、風鳴弦十郎」
既に弦十郎から受けたダメージはネフシュタンの鎧により回復したフィーネは思いもよらない激戦に肩で息をするが、一番の障害である弦十郎を打ち倒した事に思わず笑みを浮かべる。
「りょ、こ……くん」
「……まだ息があるか」
腹を貫かれてもまだ息がある弦十郎に驚く。だがそのダメージから自分が手を下す必要は無いと判断し、弦十郎の服のポケットから端末を奪って目的の物がある扉の前まで歩くと弦十郎の端末を使って扉を開けた。
中は広く、モニターや備え付けの端末などがあり、その中央には赤いラインの入った黒と銀の刀身が交差し、刃が二つに分かれた禍々しい剣、ダインスレイフが存在していた。
(やはり私では無理か。なら当初の作戦通り小日向未来を使うか)
まだ
それを確認するとフィーネは踵を返してその場を後にした。
──────────────────
「これで!」
「終わりだ!」
奏は槍を、クリスはボウガンを使って地上にいた最後のノイズを倒す。時間はかかったが自分達の周囲にはもうノイズは残っていなかった。
「はぁ、はぁ……今ので最後か?」
「だったら楽なんだがな」
瓦礫にまみれの変わり果てたリディアンを肩で息をしながら眉を潜める奏にクリスは答える。かなりの被害は出たもののノイズの殲滅が出来たのだからこれ以上被害は増えないだろう。
「くっ、早く翼を探さねぇと!」
クリスという背中を任せる存在に、精神的な余裕のおかげでLiNKERの効果時間が伸びていたとしてもそれでも存在する制限時間ギリギリまで戦った奏は既に限界が近い。それでも相棒である翼を探そうと足を動かそうとした。
だが、いつの間にか半壊したリディアンの校舎の屋上にたたずむ知り合いの姿が目に入りその歩みを止める。
「了子さん!」
奏の声にいつもの白衣を着た茶色の髪の了子はニッコリと微笑む。見た目は奏のよく知る櫻井了子であり、なんの変哲もない。
だが隣にいるクリスだけは違った。
「フィーネッ!」
その名前を口に出したとき、了子の笑みが醜悪なものへと変わる。
「ふふ、ははは、あははははは!!!」
「了子、さん?」
奏の知る了子の笑い方とは違う、他人を嘲笑うかのような耳障りな笑い方。信じたくないと思いながらもそれが意味する事を奏が分からないはずがない。
了子はおもむろにかけていたメガネを外し、団子状に纏めた髪を降ろして指をパチンッと鳴らす。その途端、奏とクリスがいるところまで強い威圧感が広がり、そして了子の身体が眩しく発光する。その光が収まりるそこにいたのは了子ではなく、ネフシュタンを纏った金色の髪と瞳の女性。
「うそ、だろ?了子さんがフィーネだなんて……」
「目の前の真実すら受け入れられないとはな。シンフォギアを纏おうともやはり貴様は出来損ないか」
「ッ!」
普段の了子なら決して言わない辛辣な言葉。奏はそれが嘘や演技では無いという事はアーティストとしていろんな人間を見てきたため分かってしまう。あれはフィーネだ。
奏は再びフィーネに問いかけようとしたが、フィーネはそれを無視し天を仰ぎ見る。その瞬間奏とクリスの足元の地面が大きく揺れ動き始める。
廃墟と化したリディアンの瓦礫を押し除け、地面から螺旋のように回転しながら極彩色の巨大な〝何か〟が天に向かうように現れる。それはまさしく塔のような姿をしていた。
「これこそが!地より割裂し天をも穿つ一撃を放つ、荷電粒子砲『カ・ディンギル』!」
恍惚した笑みを浮かべてそそり立つ異質で巨大な塔の形をした荷電粒子砲。これが弦十郎がフィーネのアジトであった古城で手に入れた情報のカ・ディンギルの正体だった。
「……こいつでバラバラになった世界が一つになるってのかよ」
「そうだ。今宵の月を穿つ事によってな」
「月を?」
クリスの問いにフィーネは意味深く答える。
月を穿つ、つまり破壊する事によって何故世界が一つになるのか。ノイズを使ってやる事だったのか。今までの犠牲はそのような意味が分からない事のためだったのか。
そんな考えが理解の追いついていない奏の頭をぐるぐると同じところを回る。何を問い掛ければ良いか分からないはほど混乱していた。
「まあ、まだエネルギーは足りぬのだがな」
「足りない?なんで……」
「貴様らの知ることでは無い!」
話を断ち切るようにフィーネはネフシュタンの紫の水晶が連なった当たればただでは済まない鞭を二人に向かって振るう。それはを見た奏とクリスは急ぎ後ろに跳んで回避した。
「なんで、なんでなんだよ、了子さん……!」
雰囲気が変わり、敵となった了子を見て奏は理解出来ずに動きが鈍る。
両親を失い、そしてシンフォギアを手にした時から世話になった恩人が実は敵だった。しかも相棒である翼が眠りについた原因の張本人となれば、今まで自分が積み上げてきたものを全て否定されるような気待ちになってしまう。
地面を大きくえぐり、破砕した瓦礫の破片が凶器となり隙を見せた奏に向かい追い討ちをかける。鞭が振り下ろされた勢いを考えればLiNKERの効果時間がギリギリの奏では対処しきれない。
奏に襲いかかる瓦礫の破片。しかし横から飛来した無数の矢がそのほとんどを破壊した。
「おい!何ちんたらしてんだよ!死にてぇのか!?」
ボウガンを構えたクリスが動きの鈍くなった奏に怒声を浴びせる。クリスの援護がなければ奏は大きな怪我をしていただろうが、それでも今の奏の気の落ちようは見るに耐え無いものだった。
「だけど、あれは」
「ならさっさとフィーネをぶっ倒して後から話聞きゃぁいいだろうが!」
クリスはリディアンに到着したときの意趣返しとして奏に言う。その言葉に奏はまだ迷いを振り切れていないが、それでもフィーネに向かって大槍を構えた。
「戦闘中に話し合いとは、私もみくびられたかものだ……な!」
鞭による容赦の無い、殺す気の一撃が奏を襲う。今度は余裕を持って回避することが出来たが、そこに込められた殺意から目の前の存在が奏の知る了子ではなくフィーネだと思い知らされる。
「……そうだな。あいつはフィーネ。ノイズも、二年前の事件も全てあいつが黒幕だったんだな」
自分に分からせるよう手に持つ大槍を強く握りしめる。
奏の大切なものを奪っていった黒幕。そう言い聞かせて無理矢理頭のスイッチを切り替え戦闘態勢に入る。
そんな奏の姿を見たクリスもまだわだかまりがあるものの守りたい人が出来た。それを奪われるものかと同じく戦闘態勢に入った。
「合わせろよ、雪音!」
「命令すんな!」
再び振るわれた鞭を回避し、奏がフィーネに向かって駆け出す。その後ろからクリスは両手にボウガンを持ち、フィーネに向かって絶え間なく矢を放った。
フィーネは鞭を自分の前方で扇風機のように高速で回転させ、何事もないように放たれた矢の全てを弾き落とす。その隙を狙って奏は大槍が届く位置までフィーネに近づけた。
「おぉりゃあああぁぁぁ!!!」
身体を捻って勢いをつけた大槍がフィーネを狙う。クリスが同じように狙われたら反応出来るか怪しいほどのキレと速さの一突き。当たれば例えネフシュタンでも無傷でいられない。
しかし、そんな一撃をフィーネは奏の方を見ずに空いている手で槍の先端を掴み止めた。
全力とまで行かずとも、かなりの力を入れていたはずの一突きを難なく受け止められて奏は目を見開く。そんな奏を横目で見たフィーネは忌々しそうに舌打つ。
「雑魚が。お前では話にならない」
「う、わぁ!?」
ネフシュタンの鎧によって向上した筋力により、槍を持ったままの奏ごと持ち上げるとボールを投げるようにクリスに向かって投げつける。
軽く投げるフォームの割にはプロの投手並みの速さで投げられた奏は空中で姿勢を整える事が出来ず、真っ直ぐとクリスに向かう。
「うっそだろ!?」
思いもよらぬ光景にクリスは一瞬目を見張るがすぐさま足を踏ん張り、飛ばされた奏を何メートルか引きずられながらも全身を使ってキャッチした。
「す、すまねぇ」
「謝るのは後だってぇの!」
クリスは奏を降ろしながら地上に降りてきたフィーネを睨む。一瞬の猛攻の割に余裕の笑みを浮かべるフィーネに腹ただしいと思うが冷静を欠いた状態では勝てないと思い、静かに深呼吸して落ち着く。
「……やはり貴様らでは足しにもならんか」
横目でカ・ディンギルを見たフィーネがポツリと忌々しげに呟く。何故苛々しているか分からないクリスと奏は疑問に思いながらもそれを質問する合間をフィーネは与えない。
鞭を縦に振り下ろし、地面を砕く衝撃と共に蛇のように鞭が二人を襲う。それを回避しようと二人は別々に動くが、鞭は生きているかのような機動で二人を追いかける。
奏はギリギリで回避しながら大槍で鞭を弾く。LiNKERが切れかかっているとはいえ近接型のシンフォギアの性能を活かす事でなんとか対応出来ていた。
だがクリスは違う。遠距離戦ならば無類の強さを誇るイチイバルのシンフォギアとクリスの才能を持ってしても襲いかかる破壊の一撃を回避する事は困難だった。
フィーネに向かってボウガンを放つが、それも自由自在に動く鞭に阻まれ、むしろその隙を狙って襲いかかる。奏と違い防御する術が無いクリスはまともに反撃も出来ずに焦燥感だけが溜まっていく。
矢と槍と鞭が周囲を破壊しながら巻き起こる幾度も攻防。だがネフシュタンによる高い再生能力を得たフィーネ相手にシンフォギアを纏うクリスと奏ではその性能差により防戦一方となってしまう。
そして小さなミスを犯した。
「うっくぅ!?」
何も無いところでいきなり身体がガクッと重くなり、つまずきかける。
東京タワーにおける大量のノイズ、リディアンに巣食ったノイズ、そして現在のフィーネとの戦闘と、短い間に激しい戦いの連続に体力に自信のないクリスの身体に限界が訪れたのだ。
ふらつくが近くの瓦礫に手を置き、なんとか倒れないように耐える。だがそれを見逃すフィーネではない。
「避けろ、雪音!」
「ッ!」
奏の声にクリスは直感的に前に飛ぶ。すると今クリスがいた場所に瓦礫を粉々にするほどの勢いがついた鞭が地面を砕いた。後数秒遅ければクリスは戦闘不能になっていただろう。
砂埃まみれになりながらも、転がりながら回避したクリスはすぐさま反撃するために立ち上がろうとする。だが体力の限界が来ていた身体ではその言う事を聞かず、再び足がふらつきバランスを崩してしまった。
「死ね!」
奏を無視してフィーネは動きの鈍ったクリスを先に始末しようと鞭を縦に大きく振るう。鞭は大きく波打ち、地面に当たるたびに衝撃で地面を砕きながら膝をつくクリスを捉えた。
容赦無しの殺す気の一撃がクリスを襲う瞬間、地面を破壊する音を掻き分けて一つの歌が響いた。
──Fellthr amenohabakiri tron──
歌が響くと同時に青い閃光がクリスの後方で輝く。そして振り下ろされた鞭がクリスを襲う間際、その間に一つの人影が現れた。
「っやあ!」
人影は持っていた黒い刀を横に振るい、振り下ろされた鞭の軌道を真横の地面に向かうように無理矢理変えた。
地面を砕き砂煙が舞う中、そこに立っていたのは青と黒のインナーに黒の部分が少し少なくなり青の部分が広がった機械的な装甲を纏った黒髪の少女、小日向未来だった。
「未来!」
「小日向!?」
予想外の存在に驚く奏と生きていた事に喜びを隠せず笑みを見せるクリス。そんな二人の違いを見て苦笑しながらも未来は優しく微笑んだ。
「どうして未来がここに?」
「それは……誰かに呼ばれた気がして、かな」
「呼ばれた?」
「うん。でも今は」
未来は自分が感じていた謎の気配を一旦隅に置いて、目の前の脅威に目を向ける。その先いるのは金色に輝くネフシュタンの鎧を纏うフィーネ。
「この場をなんとかして切り抜けないとね!」
口元は笑みを作ろうとも大切な友であるクリスを傷つけたであろう存在であるフィーネに向けてありったけの敵意と怒りの篭った目を向ける。
その怒りの炎が見える瞳を見たフィーネは不敵な笑みを浮かべた。
まだアンケートは続けるつもりですが、これはフィーネ生存確定だなーと思いストーリー考えてたらまた別の展開を思いつき、大きく今後のストーリーを練り直す羽目になった作者です_(:3」z)_
こりゃもう……ラスボス達全員生存させたるか。
ただしGEDOU、貴様はゆ゛る゛さ゛ん゛
遅れたものの翼さんの誕生日回作ろうと思いましたが、ここの翼さんは眠ったままなのでどうにも出来ない事に気付いた……G編にも突入していない状況でいきなりきりしらコンビ等を出す事はできぬ_(:3」z)_
次回! 再び陽だまりは陰る